表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
64/89

61 防御特訓

通常知られている生態で言えば、メスが誘引フェロモンを出しオスを誘惑するのは(ちょう)ではなく()。もちろん例外もあるらしい。



でも私の視界に映る、この華やかで妖艶な美貌の彼女、ローザさんを表すには、やはり蛾よりも蝶のほうが似合う。

夜にしか姿を現さないっていうのも、本来なら蛾の生態に多いハズなんだけどね。


だからこそ『夜の蝶』っていう言葉が出来たんだろうけど。

たしか昔の映画だかドラマだかがきっかけで日本で浸透したって聞いた事がある。



日本で『夜の蝶』と言えば、ホステスさんとかキャバレー等で働く女性を指す言葉として知られているけど、この場で多くの男性の視線を独り占めするこの女性は、とても武骨な建物でむしろ堅苦しい雰囲気のある冒険者ギルドで働いているにも関わらず、彼女を表現する為の例える名詞のトップに『夜の蝶』が来る。



それが喜ばしい事なのか、嫌悪感をもたらすのか、それは個々の価値観や判断それぞれなので妥当な表現になるかどうかは分からないけれど。


少なくとも仕草から判断するに、私の価値観では彼女は草食よりかは肉食タイプに分類されるので、これ以上ないほど上手く表現出来ている言葉ではあるけども。




・・・私の語彙力が低いせいで、他の適当な言葉が浮かばなかったという可能性がおよそ85%ほどはあるかな。



まぁ、私の言語能力が15歳頃から成長していない事は自覚しているので、これ以上自分自身を傷付ける前に思考をシャットダウン。



そもそもギルドに来た目的はほとんど無く、一応夜の時間帯のクエストの確認と、その中でめぼしいものが無かったら訓練場で鍛錬でもするか、というふわっとした動機だったので向かったのはクエストが張り出されている掲示板前。


特に急いでいる訳でも無いし、出来る事ならこの世界観を楽しみたいから基本的にはメニューウィンドウではなく、掲示板を活用していく方針にしました。



もちろん急いでいたら使うし、人だかりで掲示板を活用するのが難しい時とかは別だけど。



冒険者ギルドのクエストは朝・昼・夜で内容が多少変わってくるのは、前にピンクブロンドの受付嬢が示唆していたけれど、その内容まではちゃんと把握していなかった。


一通り目を通したところで理解出来たのは、現段階で私が受けたいクエストは無さそうという事。


朝や昼に比べて、はるかに討伐系のクエストが多い。

街中クエストに至ってはたったの1つ。



割合で言えば、討伐系だけで80%くらいかな?

朝や昼なら採取系もなかなか充実しているけど、どうやら夜は採取に向いていない時間帯のよう。


むしろ普段見る採取系のクエストでは見ない素材の名前ばかり。


あれか。

夜じゃないと採取出来ない生態なのか。


それもちょっと気になるけど、昼間でさえ外に出ていないのに夜に出るとか無謀にも程があるので自重。

なんせ夜の方が魔物は強いらしいから。



というわけで、素直に訓練場に来ました。


ちなみに唯一の街中クエストは他のプレイヤーの方々が取っていきました。

複数人が受けられるみたいだったけど、私がじっくり掲示板を眺めている間に全て受注されていましたよ・・・。




少しお散歩モードの気分から切り替える為に、軽く訓練場の壁沿いをランニングして準備運動は終了。

もちろんスキルの感覚を呼び戻す為に【縮地】【瞬歩】を交えながら。

ちょっとだけ楽しくなっちゃって、ジグザグ走法していたらいつの間にか3周していたのは自分でも引いた・・・。1周で終わらせるつもりだったのに。



『鍛錬用武具』を取り出して形を杖に変更。


人形相手に打ち込みでもしようかとも思ったけど、ふと目に入ってきた振り子装置。

前にノーランさんが【パリィ】の見本を見せてくれた時に使っていたやつ。


何となく、前回のノーランさんの指導の時の様子や会話から、近い将来発生するであろうシークレットクエストが彼の『手加減』関係な気がするので、ちょっと防御技術に重きを置こうかなと思った次第。


というわけで思い立ったが吉日。


今日は振り子を使用して色んな武器で防御する特訓DAY。




振り子装置は端に付いている端末で色々なパターンが設定出来る仕様。

初心者向け用と思われる、1つずつ順番に中心にある人が立つ位置に向かってくるパターンから、通常は振り子の先が分銅型なのから変化してムチっぽい形状になる変形型。

その変形型の上、複数の振り子がランダムに、時には同時に向かってくる上級者向けっぽいパターンまで様々。



とりあえず初心者向けからスタート。

いっそこのまま杖でチャレンジしてみようかとも思ったけど、まずは適性のある長剣からにしてみた。

感覚的には杖のほうが使いこなせる気がするけど、スキル補正とかゲームの仕様とかを考慮して。


これでも一応[剣士]なのでね。




まずは剣でがっちり防御してみる。

【パリィ】のように弾く感じが理想だけど、生憎とスキルは習得出来ていないし、剣の重さがまだ不安要素あるから。

片手で振り回せるくらいステータスが上がったら是非ともチャレンジしてみたいけど。



早速ひとつめが向かってきたので、剣の腹で受け止めるようにして防御。

軽く手にビリッとくる重さ。


振り子のスピードは目に見える程度なので、特に難しい事は無さそう。

合計で8個ある振り子を順に受け止めて、1周したところで杖に持ち替える。


杖の場合は受け止める事は難しいので、受け流すように、軽く弾く感覚で。

やっぱり杖の方がテンション上がるせいで、多めに5周してみた。最後は杖より長い棒にはしたけど。



次は何の武器を使おうかと悩んだけど、スキル関係でいえばあとはナイフだったので選択肢は1択しかなかった。



・・・でもナイフで弾くって難しくない?

