80 待ち望んだスキル
まさかの方向音痴設定に驚いたけれど、考えてみればその理由もあり得なくは無いなぁと思った次第。
現実では様々な端末でマップは確認出来る時代だし、ゲームだってマップ表示があって当たり前だ。
迷子になるなんて経験をした事がある人なんて、ほとんどいないんじゃないかな?幼少期を除けば。
そしてそれは街中であればまだしも、外の草原や森の中となれば、多少土地勘があったり方向感覚に優れていたとしても魔物を警戒しつつ時には戦闘したりってなると、そりゃすぐに現在地なんて把握出来なくなるよなぁ。
自然の脅威は想像するよりもずっと厳しいんだろうね。
それはそうと、牧場での手伝いがひと段落して羊や牛達がお散歩から帰って来たので、一服休憩しつつ鑑定のお時間。一匹の漏れもなく見てやろうと鑑定を掛けていく私は、傍から見たら不審者そのものだっただろうけど、それを気にする環境でもなかったから良しとしよう。
なんせ主であるハワードさんが許してくれているし。・・・ちょっと生暖かい目なのかジト目なのか判断に困るけれども。
「そういえば、こちらでは牧羊犬は見かけませんね?というか、あんまりこの街自体で犬を見かけませんけど」
「ん?あー、この子達は従魔とはいえ元はモンスターだからな。ただの犬じゃ役不足なんだよ。全然ビビらねーし、何なら羊に追い返されちまうから。あとそうだな・・・小型犬ならお金持ちの家庭だと多少は飼ってるとこあるけど、鳴き声とか躾の問題であんまり人気は無いな?」
「そうなんですか・・・、私達の感覚だと猫派か犬派で人気を二分するほど主流なんですけどね?こちらでは猫派が圧倒的って事ですかね?」
「ん~・・・?どうなんだろうな?猫にしたって飼うっていうよりは勝手に存在していて、たまにネズミを処理してくれるから上手く使ってるって感覚じゃねーか?どちらにせよ動物を飼うのは貴族か金のある商人とかだろ。犬に関しては・・・ほとんどが狼に負けてんじゃねーか?あんま外でも見かけないらしいぞ?特に近くの森の中は狼型モンスターの縄張りだしよ」
「え、まさかの犬種族全滅危機・・・?」
犬好きさんには耐えられない話なのでは・・・。
なんだ?犬に関しては現実で愛でろって事かな?それにしたって存在を消さなくても・・・。
運営さんは圧倒的に猫派なの?
「いやいや、狼に統率されてるって可能性も十分あるからな?あと地域性もあるし、縄張り的な問題だけかもだし」
「あぁ・・・なるほど。それならまだ・・・。っていうか、話戻りますけど、街中によくいる猫達はほとんど野良猫って事ですか?結構住宅街でも見かけたから、てっきり飼い猫なのかと・・・」
「あぁ、そうだと思うぞ?猫ってのはエサが手に入りやすい所をちゃんと分かってるからな。懐いてはいても飼われてる訳じゃねーだろ。街中は安全だし、誰かしらご飯をくれるけれど基本は自由気ままな生活をしてんじゃねーか?」
「・・・たしかに、よく猫にご飯をあげている人いますね。特に噴水広場で」
「だろ?たぶんほとんどが冒険者だろうけどよ。あいつら顔が厳ついヤツ多いくせに面倒見は良いヤツがほとんどなんだ。けど、家にはほとんど居ないし、よく拠点も変えるからなぁ。そもそもが持ち家なんて無いヤツがほとんどだし。飼うって発想には至らないんだろう。ま、あいつらのおかげで露店とかの食べ物を狙うような猫は居ないから上手い事回ってんじゃないか?」
そういえば、イタリアだかどっかの国でもそんな感じで人間と共生してるって話は聞いた事あるかも。
カフェとか行くと、自然と猫が寄ってきてご飯をおねだりする姿がかわいいとかって紹介されてたっけ。
あと野良猫とは呼ばずに自由猫って呼ぶとか何とか。
確かに街の風景とか人の顔立ちとかで考えると、どちらかというと欧州っぽさがあるから、そちらの文化に寄せたのかな?それならちょっと納得かも。
食事情は北米っぽいけど。今のところパンがメインで、副菜にジャガイモが多い印象かな?あれ、ジャガイモって欧州がメインか?
北米はトウモロコシとかだっけ?南米か?・・・まぁいっか。
とりあえず、美味しいし。
雑談を交えながらの休憩を終えて、最後に牛達の汗拭き作業を手伝って今日のお手伝いは終了。
もちろんミルクも貰ったよ。
さてさて、この後はどうしようかな。
久しぶりに建築現場のお手伝いでもしようかな。結構日数も空いたから作業もだいぶ進んでいるかもしれない。
しばらく静かな場所で過ごしていたから、あの騒がしい現場に耐えられるかちょっと不安だけど。
そう思いながら一度ギルドへ寄ってクエスト受注を済ませて東門方面へと歩いていく。
ついさっき猫だの犬だのと話をしていたからか、広場で日向ぼっこしている猫をついつい見てしまう。
いや、鑑定のレベル上げっていう理由ももちろんあるけども。
やっぱり冒険者の人達がさりげなくご飯をあげているね。ちょっとほっこり。
目尻が下がりきったイカツイおじさんは、それはそれで何となく目を背けそうになるけれど。
世間じゃ猫好きの人を『猫の僕』なんて言うらしいね。うん、その理由が少しわかった気がする。すっごい尽くしそう。
あ・・・ダメだ。なんか王冠被った猫に跪いている騎士の絵が浮かんで・・・。
実際はイカツイおじさんが猫にデレデレなだけなのに・・・。
いや、我ながら差が酷いな。
割とどうでもいい想像をしながら建築現場に到着すると、懐かしく感じる程の騒々しさ。
石壁を壊す程の音に負けない人々の声って、改めて考えると凄まじいな。
「お?お前さんまた来てくれたのか?」
「どうも、親方さん。お片付け人員足りてますか?」
「あぁ~、全っ然足りてねーな?手伝いに来てくれたんなら大助かりだ」
「でしょうね、来てみてすぐ分かりました。では早速?」
「おう、頼むわ」
現場の惨状は中々で・・・、到着した瞬間にある程度察したよね。
なんせ一面瓦礫の海。
もちろん、また事故が起こらないようにか積み上げている訳ではないものの、そのぶん乱雑感が凄まじい。
まぁ、それだけ私のお片付け魂に火が着くってもんで。
やってやろうじゃないの?
