66 かわいい男子2人組
ウィリアムさんの思わぬ精神口撃から回復した所で、エイダン君が夕飯の準備を終えてテーブルにせっせと食事を並べていく。
2人から一緒に夕飯を食べていかないか?と打診されたので、もちろん私は快諾して同席。
手土産に持ってきた串焼きやら兎肉やらが役に立っていた様で、中々に肉肉しい食卓にはなってしまったけどボリューム的には十分。
ちなみに飲み物の用意はお酒か水しか無かったみたいで、紅茶をインベントリから出した。
ウィリアムさんはもちろんお酒一択みたいだったけど、エイダン君が紅茶に興味を示したのでおすそ分け。
「ぼく紅茶って飲んだこと無かったんですけど、思ってたよりもずっと美味しいです!甘い飲み物かと思って避けてました」
「あぁ、砂糖を入れて甘くするのも割と一般的です。個人的に私が食事の際は無糖で飲む派なので。ひと息入れたい時とかは甘い方が好みですね」
「へぇ~、ぼくはどうにもジュースとか甘い飲み物が苦手で・・・。コーヒーはちょっとだけ飲ませてもらったんですけど、苦くて苦くて・・・。いっつも水しか選択肢になかったです」
「なるほど・・・?コーヒーにミルクと砂糖を入れるととても飲みやすいと思いますよ?元が苦いので甘ったるくはなりませんし」
「・・・でも、ミルクは子供が飲むものだって・・・。ぼくもう子供じゃないですもん」
かわいいかよ。
「ミルクは別に子供だけが飲むものではありませんよ?私もコーヒーにはミルクが無いと飲めませんし。紅茶にも入れますし、たまにホットミルクも好んで飲みますから」
事実、私はコーヒーの酸味が苦手でブラックではあまり飲まない。
飲むとしたらカフェオレかカフェラテ。ポーションミルクでは酸味が誤魔化せないから、入れるとしたら必ず牛乳を入れる派です。
「・・・子供じゃなくてもミルクを飲んでも良いんですか?」
「大人だって飲みますよ。現に〈まんぷく亭〉でミルクはありましたし、私はそれを注文しましたよ」
「・・・そうなんだ。大人はお酒かコーヒーを飲むって聞いたから、頑張って飲めるようにしたかったんですけど・・・苦いのはどうしてもダメで・・・。紅茶も普通は砂糖をたっぷり入れて飲むのが主流だって聞いたから・・・それに女性が好んで飲む方が多いって」
「お酒はもちろんですが、コーヒーも成人前はあまり常飲しない方が良いと思います。体質的に弱い人とかは胃を壊す事もありますし。紅茶に関しては、その飲み方は貴族の方がよくする方法らしいですよ?代官様の執事さんが言ってました。男性は砂糖を入れずに飲まれる方の方が多いようです」
ちなみに私の友人はカフェイン中毒一歩手前だった。海外生活が長かったせいか、朝起きたらコーヒー、通勤中にもコーヒー、仕事の合間にもコーヒーのヘビーユーザー。
が、しかし、コーヒーを飲み過ぎて胃酸関係のバランスが崩れたのかお医者さんからコーヒー諸々禁止令が出てしまった。
幸い短期間で治って、今ではその禁止令も解かれたけど。
一応現在では、1日に2杯まで、と自分で戒めて量を決めているので同じことは繰り返さないだろうけど。
「そうだ、試しにミルク入りの紅茶でも飲んでみますか?砂糖を入れたものと入れないものと。結構味はまろやかになって印象がだいぶ変わりますよ」
あまり量が多いとお腹がちゃぽちゃぽになってしまうだろうから、私と半分こ。
これを機に紅茶党が増えれば良いな、と思いつつ準備する私。
そういえば、紅茶の本場イギリスでは男性でも砂糖たっぷりの甘々なのが好まれるって聞いた事があるなぁ。何かの動画で、日本のメーカーの紅茶を飲んだ紳士が『香りや味はとても良い。が、甘さが足りない』って言ってたっけ。
個人的にはそのメーカーが出しているやつはガムシロップの味が割と強くて苦手だったから、その意見にはかなり驚いたのを覚えてる。
イギリスメーカーが出している紅茶はもっと甘いらしい。
実際日本でも流通はしているけど、日本人の口に合うように改良されているからだいぶ味は違うみたいだし。
アフタヌーンティーは普通甘味と共に頂くから、それに負けないようにより強く甘くしているんだろうか・・・?
