71 忍者な指導員・・・?
場面転換が多くなっちゃった・・・。見づらかったらゴメンなさい。
翌日の朝になって、ベッドから起き上がると既にキッチンからコーヒーの良い香りが。
その香りで、昨日の夜に悠里が急に訪れた事を思い出した。
会話に華が咲いて寝付くのが普段よりも少し遅くなったからか、時計を見ればいつもよりも遅い起床時間になってしまったみたいだ。
特に寝ぼけることも無く、スタスタとキッチンに向かうと予想通りモーニングコーヒーでひと息入れいている悠里の姿。
「おはよう悠里」
「おはよう。台所使わせてもらってるわ。――何か飲む?」
「うん、お湯だけ沸かしといてもらって良い?顔洗ってくる」
「はいはい」
洗面所から戻ってきて自分用に紅茶を淹れながら、悠里が焼いてくれていたトーストを齧る。
悠里も桜子程ではないにせよ、料理はそれなりに作れるタイプだけど、昔から朝食だけはトーストか、おにぎりの簡易なもので済ませる派だ。
とにかく朝が弱い子なのよな。
寝起きも結構しばらくぽわぽわしてて、おそらく今日もコーヒーを淹れるまでかなり時間を掛かっていたんだろう。
まぁ、朝が弱いからこそコーヒー党になったんだけど。
おかげでコーヒーの香りは私も好きになった。味はどうにもならなかったが・・・。
「それじゃあ、ちょっと出てくるわ?帰りはそんなに遅くならないと思うけど。何か買い出しとかあったら連絡入れといてくれる?」
「ん、わかった。それと、これ、合鍵渡しとく。勝手に入ってきて良いから」
「ありがと。インターホン鳴らしてゲームの邪魔されたくないものね?」
「・・・それもある」
「それしか無い、の間違いでしょ?」
「・・・そんなコトナイヨ?」
早々に心を読まれ動揺しながらも、玄関で悠里を見送る私。
彼女は首元まで覆われたタートルネックにちょっと煩わしそうにしながら、それでもデキル女感をMAXに醸し出して涼しげでいる。
おそらく私なら既に汗だくになっていることでしょう。
ちなみにタートルネックに急遽変更したのは、もちろんうなじのキスマークを隠す為。
最初、首元が大きく開いたシャツ着てんだもん、慌てて止めたよね・・・。
指摘したら、顔を真っ赤にしてたのはちょっと可愛かったけど。
そのすぐ後はたぶん羞恥心ではなく、怒りによるものだったみたいだけども。
なんか怨嗟の籠った長文お怒りメールを旦那さんに送ってたし。ご丁寧にボイス付きで。
あれよな、外国語で怒りをまくし立てられるとなんか恐怖倍増するね。
今回の場合は相手は理解出来ているけれど、もし私が英語だかゲール語?(アイルランドの母国語)だかで怒られたら、もう光の速さで土下座するなって思った。それくらいに悠里が怖く感じたのです。
元々、怒ると怖いタイプの人ってのもあるかもしれないけど。
悠里といい、桜子といい、身内にはすごく甘いタイプではあるんだけど心を許している分、怒ると結構怖い人達なんだよね。
むしろ、関係性がそこそこの人には全く怒らないタイプ。
そう考えると、あの怒りを向けられている旦那さんは、相当悠里が普段甘えている人っていう証明でもあるんだよね。
だから、旦那さんには今回は甘んじてその怒りを受け止めて頂きたい。
愛されている証拠だから。
・・・別に、私まで怒りの余波を受けたくないから、とかじゃないからね?
悠里が仕事へ出かけて行った後は、今夜からお泊りに1人追加になるから、色々と準備。
普段は桜子くらいしか泊まりに来ないから、3人分となるとベッドや食器を出しておかないと。
といっても、食器は奥に仕舞っていたものを出して洗っておくだけだし、ベッドに関しては私がソファを使うつもりなので、大した手間ではない。
なので、早々に準備が終わってしまった・・・。
食材の買い出しは桜子の意見が必要で、仕事が終わったタイミングで連絡してもらうように言ってあるから私が独断では行動出来ない。
悠里の衣類洗濯とかは悠里が自分でやるって言うし・・・、あれ?本当にやる事ないや。
すっごい楽しみにしてるのに、私が出来る事はほとんどないのよな。・・・いつもだけど。
せめて掃除くらいは少し丁寧にやっておくか・・・。
シーツ類も洗ってしまおう、天気良いし。
はい、掃除も終わりました。
唯一得意とする家事なだけあって、早々に終わってしまった。
まぁ、普段から掃除だけはしっかりやってるからね。道具も豊富だし。
そしたら、もうゲームでもやろうかな?
