69 幼馴染の訪問
草原モンスター:ノンアクティブ
名称:闘乳牛(ジャースタイン種) Lv.???
主な生息地:ドルティア南部・ドルティア西部・他
ドロップ:リッチーミルク・□□□・□□□
※野生の闘乳牛は群れで行動する事が多く連帯感が非常に強い為、群れの一部が攻撃されると激怒し一斉に反撃行動を取るので注意が必要。
※テイムされると狂暴性が激減する場合が多い。
※1000頭に1頭存在する牡牛は希少度が非常に高く、討伐すると得られる経験値も高い。
草原・高原モンスター:ノンアクティブ
名称:軍隊羊 Lv.???
主な生息地:ドルティア南部・ドルティア東部・他
ドロップ:シルキーウール・ラムゥ肉・□□□
※野生の軍隊羊は通常10頭~50頭の群れを形成し、統率された行動が特徴。
※群れには必ず指揮官となるリーダーが存在しており、リーダーが倒されると途端に統制を失い混乱行動に陥る。
※基本的に大人しく穏やかな気性で、攻撃を受けない限りはアクティブ状態になることはほとんどない。
※他の群れと出くわすと自然と混合し、群れを大きくする習性を持つ。
ハワードさんから、現在ここにいる動物達が魔物(従魔)だという事を知らされて早速鑑定してみたら、本当でした・・・。
そして何が悲しいかって、表記が赤い事よな。
・・・えぇ、私よりも高レベルな事が確定です。
こんなに大人しくて無害そうなのに、戦闘になったら私は負けてしまうという事なのか・・・。
ちょっとやるせない。
「冒険者ならまず何においても鑑定するのが基本だろ?知らぬうちに格上に挑んで死んじまうようなドジは、冒険者には向いてねぇぞ・・・?―――あぁ、異人さんってのは死なないって話あったな。なんでも仮の肉体なんだっけか?でも、だからって無謀な行動は褒められたもんじゃねーだろ?それとも特攻かますのが美学とかなのか?」
「いえ、そんな美学は無いかと。いや・・・そういう人も・・・いるかもしれませんが。少なくとも私は違います。単純に今回のは私が油断・・・というか、何というか・・・?未だにフィールドには出ていなくて、ずっと街中で散策したりクエスト受けたりで戦闘行為はしていなかったので・・・、ただただ慣れていなかったとしか言えないんですけど・・・」
無意識に【生物鑑定】するのは噴水前広場に行った時だ、って固定概念付いちゃってたんだろうな。
せっかくのレベル上げチャンスでもあったのに自らフイにしてたよ。
「ほーん、増々冒険者っぽくねーな?普通はモンスター討伐してナンボなんじゃねーのか?街の手伝いクエストじゃ稼げないだろーに。まぁ、活動の仕方は人それぞれだろうから、あんま俺が口出す事でもないんだろうけど、鑑定するクセは付けといた方が良いと思うぞ?モンスター相手なら特にな」
「そうですね、意識してみます。・・・でも、やっぱり街の中では忘れる予感がヒシヒシと・・・」
「はっはっは!お前さん結構うっかりタイプなのか!それならまぁ、そうだな、街ん中くらいのんびりすんのも悪くは無いのかもな?オンとオフの切り替えは大事だし。とりあえずフィールド出るようになったら、何においても鑑定するって思っときゃ良いか」
うっかり・・・。
少なくとも私にそんな自覚は無いのだが・・・、何故否定しきれないんだろうか?
