7-4
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エイラクマルの装甲が爆ぜる。
遂に中まで貫通した。
急激に空気が漏れ出して奔流と化す。
『緊急事態!ブロックを封鎖します!』
コンピューターが防災シャッターを降ろした。
空気の流出が止む。
乗組員達はほぼ全員がブリッジ、ラウンジ、電送室、機関室へ集中しているため人的被害はなかった。
天使達はエイラクマル内部へ雪崩れ込み、防災シャッターへ押し寄せる。
ビームが照射され、防災シャッターが破られた。
『防災シャッターが破壊されました。近隣のシャッターを降ろします』
コンピューターが報告する。
「これじゃ、持たないぜ!」
魔理沙が慌てる。
「保安部及び交戦が予想されるクルーは気密服を着用せよ」
パープルが指示を出す。
『私らは空気なくても大丈夫!』
『空気ない所なんて何千年振りだろーな!』
萃香と勇儀がコミュニケーターで返事をする。
「気を付けろよ!」
ムラサは声をかけた。
『私を誰だと思ってんだよ!』
『全開で殴っていいとか幸せだなぁ!』
二人の鬼は喜び勇んでという感じである。
「バトルジャンキーめ」
ムラサは吐き捨てるが、喜び勇んでいるのは自身も似たようなものだ。
未知の領域でのトラブルや戦闘は怖い。しかし、それに立ち向かう何かがムラサの心の中にはあった。
*
萃香と勇儀は待ち構えていた。
シャッターが壊されて、空気が奔流となって襲いかかるが、鬼の力は風力に負けることはなかった。
天使達が群がって突撃してくる。
「おりゃっ!」
萃香が正面からパンチを叩き込む。
天使達は吹き飛び、後続の奴らを巻き添えにしてエイラクマルの壁へ叩きつけられた。
「ほいさっ!」
勇儀は腕を振り回して前腕、二の腕の内側を天使達に叩き付けた。
同じく天使達が吹き飛んだ。
この二撃で前線が崩れる。
天使達が若干怯んだようだった。
「錆び付いてないようだな」
勇儀が横目で見る。
「あたぼうよ!」
萃香はガッツポーズ。
「ん?」
「どうした?」
「コイツら、二手に分かれてないか?」
勇儀が睨み付けるように天使達の奥の方を見る。
敵の動き方でピンと来たのだった。
「向こう側か…」
萃香が通信機をタッチする。
「保安部よりブリッジへ。侵入した天使達は二手に分かれているようだ。こちらは防いでいるが、別方向から重要ブロックへ到達する可能性がある」
『了解、対応する』
ムラサが返事をする。
「さて、お前らは逃がさないからな!」
「ヒャッハー!新鮮な殴っていい相手だぜぇっ!」
萃香と勇儀は再び天使達に向き直った。
*
天使達がシャッターを壊す度に空気が流出し、凄まじい風を起こすので、隊員達は下手に近寄れなかった。
一旦、空気が流出しきってしまえば、気密服を着用すれば行動可能だ。
隊員達は全員、人間だ。
真空では活動できない。
気密服がなければひとたまりも無い。
隊員達は、既に空気のないブロックへ割り込んで、天使達の勢いを分断する作戦を思い付いた。
空気のないブロックの上方の通修理用通路から、非常口を通って侵入する計画だ。
気密服を着用し、修理用通路をシャッターで閉じて、空気を抜く。
空気がなくなったら非常口を開けて、突入する。
気密服のせいで修理用通路を通るのに一苦労だったが、隊員達は何とか目的の場所まで移動した。
非常口はバルブハンドルで閉じられている。
バルブハンドルを回して扉を開けた。
「いくぞ!」
先頭の隊員が言って飛び降りる。
天使達はそちらを見た。
非常口から顔を覗かせた隊員がパルスガンを撃つ。
降りた隊員もパルスガンを撃つ。
天使達が倒れる。
その隙に後続の隊員達が降りてきた。
パルスガンを撃ちまくり周囲の天使達を片付けてしまった。
突入した天使達は、100体程度の数しかいなかった。
二手に分かれたせいで50体程度に減り、また鬼さん達とは反対側は留めるものがなかったので、戦線が伸びて手薄になったのだった。
少数の敵集団を各個撃破する形になる。
一回目の突入の失敗を察した天使達は、すぐに新たな方法を試みた。
魔方陣を形成し、天使を呼び出す。
呼び出された天使は異形だった。
巨大な円筒型の体に六枚の翼、イカやタコを思わせる触腕を持っている。
頭の部分がぱっくりと開いた。
胴体は空洞になっている。
そこへ天使達が入り込んだ。
ぎゅうぎゅう詰めに200体は入っただろうか、頭の入り口を閉めると、
ギューン!
高速でエイラクマルへ突っ込んでゆく。
もちろん、反重力シールドは周波数を合わせてすり抜けている。
ガーン!