別に仕事しても良いんだけど、今夜はたぶんゲームする時間取れないし、急ぎで仕上げる必要があるものも無いし。
作りかけの楽曲に関しては、あくまでもストックだから気分が乗った時に仕上げたいし。
少しだけ自分に言い訳しつつ、念の為に仕事用のメールだけチェックして、問題無い事を確認してから寝室へ。
あ・・・、シーツ洗ったんだった。
ん~、そしたらソファでいっか。もう今から明日まで私の定住地はソファにします。
そう決めて、毛布と枕替わりのクッションを整えていく。
よし、完璧。
今からだと・・・、ゲーム時間で1日弱くらいは遊べるか。まぁ十分な時間だね。
整え終えたソファに寝っころがって、即ログイン。
ゲームの中に入ると、どうやらこちらは夕方の時間帯。
忘れないうちにアラームだけセットして、宿屋から退出。
さてさて、まずは何をしようかな?
最優先は鑑定のレベル上げだから、広場で少し稼ぐとして・・・。
あとは〈まんぷく亭〉で食事も必要か。空腹度減っちゃってる。
とりあえず、行動しながら考えようと思って広場へ足を運ぶ私。
相変わらず夕方の時間帯になるとプレイヤー達が集結しているみたいで、ガヤガヤと騒がしい噴水広場。
ゆっくり歩きつつ、鑑定しつつ。
目立たなさそうな場所を見つけて腰を下ろし、一定のタイミングでまた歩き出しては、また端の方で腰を下ろす繰り返し。そうして広場を2周したくらいで、完全に陽が落ちて夜になった。
そうなるとプレイヤー達がフィールドへ移動するので、私も移動。
〈まんぷく亭〉へ食事休憩。
広場の喧騒と違って、何となく騒がしいのではなく、しっかり会話が聞こえてくる騒がしさがあるのがこの〈まんぷく亭〉。
プレイヤー達が集まる場所は何となくガヤガヤしているだけだけど、ここは現地住人達ばかりなので、あの不思議仕様が適用されていないみたい。
なので、実は情報収集という意味でもここは結構重要なスポット。
現地の冒険者の会話や噂話から、地味に色々分かるんだよね。
例えば、ワンドルとツドルの間にいるフィールドボスの『キングホーンラビット』。
角を折ると途端に弱体化するとか、レアドロップはその角だったりとか。
ちょっと面白いのは、プレイヤー達の行動によってその会話が変動するっぽい所かな。
「あの湖のレア魚が釣られたらしいぞ」とか「違法販売してた奴等は取り締まられたみたいだな」とか。
ちょこちょこ何のこっちゃか分からない話もしてるけど、これは私の知識や情報が足りないせいだろう。
一応、聞き耳は立てているけれど。
食事をきれいさっぱり頂いて、女将さんに挨拶だけして食堂を後にする。
そのまま向かったのは冒険者ギルドの資料室。
途中、うっかりあの妖艶美女と目が合っちゃったけど、特にモーション掛けられることは無かった。
流し目だけで破壊力ハンパじゃなかったけど。
資料室へ入ると、相変わらず穏やかな雰囲気の中で静かに読書を楽しんでいるノートの姿が。
「やあ、久しぶり。また来たんだ」
「ええ、お邪魔します」
資料室の蔵書は結構種類豊富で、一般的な小中学校の図書室くらいの数が揃っている。
最初はその数について何も思う事は無かったけれど、多少読んでいくと数の多さに少し驚く。
所謂、始まりの街にあたるワンドルでこれだけの蔵書があるのは少し不思議だな?って感じだったんだけど、もしかしたらノートのキャラクター性のせいかなって最近思い始めたところ。
読書好きで、仕事中も本を読んでいたいからここで働いているって言ってたし。
適当にスキル関係とかの本を選び出して、近くの椅子に腰を下ろす。
そのジャンルの本だけでもかなりの数があるけれど、とりあえず端のほうから。
