表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼馴染の勘違いオタクを無害なモブにしたかっただけなのに、冷徹に教育していた私が絆されました  作者: remia
第6章:形勢逆転の秋

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/58

第32話:否定できない

 駅へと続く帰り道。


 冷たい秋風が吹いているはずなのに、あいつのせいで、私の顔はずっと火照ったままだ。

 美咲と二人、並んで歩いていても、心臓がずっと暴れ続けている。



「いやー、今日の佐藤、マジで男らしかったねー」


 美咲がニヤニヤと笑いながら、わざとらしく私の顔を覗き込んできた。



「……あいつはただ、意地になっているだけよ。私がキツいこと言ったから……」


 声が上ずった。いつもの口調が作れない。

 こんなんじゃ、美咲には……。



「ほんとにー? あんなストレートに『凛子に認めてほしい』なんて言われて、嬉しくないの? ……凛子、さっきからずっと顔赤いけど」


「っ! あ、赤くなんかないわよ! これは……夕日のせいだから!」



 嬉しいとか……そんなこと口が裂けても言えるわけないでしょ。


 だいたい、あんな不意打ちをかましてくるなんて反則なのよ。

 あんな真っ直ぐに言われたら、意識しないほうがおかしいじゃない。


 私と同じ場所に立つために無謀な挑戦をするだなんて、どうしようもないバカだわ。



「はいはい。夕日のせいね。……でもさ」


 からかうのをやめ、美咲はふと、少しだけ真面目な声色になった。


「佐藤、本当にカッコよくなったよね。最初の頃のあのヤバい姿、もう思い出せないくらい」


「……」



 ……それは認めるわ。本気で視界から消してやりたかった頃とは完全に別人よね。

 それに、気遣いも努力もできる人間になったんだもの。



「凛子もさ。もう、佐藤のこと好きになっちゃってるんでしょ?」


「……っ」


 否定しようと思えば、いくらでも言い返せるはず。


 ……それなのに。


 これまでのあいつの努力が次々と脳裏に浮かんできて、言葉が出てこない。



 私に認めてもらうためだけに頑張り続けて、私が求めた以上の結果で返してくるなんて……。

 そんなの、惹かれない方が無理なのよ。



「……悔しいけど」


 小さく息を吐き出す。

 美咲が立ち止まり、私の次の言葉を待っている。



「……否定できない」



「ふふっ。やっと素直になったね」


 美咲が嬉しそうに私の背中をバンバンと叩いた。



「っ……! 絶対に、あいつには言わないでよ!」


 私から惚れたなんて知られたら、一生ドヤ顔されるに決まってるんだから。

 これだけは死守しないと、私の尊厳が死ぬわ。



「わかってるって! 告白は男からさせるのが筋っしょ!」


 美咲はギャハハと笑いながら、私にウインクを飛ばしてきた。



「告白って……まだ、そんなのじゃないわよ。受験だってどうなるかわからないんだから」


「はいはい、そういうことにしておくよ。今の佐藤なら本気で秀瑛高校に受かっちゃうかもねー。凛子のためにそこまで頑張れるなんて、いやー、愛されてんねー」


「なっ……! 愛されてるって……もう、からかいすぎよ!」



 親友に恋心を暴かれた恥ずかしさに耐えきれなくなって、私は足早に歩き出した。


 笑い続ける美咲の隣で、駅へと続く坂道を下りながら、秋の夕焼け空を見上げた。


 ポエム告白を『1ミリも魅力がない』って突き放したあの日から半年。


 

 私の心は絶対零度まで冷え切っていたはずなのに……。あんたの不器用な熱のせいで、もうすっかり溶かされちゃったじゃない。


 厄介すぎて、秋の冷たい空気を吸い込んだくらいじゃ、ちっとも冷めてくれそうにないわよ。



 ……責任、取りなさいよね。バカ拓実。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