口の中が甘ったるくならないのかちょっと不思議だ。ホットとアイスで嗜好が違うとかもあるかもしれないけど。
「――っん!美味しい!これ美味しいです、カケルさん!」
「・・・まろやかだな。思っていたよりも飲みやすい」
「お気に召して頂けたなら良かった。茶葉によって味や香りは全く異なりますから、自分好みの茶葉を探すのもおすすめですよ?」
ちなみにエイダン君と紅茶談義していたら、ウィリアムさんが少し蚊帳の外で寂しそうにしていたので彼の分も淹れました。
かわいいかよ(PART2)。
「・・・?カケルさんが飲んでいるのは何ですか?なんか甘い香りがしますね?・・・アポル?」
「えぇ、そうです。いわゆるフレーバーティーと言われるものですね。現状この街ではこのアポルティーしか見つけられていませんが、他にも同じように果物とか花の香りがするものもあるんじゃないでしょうか?」
「へぇ~。紅茶って奥が深いんですねぇ。全部同じ味だと思ってたけど、こんなに色んな種類があるんだ・・・」
「私は普段飲まないので詳しくはありませんが、コーヒーも同様に色々と種類があるみたいですよ?こだわりが強い人とかだと淹れる容器から細かく選別するみたいです」
たまに豆を煎る所からこだわる人もいるよね。
バリスタみたいに職業的にこだわるならまだ理解出来るけど、個人的な好みを延々と追及する人もいるし。
もしかしたら紅茶もそういう人は居るのかもしれないけど、私自身はそこまで頑張るつもりは無いし、周りにはあまり紅茶党が居ないので詳しくは知らない。
そういえば、コーヒーならバリスタ。ワインならソムリエ。・・・紅茶は何ていう職業名になるんだろう?っていうか、あれ職業名なの?資格名なの?
今まで疑問に思った事無かったや。
「なるほど・・・。う~ん、でもぼくは、やっぱり紅茶の方が好きですね。・・・師匠?今度から買い出しの時に紅茶を買って来ても良いですか?お値段はそんなに高くなかったと思うんですけど・・・」
「・・・あぁ、もちろん良いとも。今までだって、必要分以外にも好きな物を買っても良いと言ってただろう?・・・飲み物でもお菓子でも好きに買いなさい。俺とお前は遠慮する様な関係じゃないんだから」
「――はい!ありがとうございます!・・・でも、師匠?前みたいに、いきなり1週間分のお肉を買ってくるのはやめて下さいね?確かにぼくはお肉好きですけど、あの量は食べきれませんからね?」
「・・・むぅ、わかった、すまん。・・・あの時はまだ、お前が何が好きなのかはっきり分からなかったからな・・・。シスターから聞いて、肉食ってる時は少し嬉しそうにしていた言ってたから・・・つい・・・」
「それでだったんですか・・・。ぼくてっきり師匠は、金銭感覚とか食料管理能力とかが全く無い人だと思ってました」
あぁ、それは何となく私もそう思ってた。
勝手なイメージで申し訳ないが、鍛冶仕事以外とても無頓着そうな雰囲気を持ってたから。
それに加えて家事関係はエイダン君が担ってたし。
「それはそれで否定は出来ない・・・。昔から自分で買い物とかほとんどしなかったし、ばあちゃんとレアがいたから・・・何とか最低限の生活が成り立っていたんだと思う」
やっぱりかよ。
「それは・・・言っては何ですが、想像通りですね・・・」
「カ、カケルさん・・・。で、でも今はぼくが居ますから!それに少しずつ師匠も料理とか洗濯とか覚えてくれてるんですよ!塩と砂糖をよく間違えちゃったりするけど、最近は少なくなってきたし。ゴシゴシ洗い過ぎて服破れちゃう事もたまにあるけど・・・」
「エイダン・・・そのフォロー・・・?は、俺が何か悲しくなってくるだけだ・・・」
「あうぅ・・・ゴメンなさい」
うん。さりげなく、無意識に、でも容赦なく、ウィリアムさんがポンコツだって事を上手く説明しちゃってるね。
すごく的確に説明されたせいで、ウィリアムさんが撃沈してます。
無垢な少年からの心えぐられるような真っ直ぐな言葉は中々効きそうだ・・・。
私もエイダン君の前では言動に気を付けよう。
しばらく2人が落ち込んでしまったので何とか励まし、お片付けを手伝ってウィリアムさん宅を後にする。
ちなみに他人の家でほとんど勝手を知らないハズの私の方が片付けがスムーズだった事に、またウィリアムさんが落ち込んだのは余談です。
良いんだよ。職人として一流なんだから、家事がポンコツなくらいでバランスが取れてるって事にしちゃえば。あえて本人には言ってないけど。
なんか、見た目は武骨なマッチョ男性がお皿を一枚一枚丁寧に洗ってる所を見たら、何か可愛く思えてね・・・。いっそこのままで居てもらおうと思った次第です。
エイダン君的にもウィリアムさんが有能で完璧だったら、息苦しくなっちゃうかもしれないし。
自分の師匠が努力する所を見ていたら、同じように努力する弟子になるでしょう、きっと。
元々エイダン君は努力する子なんだけどね。
さてさて、夜も更けてきた事だし、冒険者ギルドでまた防御特訓せねば。
まだまだノーランさんを相手にするには不安要素が多すぎる。
いつも通りに足早に変態さん達の間を抜けて訓練場に到着。
相変わらず、この時間帯はとてもガランとして貸切状態。
果たしていつまでこの状態が続いてくれるのか。
その前にフィールドに出るべきだろ、という自問自答。
自ら決めた【鑑定眼】取得までという目安も、そろそろタイムリミットが迫ってきているもんね。
それまでに出来うる限りのスキルアップはしておかなくちゃ。
よし!
気持ち切り替えて特訓だ。
その前に、ちゃんとアラーム設定しなくちゃ・・・。
どうせ聞こえなくてアラーム音無視するんでしょってツッコミは聞かないよ・・・?
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途中にあったイギリス紳士の紅茶の件は多少誇張してます。
ほとんどの人がホットでミルクティーにして飲むのが普通で、砂糖を入れるか入れないかは人それぞれだそうです。
誤解無きように。
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