70 愛され過ぎてる幼馴染
会話文って難しくない・・・?(今更
夕飯時という事もあって、悠里と共に桜子お手製のカレーを一緒に食べた後は、久しぶりの再会という事で会話に華が咲いた。
「え、じゃあこれからちょくちょく日本に帰ってこれるの?」
「ええ、たぶんそうなると思うわ。日本語を話せるのは会社で私だけだし、ほら、あっちに比べてこちらってモニター越しよりも、直接顔を合わせて話す方が好まれるじゃない?だから、しばらくは行ったり来たりする事になると思うの」
「そっかそっか。そしたらさ、仕事で忙しい時はアレだけど、時間が出来た時は連絡してね?何ならここをこっちに居る間のホテル代わりにしても良いしさ」
「ほんと?そうしてくれたらすごく助かるわ。さすがに実家からだと都心にはちょっと遠いし、その都度ホテルを予約するのも面倒だなってちょっと思ってたのよねぇ。その点、ここならアクセス良いし運が良ければ桜の手料理も付いてくるっていうのは、かなり魅力的よね」
「それ実質桜の手料理目当てでしょ」
「ふふ、そうかも?アイルランドに移り住んでからは余計にそう思うわ。単純に和食が恋しいっていうのも当然あるんだろうけど、ほら、私達って桜の料理に対しては間違いなくパブロフの犬じゃない?」
「いや、例えがおかしいよ。・・・まぁ間違いなく胃袋は掴まれてるけどさ」
私達が中学生の頃に桜子の家庭で少しゴタついた時期があった。
当時の桜子は年齢的にも化粧っ気もなくて、シンプルで清楚系の服装を好んでいた事もあって儚い美少女って感じで地元では結構有名だったと思う。
そんな美少女である桜子にある疑惑が浮かび上がった時があって。
それは義父からの性的虐待の疑惑。
いや、これが全くのデタラメだったんだけどね。
当然、私と悠里はそんな事実が無い事を知っていたし、一体どうしてそんな話題が出たのかもの凄く不思議だったんだけれども。
ただ当事者達を置いてけぼりにしたまま、事態だけは何だか大きくなってしまって。
下世話な噂話だけが広まって、役所の人や警察が出張ってくるような所まで話が大きくなってしまったんだよね。
もちろん事実無根だったし、その件に関しては役所や警察の人はすぐに引き返して行ったんだけど、タイミング悪くその時期に桜子が悪漢に本当に襲われてしまって。
加害者は近所に住んでいた40代の独身男性だったんだけど、どうやら噂を真に受けて桜子に対して邪な眼で見ていたらしい。
儚い系美少女が、義理の父親から性的虐待を受けているっていうシチュエーションに酷く興奮したとか・・・。
正直その供述を聞いた時は、本気で殺意を覚えたと思う。
まぁ、事実半殺し状態にはしてしまったんだけれども。桜子が襲われた時は私が近くにたまたま居た時で、彼女の悲鳴に飛んで行ったから。
発見した時にはもう男が桜子に馬乗り状態で・・・、そんな場面に出くわしたもんだから・・・その・・・つい。
駆け寄っていったそのままの勢いで膝蹴りかまして、追い打ちに金的蹴りまで・・・ね。
相当頭に血が上っていたんだろうね。一切の手加減なしで思いっきり。しっかり古武術の応用効かせて、腰入れて蹴ってた。
まぁ、正直言って、その行動に一ミリも後悔はしていないけれども。
桜子を襲おうと思ったアイツが悪い。
被害者である桜子はそれ以来少し、年上の男性に対して不信気味になってしまって。
その態度が余計に義父の疑惑に拍車をかけてしまったんだよね。
襲われたことでまた警察が来ちゃったし。
もちろん、同じ学校の人達や桜子の家庭とそれなりに交流があった人達にはすぐ誤解は解けたんだけど・・・。今まで碌に関わった事も無いような、遠巻きに桜子の事を見ていた様な人達は当事者達が否定しているっていうにも関わらず、下世話な噂話を信じ切って義父や母親を陰で非難し始めたんだよね。
その陰からの非難に先に耐えられなくなったのは、義父ではなく母親の方だった。
元々、人の悪意にめっぽう弱いタイプの人で、娘である桜は外見は儚い系でも中身はしっかり芯のある強い子だったんだけど、母親は外見も中身もそのまま儚くて弱い人だった。
耐えきれなくなって、離婚届けを置いて出ていってしまったんだよね。
・・・桜子をも置いて。
桜子自身は『元凶は私自身だもの。逃げるっていうのに元凶を連れていく勇気はあの人には無いでしょ』なんて言ってたけど。
結局、義父が母親に対して怒って、親権をもぎ取ってきたんだけど、噂話は全然落ち着かなくて。
ちょうどその時期に義父の会社のお偉いさんが、事態が沈静化するまで海外支社へ転勤したらどうか?って話を持ってきてくれたみたいで、悩んだ挙句、義父は転勤を選んだんだけど・・・。