薬師ギルドで培った根気の見せ所ってやつでしょ!前回もだいぶ根気を見せてたと思うけど。
今回は大きい石材関連は一旦置いといて、細かく砕けた石や木材を中心にひたすら拾っていく。
最悪時間内に終わらなくても、細々したゴミが片付いていればその後の片付けは大分楽になるハズだから。
力自慢なら沢山居そうだしね。その人達に任せよう。
そう考えて只々無心で拾っては集め、拾っては集め。現実であったなら私の太ももはバッキバキになること間違いなしってくらい。
そして効率を求めた結果、一度で魔法袋に集めきれない資材をインベントリを使ってでも運び出すまでに。
っていうか、インベントリに入るんだね。
意外と言えば意外。当たり前と言えば当たり前。
なんで気付かなかったんだろう・・・。
インベントリは同じ物なら1マスに99個入る仕様なんだけど、幸いと言って良いのか『石材(小)』『木材(中)』とかって勝手に纏められる不思議かつ便利な仕様でもあったみたい。
知らずに使ったけど、嬉しい誤算。
これが単純にゴミだったら『ゴミ(小)』とかになるのかな。
・・・いや、インベントリであったとしてもゴミは入れたくないな。別に汚染とかはされないだろうけど、なんとなく気分的に。
効率を上げてガンガン作業していると、親方さんから休憩の指示。
皆ガッツリ肉体労働だからか、大きい体から熱気がムンムンで・・・、ちょっとだけ距離を置いたのは内緒。
暑苦しいって感情は兄以外で初めて抱いた・・・。いや、別に嫌悪とかはしてないんだけどね。それこそさっきと同じで、なんとなく気分的に?
休憩しながらひと息入れていると、ふとお昼寝している猫達が。
建物が無くなってきて陽当たりがだいぶ良くなってきたからかな?陽に当てられて温かくなった石材の上で、集団で丸くなっている。時折あくびをする仕草はとても可愛らしい。
細かい資材は片付け終えた場所だから人も少なくて、存外心地よい場所になっているのかな。
広場は人通りが多くなっている時間だし、ご飯を食べた後はさっさと移動してきたっぽい。可愛らしい仕草とは裏腹に、今は構って欲しくないのか人とは距離をしっかり取っている。
・・・ちょっと私は猫派かもしれないな。
実家で飼っていた犬には申し訳ないが、やたら構って欲しがりな犬に比べると、猫のこれくらいの距離感の方が個人的には助かる。
動物は愛でるんではなく、眺めるものなので。私的には。
―スキル【生物鑑定】がレベルアップしました―
―スキル【植物鑑定】【道具鑑定】【生物鑑定】が規定レベルに達し統合され【鑑定眼】に変化しました―
・・・きた。
ついに来たー!!【鑑定眼】!待ってたー!!!
うわぁ~、やっとかー。
なんだか目標を決めてからすごく長く感じたな。【生物鑑定】には随分手こずらされたね。
でも今それが全て報われた気分。
もちろん、ここからが重要なんだろうけど。
ちょっと目標のひとつがクリア出来た事で浮かれていたら、いつの間にか休憩時間が終わりに。
慌てて作業に戻ったけど、気分は上々。
拾っては鑑定して袋に入れるという作業に変化した。
つい楽しくなっちゃって、作業工程はひとつ増えたハズなのにスピードは上がってるのが私の感情を表してる。
そしてガンガンレベルアップしていく【鑑定眼】。統合されて上位スキルにはなったものの、レベルがまだ低いから上がりやすいみたい。初期スキルに比べれば上がりづらいけどね。
ただ、それが気にならないほど私が浮かれている。
鑑定しても大した情報は無いんだけどね。詳しく読んでもいないし。
気付けば大通りからこちら側の作業はほとんど終了してしまった。
大通りを挟んだ反対側にはこちらと同じくらいの範囲で解体作業が行われているから、全体でみるとまだ半分しか終わっていないし、こちら側も大きな石材は放置したままなんだけど、正直1人で終わらせる量では無かったと思う。後になって冷静になってみると。
もちろん、かなり時間は掛かっているよ。なんせもう日が沈みそうだもの。
・・・親方さんに止められていなければ気付かなかったけど。
「いや・・・、ありがてーんだけどな?さすがに笑いながら片付けされんのは・・・ちょっと怖いぞ?」
・・・それ何て怪談話?
うん、いい加減気を付けよう?自分。薬師ギルドでもやってたよね。
癖になってたらどうしよう・・・。
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変:スキル
【植物鑑定】【道具鑑定】【生物鑑定】→【鑑定眼 Lv4】
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