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東方銀訪傳  作者: くまっぽいあくま
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7-2

7-2


エイラクマルの乗組員は戦う準備を整えている。

予想される範囲で必要と思われる事をこなしていた。


船長のパープルは、幻想郷視察団メンバーと話していた。

「相手はどんな戦法を用いてくると思いますか?」

「天使はトップダウンで統率される組織です。指揮官がいて下級天使達はその意のままに戦います」

永琳が言った。

「まるでハイバグですね」

「ハイバグ、確か虫型生命でしたね。アリやハチのように組織が1つの生き物として機能する、という意味では似ていますね」

「要するにどういうことだぜ?」

魔理沙が聞いた。

「死を恐れずに突っ込んでくる軍勢ということよ」

永琳は答える。

「一番面倒臭いタイプかぁ」

魔理沙は椅子に背中を預けて、ひっくり返りそうになる。

「おっと危ない」

「こちらにはパルス砲があるでしょ? それで一つずつ焼き払っていけばいいんじゃない?」

輝夜は楽観的だ。

「パルス砲は確かに連射可能ですが、それでも数で押されると漏れが出てきます。すぐに乱戦になるでしょう」

「撃ち漏らした部分が月の都へ向かうんじゃねーの?」

魔理沙が指摘する。

「月の都では防衛線を張ってます。月の都基地のシャトルを戦闘仕様に変更して迎撃し、また月の民と幻想郷の有志連合の弾幕で仕留めてゆきます」

パープルは布陣の構成を説明してゆく。


だが、本来なら連盟の宇宙船をもう何隻か揃えて空間を押さえたいところだ。

囲碁のように敵を囲んで制するのが効果的なのだが。

無い物ねだりをしても仕方がない。

パープルは思考を切り替える。


「船内に敵が入り込んだら?」

「保安部員として、スイカとユウギを配置しています。それを法術担当の青娥さんが援護します」

「芳香は青娥の護衛か」

「そうなりますね」

「とりあえず緒戦はこれで良さそうだ」

魔理沙はうなずく。

「問題は火星に現れたゲートね」

永琳が言った。

「これがある限り、敵の増援が来続けます」

「核魚雷を撃ち込めば?」

輝夜が嬉々として言う。

「あれ、凄いらしいじゃない。ドカーンって」

「そうですね。多分壊せると思います」

パープルは同意する。

核魚雷がどこまで通用するか正確なところはわからないが、破壊したい施設に最大の威力を撃ち込むのはセオリーとも言える。

「壊した後に、また新たにゲートが作られると思うか?」

魔理沙が疑問を露にする。

「…ゲートを発生させるのにかなりのエネルギーを使うはず。そもそも天使達は全方位に敵対していて色んな方面へ軍勢を派遣しているのよ。無限に増援を送ることは不可能よ」

「てことは、多少増援が来るだろうけど、それを凌げば済む訳だな」

「だけど、ゲートは出来るだけ早く叩くべきね。増援が来ないには越したことはないわよ」

「確かに」

永琳の説明に、魔理沙はうなずく。


エイラクマルが天使軍と対峙。

交戦する。

撃ち漏らした敵は月の都基地のシャトル、月の民&幻想郷の弾幕が迎撃する。

もし、敵がエイラクマルに侵入したら、保安部員のスイカとユウギを中心に応戦。青娥と芳香はその援護。


エイラクマルの課題は2つ。

1、ゲートの破壊

2、敵兵力の殲滅


連盟宇宙軍の増援は期待できない前提である。


「エイラクマルは火星にあるゲートを破壊するべきだけど、直行したら敵全軍と戦わなくてはならなくなる。だから、月と火星の中間くらいで迎え撃って、ある程度まで敵軍を引き付けてから火星へ向かうのが良いでしょう」

