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『エイラクマルが爆発しました』
コンピューターが報告した。
「……」
セドミックは無表情。
「生存者は?」
『電送波によるスキャンが不可能なため、生存者の有無は不明です』
(まずは基地が優先。次にエイラクマル)
セドミックは信奉する論理に従って優先事項を決めた。
「敵の残存兵力はどれくらいです?」
『最初の30%程度かと推測されます』
「増援が来ていたでしょう?」
『それらを加味して、12万程度と思われます』
「折角、地上から相手を押し返したのに、これではまた拮抗しますね」
『増援の宇宙船が4隻なので致し方ありません』
コンピューターは無慈悲にも答える。
「アンフィビア人から返事は?」
『まだ加勢について返事はありません』
「……」
セドミックは内心の動揺をひたすら押し留めている。
トライアイ人は感情を制御しなければならない。
論理だけがトライアイ人を救済する。
彼らの信仰だ。
グランドトライアイ率いるトライアイのインストラクターの手により精神融合を経て、トライアイ人はその体験を共有している。
最終的には論理が正しく種族を導く。
コンピューターやAIが論理で行動するように。
トライアイ人はそれを理想とする。
だが、セドミックは連盟に属してから、自然と論理とは別の行動原理を見いだしかけている。
エイラクマルのクルーのイズマックも、それは同じようであった。
その何かに突き動かされ、セドミックは行動せずにはいられなかった。
「コンピューター、フログ商会を呼び出しなさい」
『はい、フログ商会をコールします』
コンピューターは通信を試みる。
『お呼びですか、セドミック司令官殿』
数秒遅れて、タオがスクリーンに映る。
「何度も申し訳ないのですが、加勢について再度お願いしたいのです」
『それが我々も本国に話をしているのですが、許可が降りません』
タオは申し訳なさそうではあるが、キッパリと言った。
下手に希望を持たせるのは逆に残酷だからだろう。
「何とかお願いしたい」
セドミックは食い下がる。
『しかし、良い交換もなくエンジェルどもと戦うのは我が種族に災厄が降りかかる可能性が高いのです』
タオは頭を振った。
『論理を重んじるあなたならお分かりでしょう』
「……」
(確かに)
セドミックは内心思った。
説得材料がなく考えあぐねていると、タオがしゃべりだす。
『とにかく、今しばらくお待ちくだ……』
タオは言いかけて、
『え?本国から通信?』
急に視線を外す。
翻訳機が停止されたのか、タオが母国の言語でしゃべり出したように見えた。
話している相手はミンなのだろう、早回しのビデオを見ているような甲高い声が飛び交う。
『失礼しました』
タオがスクリーンに向き直った。
『本国より許可が降りました、これより加勢に馳せ参じます』
「……よろしくお頼みします」
セドミックは若干の間(動揺)を経て、会釈をした。
やはり無表情であった。
*
アンフィビア本国がフログ商会に加勢の許可を出したのは、本国政府首脳が龍祖のお告げを聞いたからてあった。
連盟でいう国会に当たる大会の中で、議員に当たる代表全員が白昼夢を見たのである。
夢の内容は何枚かの画像のようなイメージではあったが、
「我は龍祖、お前らに命を授ける、翼を持つヤツらを撃て」
というように解釈できた。
「龍祖だ!」
「龍祖が語りかけてきた!」
「ここ数百年は語りかけてくるなんてなかったのに!」
「どうする?」
「やるっきゃナイト」
「龍祖の命は常に正しい」
「翼と言えば悪名高いエンジェル族だ」
「ヤツらはミルキーウェイ・ギャラクシーを拠点にしていたな」
「あの辺境ギャラクシーか」
「あんなとこに誰かいたか?」