しかし、鑑定なぁ。
恐らくは私の性格からしてきっと【鑑定眼】にさえなってしまえば、テンション上がって何にでも鑑定するのは想像出来るけど、如何せん現状ではレベル上げの為だけに使用しているだけで必要に駆られているわけでは無いから・・・。
クセ付けるのはちゃんと意識しないとすぐ忘れると思う。
こうなったら、お店めぐり再開させるとかよりも定期的にここに訪問して、とっととレベルを上げきってしまう方が良いのかも。
っていうか、本当に何で私気付かなかったんだろう。
牧場なんて【生物鑑定】のレベル上げにうってつけなのに・・・。
やっぱりうっかりしてたんだろうなぁ。反省。
「そんじゃ、そろそろ毛刈り始めるぞ。どうせだから最初は少しゆっくり丁寧にやってみっか。あんま負担は掛けられんから、多少だが」
「お願いします!」
そうしてハワードさんの手で羊の毛刈り作業が開始されたわけだけど、もう・・・何て言うんだろうね。
職人技ここに極まれり。
やっている事は単純で、羊達の皮膚を傷つけないように丁寧に毛を刈っているだけなんだけど。
あまりに手際が良過ぎて、使用している鋏の切れ味とかどうなってんですか?ってくらいスムーズ。
通常、羊の毛が一体どうやって生えているのか全く知らないけれど、刈り終わった毛が一枚皮のように、それこそ服を脱いだ後かのように繋がったまま。
それだけで、どれだけ無駄の無い動きだったのかが分かるほど。
あれだね。和食の板前さんの大根の桂剥きを彷彿とさせるような感じ。
伝わらんか・・・。
当然ながら、それだけスムーズなわけだから羊には全くストレスが無かったようで、ここに来た当初に見た時と同じようにデデンッとテディベア座りをして、なされるがままで大人しかった。
むしろ途中ちょっと寝てたんじゃないかっていうくらい。
終わった途端ご飯を求めて走り去っていったけど。
聞いたら、毛刈りをする前はご飯抜き状態だったらしいから、当然っちゃ当然なんだけどね。
最初の一頭を終えた後の手さばきは本当に圧巻で、ただひたすらに見惚れてたと思う。
ちょっとだけニヤニヤしちゃってたかもしれない・・・。
でも、しょうがないよね?
モッコモコの毛がみるみるうちに取り除かれて、スッキリスマートな羊が現れるのは何か分からんけど一種の快感があるのですよ。
たまに動画とかで、レンガや石畳をひたすらキレイに並べられていくのとか、大量のキャベツの千切りとか、ああいうのを何も考えずにぼーっと見てるの結構好きなんだよね。
不思議なのが、工場とかで機械によって流れるように作られていく過程には、全く興味を持たないんだよね。
必ず人の手によって作られていくのが好き。
羊の毛刈りも五頭分ともなると、刈り終えた分が大量だ。
今は特に洗浄もしていないし、ただ置いてあるだけだから、ふわふわで見た目だけ嵩増しされているってのもあるけど。
そういえば、羊毛って何に使われるのが一般的なんだろう?
衣服でもウールって使われてるっけ?絨毯とかにも確かあったような・・・?
普段は化学繊維か綿素材のシャツばっかり着てるから分からぬ・・・!
・・・っていうか、『シルキーウール』って絹なの?ウールなの?どっちなの?
改めて鑑定しなおした情報に困惑する私。
あれかな。便利素材って理解で良いか。あんまり今後に必要とする気がしないし。
なんせ被服・縫製関係には手を出す気がないのですよ。少なくともしばらくは。
着心地の良い服が売ってたら買うだろうけども。
最後の一頭の毛刈りが終わり、餌を求めて走り出した羊を見送る私とハワードさん。
刈り終わった毛を一緒に運んで作業は終了。
本当はこの後に毛に絡まったゴミ取りとか洗浄とかの作業があるらしいんだけど、それは後日まとめてやるらしい。
どうせならその作業も手伝わせてもらう約束をした。鑑定のレベル上げの為にも少しここに通いたいしね。
そろそろ日も昇ってきてもうすぐお昼になるので、今日はここでクエスト終了。
依頼書にサインを貰うのも忘れずに。
「おう、これ持って行きな。クエスト受けてくれた奴にはいつも渡してんだ。報酬があんま良いとは言えねーから、ちょっとした気持ちなんだけどよ」