桜子は日本に留まるって言い張ったんだよね。
2人の話し合いは中々に平行線だったけど、そんな時に出しゃばったのが私の家族だった。
元々ウチの家族は桜子の家とも仲が良かったし、兄が家を出ていくから部屋も空くって時期でもあった。
私の親兄弟がゴリゴリに、押せ押せで説得して結局高校卒業までウチに居候する事で話がまとまって。
連日押しかけては、資料まで作ってプレゼンテーションした私の家族はちょっと異常だったと思うけど。
後から知った話だと、話を持ちかけて背中を押したのは桜子自身だったらしい。
『それだけ貴方達と一緒に居たかったって事よ』って、照れたように言う彼女に私はもう何も言えんかったさ。悠里はその言葉に嬉しくなっちゃって、抱きついてキスの嵐をお見舞いしてたけど。
私ものっかって撫で繰り回したっけ。
まぁそんな訳でしばらく私の家に居候していた桜子なんだけど、如何せん・・・ウチは料理が出来る人材が居なくてですね・・・。唯一、多少マシな次兄が出ていってしまったから、まぁ悲惨で。
桜子はそんな事態を救ってくれた・・・というか、救わざるを得なかったというか・・・。
居候の立場からすぐさま、我が家の料理人という名の女神様にクラスチェンジしました。
それから約5年間、私の家族はもちろん、しょっちゅう遊びに来ていた悠里も桜子に胃袋をがっちり掴まれたわけです。
元々メシマズ家庭だったのに、急に極上料理を5年間も味わったら、そりゃもう・・・桜子は女神様!が我が家の標語になるのは道理だと思うんだよね。
父親の口癖は『いつ嫁に来るんだ?』だったし。・・・誰があのガサツ兄貴に桜子を嫁に行かすか。絶対許さんわ。そうするくらいなら、私が貰うわ。
っと、まぁそんな経緯で、私と悠里(と私の家族)は桜子の手料理に対して、異常な執着を持つようになったと。
悠里に関しては、今となってはそう簡単に桜子の料理を食べれる立場じゃないから、相当楽しみにしていると思う。
現にさっきのカレーも凄い嬉しそうに食べてたし。
何か釣られて私までがっついたけども。
「あ、桜、明日来るって。しかも泊まりだってよ?今連絡来た」
「本当!?幸先良いわね!久しぶりにお泊り会といきましょ!」
「ん、桜にも言っておく。『悠里が桜の料理に飢えてる』って」
「否定はしないけれど・・・、ちょっとあんまりじゃない・・・?」
事実なんだから良いじゃないか。
桜の作ったカレーだと分かった瞬間、全部食べようとしたのは誰さ。
それから、最近何してた?って話になって、当然私が話題に出すのはゲームの話。
「『アナザーユニバース』?なんか、安易なネーミングねぇ・・・?VRゲーム・・・、VRだと旅行シュミレーションソフトくらいしか手は出したこと無いのだけれど。ゲームだとどういう感じなの?」
「ん~、私もあんまり詳しくは無いけど、今やってるのは多分クオリティは最高峰じゃないかな?視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚の五感が違和感無いほど再現されていて、まさに別世界に入り込んだ感じ。それでいて、ゲームっぽさもちゃんとあって世界観を楽しむのが本当に面白いよ」
「そうなの・・・。それは凄いわね。ちょっと興味あるけれど・・・残念ね、日本限定だなんて。まぁ、海外まで対応させていたら流石にスペック的に無理があるのかしら?」
「どうなんだろ?翻訳機能的にはもう色んなソフトが開発されているけど・・・、単純に人気が無いんじゃない?クラフト要素とか求められていないイメージあるし、あっちは。基本バトロワとかシューティングとかが人気でしょ」
「なるほどね。あとサーバーの関係とかもあるのかしら?あぁでも、案外ネットマナーとかの問題の方が重要なのかもね。ただでさえ外国の文化と日本では相容れない隔たりがあるし・・・。難しいところよねぇ・・・」
悠里は趣味が旅行なだけあって、結構色々な国を回ってきている人だからこそ、その国特有の文化でトラブルに出くわしたり見たりしてきたんだろう。実際に聞いた話でよくあるのは、スリや窃盗の軽犯罪の多さと酒場周辺での暴力も含んだ事件の多さかな。
あとは宗教関係とか。
悠里は割と目的の国に行く前にしっかり勉強していくタイプだから、直接嫌な思いはほとんどした事無いらしいけれど、旅行者の多い観光地でのトラブルはよく目撃しているらしい。
こればっかりは日本に住んでいたら全く理解出来ないジャンルよな。