「フログ商会がおります」
「なら先発としてそいつらを向かわせろ」
「それから軍から割けるだけの数を出して討伐軍として派遣だ」
というようなことがあり、加勢の許可が降りたのだった。
「それにしても…」
代表の1人、党の総書記という肩書きのアンフィビア人はつぶやいた。
「龍祖があんな帽子を被っていたとはな、驚きだわい」
*
エイラクマルは爆発四散した。
残骸が無惨にも宇宙空間に漂っている。
比較的大きな残骸、ブリッジの一部。
ブリッジは船の中枢なので、他より頑丈に作られる場合が多い。
なので、損害が他より少なめであった。
とは言え、この有り様では大差ないのも確かだ。
ブリッジ残骸の床。
しゅみみん。
2つのリボンとそれらを結ぶ2つの線が現れる。
その中には無数の目がある不気味な空間が見えた。
スキマである。
「よっと」
スキマ空間から現れたのは射命丸だ。
ブリッジの残骸の床に降りたかと思うと、またスキマへ頭を差し入れる。
「よっこらセッ◯ス」
アホな事を言って、射命丸はスキマから何かを引きずり出した。
白い帽子、白い制服。
ムラサである。
「ムラサさん、しっかり」
射命丸はムラサの頬をピシャピシャッと叩いた。
「う…」
ムラサは呻いて身をよじる。
「よし、生きてる」
射命丸はほっと息をついた。
そして、またスキマへ頭を突っ込む。
「ええ、妖怪の山へ、よろしくお願いしますよ」
誰かに話しかける声。
射命丸がスキマからまた顔を出すと、今度は手に円筒型の大きな物体が抱えられていた。
核魚雷である。
「ムラサさん、おーきーてーくーだーさーいー」
射命丸は核魚雷を抱えたまま、ツイストのようなモンキーダンスのような変な動きをした。
「起きないと死にますよー、もう死んでるだろうけどねー」
「……う」
少しして、ムラサは目を開いた。
「ここは!?」
「ブリッジの残骸です」
「なにっ!?」
「ブリッジは他より頑丈に作られているだろうと思い、ここにスキマを作ってもらいました」
「スキマだって!?」
「はい、紫さんが視察団に入っていたのも、エイラクマルに来たのも、そういう目的のためです。ちなみに魔理沙さんと紫さんが話してた時、魔理沙さんと話してるように見せかけて実は紫さんは私とやり取りをしてました」
「はあー?!」
一斉にぶっちゃける射命丸に、ムラサは変な声を出す。
「あと、青娥さんと芳香さんに手伝って頂きまして、核魚雷を1つ拝借してます」
てへっ。
と悪戯っぽく言う射命丸。
「チッ、可愛くねーんだよ!」
「あ、酷い」
「てか、核魚雷とか危ないだろ!」
「天使どもの母船を叩くために核魚雷をぶちこみます」
「…んあ?」
ムラサは今度は言葉にならなかった。
「カラス天狗決死隊、カモーン!」
「おう!」
バサバサーッ。
と宇宙空間にま関わらず羽音を立ててスキマから飛び出してきたのは、妖怪の山の烏天狗達である。
その数、30人。
「あ、ムラサじゃん」
最後におっとり刀で出てきたのは、はたてだ。
「はたて、ムラサさんを」
「はいはい、分かったわよ」
「なんだよ、なんで面倒くさそうなんだよ!」
「暴れない、怖くないからねー」
はたては、ムラサを後ろから抱き抱えた。
「あ、こら、私にはそういう趣味は…」
ちょっと赤面するムラサに、
「アホな事言ってないで、おとなしくしてないと落ちるよ?」
はたてはバカにしたように言う。
「では、行きますよ!」
射命丸の号令で、
しゅばっ!
烏天空達は宇宙空間へ飛び出した。
天狗は天使と同じように星間飛行が可能である。
高速で音もなく飛び、天使達の間をすり抜けてゆく。
目指すは敵の旗船、スクエアシップ。
「GO! GO! GO!」
射命丸は先頭切って飛び、スクエアシップへ向けて降下した。
敵もその動きに気付いており、天使達が行く手を塞ごうとするが、
ヒュン!
