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「うあー……」
「まだ具合悪い?」
「少し頭が痛むかも。 ううん、少しじゃなくて結構痛いや」
「無理しないで部屋に戻ってて。 掃除してるから何かあったら呼んで? それとその後病院行こう?」
「うん」
夏風邪引いた。 ああ、夏休み始まったばかりなのに……
てかトイレ行きたい。
ボーッとする頭で立ち上がると立ちくらみがして壁に寄り掛かる。 これ結構熱あるな、体温計どこにあるのかわかんないけど。
揺れる視界で更に具合悪くなってきたがトイレは階段下にあるのですぐ近く。 けど階段の手前で少し腰を下ろしたつもりだった。
どれくらいそこに居たのかよくわからない。 つーか何しようとしてたんだっけ? 眠い……
「何してるの宮下君…… ? いつからここに?? ダメだよこんなとこで寝たら」
「え? ごめんトイレ、でも今寝る」
「ちがッ、 ひいいッ!!」
「枕? 温かい」
「なッ、なななッ…… 宮下君?」
なんか知らないが起きたらベッドだった。 トイレ! と思って起き上がると漏らしてない、良かった。 あれ?
俺のベッドの横には賄さんが丸くなってベッドに寄り掛かり寝ていた。
寝顔初めて見た…… いつもは結構キツめな表情してるけど寝顔は凄く穏やかだ。 長いまつ毛だなぁ、それに寝顔がこんなに可愛いなんて反則だろ。
それより俺トイレ行ったはずなのに尿意が収まってないってどういうことだ? 行った記憶があるのにしてない?
俺の布団が擦れる音で目を覚ましたのか隣から賄さんの「んん」という声が聴こえた。
「宮下君起きてたの? …… あたし寝ちゃってた」
「賄さん……」
あれ!? 賄さんが俺の部屋に…… しまった、何か見られちゃマズい物がないかと辺りを見回す。
「ごめん勝手に入って。 でも宮下君階段で寝ちゃってたからひとりにしない方がいいかなって思って」
「階段で寝てた? じゃあここまで賄さんが運んでくれたの?」
「大丈夫、何も変な物は見てないからッ」
少し慌てたように賄さんがベッドの足元の下辺りを見て言ったので俺は気になって見てみる。
そこにあったのは小学生の頃の卒業アルバム……
うわぁーッ! 賄さんがここに来てから小学生の頃の賄さんってどんなだっけ? と思って見てたやつじゃん。
変な物ではないけど変なタイミングで気付かれてしまった。 賄さん見てたなんて言うのは恥ずかしいから死んでも言えない。
「あ、ああ、これね。 俺結俺ってズボラだから最後に見てずっとここに置いてあったんだ」
「へぇ」
苦しい言い訳。
賄さんはその卒業アルバムを手に取りパラリとページをめくった。
「久しぶりに見た、卒業してから1回も見てなかったな」
「そうなの?」
「うん、別に学校楽しくないし行かなくていいなら行かないし。 なんで学校なんてあるんだろ? しーちゃんっていう友達が出来たくらいかな、学校に行ってて良かったなって思うこと」
賄さんはアルバムを見ながら言う。
「賄さんみたいに美人だと凄く潤いそうなのにね、学校生活」
「そんなの関係ないよ、見た目がどうとかじゃなくてあたしみたいに他人嫌いじゃなきゃもう少し楽しかったのかなって。 でも今だってそんなに積極的に話そうとかも思わないし」
でもどうしてだろう? いつもより賄さんの口数は多い気がするけど。
「でもこうして俺とも今は普通に話せてるじゃん?」
「だよね…… でも宮下君とは状況が状況だし関わりたくなくても関わらなきゃいけないみたいな状態だし」
言った瞬間俺の顔を見て賄さんは言ってて俺に悪いことを言ったと思って慌てて目をそらした。 関わりたくなくてもって聞いた時点でちょっとへこんだ。
「ごめん、こういうとこだよね。 遠ざけるようなこと言っちゃう、けど言葉の綾? 的なことだから。 今の宮下君ひとりにしておけないよ」
「わかってるよ、ちょっとトイレ行ってくるね」
床に足を付けるとまだグラッとする。
「ダメだよ」
「でもこのままじゃ漏らすし」
「そうじゃなくて。 あたしもついていくから」
「え?」
「今日の宮下君少し危なっかしい。 こんな時はひとりでしようとしないで? あたしも居るんだし」
優しい…… いつもより角がないというか言い聞かせ方も優しい。 俺のこと心配してくれてる?
「ごめん、結構体重掛かるかも」
「大丈夫、宮下君軽いし」
「それ女の子に言われると思わなかった」
なんか賄さんの弟にでもなった気分だ。
トイレまで連れてってもらい用を済ましてドアを開けると賄さんは階段下で待ってくれていた。
「午後になったら病院行こう」
「うん」
そうして賄さんはタクシーを手配して俺と病院に行った。 外での賄さんは周りを見てソワソワとしていた。 恐らくそれは同級生が居ないか心配してのことだろう。
俺と一緒に居るところ見られでもしたらクラスで噂になってしまうと恥ずかしい。
「お前らもしかして付き合ってんのー!?」とか余計なこと聞いて賄さんにも被害が及ぶから。
でも夏休みの病院には顔見知りもいなくて待ってる時間もそんなになくスムーズに進んだ。 帰りはまた賄さんがタクシーを呼んだ。 うちの親から何かあった時用のお金預かってて良かった。
「インフルじゃなくて良かったね」
「うん、それより賄さんに風邪移らないか少し心配だけど」
「それは大丈夫かも。 あたしこう見えても体は丈夫だから」
まぁ確かに小学生の時から俺が見たことある限りではムスッとしてる以外具合悪そうなところは見たことないけど。
「そっか。 でも賄さんが居てくれて本当に良かったよ、ありがとう」
「…… え?」
賄さんは目を丸くして驚いた顔をした。
「あ、や、うぅ、えっとその……」
「??」
「お、お粥、お粥作ってくるね」
そう言って俺の部屋から出て行った。