宗教と文化がこれほど切り離されているにも関わらず、上手い事融合している国はほとんど無いんだって。国外に出た事が無い私には全く実感ないけど。
「あぁ、でも中世ヨーロッパ風の街並みっていうのは良いわよね。石畳をヒールで歩くのは今でも苦労するけれど、時折未だに見とれるような建物はあるもの」
「アイルランドはそういった建築物が多いんだっけ?歴史的なものとか」
「そうね。街並みはとても美しいわ。それこそゲームの世界みたいなんじゃない?高い建物も少ないし、空が広く見えるの。ただ、天候がすぐに変わるから大変な事も多いんだけどね」
「あ~、『一日の中に四季がある』だっけ?本当にそんな山の中みたいな天候なんだ?」
「ええ、おかげで天気予報を見る習慣が無くなったわ」
日本でも夏の時期になるとゲリラ豪雨とかが多くなるけれど、ゲリラって言う割に予報で注意喚起されてるもんね。あれ結構不思議。
「ん?なんか、悠里の・・・連絡来てない?」
「・・・あら、旦那だわ。―――予想が外れたみたい、もう私が居ない事に気付いたみたいだわ?」
「大丈夫なの?・・・っていうか、本当に何で出て来たのさ?旦那さんが帰ってこない理由とかは分かってないの?絶対浮気とかでは無いんでしょ?」
悠里の旦那さんは悠里にベタ惚れだ。
浮気とか絶対に有り得ないと断言出来るほど。
当然だけどね。
悠里は桜子とは別のベクトルだけど、同じくらい美人だし。
行動力があって、対応力も柔軟で自分の意見を言語化するのが上手で、一本芯が通った強さも持ってる。
見た目は化粧をしなくても派手目で、顔のパーツがハッキリとしている欧州系の美女。
桜子は化粧で妖艶さを醸し出しているけれど、この子は素の顔からして色気があるんだよね。
表情豊かだからどこか親しみやすさもあって、人の懐に入り込むのがとても上手なんだ。
桜子と違って、スレンダー体型だけどその美脚は世界共通の魅力。・・・って旦那さんが言ってた。
単純に旦那さんが胸とかよりも脚派なだけな気もするけど・・・。
男性のそこら辺の趣味についてはちょっと分からん。
一応、アジア圏の男性は胸派が多いらしいよ?欧州やアメリカとかはお尻派が主流なんだとか・・・?どうでも良いけど。
「浮気なんかじゃないわ?むしろ逆・・・?『私の為に』って言って働き過ぎなのが原因かしら?」
「・・・どういう事?」
「はぁ・・・。何かね、私に仕事で外に出てほしくないんですって。『君は魅力的だから、職場に通うだけでも危険に会うかも』って。馬鹿言わないで欲しいわよ、通勤時間徒歩で15分の場所よ?しかも普段は車通勤だし。そしたら、職場自体も危険だろって。どんな危険よ!?7割女性の職場なのよ?むしろ男性の方が危険よ、結婚適齢期の女性が多いから皆男性社員を狙ってるんだから!」
「そ、そうなんだ・・・。ちょ~っと束縛が強いタイプなのかな・・・?」
「ちょっとくらい束縛が強くても問題は無いのよ?でもねぇ・・・、仕事を辞めろっていうのは頂けないわ。結婚の時にも契約書に『お互いの意見を強要せずに話し合いに努力する事』って文言入れたのに。全く意味ないじゃない?」
「なるほど・・・。旦那さんが働き過ぎっていうのは、悠里が仕事を辞めても問題無いようにアピールしてるって事?」
「そういう事。そこもちょっとムカつくポイントなのよ。別に金銭的に余裕が無いから働いているんじゃないっていうのに。何を勘違いしてるの?って。私は仕事が楽しいからしているのであって、しょうがなくしているんじゃないのに。ちょこちょこそうやって洗脳してこようとするのよ」
「あ~、実際に強要はせずに、でもそう仕向けて来てるって事か。それなら契約を破った事にならないから」
「そうなの。小狡いでしょ?だから私もアピールし返すのよ。それもあって日本出張の件を引き受けたの。元々、もう少し帰省する時間も欲しかったし」
悠里曰く、日本に帰省するのが1年に一回だったのは旦那さんの希望だったらしい。
実際にはその一回すら、悠里がもぎ取った機会なんだって。悠里的にはもっと帰って来たかったけど、旦那さんの泣き落としでしょうがなく我慢してたんだって・・・。
愛され過ぎるのも大変なんだね・・・。
いや、めっちゃ愛されてんのは分かってたんだけどさ。
うなじ周辺のキスマークが結構エグいくらいにあるから・・・。
悠里、これ気付いてんのかな・・・?
気付いてないんだろうな・・・。
一応、黙ってたけど明日の服装によっては指摘しなきゃだなぁ・・・。
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