すれ違いざまに弾が撃ち込まれ、天使達が爆発する。
烏天狗達が数瞬遅れて同じように弾を撃ち込みながら通り過ぎる。
ドン。
ドン。
爆発がいくつも起こり、天使達が爆発。
ムラサが外の世界のジェット機を知っていたら、それを連想しただろう。
が、驚くだけであった。
はたてに抱えられたまま、最後尾を着いていく。
*
『アヤリエル!?』
ワラキエルはスクリーンに映った射命丸を見て驚いた。
『生きていたのか・・・』
スクリーンには更に烏天狗達の姿も映っていた。
烏天狗に抱えられた白い制服の女も。
『ヤツらを倒せ!』
ワラキエルはすぐに下級天使達へ指令を出した。
*
スクエアシップは異常に大きかった。
その姿は聖書に出てくるノアの箱船を思い起こさせただろう。
もちろん、ムラサにはその知識はなかったが。
射命丸はスクエアシップに向かって下降し、甲板に沿って飛行した。
入り口は大きな両開きのドア。
射命丸は弾を発射してドアを破壊した。
そのまま入り口へ突っ込んでいく。
一切の躊躇がない。
どうやら、スクエアシップの構造を熟知しているようだ。
「スピードを少し落としますよ」
射命丸は言って、飛行スピードを落とした。
かなり速い浮遊になる。
「FC板マ○ロスのガ○ォーク形態みたいね」
はたてが訳の分らない事を言う。
「なんだよ、それ?」
「うっそ、まさか、あの不朽の名作を知らないの?」
「知るか」
ムラサはそっぽを向く。
昔の人間で、しかも念縛霊を止めてからは仏道だけに邁進してきたので、この手の知識量が絶対的に欠けている。
スクエアシップの内部は広い通路がいくつもあったが、射命丸はやはり迷い無く通路を選んでいる。
「心臓部か…」
ムラサはエイラクマルのワープコアを思い出す。
「ええ、これを叩き込んでやります!」
射命丸は抱きかかえた核魚雷を見やる。
(しかし、コイツ、力あるなぁ・・・)
ムラサは思った。
「いや、でも、それって…」
ムラサは口籠もる。
(…玉砕するってことじゃないか)
「これは私の、私達の、宿命です」
射命丸は言った。
誇らしげでもあり、悲しげでもある。
「エンジェルどもを引き寄せる原因の一端は私達にあります。
私達はヤツらとは敵対していますから。
私達がヤツらを倒さなければ幻想郷に平和は訪れません。
いや、私達にはその義務があります。
だから、私は、
エイラクマルに乗り込み、
紫さんと裏で画策し、
ワラキエルを油断させ、
乾坤一擲の一撃をもって天使どもを葬り去る、
葬り去らねばならないのです!」
「…あんたらだけで背負い込むなよ」
ムラサはつぶやいた。
「え?」
「私も幻想郷の一員だ。気持ちはあんた達と同じだ」
「ムラサさん…」
射命丸はちょっと感じ入ったようだった。
*
天使達が増員されたようだった。
通路の奥からワラワラと現れ、天狗達に立ちはだかる。
「ここは我らに任せて、文殿は先へ!」
「分りました、ご武運を!」
烏天狗決死隊の面々は天使達へ突撃し、食い止める。
射命丸はその隙に、天使達の間をすり抜けて先へ進む。
はたても同じようにすり抜けてゆく。
すぐにスクエアシップの心臓部、宇宙船でいうところのジャンプコアのある場所へ着いた。
見たことのない機械があり、まばゆい光が中央に集まっている。
「これです!」
射命丸はスピードを上げた。
これに核魚雷を落とせば良い。
『止めろ、アヤリエル!』
ワラキエルの声がした。
宇宙船でいう船内放送のようなものらしい。
「うるさい!自分の運命を受け入れろ!」
射命丸は叫んで、核魚雷を投下した。
カッ。
光の洪水。
そうとしか言いようのない光景。
ムラサの感覚が、すーっと遅く、緩やかになってゆく。
集中力のせいなのかもしれない。
光がすべてを飲み込む。
『くそぅっ!なぜなんだ!?なぜぇっ!?』
ワラキエルの絶叫が耳に入ってくる。
(死ぬのか。今度こそ)
ムラサは思った。
実感がない。
光に飲み込まれた。
スクエアシップは爆発した。
*
突然、天使達の動きが止まった。
「…な、なんだ!?」
ニュージャージー船長のアサツキは困惑した。
今まさに交戦中であった敵が、急に動きを止めたのだ。
(なんかの罠か?)
