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東方銀訪傳  作者: くまっぽいあくま
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7-4

7-4


エイラクマルの装甲が爆ぜる。

遂に中まで貫通した。

急激に空気が漏れ出して奔流と化す。

『緊急事態!ブロックを封鎖します!』

コンピューターが防災シャッターを降ろした。

空気の流出が止む。

乗組員達はほぼ全員がブリッジ、ラウンジ、電送室、機関室へ集中しているため人的被害はなかった。

天使達はエイラクマル内部へ雪崩れ込み、防災シャッターへ押し寄せる。

ビームが照射され、防災シャッターが破られた。


『防災シャッターが破壊されました。近隣のシャッターを降ろします』

コンピューターが報告する。

「これじゃ、持たないぜ!」

魔理沙が慌てる。

「保安部及び交戦が予想されるクルーは気密服を着用せよ」

パープルが指示を出す。

『私らは空気なくても大丈夫!』

『空気ない所なんて何千年振りだろーな!』

萃香と勇儀がコミュニケーターで返事をする。

「気を付けろよ!」

ムラサは声をかけた。

『私を誰だと思ってんだよ!』

『全開で殴っていいとか幸せだなぁ!』

二人の鬼は喜び勇んでという感じである。

「バトルジャンキーめ」

ムラサは吐き捨てるが、喜び勇んでいるのは自身も似たようなものだ。

未知の領域でのトラブルや戦闘は怖い。しかし、それに立ち向かう何かがムラサの心の中にはあった。



萃香と勇儀は待ち構えていた。

シャッターが壊されて、空気が奔流となって襲いかかるが、鬼の力は風力に負けることはなかった。

天使達が群がって突撃してくる。

「おりゃっ!」

萃香が正面からパンチを叩き込む。

天使達は吹き飛び、後続の奴らを巻き添えにしてエイラクマルの壁へ叩きつけられた。

「ほいさっ!」

勇儀は腕を振り回して前腕、二の腕の内側を天使達に叩き付けた。

同じく天使達が吹き飛んだ。

この二撃で前線が崩れる。

天使達が若干怯んだようだった。

「錆び付いてないようだな」

勇儀が横目で見る。

「あたぼうよ!」

萃香はガッツポーズ。

「ん?」

「どうした?」

「コイツら、二手に分かれてないか?」

勇儀が睨み付けるように天使達の奥の方を見る。

敵の動き方でピンと来たのだった。

「向こう側か…」

萃香が通信機をタッチする。

「保安部よりブリッジへ。侵入した天使達は二手に分かれているようだ。こちらは防いでいるが、別方向から重要ブロックへ到達する可能性がある」

『了解、対応する』

ムラサが返事をする。

「さて、お前らは逃がさないからな!」

「ヒャッハー!新鮮な殴っていい相手だぜぇっ!」

萃香と勇儀は再び天使達に向き直った。



天使達がシャッターを壊す度に空気が流出し、凄まじい風を起こすので、隊員達は下手に近寄れなかった。

一旦、空気が流出しきってしまえば、気密服を着用すれば行動可能だ。

隊員達は全員、人間だ。

真空では活動できない。

気密服がなければひとたまりも無い。

隊員達は、既に空気のないブロックへ割り込んで、天使達の勢いを分断する作戦を思い付いた。

空気のないブロックの上方の通修理用通路から、非常口を通って侵入する計画だ。

気密服を着用し、修理用通路をシャッターで閉じて、空気を抜く。

空気がなくなったら非常口を開けて、突入する。

気密服のせいで修理用通路を通るのに一苦労だったが、隊員達は何とか目的の場所まで移動した。

非常口はバルブハンドルで閉じられている。

バルブハンドルを回して扉を開けた。


「いくぞ!」

先頭の隊員が言って飛び降りる。

天使達はそちらを見た。

非常口から顔を覗かせた隊員がパルスガンを撃つ。

降りた隊員もパルスガンを撃つ。

天使達が倒れる。

その隙に後続の隊員達が降りてきた。

パルスガンを撃ちまくり周囲の天使達を片付けてしまった。


突入した天使達は、100体程度の数しかいなかった。

二手に分かれたせいで50体程度に減り、また鬼さん達とは反対側は留めるものがなかったので、戦線が伸びて手薄になったのだった。

少数の敵集団を各個撃破する形になる。


一回目の突入の失敗を察した天使達は、すぐに新たな方法を試みた。

魔方陣を形成し、天使を呼び出す。

呼び出された天使は異形だった。

巨大な円筒型の体に六枚の翼、イカやタコを思わせる触腕を持っている。

頭の部分がぱっくりと開いた。

胴体は空洞になっている。

そこへ天使達が入り込んだ。

ぎゅうぎゅう詰めに200体は入っただろうか、頭の入り口を閉めると、


ギューン!


高速でエイラクマルへ突っ込んでゆく。

もちろん、反重力シールドは周波数を合わせてすり抜けている。


ガーン!