と金属音が響き、触腕がエイラクマルへ突き刺さる。
触腕の根元まで突き刺さり、そこで異形天使は触腕を開いた。
エイラクマルの内壁へ、ぴったりと触腕を張り付かせる。
べっ。
そして、口の所から詰め込まれた天使達が吐き出された。
船内への侵入に成功である。
異形天使は続々と召喚され、エイラクマルへ突き刺さり、天使達を次々に船内へ送り込む。
『警告!敵が船内に侵入しています!』
コンピューターが警告を発した。
「なんだ、あれは!?」
モニターに映る異形天使を見て、ムラサが叫んだ。
「あれも天使よ」
永琳が言う。
「上位天使が人形をしてない事はままあるな」
魔理沙が説明する。
「保安部!」
『ダメだ、数が多過ぎて食い止められない!』
萃香が通信機で返事する。
『すまん、そっちに行った奴らはそっちでなんとかしてくれ』
勇儀も苦しげに言った。
「分かった、無茶するなよ!」
『それはこっちのセリフだ』
ムラサが言うと、萃香が返してくる。
『ブリッジ、こちらも抑えきれない!退却する!』
隊員の声がした。
先ほどまでは優勢だったのが、180度反転して劣勢に陥っている。
「手の空いてる者は白兵戦の準備を」
ムラサはブリッジを見回した。
「弾幕は使えないから通常弾だな」
魔理沙がミニ八卦炉を手にしている。
「マスパは撃つなよ?」
「撃たねーよ!」
魔理沙、永琳、輝夜、射命丸、パープル、イズマックが入り口付近にスタンバイする。
「ん?そういや、青娥と芳香は?」
「…そう言えば見ないわね」
永琳が訝しげに首を傾げる。
「あいつら、後でお仕置きだな」
ムラサは毒づいた。
(やられてなければいいが…)
(いや、簡単にやられるタマじゃないか)
『敵兵が接近しています』
コンピューターが報告。
入り口が空いて天使達がブリッジに入ってこようとする。
「撃て!」
パープルが言って、皆の攻撃が始まる。
『こちら機関部!敵が押し寄せてきたよ!』
通信機からニトリの声がした。
「食い止められそうか!?」
『ムリだよ、何百体いるか分かんないし!』
ムラサの問いかけに、テンパりかけながらニトリが答えた。
『って、うわ!?』
ニトリの悲鳴。
弾を撃つ音。
衝撃音。
「大丈夫か、ニトリ!?」
『……大丈夫だよ、青娥と芳香が助けてくれた』
「え、そ、そうか…」
ムラサはため息。
(よかった…)
『機関部は、もう持ちこたえられないわよ?』
青娥の声がした。
誰かに問いかけるかのような口振りだ。
「ジャンプコアがやられたら終わりだ」
イズマックが応戦しながら言った。
「我々はコイツらで手一杯で動けない。物量作戦には対抗できない。脱出すべきだ」
「…分かった、乗組員は全員脱出してくれ!」
ムラサは即断。
通信機で船内へ放送した。
「ハープ、シャトルを確保だ!」
パープルが指示をする。
『とっくにやってますよ、船長!』
ハープが答えた。
『我々だけでは長くは持ちません、早く来て下さい!』
「ブリッジには私が残ります、皆、早く逃げて下さい」
ムラサは言った。
「私は念縛霊ですから死にません」
「私も残る!」
パープルも言った。
船長としての責務である。
「…イズマック少佐」
ムラサはイズマックを見た。
「……」
イズマックは無表情。
そのまま、パープルの背後へ寄る。
「イズマック、なにを?!」
ガシッ。
精神ジャックが繰り出され、パープルが崩れ落ちた。
失神させたのだった。
「死ぬなよ」
「もう、死んでますよ」
ムラサは敬礼。
イズマックも敬礼を返した。
*
永琳が光の矢を放った。
光の筋が幾重にも飛び、天使達を撃ち抜いてゆく。
「今よ!」
「それー!」
隊員達はブリッジから飛び出した。
幸い天使達は機関部へ集中しているらしく、通路にいる奴らは疎らであった。
「急げ!」
「急げ!」
担架を担ぎながらアズマとストリングスがドタバタと走って行く。
担架にはパープルが横たわっている。
シャトル格納庫にはすぐに到着した。
ハープだけでなく、てゐと鈴仙と従業員の玉兎達、ニトリとモブカッパ達、青娥と芳香もいる。
「着いたー!」
「まだ戦い足りないなー」
萃香と勇儀もほぼ同時に着いた。
「揃ったな、順次シャトルに乗り込もう」
イズマックが指示をする。
皆、我先にとシャトルへ乗った。
一台では足りないので、何台にも分かれて乗り込む。
「全員いるか?」
『……あ、あれ?』
「どうした?」
『射命丸さんはいる?』
通信が入ってくる。
『こっちにはいない』
『いないな』
「なんだと!?」
イズマックは一瞬戸惑ったが、
「もう待てない、発進しよう」
『え!?』
「これは上官の命令だ」
イズマックは言った。
『了解』
力ない返事がして、シャトルは宇宙へ飛び出した。
*
機関部に押し寄せた天使達はビームを撃ち始めていた。
魔方陣を作り出して大きなビームを撃つのもいる。
ジャンプコアはたちまち破壊され、制御を失ったエネルギーが暴走を始める。
『ジャンプコアが爆発する恐れが……』
コンピューターが言い切る間もなく、ジャンプコアは爆発した。