訝しんでも不思議はない。
『アサツキ殿』
フログ商会船から、タオが通信をしてくる。
『どうやら敵の母船が破壊されたようです』
フログ商会の探知機は連盟のそれより高性能らしかった。
『恐らく、エイラクマルの誰かがやったのでは?』
「まさか、生き残ったとしてもシャトルやポッドで脱出してるはず…」
アサツキはつぶやくように言った。
「攻撃に転じるなんて…」
『それはそれとして、生存者を救出に行った方が良いのでは?』
「そ、そうだな」
アサツキはうなずく。
「まあ、先にコイツらを倒してからね!全船、今の内に敵を殲滅するよ!」
『了解』
『任せてください』
『分りました』
『分りましたぞ、アサツキ殿』
それぞれが返事をかえす。
動かなくなった天使達など、飛ばない鳥に等しい。
フログ商会船を加えた5隻の宇宙船はものの数分で、敵を殲滅した。
*
河城工業、月の都工場。
「一応できましたが、兵装が一切ありませんよ?」
「動けばいいのよ」
紫はパタパタと扇子をあおいだ。
「攻撃は自分達でやるから」
「はあ、さいですか・・・」
カッパは腑に落ちないって顔であるが、クライアントが言うのだからそれで良いと思い直したようだ。
「ではこちらにサインをお願いします」
「おk、おk」
紫はサラサラとペンを走らせる。
「じゃ、乗組員を呼んでくるから、操縦の仕方をおせーてやってね」
「いいですけど、なにその泥縄式・・・?」
カッパはジト目でパタパタと走り去る妖怪の賢者を見た。
*
「……」
ムラサは意識を取り戻した。
生き残ったらしい。
全身が痛む。
霊体でも痛みはあるようだ。
「どうなったんだ?」
ムラサは周囲を見回す。
スクエアシップの残骸と思われるデブリが、宇宙空間にこれでもかってくらい漂っている。
その1つにぶつかったらしい。
衝撃で意識が戻ったのかもしれない。
まだ物質化したままだ。
腕のお守りを見ると黒く焦げていた。
「また霊夢にもらわなきゃな…」
言ってから、ムラサは苦笑する。
帰る術などないのだ。
天狗や天使のように星間飛行能力を持たないムラサは、宇宙をゆっくり飛行するくらいしかできない。
地球や月まで戻るのに何百年かかるか分からない。
「考えるのを止めるしかなくなるかもな…」
小傘や響子やぬえが読んでいた漫画の一場面を思い出した。
ふと、気配を感じて、そちらを向くと、射命丸とはたてが漂っているのが見えた。
2人とも意識はなさそうだ。
「せいっ!」
ムラサは思う間もなく飛んだ。
宇宙空間だと重力がかからないので、だいぶ感覚が異なる。
思うように飛べない。
『どこへいく!?』
唐突に現れたのはワラキエルである。
『初めまして、こんにちは、死ね!』
ワラキエルは右手に持ったソードを振るった。
左手には盾を構えている。
「クソ!」
ムラサはアンカーを出して、一撃を防いだ。
だが、その力を受けて進行方向のベクトルが変わってしまう。
このままでは無限に広がる宇宙空間へと旅立ってしまいかねない。
『フフフ、下等生物にふさわしい無様さだな!』
「チクショー!」
ムラサはなんとか体勢を立て直す。
ダメージで体が動かなくなってきているのが分かる。
『フハハハハ、じゃあもう一回、死ね!』
「うるせー、このォッ!」
ムラサは反応が鈍い。受けが間に合わない。
(ああ、これで本当に終わりか…)
諦めかけた時だ。
「調子に乗らないでくれますか、ワラキエル」
ワラキエルの前に誰かが立ちはだかった。
ソードの一撃を受ける。
射命丸だ。
どこからか取り出したのか、太刀を手にしている。
「射命丸、無事だったか」
ムラサはちょっとだけ安心した。
『ふん、そのボロボロの身体で何ができる?』
ワラキエルは鼻で笑った。