永琳は言った。

「それ、月の都へ敵が行くかもしれないってことだぜ?」

魔理沙が睨むように永琳を見る。

「じゃあ、エイラクマル1隻で全軍と戦って、更にゲートも破壊するつもりなの?」

「エイラクマルも月の都で迎え撃てばいい」

「それだとゲートから増援が来た場合に、為す術がなくなるわね」

「う、そ、そうか…」

魔理沙は口ごもる。

「エイラクマルと月の都の2つを標的にすることで、敵戦力を分散させるのよ」

「では、敵の戦力比率別に戦況を考えてみます」

イズマックがコンソールを操作した。


「まず、月:100、永:0の場合」

スクリーンに、天使10個、月1個、永1個というアイコンが表示される。

天使軍10個が全部、月に殺到している。

「この場合は、直ちにエイラクマルが後方から攻撃を仕掛けないと月が陥落すると思われます」

月のアイコンが赤く点滅する。

全滅したという意味らしい。


「次に、月:0、永:100」

スクリーンの天使10個が全部、永に殺到している。

「この場合は、エイラクマルへの大きなダメージが予想されます」

「孤軍奮闘ってやつだな」

魔理沙が感想を述べる。

「ゲートを破壊できなければ負けです」

イズマックが眉をつり上げる。

「リスクが高すぎるな」

パープルは頭を振った。


「月:80、永:20」

月に天使8個、永に天使2個。

「月の防衛はシャトルだけだったな…」

「武装するにしても、心もとないですね」


「月:60、永:40」

月に天使6個、永に天使4個。

「大分、マシになってきたかな?」

「多分、月の都は大ダメージでしょう」


「月:50、永:50」

月に天使5個、永に天使5個。

「月のダメージをそこそこまで押さえないといけないってことだな」

「これだとまだダメージが大きそうですね」


「月:40、永:60」

月に天使4個、永に天使6個。

「このパターンが最適じゃないのか?」

「月の都が持ちこたえられるギリギリのラインかも知れませんね」


「月:20、永:80」

月に天使2個、永に天使8個。

「エイラクマルがキツいが、まあ耐えられるところじゃないか?」

「ゲートを破壊できますかねぇ」


「月の都に40%、エイラクマルに60%というのが比率としては良さそうですね」

イズマックは無表情のままで言う。

「そこを目指したいですが、この辺は運次第といったところですね」

永琳はさらっと流した。


「では、月と火星の中間辺りで敵を迎え撃ち、十分に敵を引き付けてから火星へ移動する。火星に着いたらゲートへ核魚雷を撃ち込んで破壊する。ゲートを破壊したら月へ戻り残りの敵を倒すという作戦で行こう」

