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幼馴染の勘違いオタクを無害なモブにしたかっただけなのに、冷徹に教育していた私が絆されました  作者: remia
第2章:絶望的コミュ障のバグ修正

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第9話:痛いキャラ設定の崩壊(前編)

 ただの挨拶で調子にのった勘違い野郎を、正論で叩き潰した私たちは、次なる単元――会話特訓に着手した。



 自ら声をかけるという第一歩こそ踏み出したものの、肝心のコミュニケーション能力は依然としてマイナス限界突破のままだ。

 このまま放置していたら、私の社会的尊厳が危ない。早急に対処する必要があった。



「それじゃあ、さっき宣言した通り『会話のトレーニング』を始めるわよ」



 私が腕を組んで教卓の前に立つと、黒板の前に立たされた拓実がゴクリと大げさに喉を鳴らした。


「あんたね。ひな壇芸人じゃないんだから、無駄にデカいリアクションはいらないのよ。くだらないことして滑り散らかす前に、人の話を聞きなさい」


「うっ、わかったよ。じゃあ、会話って、具体的にどうすればいいんだ……?」



「まずは結城たちの雑談に混ざりなさい。結城、適当に話を振ってみて」


 私の指示に、結城が軽く頷いた。



「おう。佐藤、昨日あのテレビ見たか?」


 同世代なら誰もが知っている、超定番バラエティ番組の話題だ。

 しかし、拓実は目を白黒させて固まっている。



 見ていないのがバレバレだ。

 ぼっちAIには、こんな時にどうすればいいのかプログラムされていないはず。

 どんな反応を返してくるのか……嫌な予感しかしないわ。



 数秒の気まずすぎる沈黙。

 それに耐えきれなくなったのか、拓実の顔つきがスッと変わり、なぜか片手をポケットに突っ込んで斜に構えた。



「……愚問だな。俺には低俗な笑いに割くような時間リソースはない」



 やっぱり、顔を出したわね。

 困った時のラノベ主人公風の台本棒読み。



 想像の斜め上をいく返答に、結城は顔を引きつらせながらも、持ち前のコミュ力でなんとか会話をつなげようとしてくれた。



「お、おう。まぁそう言わずに今度見てみろよ。面白いぞ」


「やれやれ、意見を押し付けるなよ。まったく……理解に苦しむね」



 やれやれ?

 よくそんな手垢のついた台詞一つで、せっかく繋がった会話をゴミ箱へ叩き込めたものね。

 他人のパスをシュレッダーにかけるその無神経さに、空き教室の空気が一瞬でシベリアの永久凍土並みに凍りついた。



「はい、ストップ!」


 教卓をバンッと叩き、痛い幼馴染を絶対零度で睨みつけた。



「会話以前の問題ね。まずは、その痛すぎるラノベ主人公のモノマネを今すぐやめなさい」


「なんだよ。モノマネって、俺は別に――」


「あんたの悪い癖よ。どう返していいか分からなくなると、途端に『知的でクールな俺』ぶった口調でごまかそうとするでしょ?」



「なっ……」


 容赦ない指摘に、分かりやすくたじろぐ拓実。

 そこに結城が、真面目なトーンでトドメの一撃を放った。



「悪いけどさ、佐藤。率直に言わせてもらえば、それ全然クールじゃないぞ。ただの『面倒くさい奴』って印象だった」



「そ、そんな……」



 善意の豪速球で、痛いキャラを完全に粉砕されたわね。

 いつもは優しい陽キャの神にまで言われたら、さすがに堪えるでしょ。



「だいたい、同級生に対して『愚問』とか『理解に苦しむ』とか、あんた何様なの?」



 見かねた結城が、今度は諭すようにパスを出してくれた。



「佐藤は、わからない話題だから切りたいんだよな? でも、それなら正直に『それ見てないんだけど、面白いの?』って言えばいいだけなんだよ」


「へ? それでいい……のか?」


「変に見栄を張ったり、痛いキャラでごまかしたりするから会話が拗れるのよ。知らない話題なんて誰にでもあるんだから、別に何も恥ずかしくないわ」



 私たちの言葉に、拓実は目を見開いて驚いている。

 こいつにとっては、話題についていけないことこそが最大の『恥』なのでしょうね。

 ほんとバカな男。知ったかぶって痛いキャラ演じてる方がよっぽど恥ずかしいのに。



「いい? 日常会話に含みも伏線もいらないのよ」


「で、でも、それじゃ会話に面白みがなくないか?」


「あんたね……ラノベの読みすぎ。ここは現実なの。会話に必要なのは正確な情報の伝達と、最低限の愛想だけよ」



「あと、『やれやれ』もマジでやめた方がいいな。面白いどころか不機嫌に思われて、空気を悪くするだけだぞ」


「う、嘘だろ……ラノベなら格好良く見えるのに」



 私と結城からの指摘を受け、拓実は自分が纏っていた『孤高のバリア』がただの『痛いコスプレ』だったとようやく自覚し、絶望したようにその場に崩れ落ちた。



 ……これで少しは自分の痛さを自覚したと思いたいところね。


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