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幼馴染の勘違いオタクを無害なモブにしたかっただけなのに、冷徹に教育していた私が絆されました  作者: remia
第3章:立ちはだかる他責思考の闇

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第14話:言い訳オタクへの処刑宣告

 拓実の絶望的な学力と「他責思考」という特大のバグが発覚した、まさにその日の夜。

 私と母親は、隣の佐藤家にお呼ばれして、豪華な出前のお寿司をご馳走になっていた。



「いやぁ、いつも拓実が一人でお留守番している時に、凛子ちゃんにご飯や様子を見てもらって……本当に助かっています。今日はそのお礼も兼ねてね」


 おっとりとした佐藤のおばさんが、申し訳なさそうに頭を下げた。

 隣では、たまたま仕事が早く終わったらしい佐藤のおじさんも、「本当にいつもありがとうね」と苦笑しながらビールを飲んでいる。



「いえいえ、お隣同士ですから。ねえ、凛子?」


「はい。……全然、気にしてないので」



 まさかおたくのバカ息子からキモい告白をされた挙句、今は陽キャの檻にぶち込んで更生させてる最中だなんて、親の前じゃ口が裂けても言えないわね。



 視線の先では、早々に好みのお寿司だけを掠め取ったバカ息子がリビングのソファにダラッと寝転がり、スマホをいじり始めていた。


 放課後の勉強会で、私からあんなにメッタ刺しにされたというのに、全く危機感というものが見られない。



 腹立たしいことに、こいつは『本気出せばできるアピール』で私たちを論破したと勘違いして、無駄に調子に乗ってやがる。

 


 今に見てなさい。その余裕ごと、地獄に叩き落としてやるから。



 私が冷ややかに睨みつけていると、佐藤のおじさんがピクリと眉を動かした。



「おい拓実。お前、今日は放課後に友達と勉強会をしてきたんだってな。来週から期末テストだが、勉強の方は進んでるのか?」



 スマホから目を離そうともせず、気だるげに答える拓実。


「あー……まあ、ぼちぼち」


「ぼちぼち、じゃないだろう。一学期の成績が決まる大事な時期だぞ」


「別にいいだろ。ぼちぼちなら。学校の成績で人間の価値が決まるわけじゃないし」


 勘違い野郎は、親の前でも存在しない前髪をかき上げながら、ドヤ顔でうそぶいた。



 絶好のチャンスね。

 さっきみたいに、またダサい言い訳で逃げるつもりでしょうけど……そうはさせないわよ。



 私はゆっくりと口角を引き上げ、にっこりと微笑んだ。



「あれ? ……拓実、中間テストって全部一桁の赤点じゃなかったっけ?」


「えっ!? 全部一桁!? 赤点……!?」


 穏やかに様子を見ていたおばさんが、信じられないものを見るようにパチクリと目を見開いた。



 やっぱり、中間テストの結果を隠して誤魔化してたわね……いい気味だわ。



「ちょ、凛子!? お前、なんでそんな聖女みたいな顔して……何を言い出すんだよ!」


「拓実、どういうことだ?」


 拓実が慌ててスマホを落としそうになる横で、おじさんの声が一気に低くなった。

 私は小首を傾げ、純真無垢な笑顔を作ったまま追撃を放った。



「たしか、『先生の教え方が悪い』だったっけ?」


「お、おい凛子! お前どうしたんだよ!?」



 何を焦ってるのかしら。お得意のトークで論破してみなさいよ。



 突然の裏切りに混乱し、目を白黒させているバカ幼馴染。

 もはや断崖絶壁に追いつめられた犯人ね。

 そして、おじさんの怒気をはらんだ視線に射抜かれ、拓実は思わず放課後と同じ、親相手に絶対してはいけない最低の言い訳を炸裂させた。



「……そうだよ。教え方は下手くそだし、そもそも暗記偏重の日本の教育システムは俺には合わないんだ。それに――」



『パァンッ!! 』



 リビングに、小気味良い乾いた破裂音が響き渡った。

 おじさんが履いていたスリッパを脱ぎ、寝転んでいた拓実の頭を容赦なくフルスイングで引っぱたいたのだ。



「いっ!? な、何すんだよ父さん! 息子に物理攻撃するのか!? そんなスキル――」

「黙れ! そんな態度だったら、高校になんて行かなくていい!」



 頭を抱えて起き上がる拓実を、おじさんは烈火のごとく怒鳴りつけた。



「なっ……! なんだよ急に!」


「中学は義務教育だから学費はかからん。だが高校は違う!」


「……じゃあ、安い公立にすればいいのか?」


「金額の問題じゃない! お前のその腐った考え方はな、親が汗水流して稼いできた金をドブに捨てにいくのと同じだ! 学ぶ気がないなら中卒で働け!」



「ひぃっ……! 」



「言い訳ばっかりしやがって……寝言は結果を出してから言え! 勝手に被害者ぶって、親の金にタダ乗りしようとするな!」



 おじさま、ナイスだわ。まさにその通りよ。


 私は冷ややかな目で拓実を見下ろしながら、内心で盛大なスタンディングオベーションを送っていた。



「次の試験で同じような点数を取ったら、お前の本とゲームを全部捨てるからな」


「ちょっ、それは酷くないか!? テストは来週なんだぞ!」



 さぁトドメよ。自分の吐いた言葉で、地獄に落ちなさい。


「あら? 拓実は『ギフテッド』なんでしょ? 『本気出せば平均点くらい楽勝』って言ってたじゃない」


 にっこりと微笑みながら放った私の言葉に、拓実が裏切られたような悲鳴を上げた。



「り、凛子!?」



「拓実、さすがに擁護できないわよ……」


 いつもは優しいおばさんも、今回ばかりは呆れ顔で深い溜息をついている。


「頑張っても出来ないなら仕方ないけど、今回は言い訳なしでやりなさい」


「い、いや。でも――」

「あらあら、拓実くんHPがもうゼロになっちゃいそうねぇ」


 うちの能天気な母親まで、頬に手を当てて楽しそうに微笑みながら参戦して、退路を完全に断ち切りにきた。


「でも、どうするの? ここまで言われて、情けない点数は取れないわよねぇ」


 って、うちのお母さんも少々ご立腹のようだ。目が全く笑ってない。

 慈母の微笑みに般若が透け始めている。

 これが出たら最後、私ですら服従する以外の選択肢はない。


「うっ……! 」


 親三人と私からの十字砲火を受け、完全に四面楚歌となった拓実は、真っ赤な顔で勢いよく立ち上がった。



「……わかったよ! やればいいんだろ! 能力解放の時だ!! 明日からは誰にも邪魔されない早朝の学校でやってやるよ。俺の真の力を見せてやる!」



 この期に及んで『能力解放』に『真の力』……。

 これだけ追い詰められても、まだ脳内異世界へ亡命しようとしているわけ? 

 そんな魔法のような逆転劇、現実には存在しないっていい加減学習しなさい。



 痛すぎる捨て台詞を吐き捨て、自分の部屋へと逃げ帰る拓実。

 

 私は、脂の乗った大トロを心ゆくまで堪能しながら、階段を駆け上がるあいつの背中を見送った。



 退路を完全に焼き払われたバカな幼馴染が、明日の朝、どんな覚醒(笑)を果たすのか。

 あんたの末路、特等席で眺めさせてもらうわ。


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