68 動物とのふれ合い
誰か時間を下さい・・・!!(切実
更新遅くなり申し訳ないです・・・。
超高性能な布一枚に衝撃を受けつつ、作業が終わった事を報告する為にハワードさんの元へと向かう。
先程までとは違い、どうやら散歩を終えた牛達が集結している模様。
そしてその真ん中で乳搾りをしているハワードさん。
「ハワードさん、牛舎の掃除終わりましたよ」
「ん?おう!お疲れ!問題なかったか?」
「えぇ、特には。――強いて言えば、匂いがかなり強烈でしたが・・・」
「はっはっは!なんだ、アンタも都育ちか?この前来た奴もそう言って、ダウンしてたよ。ま、慣れてねぇやつには厳しいんだろう。無理そうだったら言ってくれ、出来るだけ負担が無い所を頼むからよ」
正直に言えば、私は都会暮らしというよりか、住宅街のど真ん中が地元。
周りは高齢者が多く、都心に比べればずっと人情に溢れた地域で育った人間だ。
とはいえ、地方にはほとんど行った事が無いし、畑や田んぼなんかを間近で見た事もない。
あるとすれば、広めの庭で家庭菜園レベルの作物とかガーデニングとか。長閑な雰囲気はあっても、あまり緑とか自然や動物とかと触れた記憶は少ない。
趣味としての土いじりとかは現代でも中々に人気があるし、アニマルロボットではなく本当に生きている動物だって当然好む人は多いので、興味を持って調べたり行動したりすれば機会はあったんだろうけど、生憎と私は全く興味を持たずに来てしまった。
私の兄達はキャンプとかウィンタースポーツとか好むタイプだったから、遠出もよくしていたし自然にも多く触れて来た人達なんだけど。平気で虫とか触れる人達だし。
こればっかりは地域柄とか県民性とかの話ではなく、個々の性格によるものなんだろうな。
「そしたら次はここで乳搾りでもやってみるか?多少は力加減とかコツとか必要だけど、そんなに難しい作業じゃねぇしな。あ、でも変に力込めて握んなよ?牛達が嫌がって暴れることもあるからな」
「はい、是非。正直言えば乳搾りは一度やってみたかったんです」
「お、そうか?そんなら丁度良いわな。んじゃ、ちょっと俺がやってみるからよく見てろ。――こんな感じだ。軽く下に引っ張るようにしながら意識すると上手くいきやすいか?まぁ、ものは試しだ、ちょっとやってみな?」
「はい、では失礼して。おぉ~、出た出た。結構かんたn――おっと!・・・むぅ・・・これ意外と容器に狙いを定めるのが難しいですね?思っていたよりも勢いよく出ますし」
「はっは、そこらへんは慣れだろ。もうちょいやってれば何となく分かんだろ。力加減も上手いようだし、そのまま続けてな。大体この入れ物のこの線まで溜まったら一旦終わりの目安だ。隣りで俺も別の子の分を採ってるから、目安まで来たら声掛けな」
「はい、分かりました」
実際に体験してみると、映像で見ていたのとは全く違う印象だった。
間近で見る牛の体がとても大きいし、浮き出る血管や筋肉が生々しくて生き物なんだなぁと思い知らされる。
触ってみると当然だけど温かくて、柔らかい。
ちなみに現実でもアニマルロボットだって感触や質感、体温とかにも拘ったリアルなものも開発されているけど、主にユーザーはアレルギー持ちの人達が多い。
アレルギー持ちでもなく、実際の動物を飼えないというのは大体がお世話する事自体が難しい人達だ。
そういった人達はリアルに寄せたアニマルロボットを飼うと、段々と感情移入して本物の動物だと思い込んでしまい、お世話出来なくなってくると過剰な心配をして必要も無いのに友人知人・家族等に預けたがったり、動物病院に相談しにいったりなんて事態が相次いで起こったりもしたらしい。