そう言ってハワードさんがくれたのは、先程作業したばかりの新鮮ミルク。
これは嬉しい。いや、あわよくば分けてもらえたりとか、もしくは売ってもらえないかな?なんて思ってたから、願ったり叶ったりだ。
「ありがとうございます!嬉しいです!」
「はっは!そりゃ良かった。そのミルクは熱を加えても十分イケるが、俺のおススメは紅茶かコーヒーに入れて飲むのだな。他のミルクじゃ物足りなくなんぞ~?」
「それは・・・楽しみですね。私は紅茶党なので今度ミルクティ―にして飲んでみますね」
「おう!是非試してみな!」
ハワードさんに挨拶をして、その場を後にする。
そろそろ一旦ログアウトする時間でもあるから、噴水広場方面へと向かう。
広場に近くなってくると、人通りがグッと増えて活気ある雰囲気に。お昼時だからか、飲食系の屋台が特に多く立ち並んでいる。
たまたま今はインベントリに食材はたっぷりと蓄えてあるから、特に購入はせずにちょこちょこ覗きながら通る私。
ただ、少しいつもと雰囲気が違う場所があるなぁ?とちょっと視線を向けて観察していたら、どうやら広場近くの一角でプレイヤー達による露店が開かれているっぽい。
ゴザのようなものを敷いて、特に商品を見せている訳でも無く声掛けをするでもなく。
座っているプレイヤーの前に、メニューウィンドウが出ているだけのシンプルで素朴過ぎる露店。
チラホラとメニューから取引している人達も居るけれど、おそらく言葉は交わしたりしていない様子。
周りの屋台や露店はうるさいぐらいに声掛けとか接客とかしているだけに、ちょっとその一角だけが異様に映るのも仕方がないかな。
若干、人の流れの邪魔になるような位置に固まっているのが気になるけれど。
真後ろにも通りがあるから、結構人通りがある場所なんだよね。
っていうか、プレイヤーももうお店を開くような段階まで皆進んでいるのか・・・。そしてプレイヤーがお店を開くことも出来るのね・・・。いや、噂には聞いた事あったけど。MMOならそういうシステムも結構一般的にあるっていうのは。
一体どういった物を作っているのか、販売しているのか、ここからは全く確認出来ないけれど少なくとも私よりはずっと建設的で生産的なゲームの仕方なんだろうな。
ただ・・・プレイヤー同士での取引って何か恐怖心あるのよな。
未だにまともに会話すら出来ていないからね。私。
物価の相場とかちゃんと把握していないと上手い事いかなそうだし。販売業って難しいよね・・・。
いや、ゲームだから難易度はそこまで高くはないでしょうけども。何らかのサポートはきっとあると信じてる。
けれど、私が何かを販売するっていうのは恐らく無いだろうな。
・・・たぶん。
匿名システムがあったら少し考えるか・・・?
さすがに対面式はちょっと本気でゴメンだけど。もしかしてもう何か取引関係でシステム出来てるんだろうか?基本的にはギルドの素材引き取り所を利用しているものだと思ってたけど、プレイヤー同士での取引には別の方法があってもおかしくないもんなぁ。
それがあの露店システムだっていうのなら、もう私は諦めるしかないな。
なんて思っていたら、衛兵っぽい人がその露店の人に声を掛けているのが見えた。
プレイヤーに限らず、現地住人も利用出来るのかぁ、なんて少しの驚きを持って観察してたらどうやら事情が違うみたい。
プレイヤーが慌てて露店を片してその場から去っていく。
他の同じように露店を広げいていた人達まで同様に。衛兵さん達も人数が増えてきて、気付けばその場はきれいさっぱり。
どういう事だったんだ?
何か違法な取引でもしていたとか・・・?
取締的な行動に見えたけれど・・・。
「あぁ~、やっと取り締まってくれたかー。思ってたよりも遅かったなー」
「だな。でも最近、衛兵たちも商業ギルドも忙しそうだったからな。遅くはなったが、対処してくれただけでもありがたいさ」
「まぁな~。異人さん相手じゃ下手に手ぇ出せんし、俺らは見てることしか出来んもんなー」
「何にせよ、これであの通りが使えるようになったから運搬も楽になるし、避難経路も確保出来て良かった良かった」
「裏通りしか使えなくて納品面倒くさかったもんなー」
なるほど?
