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東方銀訪傳  作者: くまっぽいあくま
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魔理沙は亜空間放送を借りて、月の都へ連絡を入れた。

幻想郷視察団に状況を報告するためである。

『あら、魔理沙』

モニターに出たのは八雲紫であった。

幻想郷の賢者という二つ名を持つ彼女がまとめ役になるのは妥当なところだ。

従者の八雲藍がすぐ後ろに控えているのが見えた。

『何の用かしら?』

「何の用とか、ご挨拶だな」

魔理沙はふて腐れたように言って、

「こちらの状況を伝えようと思ってな」

『はい、聞きましょう』

「既に聞いてると思うが…」

魔理沙はかいつまんで説明した。

「…私らは引き続きエイラクマルに残って連盟に協力する」

『まあ、ほどほどにね』

「いや、私の話、聞いてなかったのか?」

『そうじゃないわよ。あなたを失ったら悲しむ人がいるでしょう?』

「……なんだよ、急に」

魔理沙は若干、怯んだ。

確かに、これだけ歳を重ねていれば大事な者の一人や二人いる。

『なんてね。骨は拾ってあげるから、思いっきりやんなさい』

「やめろよ、そういう冗談は!」

『じゃあねーん♪』

通信は一方的に切れた。

「ったく、相変わらず訳がわかんねーな」

魔理沙はフンとそっぽを向いた。



『船長、2時間以上経ちましたが、火星の石板の文字は更新されていません』

アズマが通信してくる。

「モニターへ映してくれ」

パープルが指示すると、

『了解』

モニターに短い文章が映し出された。


『天よ、聖徒たちよ、使徒たちよ、預言者たちよ』

『この都について大いに喜べ』

『神は、あなたがたのために、この都をさばかれるのである』


この“都”というのは月の都だろう。


「全クルー、持ち場につけ」

パープルは船内へアナウンスしていた。

「我々もブリッジへ移動しましょう」

そのままホールにいる全員に向かって言う。

「分かった」

魔理沙が代表して答える。



ブリッジへ移動したが、客を収容するスペースはないので、椅子を人数分運び込んだ。


『船長、石板付近に何かを感知しました。…ジャンプフィールド?いや、ゲートのようなものかも!?』

アズマが慌てふためて通信してくる。


モニターには、円形の亜空間フィールドが発生しているのが見えた。

その数は7つ。

7つのゲートに見える。


ぬっ


と、亜空間フィールドから何かが現れた。

白い体躯。

白い羽毛の生えた翼。

のっぺりとした顔。

そこには目も鼻も口もない。


大きさはほとんど人間と同じ。


「下級天使」

永琳がつぶやいた。


天使は7体集まって手を宙に掲げる。

更に大きな亜空間のゲートが出現した。


ゲートから大きな天使が現れる。

背丈は3メートルはあるだろうか。

そのゲートは大きな天使が出現した後、消えてなくなる。

維持するのが困難なのだろうか。

最初にできたゲートだけが残り続ける。


「ネフィリムまで」

永琳がまたつぶやく。


「船長、最初の小さい7つのゲートを見てください」

イズマックが声をかけた。

「また7体出てきたぞ」

パープルは眉を潜める。

「まさか、これを繰り返すんじゃ……?」

天使達はどんどんゲートを通って数が増えてくる。

7回目の7体が出てきて、デカい天使が7体になったところで、デカい天使達は宙に手を掲げた。

巨大なゲートが作り出され、今度は船のような見た目の物が現れた。

巨大ゲートはやはり船を吐き出した後、消えてなくなる。

白い船で、天使達と同じように翼が生えている。

天使達は飛翔し、この船の甲板へ乗り込む。

小さい天使が7体×7回で49体、大きな天使が7体、1隻あたり56体が乗り込んだ訳だ。

その姿は何処かしら虫を連想させた。


「ヤバい…」

魔理沙は思わずつぶやく。

「やつら、ネズミ算式に増えてゆくぜ」

「船が7隻集まって小隊になり、7小隊集まって中隊、7中隊集まって大隊、7大隊集まって師団になるわ」

永琳は眉を潜める。

「師団で約133万の天使がいる計算だな」

魔理沙は暗算している。

「最終的に何個師団になるんです?」

ムラサが聞いた。

「記録によれば、天使達の派遣軍は7個師団のようね」

永琳はため息混じりに答える。

「95万」

魔理沙はフンと鼻を鳴らした。

「どうやら絶望的だな、我が軍は…」

「奇襲をしかけて、できるだけ叩くべきよね」

輝夜がぼそりと言う。

「いえ、我々は相手の敵対行為を確認するまでは攻撃できません」

パープルが頭を振る。

「専守防衛ってヤツか…」

魔理沙は言外に何か匂わせたものの、口にはしなかった。

「連盟軍の規律では、火星へ行って警告する事しか認められないのです」

「相手が明らかに軍事行動をしているのに?」

珍しく青娥が発言した。

「…それでも我々は我々のルールを破る訳にはいきません」

パープルは頑固だった。


「セドミック司令官を呼び出せ」

「はい、船長」

通信士が亜空間放送を開く。

『セドミックです』

「相手は数を増していて、こちらは数で劣ります。増援を急ぐよう本部に伝えられませんか?」

『伝えてみます』

セドミックは無表情である。

『ですが、あまり期待しないでください』


つまり、死ねと言うことだ。

増援の宇宙船を召集するには時間がかかる。

その間に敵の攻撃が始まったら、軍本部は損害を最小に抑えるのを優先するだろうから、エイラクマルと月の都基地が深いダメージを受けた時点で放棄するはずだ。

外の世界で防衛線を作った方が効率が良いと考える。

エイラクマルが上手く立ち回って戦い続けるしかない。


「時間稼ぎをするしかないわね」

永琳が言った。

「しかし、どうやるのです?」

イズマックが永琳を見る。

「……」

永琳は答えない。

具体策が浮かばない。そんな顔をしていた。


(7へ続く)


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