そういった事態を受けて、今では高齢者の方々や独り暮らしの人、出張が多い仕事柄の人なんかには基本的にリアルに寄せたものではなく、少しロボットっぽさをわざと残したものが販売する事が推奨されている。
もちろん希望者にはリアルな方を購入する事が可能だ。
多少の査定や申請書等が必要になる場合がほとんどみたいだけど。
そんな訳で、何かしらの動物アレルギーを持っている人が昔に比べてかなり増えた現代では、動物と触れ合うというのはかなり機会が減っているのが事実。
それゆえに、アニマル育成シュミレーション系のゲームが一定の人気を得ているのだろうけど。
そう考えると、このゲームもそういう楽しみ方は十分に出来そうだよね。
・・・あ、もうそうやって楽しんでいる人達に心当たりがあるわ。
よく広場で[テイマー]の人達は皆自分の従魔達にデレッデレの表情を隠さない人が多い。
ちょっとだけ過剰なスキンシップに引く事もたまーにあるけど。
そうこうしている内に、絞っていたミルクが容器の規定の線まで届いた。
出来るだけ一定の力加減とタイミングになるように意識していたら、何となくコツが分かってきた。
あんまりこぼさずに出来るようになって来たし、段々楽しくなってきた。
とはいえ、一旦ハワードさんに声を掛けないと。
「ん?終わったか?そしたら、あと一頭お願いして良いか?その子で最後だ」
「はい、承知しました。終わった容器はこちらで良いですか?」
「おう、あんがとさん」
次に担当したのは先程の牛よりも少しだけ小さい子。
もしかしたら年齢も若いのかな?さっきよりも絞っている間が落ち着きが無くて、ちょこちょこ動かれてミルクをこぼしがち。
もしやちょっと力強かったかな?
そう思って少し弱めに握ってみると、だいぶ落ち着いた様子。
やっぱり強かったのか・・・。
個体によって力加減が違う事にちょっとだけ驚きつつ、すぐにそれも当たり前かと思い直す。
人間でもマッサージの力加減は人それぞれ好みがあるもんね。
喋らない動物を相手にするのは、中々に気苦労が多そうだけどそれも醍醐味なのかな。
動物の方からすればストレスでしかないだろうから、微妙な感情だけど。
そう考えると、こういった畜産農家さんはもちろん、獣医さんとか飼育員さんとかも動物の気持ちまで考えて行動しているんだから凄いよなぁ。
喋らない相手に対して、仕草や表情とかで判断するとか、私からすればもはやエスパーだよ。
もちろん事前に十分に学ぶ必要はあるんだろうけど。それでもね。
実家で飼っていた犬の事を考えると、今更ながらにちょっと申し訳ない気持ちが・・・。
基本的に世話は、拾ってきた当事者である兄の役目だったから何とも言えないけど、私は特に何もしなかったからなぁ。
散歩もご飯もブラッシングも何一つしなかった。
たまにすり寄ってきた時に軽く撫でるだけ。気付くと足元にいるもんだから・・・。
もっと構ってあげた方が良かったのかな?犬って結構寂しがり屋なんだっけか・・・?
暑苦しいほど構っていた兄の存在でチャラになってたりしないかな・・・?――しないか、ゴメンよ。
乳搾りを終えて、お疲れ様の意を込めて軽く撫でてその場を離れる。
ハワードさんの方に振り向くと、既に作業が終わった子達を牛舎へと誘導していた。
ちなみに私が二頭を担当している間にハワードさんは残りの八頭を終えていたのですよ・・・。
これがプロの手際かっ!
