第10話 メイドさんが来た
前回のあらすじ
魔力が低いなら鍛えればいいじゃない!……めっちゃ怒られた。
―「あーうー……。」
体をムクリと起こす。でも、頭が重い。
あの日から毎週末に魔力結晶に魔力を込めるようになった。すっからかんになるまで魔力を込めて気絶するように眠り翌朝を迎える。そして起きたときは今みたいに体がかなりダルく感じるのだ。
検証した感じ回復しきってない状態で毎日やるより、時間を空けてより多くの魔力を放出したほうが伸びはよいみたいだった。あと毎日気怠そうにしていたら危ないから格納庫をほっつき歩くなとおやっさんに怒られたし。ハンガーに並ぶ機体を見るのが私の楽しみなんですけど?
「とりあえず、もうしばらくお布団とお友達してましょう。」
二度寝だ二度寝。私は布団を再び被っ……。
「お嬢様、朝ですよ。旦那様達はもう、準備を終えて食堂に集まってます。」
そして速攻で布団を引っ剥がされる。あれ?私公爵令嬢よね?何か帰ってきた時のビクビクされてたあれが嘘みたいな扱いをされているような気がするのだけど……。
「はぁい……。」
お父様との約束で魔力を向上させる訓練はしてもいいが、生活に影響を与えるようなら直ちに禁止すると言われてしまっている。仕方がないので用意された水で顔を洗い、身支度を整えて私は部屋を出た。
―「おはようございます。お父様、お母様。」
「おはよう、ティナ。」
「おはよう。ちゃんと起きてきたようだな。」
お父様が私が無理をしていないかと様子を見ながら挨拶を返してくる。お母様はいつも通りのほほんとしている。
「さぁ、いただこうか。」
『いただきます。』
お兄様は基本学園の寮住まいになるので三人で食事を始める。
「ティナ、覚えているな?今日は……。」
「はい側仕えの子との顔合わせですわよね。」
朝食を食べながらお父様が予定を確認している。基本週末はレッスンがお休みなので私は格納庫に入り浸っているのだけど今日は違った。学園に通うようになった時、側近として一緒に通うことになる分家の子供が家へ引っ越してくる事になっているのだ。
「その、何だ……。昔に比べると心配は無いのだが……程々にな。」
「お父様?それ、どういうことですか?」
いやまぁ、我儘お嬢様だった時よりは大人しい自覚はあるけど、何で別で心配されてるのかしら?
―「失礼します。お嬢様、お客様が来られました。」
応接室で待っていたら、侍女が部屋に入ってきた。
「えぇ、入ってもらって。」
「失礼します。」
「し、失礼します……。」
「……。」
そして、3人の子供が入ってきた……3人?確かお父様からは2人と聞いていたのだけど。
「始めまして、私はアールティーナ・ヴェルクハイムですわ。」
「私はアリス・ヴァレンタインです。よろしくお願いします、お嬢様。」
「……私はアリア・ヴァレンタインです。よろしくお願いします……。」
まず、メイド服を着ていた2人が挨拶をしてきた。どうやら双子のようだアリスは少し気が強そうな顔立ちで茶色い髪の右側に青いリボンでサイドテールを結んでいる。反対にアリアは少し気弱そうで左側に赤いリボンでサイドテールを結んでいる。いやベタベタだな、流石異世界。
「で?貴方は?」
私はイレギュラーな3人目……2人のメイドの後ろに隠れている男の子に声をかける。
「……です。」
声ちっちゃ!?
「……ほら、アーク?」
アリアが背中をそっと押し出す。アークと呼ばれた少年はもう一度挨拶し直してきた。
「あ……アーク・ヴァレンタイン……です。」
「えーっと、話では2人って聞いていたのだけど?」
アリスの方を向いて私は疑問を問いかけた。
「申し訳ありません、出発前にこの子が離れば離れになるのは嫌だと泣いてしまい……。1年後にはこちらに来て護衛の訓練を始める事になるのでご当主様にお願いをして予定を早めて頂きました。」
え?この子私の護衛になるの?不安しかないのだけど……。
「……大丈夫、アークもお嬢様も……私が守るからね。」
アリアがアークを撫でてなだめている。っていうかお父様の許可貰ってるって?私そんなの聞いてないんだけど?
「……。」
動揺を表に出さないようにしながらちらっと部屋の隅にいる侍女を見る。彼女は私の方をじっと見て反応をうかがっているようだった。多分、お父様に言われて私がどう動くか監視しているやつね。
「お嬢様?」
「いえ、何でもないわ。3人共これからよろしくね。」
不安はあるけどなるようになるでしょう。そう考えて私は微笑みかけた。
「ひっ……。」
……アークに慣れてもらうにはどれだけ時間がかかるだろうなぁ。
―「おやっさーん!」
「どうした嬢ちゃん、今日はえらい大所帯じゃねぇか。」
「今日から私の側仕えになった子たちですわ。まずは顔見せということで」
「あぁ、今日だったか。」
おやっさんが可哀想な子達を見るようにアリア達を見る。
「ドラモンドだ。ここの責任者をやっている。」
「……アリアです。」
「アリスです。」
「あ……アーク……です。」
「まぁ、何だこれから色々大変だと思うが頑張れよ。」
「何か含みを感じますわね。」
「自覚があるなら少しは自重しろ!このお転婆お嬢が。」
「まぁ、失礼ですわね。」
「ったく。用が終わったなら俺は行くぞ。嬢ちゃん達も危ねえから不用意にその辺の物に近付くなよ。おい!お前!こっち来て嬢ちゃん達の相手してやれ週末のいつものやるぞ。」
おやっさんは近くにいた整備員を呼んで自分の作業に戻っていった。
「お嬢様。準備できてますのでこちらへどうぞ。」
「ありがとう。ほら、貴女達も行くわよ。」
「……?」
―「ふんぬっ!」
パワー ―
魔力 E
魔力操作 F
数ヶ月の鍛錬のかいもあり魔力は少しづつ上がっているようだ。……相変わらず力が足りないけど。
「これ、私達もやっていいのですか?」
アリスが興味津々に聞いてくる。
「勿論よ。そのために連れてきたのだから。」
「じゃあ私から行かせてもらいます。えい!」
パワー G-
魔力 F
魔力操作 E-
「いいっすね。作業用なら動かせそうじゃないっすか。」
整備員がアリスを褒めている。作業用ドライスフレームというのは戦闘用より二回りほど小さい土木作業や機体整備に使われている物をさす。戦闘用が鎧なら作業用はワークローダーと言った所だろうか。
「……次は私。」
アリアも目を輝かせて測定している。
パワー D
魔力 F
魔力操作 E-
え?パワー高くない?それとももしかして……。
「あ、……お嬢様、もしかして気が付いちゃいました?」
パワー E
魔力 E
魔力操作 E
「アーク凄い!」
うしろの方で姉妹が盛り上がっている中、私は一つの事実に気が付いてしまった。
「え?……私の適正ってもしかして飛びぬけて低くない?」
「とびぬけては言い過ぎですよ、お嬢様。一応魔力は普通の貴族様相応にありますから。」
そういえばおやっさんもそんなこと言ってた気がする。
「まぁ、お嬢様がお気づきのようにパワー計測不可はめったにいないですけど。自分の知る範囲じゃお嬢様だけです。」
「やっぱりっ!」
上げて落とすなよ!
「有力貴族の子供って大体5歳ぐらいには訓練用のドライスフレームに乗れるらしいですから、お嬢様はちょっと頑張らないとですね。」
追い打ちかっ!と心の中で叫びながら、私はがくぅっと膝から崩れ落ちた。




