第11話 撃破じゃない
前回のあらすじ
側仕え候補がやってきた。そして私の適性がとびぬけて低いことが分かってしまった。……そんなぁ。
―「また、負けましたわぁ……。」
ヴァレンタイン姉弟が来てから数日、私達は一緒に納入されてきたシミュレータで遊んで……もとい訓練を続けていた。シミュレータと言っても、実際のドライスフレームのコックピット改造してむき出しにした上でコネクターに手足を通して実際に体を動かす。そして映像はゴーグルに映しだされる。……体験型VRだ、これぇ!?
「小型種は何てことないのに、中型が群れを成しただけで歯が立たないわね……。」
アリスがゴーグルを外してうなだれる。私を含めて4人とも小型種の群れまでは対応できたが、中型が3体で襲ってくるところで撃墜されてしまっている。
「……連携されると、厄介。」
アリアのコメントに隣のアークもコクコクと首を振って同意している。
「続きはまた後ですわね。」
もうすぐダンスレッスンの時間ということもあり、私達は格納庫から本邸へと向かった。
「おやっさん。いくら何でもこの設定は難しすぎじゃないですか?まだ初級ですよ?」
私達が居なくなったのを確認した後、訓練を見守っていた担当がおやっさんに話しかける。実はおやっさんの手により本来よりも敵が強く設定されていることを私達は知る由もなかった。
「これで下手に自信をつけられても困るからな。旦那様からの指示だ。」
「いくら何でも最高難易度はやりすぎですって。」
「嬢ちゃんならそのうちこれの最上級でもクリアしそうだけどな。」
何だかんだで今のアールティーナの気合は買っている。とおやっさんは笑いながら答えた。
ー「はい、今日はここまで。課題を出しておきますので忘れないように。」
「ありがとう……ございました……。」
ダンスのレッスンで肉体的に、そしてマナーのレッスンで精神的に疲労困憊となった私は先生にお礼を言ってそのまま机に突っ伏した。シミュレータを買ってもらうためとはいえ詰め込みすぎじゃなかろうか……。
「お疲れ様です、お嬢様。」
「……お茶をどうぞ。」
アリアが紅茶を差し出してくれる。香りに癒されながら、私はそれを飲み干す。
「ありがとう、生き返りましたわ。」
さぁ、ここからは夕食まで自由時間、シミュレータで続きだ続き。
「今度こそクリアしますわよ。」
私は3人を引き連れて再び格納庫へ向かうのだった。
「何か秘策でも思いつきましたか?」
道中でアリスが問いかけてくる。
「……ノープランですわ。」
流石にレッスン中はそんな事考えている余裕は持てなかったので、素直に白状する。
「……なら1番手は私が。……我に秘策あり。」
「ずるい、私もちょっと試したいことがあるのに。」
「はいはい、ケンカしないの。ならアーク、貴方が最初に行きなさい。」
2人がどちらが先かで喧嘩しそうだったので、後ろで自分もやりたいなとこちらを見ていたアークを1番手に指名する。
「ぼ……僕でいいんですか?」
「ええ。やってごらんなさい。」
「頑張ります。」
アークの笑顔に少しは打ち解けてくれたのかなと喜ぶ私だった。
ー「噓でしょ……。」
判定としては大破で最低ランクではあるが群れの撃破をアークが成し遂げる。
「アーク、凄い!流石私の弟っ。」
アリスとアリアが左右からべた褒めしながら撫でくり回している。
「……じゃあ次は私。」
続く二人も作戦が思いついていた作戦がうまくいき、クリアの表示が観戦用のモニターに映し出された。
「私も負けてられませんわね。」
最後に私も挑戦する。
「頑張ってください。」
アリスに補助してもらいながらコネクターに接続しゴーグルをつける。フォンと音がすると同時に目の前に森が広がった。機体はレアーシ級・ロングソード。中遠距離の武器を背部武装に取り付けられる中量級の量産機。一般兵に与えられる機体の中でも癖がなく扱いやすいのが特徴だ。私はバランスよく左肩にミサイルポッド、右肩にグレネードキャノン、右手に長剣、左手にアサルトライフルを装備させている。
アリアは近接装備で身を固めた上で、自分から突撃し相手の出鼻を挫いて連携させずに各個撃破をしていた。アリスは逆に大型のガトリングを持ち込み大きく引いて1体ずつ確実に仕留めていた。アークはシールド2枚持ちで正面から3体を捌ききっていた。なら私の取る行動は。
「高評価を狙うならこうですわ。」
背部武装のミサイルをレーダで感知した1番前の敵に向けて発射する。これは当たらなくてもいい、相手のスピードを落とさせれば目的は果たせる。
そのまま私はミサイルの爆発地点に向かって跳躍する。抜剣し、直撃は避けたものの完全に勢いを殺された犬型の魔物に私は剣を突き立てる。
「1つ!まだまだこれからでしてよ。」
剣を引き抜き、左右から挟撃してくる魔物に対応しようとするが、反応しきれずミサイルポッドを破壊されてしまう。
「あぁっ!?」
反撃とばかりに反対側の背部武装のキャノン砲を発射するが回避されてしまう。着地地点に向けて左手のアサルトライフルを連射する。何発かは命中するが致命傷には至らない。そうこうしている間にもう1体に剣ごと右手を食いちぎられてしまった。
「しゃらくさいですわ!」
再びキャノン砲で反撃、今度は直撃して1体が沈黙する。最後にその隙を狙って飛び込んできた魔物の口にアサルトライフルをカウンター気味に差し込んで
「チェックメイトですわ。」
トリガーを引く、流石の魔物も中から破裂し、中身をぶちまけた。モザイク処理などないので妙に生々しい。
「これで終わりですわね。」
そう言った瞬間、背後からの攻撃で胴体が破壊され撃墜判定を下される。
「はへ?」
最初に突き刺した魔物が倒し切れていなかったらしく、私は間抜けな声を上げながらリザルト画面を見ていた。
ー「くーやーしーいーでーすーわー!」
「……油断大敵。」
よしよしとアリアに慰められる。私は不満げな顔でリプレイを見返す。
「確かに差し込みは甘かったようですわね……。いやでもこれなら撃破判定くれてもいいんじゃないですの!?」
私だけがクリアできなかったことに、若干泣きそうになりながら最後の場面を見返す。
「ちゃんと警戒してたらこれも回避できたかなぁ……。」
「そもそも、最初の時点できっちりとどめを刺せばよかったのですよ。ハイスコアを狙って色気を出すから取り逃しちゃったわけですし。」
「ぐぬっ。」
ごもっともな意見に反論できず私はうなだれた。
「まぁでも、お嬢様は今のままじゃ訓練してもドライスフレームには乗れないわけで。」
「はぁ……そうなのよねぇ。」
「……もっとご飯食べる?それと筋トレ?」
「い……いっそこのシミュレータで動かせたらいいのに。」
アークがぼそっと言った一言を私は聞き逃さなかった。
「そうか!その手があったわ!おやっさーーん!」
ひらめいた私はおやっさんのもとへ向かうのだった。




