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風呂から上がりリビングで賄さんに会うと気不味そうに「宮下君……」と意味深に喋った。
「えっと……」
物凄くソワソワしている。 それを見た俺は思った、ついに賄さんもこうして毎日俺の家に居て顔を合わせる必要がないと気付いたのだと。
なんとなくそんなことをいつか言われるかもと思っていた俺は仕方ないと思った。 だってそうじゃないか、何も一緒の家に暮らすことはない。 うちの親が賄さんの両親がいない分の面倒事も引き受けてくれるならここに居る必要ないわけで。
それにあの賄さんとほんの数日だけど一緒で少しは仲良くなったんじゃないか? ここに居る間限定だとしてもこんな美人と暮らしてたなんて一夏のいい思い出になったよな。
学校では絶対話し掛けてもこないだろうしたまに用事があって俺の家に来ることもあるだろ。
「賄さん、別にそんな考え込む必要ないよ。 賄さんだって慣れない環境で必死だったんだし俺も賄さんの気持ちになって考えてみたんだ、そしたら仕方ないなって。 でもいくらなんでも無茶だって思うところもあるし俺の気も効かなかったとこもあったから。 だから賄さんが戻りたかったら俺もうちの親に」
「何の話?」
「へ?」
いきなり何悟り顔で話しだしているだ? みたいな顔をされた。 そうじゃないの!?
「ごめん、どうぞ」
そして賄さんは俺の話を遮ってしまったと思って話していいよという顔をする。
何の話? と言われた時点で俺も何の話かわからなくなったから続けろと言われても勘違いだったら恥ずかしいので……
「あ、えっと…… なんか言うこと忘れちゃった。 賄さんこそどうぞ」
「…… あのね、あたし無神経でごめん」
「無神経??」
「家ではあたしもよくお洗濯しててパパの服とかも一緒に洗ったりしてたから…… 男の人の下着もパパの下着とかと変わんないかなって思いながらだったから」
「と…… いうことは?」
「宮下君凄く嫌がってたように見えたし。 あたしも宮下君の立場になって考えてみたらそうなのかなって考えて…… べ、別々に洗った方がいいんじゃないかなって。 けどそうすると手間が増えるしどうしようかなって」
「そんな…… こと?」
「え?」
「ううん!! なんでもない」
嫌がってはいないけど単に恥ずかしかっただけで賄さんが言いたかったのはさっきの洗濯物の件だったのか。 なんだよ俺、バカみたいじゃん。
あー、でも洗濯物は別々にした方がいいのかな? てかパパと同じってやっぱり俺はそんな感覚だったのかと賄さんに引かれてない安堵とちょっとした落胆が同時にきた。
でも俺が賄さんのパンツを手に持った時は微妙な表情になってたしいい気はしないだろうな。 ここは別々にした方が無難か? 洗濯したこともないけど。
「そうだなぁ。 賄さんも嫌だろうし別々の方がいいのかも」
「宮下君がそう思うならそうする」
「でさ、賄さん」
「何?」
「言っときながらあれだけど洗濯ってどうやるの?」
「…… え?」
賄さんから何言ってるのこいつ? みたいな顔をされた、仕方ないだろ〜、やったことないんだもん。 やってみようと思っただけでも少しは成長なんだよこれでも。
「お恥ずかしいことに普段は親がやってたから……」
「ふふ……」
これは呆れ笑い?
「ごめん、そうだよね。 男の子だしそうなのかも。 でも良かった」
「良かった?」
「なんか宮下君と話してると落ち着いててあたしって子供だなぁとかもっとしっかりしないとってやっぱり思ったりすることもあったからちょっと安心」
「俺が落ち着いてる?」
「あたしにはそう見えた。 あたしだけ駄々っ子みたいだなって」
「そんなことないよ、うちの親も居ないしその間俺もしっかりしないとって思って。 でも料理も出来ないし今もほら、洗濯も出来ないしで賄さんすっかり呆れてるのかと」
「ううん、じゃあ教えるからやってみる?」
「うん」
それから賄さんに柔軟剤とかの入れる分量とか服の畳み方を教わった、服の畳み方とかバスタオルの畳み方は俺からしてみたら結構面倒だったけどなんとか出来るようになった。
基本的には賄さんが担当するけど出来なかったらお願いと言われたので忘れないようにしなければ。 その場合賄さんの洗濯物はやっちゃってもいいのか? という疑問が浮かんだがまた変に気不味くなると嫌なので言わないでおいた。
「んしょ…… あれ?」
「ん、届かない? 貸して」
エアコンの近くの物干し竿に洗濯物を引っ掛けようとしたが届かない。 ここはいつも父さんが置いていた場所だった。 そんな俺を見て賄さんが俺から洗濯物を受け取る。 やっぱこういうの少し複雑。
「よいしょっと。 届いた」
「ありがと……」
「届かなかったらあたしに言ってね? って…… どうしたの?」
不服そうな俺を見て賄さんが不思議そうな顔をする。
「身長高くていいなって」
「あたし的にコンプレックスなんだけどこういう時は便利、それに」
「それに?」
「やっぱやめとく、怒りそうだし」
「怒るようなこと考えてた? やっぱ複雑だな」
「えへへ、ごめんね。 あッ」
賄さんはニコッと笑った後自分で少し驚いていた。 それは俺が驚いた顔をしていたのと自分が不意に俺に笑ったことに驚いていたことがすぐにわかった。 口元を隠すようにしていたから。
「だからそういう時はあたしに任せてくれていいから」
賄さんはサッと後ろを向いた。
自然に笑った時の賄さん凄く可愛かったな。 高野とかにはこういう笑顔見せてるんだろうな。
「ところでさっきは何の話か思い出した?」
「ん? さっき??」
「あたしの気持ちで考えたらどうとかって言ってたあれ」
「あ! い、いや、洗濯に集中してたからまったく思い出せてない」
言ったら言ったで「それもそうだよね」ってなるかもだし色々理屈つけてみてもそれがなんか嫌だ、そう思うのは賄さんの意思とか関係なく俺がここで賄さんに暮らして欲しいってなるのが恥ずかしくて今更そう察しられたら嫌だし。