ちょっと場所が微妙な所にあるなと思ったら、そのまんま使用禁止の場所だったのね。
いわゆる違法販売的な扱いになっていたのかな。
一連の経緯を見ていた現地住人の会話を盗み聞きしながら、商売関係にも何かしらルールがある事を察する。
うーん、余計にハードル上がったかも。
とりあえず、ちゃんとルールを把握するまではギルドとの取引だけで考えた方が良さそうだ。
下手にプレイヤーと取引して捕まったら嫌だもんね。
露店や屋台の冷やかしもそこそこに、宿屋でログアウト。
さてさて、夕飯は何にしようかな?
まだ桜子のカレーはストックがあるし、ご飯炊いてサラダ用意するだけでいっかな?
キッチンに向かっていると、来客を知らせるチャイムが鳴る。
インターホンで確認すると、懐かしい顔が見えた。
「悠里?」
『あ、翔?急にゴメンね?ちょっとお邪魔しても良いかしら?』
「うん、今開ける」
玄関先のチャイムが鳴って、ドアを開けて迎えると少し困ったような顔の彼女。
「いらっしゃい、久しぶり。とりあえず入りなよ」
「本当にゴメンね?お邪魔します」
久しぶりに顔を合わせた彼女は、橘悠里。
桜子と同じく私の幼馴染だ。
私と悠里は小学校に入る前からの付き合いで、桜子とは小学校に入ってから知り合ったから、付き合いの長さは悠里の方が長い。
とはいえ、悠里は大学の時に留学したアイルランドで今の旦那さんと出会って、卒業してすぐ移住したからそれから会うのは年に一回くらい。
今年になって会うのはこれが初めてだ。去年は年始に帰省したから一年以上会ってなかった。
「それで?どうしたの?急に。こっちに帰って来るって言ってたっけ?」
「ううん、旦那とね、ちょっと喧嘩しちゃって。ついでにこっちで仕事もあったから、そのままの勢いで帰ってきちゃったの」
「・・・え?大丈夫なの、それ」
「どうかしら?あの人、気付いているかも怪しいわ?最近全然帰ってこないんだもの、私が居なくなった事に気付くのはもうしばらく先だと思うわ」
相変わらず行動力が凄まじい人だ。
結婚するときだって、困惑しているご家族を置き去りにしてとっとと籍を入れちゃって、もう移住する準備も整え終わってたし。
「あ、そうだ。これお土産。ちょっと多いけれど」
「あ、ありがと。わ、バリーズティーだ、ちょうどもうすぐ切れそうだったんだ、助かる」
「なら良かった。相変わらず紅茶党なのね?」
バリーズティーはアイルランド産のブランドで、鮮やかな赤い色が特徴の紅茶。
渋みが少なめでスッキリとしているから、個人的には朝にアイスティーで飲むのが好き。
「そう、それで相談なんだけれど、今日と明日、泊めて貰えないかしら?ホテル予約してたんだけれど、部屋が空いてなくて困ってるイギリスの人が居たから、つい譲っちゃって・・・。泊まるとこ無いのよね」
「あらら。相変わらずお人好しだなぁ。泊まるのは全然構わないよ、場所的に問題無ければ今日明日と言わずにしばらく居たら?久しぶりに会えたんだし。どれくらいこっちに居る予定なの?」
「ほんと?そうしてくれたら嬉しいわ。予定だと2週間くらいになるのだけど、少し実家にもよるつもりだから、実質10日間くらいかしら?それでも大丈夫?」
「うん、全然大丈夫。それなら桜にも会えるかもね。たぶんその期間の間にうちに来るんじゃないかな?」
「そうなの?相変わらずお世話されてるのね?」
何故バレた・・・?
1年以上会っていないのに。
――――っ!私がまるで成長していないという事かっ!?
残念ながら、自覚はこれでもかってくらい有るから、ただただ私は苦い顔をするしかない・・・。
それを見て笑う悠里は眉を下げて、少し困ったような、ダメな子を見るような眼だ。
懐かしいけれど、その眼で見られるとひたすら情けなくなるからヤメテ下さい・・・。
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