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幼馴染の勘違いオタクを無害なモブにしたかっただけなのに、冷徹に教育していた私が絆されました  作者: remia
第2章:絶望的コミュ障のバグ修正

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幕間:ラノベ勘違い野郎の自己評価

「やれやれ……陽キャのコミュニケーションなんて、本気を出せばこんなものか」



 自室のベッドに寝転がり、俺はスマホの画面を見てフッと口角を上げた。


 画面には、結城や須藤たちとのグループチャット。

 先ほど、結城が送ってきた「明日暇?」というメッセージに対し、俺は無難な普通のスタンプ付きで「いいよ」と即答するという、高度なコミュ力を発揮したばかりだ。



 あの忌まわしいボウリングから数週間。

 凛子による『コミュ力改善計画』という理不尽なクエストが発動し、俺は結城たちとのファミレス通いや会話特訓を強制されていた。


 そんな理不尽な目に遭っても、俺が文句を言わずに耐え忍んでいるのは……もし逃げ出しでもしたら、凛子から本当に見捨てられてしまうからだ。



 それだけは……絶対に嫌だ。



 だから、今は雌伏の時だ。

 あいつに嫌われないために、陽キャどもに付き合ってやっているのだ。



 だが、その甲斐あってか、俺の隠された『真のコミュ力』がついに覚醒しつつあった。


 癪なことだが、結城たちのおかげで、自然な挨拶のタイミングや、会話のパス回しのコツが掴めてきたのも事実だ。


 最近では結城たちの会話のテンポにもついていけているし、どうでもいい須藤の部活の話にも適切な相槌を打てる。

 五十嵐に急に話を振られても、無難に返せるようになってきた。



 先日のカラオケでは一曲も歌えず、フリーズしてしまったが、俺はカラオケなんてほとんど行ったことがないんだから、上手く立ち回れなくて当然だ。

 そもそも、自分たちだけで低俗な流行曲ばかり歌って、俺の好きな曲を入れようとしない陽キャどもに配慮が足りないだけだろう。



 それに、外見だって今の俺はバッチリだ。

 俺のアイデンティティは泣く泣く封印したが、前髪を切って素顔を晒し、没個性的な服を着ることで、かえって俺の『隠しきれない主人公オーラ』が際立っている気がする。


 今日だって、廊下ですれ違った女子が俺をチラッと見ていたような気がする。

 あれは絶対に「佐藤くん、カッコよくなったかも?」というフラグだ。



「やっぱりな。俺がこれまでぼっちだったのは、俺のコミュ力が低かったからじゃない。俺のオーラに恐れをなして、自分から話しかけようともしなかったクラスの連中のレベルが低かっただけだ」



 俺は一つ頷き、己の優秀さに改めて感心した。


 結城たちのような才能に恵まれたカースト上位のハイスペックな連中が相手なら、俺のポテンシャルも自然と引き出されるというわけだ。


 これまでは、無能なモブに囲まれていた環境が悪かっただけで、舞台さえ整えば、俺はこの通り『陽キャの会話』すら完璧にマスターできるのである。



 ……ただ、厄介な弊害もあった。

 毎月の小遣いはすべて彼らとの交際費に吸い取られ、聖書ラノベを買う資金が完全に底をついているのだ。



 見かねた結城が自分のラノベを貸してくれたりもした。

 あいつは才能だけの薄っぺらい陽キャかと思っていたが、俺の趣味に歩み寄ろうとするとは案外いいヤツなのかもしれないな。



 だが、そのお返しとして俺の至高のコレクションを持っていった際、凛子に「エロ本」と怒られアイアンクローを決められたことだけは、未だに納得がいっていない。


 あれはエロではなく、作品を彩る崇高な『芸術』なのだ。



 まぁ、一般人である彼らに、あの芸術性を理解しろというのは酷な話だったかもしれない。

 俺のような高尚な感性を持たない者には、刺激が強すぎたのだろう。

 今後は一般人への配慮として、本に無地のカバーをつけてカモフラージュしてやるとしよう。



「……コレクションの件もそうだが、凛子のやつは相変わらず俺に冷たいんだよな」



 俺がここまで劇的な成長を遂げているというのに、口を開けば説教ばっかりだ。



 だが、俺にはわかる。

 あいつは、俺の予想以上の成長スピードに戸惑っているのだ。



「まさかここまでの力を隠していたなんて……!」

 と、内心では焦りとときめきを隠しきれずにいるに違いない。

 いわゆるツンデレの『ツン』が極まっている状態だ。



 俺が秘めたる才能に覚醒して、「普通の人間」の皮を被った超人になった時、あいつは自らの見る目のなさを恥じ入りながら、俺の胸に飛び込んでくるはずだ。



「待ってろよ、凛子。お前が課した試練なんて、俺の才能をもってすればすぐにコンプリートしてやる」



 気が重かったコミュニケーションすら突破しつつある俺に、もはや死角はない。



 俺はスマホをベッドに放り投げ、己の才能に酔いしれながらニヤニヤと笑い、次なるイベントへの期待に胸を膨らませていた。



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