と金属音が響き、触腕がエイラクマルへ突き刺さる。

触腕の根元まで突き刺さり、そこで異形天使は触腕を開いた。

エイラクマルの内壁へ、ぴったりと触腕を張り付かせる。


べっ。


そして、口の所から詰め込まれた天使達が吐き出された。

船内への侵入に成功である。

異形天使は続々と召喚され、エイラクマルへ突き刺さり、天使達を次々に船内へ送り込む。


『警告!敵が船内に侵入しています!』

コンピューターが警告を発した。

「なんだ、あれは!?」

モニターに映る異形天使を見て、ムラサが叫んだ。

「あれも天使よ」

永琳が言う。

「上位天使が人形をしてない事はままあるな」

魔理沙が説明する。

「保安部!」

『ダメだ、数が多過ぎて食い止められない!』

萃香が通信機で返事する。

『すまん、そっちに行った奴らはそっちでなんとかしてくれ』

勇儀も苦しげに言った。

「分かった、無茶するなよ!」

『それはこっちのセリフだ』

ムラサが言うと、萃香が返してくる。

『ブリッジ、こちらも抑えきれない!退却する!』

隊員の声がした。

先ほどまでは優勢だったのが、180度反転して劣勢に陥っている。


「手の空いてる者は白兵戦の準備を」

ムラサはブリッジを見回した。

「弾幕は使えないから通常弾だな」

魔理沙がミニ八卦炉を手にしている。

「マスパは撃つなよ?」

「撃たねーよ!」


魔理沙、永琳、輝夜、射命丸、パープル、イズマックが入り口付近にスタンバイする。

「ん?そういや、青娥と芳香は?」

「…そう言えば見ないわね」

永琳が訝しげに首を傾げる。

「あいつら、後でお仕置きだな」

ムラサは毒づいた。


(やられてなければいいが…)

(いや、簡単にやられるタマじゃないか)


『敵兵が接近しています』

コンピューターが報告。

入り口が空いて天使達がブリッジに入ってこようとする。

「撃て!」

パープルが言って、皆の攻撃が始まる。


『こちら機関部!敵が押し寄せてきたよ!』

通信機からニトリの声がした。

「食い止められそうか!?」

『ムリだよ、何百体いるか分かんないし!』

ムラサの問いかけに、テンパりかけながらニトリが答えた。

『って、うわ!?』

ニトリの悲鳴。

弾を撃つ音。

衝撃音。

「大丈夫か、ニトリ!?」

『……大丈夫だよ、青娥と芳香が助けてくれた』

「え、そ、そうか…」

ムラサはため息。


(よかった…)


『機関部は、もう持ちこたえられないわよ?』

青娥の声がした。

誰かに問いかけるかのような口振りだ。


「ジャンプコアがやられたら終わりだ」

イズマックが応戦しながら言った。

「我々はコイツらで手一杯で動けない。物量作戦には対抗できない。脱出すべきだ」

「…分かった、乗組員は全員脱出してくれ!」

ムラサは即断。

通信機で船内へ放送した。

「ハープ、シャトルを確保だ!」

パープルが指示をする。

『とっくにやってますよ、船長!』

ハープが答えた。

『我々だけでは長くは持ちません、早く来て下さい!』

「ブリッジには私が残ります、皆、早く逃げて下さい」

ムラサは言った。

「私は念縛霊ですから死にません」

「私も残る!」

パープルも言った。

船長としての責務である。

「…イズマック少佐」

ムラサはイズマックを見た。

「……」

イズマックは無表情。

そのまま、パープルの背後へ寄る。

「イズマック、なにを?!」


ガシッ。


精神ジャックが繰り出され、パープルが崩れ落ちた。

失神させたのだった。


「死ぬなよ」

「もう、死んでますよ」

ムラサは敬礼。

イズマックも敬礼を返した。



永琳が光の矢を放った。

光の筋が幾重にも飛び、天使達を撃ち抜いてゆく。

「今よ!」

「それー!」

隊員達はブリッジから飛び出した。

幸い天使達は機関部へ集中しているらしく、通路にいる奴らは疎らであった。

「急げ!」

「急げ!」

担架を担ぎながらアズマとストリングスがドタバタと走って行く。

担架にはパープルが横たわっている。

シャトル格納庫にはすぐに到着した。


ハープだけでなく、てゐと鈴仙と従業員の玉兎達、ニトリとモブカッパ達、青娥と芳香もいる。

「着いたー!」

「まだ戦い足りないなー」

萃香と勇儀もほぼ同時に着いた。

「揃ったな、順次シャトルに乗り込もう」

イズマックが指示をする。

皆、我先にとシャトルへ乗った。

一台では足りないので、何台にも分かれて乗り込む。

「全員いるか?」

『……あ、あれ?』

「どうした?」

『射命丸さんはいる?』

通信が入ってくる。

『こっちにはいない』

『いないな』

「なんだと!?」

イズマックは一瞬戸惑ったが、

「もう待てない、発進しよう」

『え!?』

「これは上官の命令だ」

イズマックは言った。

『了解』

力ない返事がして、シャトルは宇宙へ飛び出した。



機関部に押し寄せた天使達はビームを撃ち始めていた。

魔方陣を作り出して大きなビームを撃つのもいる。

ジャンプコアはたちまち破壊され、制御を失ったエネルギーが暴走を始める。

『ジャンプコアが爆発する恐れが……』

コンピューターが言い切る間もなく、ジャンプコアは爆発した。



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