両手で交互に出していた時はちょっとびっくりしちゃったよ。それもリズミカルでとても速かったし。
無駄に憧れるような手付きだった。
っていうか、あれよな。プロの手さばきって何でもカッコよく見えるよね。
職人系は特に。
「おう、終わったか。お疲れ。そしたら後は餌やりだな。運ぶの手伝ってくれるか?入れたりすんのは俺がやるからよ」
「はい、わかりました」
運ぶのは先程の掃除の時に私の両手両足をプルプルさせてくれた一輪車。
乳搾りの後だとなんか握力まで奪われた気分。
牛達が牛舎の中に戻り柵の中に入っていると、なんかしっくりくる感があるなぁ。
そしてハワードさんが餌を柵の前に並べていった傍からモシャモシャ食べているのを見ると、なんとなく可愛さが増すような。
横並びになっているせいで、まだもらえていない子達が『ごはんマダー?』って、ハワードさんの方へ皆揃って柵に顔を押し付けながら覗いているから余計にね。
「よし!これで大丈夫だな。お前さんもお疲れ!今日はこれで終わりだ。手伝ってくれてありがとうな」
「いえ、でももう大丈夫なんですか?まだ時間には余裕ありますが・・・」
「あぁ、この後は羊達の毛刈り作業だからな。数もそんなに多くはねーし、ウチはバリカンじゃなくて鋏で刈るから素人にはやり辛いんだよ。しかも特に保護効果が付与されているものでも無いからな。さすがに羊を傷付けちまう可能性が高いんだよな」
「なるほど。それは手出し出来ませんねぇ。そしたら見学だけでもお願い出来ます?興味あるので」
「おう、それくらい構わんぞ。だが・・・お前さんも中々珍しい奴だな?」
「そうですか?毛刈りなんてそんな見る機会も無いですから、見れるなら見たいと思うんですけどねぇ?」
先程の乳搾りの手際の良さから見るに、きっと毛刈りだってスマートに行うんだろう。
バリカンで刈るのもササーッってスムーズで気持ち良いんだろうけど、鋏を使うっていうのも職人技が見れるんじゃないかと期待が膨らんでいる現在。
こういう感覚はそう珍しくは無いと思うんだけどなぁ・・・?
「そっちじゃなくてよ・・・。慣れてねぇ奴は、出来るだけ早くこの場所から立ち去りたがるんもんなんだけどなぁ?匂いとか汚れとか・・・諸々、気になんねぇのか?」
「あぁ、なるほど。・・・そういえば、そんなに匂いは気にならなくなりましたね。いつの間にか慣れちゃったみたいです、最初の時ほど強くは感じません。それに、いざとなれば布をまた当てますし。そんな事よりも、私職人さんとかの流れるような見事な手際の仕事を見るのが結構好きなんですよ。なので、是非、見学させて下さい」
「はぁ~、そういうもんかねぇ?ま、お前さんが良いなら良いやな。そんじゃ好きにしてな。毛刈りはあっちでやるからよ、俺は道具取ってくるからあっちで待っててくれ」
「はい、わかりました」
言われた場所で待っている間に朝ごはん。
ピッチフォークを扱ったり、一輪車で繰り返し運んだりで中々の運動量になっていたらしく、思っていたよりも空腹度が下がってた。
手軽に食べれる系の食事しか買っていないから当然だけど、最近立ち食いばっかりしてる気が・・・。
少しは手の込んだ食事も買うべきか・・・。
いや、食事の問題っていうより場所の問題だもんな。意味ないか。
あれだ、今度雑貨屋とかで簡易チェアとか無いか探してみるかな?キャンプとかで使うようなやつ。
最近は屋台街ばっかり回ってるから、お店めぐりしてないし。丁度良いや。
「待たせたな、そんじゃ始めるか」
ハワードさんが到着すると、後ろにはモコモコでまん丸の羊達が。
おぉ~、最初に見た羊は毛刈りの後だったから多少スマートだったけど、毛刈りする前はこんなにまん丸なのか。・・・ちょっと顔をうずめたくなるな。気持ちよさそう。
「・・・ちょっとだけ触ってみても良いですか?」
「おぉ・・・構わねぇけど。やっぱ変わってんな」
そっと怖がらせたりしないようにだけ気を付けて、モコモコの毛に手を沈めてみるとふわふわで温かい。包まれるような感触が気持ちよくて、とても癖になりそう。
少し弾力があるのも面白くて、撫でるというよりはポンポンと弾ませるように触るのが楽しい。
これは癒されるわ。
アニマルセラピーが有用なのも納得です。気持ちもふわふわしちゃう。
「いくら従魔とはいえ、そこまで抵抗もなくモンスターに触るなんてほんと珍しいな。[テイマー]でもないだろうに」
・・・え?
「・・・モンスター?」
「・・・気付いてなかったのか?ここに居るのは全部俺の従魔だぞ?まず鑑定するのがセオリーだろうに・・・お前さん、本当に冒険者だよな?」
いや、だって。
完全に牧場じゃない?ここ。
街の中にある牧場じゃない?
そんな場所にいて、こんな大人しい動物が魔物だとは思わないでしょ!?
っていうか、今私冒険者としての資格を疑われてます!?
そこに関しては自分でも否定しきれないのが辛いのでやめてください!!!
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