パープルはセドミックへ報告し、直ちに月と火星の中間ぐらいの位置へ移動する。



「船長、正体不明の相手から通信です」

通信士が報告する。

「チャンネルを開け」

パープルは言った。


モニターに何者かが映った。

「射命丸!?」

ムラサは思わず叫ぶが、

「いや、似てるが髪や目の色が違う」

魔理沙が指摘した。

『私は神軍の指揮を任されている、中位三隊の1つ、階級6位のエクスシア(能天使)、ワラキエルである』

射命丸の色違いのような人物は名乗った。

『我が神の命により貴様ら下等生命と悪魔どもを征伐する』

「うわ、話通じない系のヤツだ…」

「天使軍がジャンプしてきます」

「当船は敵に包囲されたのじゃ」

コマチとフトが報告する。


モニターにおびただしい数の天使の船が映し出される。

船から天使達がワラワラと出てくる。

12体毎にユニットを組み始めたかと思うと、天使達から光の帯が射出された。


「…魔方陣!?」

魔理沙が叫ぶ。

魔方陣としか言いようのない光の図形から、エネルギーが発せられた。

ビーム砲だ。

次々と撃ち出される。


「ビームが来ます!」

コマチが報告した。

「反重力シールドを展開!」

ムラサが命令する。

「反重力シールドを展開します!」

ハープ(姉)がコンソールを操作した。

無数のビームが反重力シールドにぶつかり、エイラクマルが衝撃で揺れる。


「当船は相手の敵対行為を認め、これより交戦状態に移行する」

パープルが宣言した。

「ムラサ、攻撃開始だ」

「はい、船長! 砲手、パルス砲を撃て!」

ムラサは即座に命令を下した。

「了解!」

ハープ(姉)はパルス砲を発射した。

高出力のエネルギーが天使軍の正面へ撃ち込まれる。

船が何隻も爆発した。

だが、敵は100万の軍勢である。


「パルス砲を撃ち続けろ! コマチ、敵の正面へ突入!」

ムラサは言った。

「了解、敵正面へ突入します!」

コマチが手動操作でエイラクマルを動かした。

その間にもパルスレーザーが連射される。

天使や船が爆発四散してゆく。

敵軍はまったく怯まない。

連盟のヒューマノイドのような精神構造をしていないのだ。

アリやハチに近いという感想はその通りのようだ。


天使達はドッとエイラクマルへ押し寄せてきた。

次々に反重力シールドに突撃して爆散してゆく。

エイラクマルは敵陣を突破しようとするが、天使達が追いすがってきて逆に相手を引き連れているかのようにも見えた。


「コマチ、反転して再度敵陣に突入しろ!」

「はい、副長!」

コマチが操作する。

エイラクマルは急旋回して、再度敵陣へ向かっていく。

今のところ、エイラクマルが圧倒している。

が、戦は瞬殺でない以上は先が分らない。

楽観するのは禁物である。

月並みな表現だが、下駄を履くまで分らないのだ。


「ムラサ中尉、敵の様子が変だ」

イズマックが言った。

スクリーンには、エイラクマルから離れて移動する天使達が映し出されている。

「なんでしょう、あれ?」

「分らない。が、油断するな」

「了解」

ムラサはうなずく。


天使達は相変わらずエイラクマルへ突撃してくるが、その一方では陣形を変化させていた。

12体毎のユニットが魔方陣を維持したまま一斉に移動する。

魔方陣が12個ずつ集まって、更に大きな魔方陣を形成していた。


「あんなん、ありか!?」

魔理沙が唸った。

「反重力シールドにエネルギーを集めろ!」

「了解!」

ムラサが即座に命じ、ハープ(姉)が操作。


巨大魔方陣から、巨大ビームが放たれた。

大きな衝撃がエイラクマルを襲う。


「大砲並みの威力なんじゃないのか、あれ!?」

魔理沙の顔がさっと青冷める。

「マズイわね、もう一段階、来そうよ」

永琳が歯がみした。

「無尽蔵かよ、あいつらのエネルギー」

「天使の本質は光、エネルギーなのよ。尽きることのない無限の光…」

永琳はうわごとのようにつぶやいている。

「よし、火星に向かうぞ!」

ムラサは言った。

「ジャンプ1で移動!」

「火星へ向けてジャンプ1でドライブするのじゃ!」

フトがコンソールを操作した。


ジャンプ1は光速の1倍のスピードだ。

エイラクマルは地球と火星の中間地点にいた。

地球から火星までの距離は約2億3千万km。

中間地点から火星までは約1億1千5百万km。

1光秒は約2億9千9百万km。

エイラクマルは0.5秒で火星付近へ到達する。

実際にはタイムラグがあるが。


「ジャンプドライブ解除なのじゃ!」

「よし、そのまま火星へ着陸!」

ムラサは指示した。


天使と船は同じようにジャンプで追撃してきており、そのままエイラクマルを追って火星へ降下してゆく。

火星の大気は非常に薄い。

地球のように大気圏の摩擦熱で燃え尽きるようなことはない。

エイラクマルは天使をまとわりつかせたまま、火星へ降下。

ゲートのある場所へ向かう。


「コンピューター、当船に着いてきた敵の数は全体の何%だ?」

イズマックが聞いた。

『映像を元に算出していますが、おおよそ全体の60%ほどと推測できます』

コンピューターが答える。

「いい感じだ」

ムラサは単純に喜んだが、

「…なんだか出来すぎてるわね」

永琳は不審気である。

「そうですね、なにか罠があるのかもしれません」

イズマックはその意見に同意している。

「ここまで来たら、考えていても仕方ないですよ! 核魚雷を発射、目標ゲート!」

ムラサは予定通りに言った。

「了解、核魚雷を発射します」

ハープ(姉)が言うと、エイラクマルの前面部分から核魚雷が発射される。


ドゴアッ!!


爆発。

ゲートが消し飛んだ。


「よし!」

「やった!」

ムラサとハープ(姉)が歓声を上げる。


しかし、その瞬間、


ざー。


地表の砂の中から何かが現れる。

天使軍の船だ。

次々と砂中から出てくる。


『敵の船は2401隻です』

「1個師団の伏兵か…」

イズマックがつぶやいた。

「ムラサ、すぐに火星から離れるんだ!」

パープルが叫んだ。

「了解、火星から離脱!」

「火星から離脱します!」

コマチが操作をした。


エイラクマルは離脱しようとするが、船から無数の天使達が飛び出してきて、取り付いてきた。

天使軍の船は迷い無く特攻をかけてくる。

エイラクマルは交戦開始から休みなく攻撃を食らい続けている。

反重力シールドは無限ではない。


「反重力シールドに使用するエネルギーが不足してきています」

ハープ(姉)が報告した。

「もっと供給しろ!」

「反重力シールドにエネルギーを回すとパルス砲の威力が落ちる可能性が…」

「構わないからやれ!」

「了解!」

ハープ(姉)が言った時だ。


天使達の身体が虹のように色を変え始めた。

「シールドの周波数に同調させる気ね!」

永琳が言った。

「なにっ!?」

ムラサは驚きの表情を隠せない。

「ムラサ、保安部に連絡して防御を固めろ、それから手の空いている隊員を動員だ」

パープルは咄嗟に指示した。

「はい、保安部敵の侵入に備えろ、それから手の空いている隊員はすべて防御態勢、迎撃準備を!」

ムラサは通信機で船内放送する。


案の定、天使達は反重力シールドをすり抜けてきた。

エイラクマルの表面装甲に直接取り付き始める。


スタビライザーに殺到した。

推進装置を壊すつもりだ。

また、装甲にビームを集中して当てていく。

装甲にも薄い部分がある。

そこを抜かれたら侵入されてしまう。


「なんてヤツらだ!」

ムラサはやっと相手の恐ろしさを実感した。


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