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幼馴染の勘違いオタクを無害なモブにしたかっただけなのに、冷徹に教育していた私が絆されました  作者: remia
第4章:オタクの夏休み大改造

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第17話:奇跡の採点結果

 七月中旬。夏休みを目前に控えた、一学期の期末テスト返却日の放課後。

 いつもの空き教室に集まるなり、結城が楽しげな号令をかけた。


「よし、じゃあ約束通り、全員のテストを見せ合おうぜ」



 机の上に、それぞれの答案用紙が並べられた。


「ちなみに、俺は学年2位だ。残念ながら今回は氷室の勝ちだな。五十嵐はどうだ?」


「全教科でトップテンは無理だったけど、総合10位だよー。須藤は?」


「バッチリ全教科で平均は超えたぞ。順位は前と同じくらいだな」



 さすが私の選んだ更生スタッフたち。完璧なハイスペックっぷりだわ。

 問題の、最後の一人はどうなのかしら?



「……」


 当の拓実は、自分のカバンの中からクシャクシャに握りしめられていた答案用紙の束を取り出し、ゴクリと大げさに喉を鳴らして机の上に置いた。



 だからなんでいっつもプリントをアコーディオンみたいにシワシワにするのよ。親の仇みたいに握りしめるな。



「うわ、佐藤の点数ヤバ! 数学三十二点、英語三十八点、国語三十五点……全教科が超ギリじゃん!」


「おいおい、数学なんてあと二点で赤点だぞ……」


 美咲と須藤が答案用紙を覗き込み容赦なく点数を読み上げた。


 ある意味、奇跡的な点数ね。

 水底からようやく這い上がって、水面に鼻先だけ出したってところかしら。今にも溺れそうだけど、一応は生存圏に届いたみたいね。



「……まあ、一応、全教科赤点は回避したみたいね。ギリギリの崖っぷちだけど」


「凛子……」


「目を覆いたくなるような点数ではあるけれど、全部一桁で補習行きだった中間テストよりはマシになったじゃない」



 拓実の肩から、フッと力が抜けた。


「ああ。本当にギリギリだった。でも……俺一人じゃ、このギリギリにすら絶対に届かなかったよ」


 真っ直ぐに前を向いて言い切った拓実は、結城たちに向かって九十度の角度で深々と頭を下げた。


「結城、須藤、大事なところを叩き込んでくれて、五十嵐、ノートを貸してくれて……本当にありがとう!」



「おっしゃあああ! よくやったな佐藤!」

「よかったねー! マジ点数ギリギリで焦ったけど」

「おう、お前があきらめずにやった結果だぞ!」


 結城と須藤が笑いながら拓実の背中をバンバンと叩き、ハイタッチを交わした。

 美咲もギャハハと腹を抱えて笑いながら、そのギリギリの健闘をたたえていた。



 ……まったく。

 『本気を出せば――』なんて見苦しい言い訳で逃げていた頃に比べれば、大きな進歩だわ。

 自分の底辺っぷりを素直に認めて、誰かに頭を下げられるようになっただけ、この「三十点台」にも少しは意味があったということかしら。


 今回ばかりは、少しは見直してあげてもいいのかもしれないわね。

 調子に乗るから絶対口には出さないけど。



 まさにその直後だった。


 拓実は急にスッと真顔に戻ると、またしても存在しない前髪をかき上げ、ウザいほどのドヤ顔を浮かべた。


「フッ……やはり最強パーティーに拾われた俺には、隠された潜在能力ポテンシャルがあったようだな。佐藤拓実、覚醒の時だ! 次は学年トップをもらおうか」



『ピキッ』



 空き教室の感動的な空気が一瞬で凍りついた。シベリア永久凍土の再来だ。



 前言撤回。やっぱこいつ、根本的にバカだわ。



「いや、三十点台でそれ言う!?」

「次も赤点回避が目標だろ!」

「佐藤、キモいよ。現実を見なきゃダメっしょ」

「安心しなさい。誰もあんたの覚醒(笑)なんか微塵も期待してないから」


 結城が目を見開いて叫び、須藤が呆れ果てて肩をすくめた。

 美咲がジト目で冷たく言い放ち、私も絶対零度の声で現実のナイフを突きつけた。



「なっ……なんだよお前ら! 覚醒したギフテッドに対して冷たくないか!?」


 こいつ、覚醒して三十点台って……言ってて恥ずかしくないのかしら。

 ま、『最強パーティーに拾われた底辺オタク、死ぬ気で頑張ってようやく赤点を回避する』……。せいぜい、その程度の打ち切り寸前ラノベの主人公がお似合いよ。



 再び調子に乗り始めた勘違いオタクを前に、結城はやれやれと呆れつつも、深いため息をついてパンッと手を叩いた。


「……はぁ。まあいい。色々と言いたいことはあるが……よし! 佐藤の奇跡の赤点回避も記念して、明日は期末の打ち上げだ!」


「打ち上げ! いいねー! どこ行く?」


「やっぱカラオケだろ! 佐藤も当然行くよな?」


「カ、カラオケ……!?」



 陽キャの定番イベントの名前に、拓実の顔からサッと血の気が引いた。


「お、俺は、その……五月の時は結局、空気にのまれて一曲も歌えなかったし……!」


「何言ってんだよ! あの時は初めてで緊張してただけだろ。明日は俺たちが一緒に盛り上げてやるから心配すんなって!」


「そうだよー! テストも終わったんだし、パーッと騒ごう!」


 結城と美咲に両脇を固められ、完全に外堀を埋められて引きつった笑いを浮かべる拓実。



 この数週間の特訓を経て、あいつが『陽キャの檻』の中でどう立ち回るのか……。

 少しはマシな変化を見せてくれるのかしら。

 

 高みの見物をさせてもらうわ。

ご覧いただき、ありがとうございます。


念のための補足です。


本エピソード内で凛子が考えたライトノベル


『最強パーティーに拾われた底辺オタク、死ぬ気で頑張ってようやく赤点を回避する』


こちらについては架空のものです。


万が一、同名または類似のタイトルがありましたら、ご迷惑にならないようエピソード内の名称を変更しますので、作者までご一報お願いします。

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