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第12話 嵐の前の……

前回のあらすじ

油 断 大 敵

―早いもので私が今の私になって、1年が過ぎようとしていた。魔力を上げる訓練はずっと続けているが、DからCに上がったあたりで少し問題が発生した。魔石の容量が足りなくなってきたのだ。これについては別の解決方法で対応したが、今は割愛とする。……パワー?まだ計測不可ですが?


「この領地での……お披露目会……ですって

……?」


王宮から派遣された講師の先生が王宮からの伝言を伝えてきた。

そう、この1年の間でこれと言った問題が発生しなかったため私は正式に第4王子の婚約者として発表されてしまったのである。

つまりこれは私の公的なお披露目の機会であり、最初の王弟妃候補としての仕事と言うことになる。まぁ婚約者としてバックの実家の力をアピールしておくというのは分かる。


「面倒くさいので辞退……は無理ですわよねぇ。」


「お嬢様……。」


隣に控えるアリアがため息をつく。分かってる、言っただけだって。


「と言うか正気ですの?」


外を見ると忙しなく人々が動いている。今日も魔の森に討伐へ向かう部隊達だ。整備と補給の関係で7部隊が日替わりで魔物を間引いている。


「ここが魔物の発生点でいつ何が起こるか分からないって理解しているのかしら……。」


「それを含めての力の誇示でしょう。後ろ盾として武力というのは分かりやすいですから。」


確かに我が家は国内でも最大クラスの軍を持っている。

ちょっとやそっとじゃ危険なことは起こらないだろう。……けど。


「念には念を入れておきましょうか。」


「?……さて、本日のレッスンを始めましょうか。披露会に向けておさらいする事は山程ありますからね。」



―「おやっさん。仕上がりは上々かしら?」


レッスンの後、いつもの様に格納庫に顔を出した私は、ここ半年おやっさんと開発を続けていたある物の仕上げに取り掛かった。


「取り敢えず形にはなっているな。だがよぉ嬢ちゃん、そこまで急がなくてもいいんじゃないか?」


アリスを先に向かわせておやっさんに言伝していたので、準備は整えてくれていたがそれでも納得はしてないようだった。


「恐らく、これが必要になると思いますの。さぁ、早く始めてくださいませ。」


そう言うと私は用意されていた専用の椅子に座った。


「いや、そんな状況になられても困るんだが……。」


不本意そうな顔をしながら、おやっさんも渋々と作業に取り掛かった。



―「席の確認よし。食材の手配よし。アナタ!当日の警備のシフトの確認は終わりましたか?」


そのころ、執務室では両親も準備を進めていた。


「あぁ、待機中の2部隊を回す。配置も問題ない。」


「メイナードも休みをとって帰ってくると言っていたし、そっちの服も用意しておかないといけないわね。」


妹の晴れ舞台にシスコンの兄が帰ってこないわけがないので、合わせて衣装を用意する。

幸いな事に魔物素材の売上で領内の財政は潤っているのでドレスやアクセサリーもここは奮発する所だ。

楽しそうな妻を見てオーヴェンも微笑んでいた。



―「お嬢様。こんな感じでどうですか?」


「ん……ん~~!バッチリでしてよ!!」


ドレッシング事件以降、ティナはちょくちょく厨房で料理長と試作を重ねていた。理由はティナがうっかり口を滑らせた


「たまには和食が食べたい……。」


と言う呟きを聞かれてしまったからなので仕方がない。

お米も調味料もドロップするから材料は在るのだが、料理は基本洋食に偏っている。料理スキルは便利だが一度完成品を知らないと生み出せないというところは妙にゲーム感が出ているなぁとティナは思った。


「炊き込みご飯、美味しいですわぁ~……。」


ドロップ品に頼っているとまず出てこない出汁の旨味を口いっぱいに噛み締めながらしみじみと言う。


「ピラフとはまた違った味わいで美味しいですね。」

「うわっうまっ。俺こっちのほうが好きかも。」

「具材いっぱいで食べ応えあるのもいいな。」


他の料理人も試食しては各々の感想を言い合っている。


「これ今度の披露会で出しましょうよ!」


「えっ…!?」


立食スタイルのパーティでドレス姿で炊き込みご飯を頬張る絵面を想像してしまい、ティナは思わず吹き出してしまった。


「炊き込みご飯に、煮物、スープは味噌汁で……。」


意外にありか?ティナがそう思い始めたところで


「奥様が既に材料は手配してるからなぁ。この規模のパーティだと今からじゃメニューの変更は難しい。流石に人数分振る舞うには足りんよ。」


料理長がストップをかけた。


「でもでも、お嬢様が考案した一品って話題としては十分だと思うのですよ。」


「うーん……。」


「お嬢様、良いアイデアありませんか?」


「これ、当日のメニューの予定っす。」


料理人の一人が差し出してきたメニュー表を見る。無難に洋食って感じだ、炊き込みご飯だと浮くなと……。


「あ、でもこれとこれを組み合わせれば……。えぇ、一品だけならいけるかもしれないわね。」


ペンを取りティナはレシピというよりイメージ図を描き始めた。


「なるほど、作ってみましょう。」


何となく作りたいものを理解した料理長が調理に取り掛かった。



ー「こちら、第三小隊。目標地点まで到着。道中の魔物は殲滅完了。」


「こちらHQ。了解、帰還を許可する。」


「第三小隊了解、交信終了。……よし、お前ら帰るぞ。」


「しかし隊長。今日はやけに魔物が多かったですね。」


「確かに、そしてやたら凶暴だった。中隊長には俺から報告しておく。警戒は怠るなよ。」


間引き部隊が引き返したそのさらに奥地で巨大な何かが蠢いていた。

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