ワラキエルの言うとおり、射命丸はダメージを受けていて起き上がるのもやっとという感じである。
『それ!』
ワラキエルは距離を詰め、ソードを振るった。
射命丸は太刀で受けた。
受けたが、そこから反撃する力は残っていないようだ。
身体が崩れていて、吹っ飛ばされる。
『どうした、それだけか?』
ワラキエルは更に詰め寄って盾で体当たりをする。
シールド・アタックというヤツだ。
「ぐはっ…!」
射命丸は後方へ吹き飛ばされ、そのまま動かなくなる。
すーっと宇宙を漂い始めた。
『あー、なんとも張り合いのない』
ワラキエルは拍子抜けという表情をした。
『もう1匹も動けないようだな』
はたては微動だしない。
ゆっくりと宇宙を漂っているだけである。
『じゃあ、お前達、コイツらを倒していいぞ』
ワラキエルは視線を外して肩をすくめる。
爆発が届かない距離にいた天使達が、ワラワラと駆けつけてくる。
天使単体でもワープができるようだった。
「これでホントに終わりか…」
ムラサの脳裏に絶望の二文字が浮かんだ。
その時だった。
ピカッ
遠くの方で何かが光った。
『ん、なんだ?』
ワラキエルが目聡くそれを見る。
光は最初は一つの点だったが、たちまち大きな物体へと形を変える。
ワープ航法で近づいてくる物体だった。
『なにっ!? まだ動ける船があったのか!?』
ワラキエルは驚いていた。
ムラサの目にもそれが見えた。
それは、寺に姿を変えたはずのもの。
ムラサがずっと動かしていた船。
(…いや、そんなはずはない)
ムラサは否定した。
(だいたい、ジャンプ航法なんて機能はなかった)
船はやがてジャンプから脱し、その姿を見せた。
「セイレン船…」
ムラサは思わずつぶやいた。
しゅみみん。
電送だ。
次の瞬間、5人の宇宙服を着た人物がムラサの周囲に電送されてくる。
そして全員弾幕を放ち、天使達を倒して行く。
『ムラサ!』
通信機を介して声がする。
「聖?!」
ムラサが驚いていると、宇宙服姿の5人はムラサの前まで飛んできた。
聖、一輪、寅丸、ナズーリン、ぬえの5人だ。
『ムラサ!良かった!生きてたのね!』
聖がムラサを抱き締める。
「聖…」
ムラサは決まり悪い感じである。
『悪運が強いな』
一輪が笑いかけてくる。
「ま、まあね」
ムラサも力なく笑った。
『電送室、天狗達を回収してくれ』
ナズーリンが言った。
その途端、射命丸とはたてが電送されて消える。
「電送って妨害されてたんじゃ…」
『多分、敵の母船にジャミング装置が搭載されてたのよ。母船が壊れたから妨害波がなくなったみたいね』
誰か分らないが、船内にいる乗組員らしき者から通信が入る。
『カッパ達ですよ』
寅丸が言った。
『私達には、その…操縦なんてのは分らなくて…』
『あー、ねぇ、結局、カッパ達に運用してもらってんだ』
ぬえがその先を続ける。
『クソッ、そんな船を隠しておくとか卑怯だぞ!』
ワラキエルがブンブン手を振って怒った。
妙なキレ方をしている。
「うるせぇ、お前らも火星に伏兵置いといたじゃないか、それと同じだよ」
ムラサが負けじと言い返す。
『奥の手は最後まで残しておくもんだ』
ナズーリンが言った。
『黙れ!てか死ね!』
キレたワラキエルは、距離を詰めてソードを振るった。
『おっと!』
寅丸が戟でそれを弾き飛ばす。
「隙だらけだね」
ナズーリンがダウジング棒を打ち込んだ。
『くっ!』
ワラキエルは辛うじて盾で受けるが、
「ほいさぁっ!」
ぬえが三又の槍を繰り出した。
『チッ』
ワラキエルは防戦一方になり、堪らず距離を取る。
そのまま、くるりと振り向いて逃げ出した。
「逃げるのか!」
ムラサが挑発したが、
『多勢に無勢、逃げるが勝ちさ』
ワラキエルはうそぶいた。