一番の目的は、防御関係のスキルについて何か記載されていないかなって。
次点で隠密系とか。
【気配察知】は持ってるけど、自分の気配を隠すようなスキルは持ってないんだよね。
ソロでやっていくなら、やっぱり必要かなって思い直した次第。
あわよくば、ノーランさんに不意打ち出来るようなスキルとかも無いかな?って。
レベル差を考えると、焼け石に水かもだけど。
ある程度読み終えた所で本を戻して、席を立つ。
「もういいの?なんかスキル関係の本を読んでいたみたいだけど、何か分かった?」
「目的のものは見つかりませんでしたが、意外と楽しめました」
「そう?ちなみに何を探してたのか聞いても良い?」
「ええ、そのままスキル関係ですね。防御系か隠密系のものが欲しくて。取得条件とかが記載されている物があったらな、と」
「ふーん、なるほどね。SPに余裕が無いなら条件知りたいもんね。でも、詳細な情報が載っているのはここにはほとんど無いかな。特にジョブ適性が関わるものは。多少取得条件のヒントになるのが載ってるのは、スキルについての本よりもジョブ関係の本の方があるかも。ほんとに少しだけど」
「なるほど・・・。盲点でした、今度はそっちを探してみます」
「うん、知らないよりも多少知ってる方がお得だからね」
読書好きっぽい意見だね。気持ちはわかるけど。
資料室を出た後は、もちろん訓練場へ。
ここで朝まで時間を潰して、朝一で牧場へ行くつもりだ。
羊達の刈り終わった毛の洗浄作業とかを手伝う約束してるからね。
ハワードさんからは、7日間以内にまた来ればその時に一緒にやろうって言われているから。
ゲーム内時間だとあれから2日経っているから、忘れないうちに行かないと。
どちらにせよ、鑑定のレベル上げしたいから通うつもりでいるけども。
訓練場に足を踏み入れると、見知らぬ人が1人。
「ん?おや、珍しい。こんな夜更けに人が来るとは」
全身黒尽くめで顔まで隠されている為に、怪しさ満点の人物から声を掛けられてしまった。
あれかな?ギルドに通報した方が良い感じ?
「君は・・・異人さんか。見た所、ジョブは[剣士]かな?一定のレベルに到達していないなら私の範疇外だね。指導を受けるなら他を探しなさい」
指導員か!この人!
暗闇の中で黒尽くめの服装とか怪しすぎるわ。危うく危ない人判定する所だった・・・。
「あぁ、そうだ。主な指導員は昼間に常駐している。まずはそちらで指導を受ける事を勧めるよ。私の指導は少し厳しいから、ある程度実力が無いと教えられん」
「それは・・・ノーランさんの指導を終えたらご教授して頂けるという事で?」
「ん?なんだ、もうノーランを知っているのか。そうだね、あの子の指導を最後まで受けて、尚且つレベルが規定以上なら指導してやろう。私が教える技術は[剣士]にも結構有用だぞ、頑張りなさい」
ほほう?
そう言われたら頑張っちゃうよ?見るからに隠密系に長けた人だろうから、まさに私が欲しい技術かもしれないし。ノーランさんの後じゃないとダメなのが残念ではあるけれども。
「研鑚を積みに来た者の邪魔はしたくないから私は失礼するよ。・・・また会えるのを楽しみにしている。では」
「え・・・?」
そう言って、瞬時にその場から消えてしまった黒尽くめの人物。
その現象に思わず、ついさっきまでそこにいた場所に手をかざして確認してしまう私。
知ってる!
私知ってるよ!!
これ忍者の動きだ!!!!
思わず小学生並みの思考になったのは仕方がないよね・・・?
お読み頂き有難うございます。
誤字脱字報告受け付けております。是非ご指摘ください。
感想、評価、レビューお待ちしております。
ご協力お願い致します。