いや、杖もそれなり難しいのかもしれないけど、こう・・・リーチが無いぶん、難易度が上がる気がするというか。

単純に手で殴りに行くような感覚になるんじゃないか・・・?


ナイフ『から』防御する方法ならまだイメージ出来るけど、ナイフ『で』防御するのは全くイメージ湧いてこない。



ここはせめて短剣にしておこうか・・・?



少し悩んだ挙句、結局短剣にしました。

多少は刃渡りが長い方がやり易いのかな?って。スキルによる補助が全く期待出来ないから、実際はナイフでも短剣でもどっこいどっこいなんだろうけど。気持ちの問題です。


あわよくば、【短剣さばき】が手に入らないかな?って思惑も多少はある。



少なくとも、【ナイフ術】を指導してくれる人に出会えるまで、ナイフは一旦保留とします。

未だに指導員はノーランさんとヘレナさんしか見た事ないけど・・・。



気持ちを切り替えて、武器も切り替えて。

短剣での捌き方も碌に知らないけれど、とりあえずチャレンジ。


タイミングをしっかり見極めて、受け流すように。

刀身が短くてどうしても軽く弾くようになってしまうけど、片手で扱うから変に力をこめない様に気を付けてみる。


・・・一応しっかり防いではいるけれど、不格好な気がしてならない。

うーん、どうにも上手くイメージも出来ていないかなぁ。


短剣、短剣の動き・・・、ゲームとかで思いつくのは西洋系の短剣と小盾を装備したキャラとかは多いけれど。私が普段使うキャラ系統は割とスタンダードな剣士系とか斧で薙ぎ払う戦士系とかばっかりだしなぁ。

ちょっと嗜好を変えたとしても、魔法系だし。

ソロで軽戦士を扱うのは中々難しくて今まで避けて来てしまったのよな。


コツコツやるのは好きだけど、チマチマ戦うのは嫌だという私の我儘のせい。



ここは一度ヘレナさんに見せてもらうのが一番かな?

お願いして素直に見せてくれるかは分からないけど。・・・【短剣術】取れって私に言ってくるくらいだから、きっと協力してくれるとは思うんだけどね。



あまり上手くいかずに少し落ち込んだ気分を多少切り替える為に、短剣から小太刀に変える。

結果はきっと変わらないんだろうけど、せっかくブランドンさんから貰い受けたのだから、なるべく早く扱えるようになりたいし。


『鍛錬用武具』のおかげで、訓練中は耐久値を気にせず扱えるしね。



小太刀は短剣よりももう少し刀身が長い。が、短剣よりも細い。


結果、難易度は変わらないだろうなっていうのが予想。

多少は映画とかで動きを見た事はあっても、アクションシーンで使われるよりも女性が護身用に取り出すとか、子供の剣術中のシーンとか何なら切腹シーンとかでしか見た事ないし・・・。


古武術の先生が扱っている所なんて一度も見た事がない。



・・・いや、一度だけあるな?


たしか、宮本武蔵の伝承について話していた時に二刀流の話になったんだっけ。

基本左手に持つ小太刀は、主に相手の視線をそらす為に使っていたんじゃないかとか、距離感を誤解させる道具だったとか、胴部分を守る為とかの実用方法だけでなく、歴史として残されている書物について色々語っていたけど、残念ながら当時の私はまだ小学生だったが故にあんまり真剣には聞いていなかったと思う。


途中から先生もそれに気付いて、私が興味を持ちやすいように剣術の型としてではなく、「こんな風に振ったら格好良く見えるだろう?」って半分お遊びを交えながら演武してくれて。



あれは本当にカッコよかった・・・。

剣の舞っていうのかな。優雅で力強くて、速くて、ただひたすらに美しかった記憶。



さすがにあれは・・・真似出来そうにないかな・・・?




でも・・・そうか、あまり型にこだわらなくても良いのかも。

短剣だから、小太刀だからこう扱わなくてはならないって決めつけちゃうと楽しめなくなっちゃうかな?


せっかくのゲームなんだから、現実での流派がどーのこーのと言われるような心配も無さそうだし。



そうして少し気が軽くなったところで、再び装置のスイッチオン。



可能な限りは受け流す事を意識しながら、今までただ突っ立って待ち構えていた振る舞いを変えて、振り子を避ける動きを加え、ひらひらと舞うように、流れるように。


慣れて来た所で気付く。

むしろこっちのほうが実践的な動きなんじゃないかと。



振り子装置の機械性に気を取られて、大人しく中央の足場で棒立ちで防御し続けていた私。

もちろん、タンク役の人とかが使う事が多いんだろうし、それはそれで間違っていないんだろうけど。


少なくとも私のスタイルなら、ただ突っ立っているっていうのは違うよね・・・。

気付くの遅くて自分にがっかり。



まぁ、今気付けたから良しとしましょう。




少しだけレベルを上げて、振り子が来るタイミングをランダムに設定してみた。

ただし同時はなし。必ずひとつだけ。


さすがにまだ同時に来られると、全く対応できる自信がない。

せめて【パリィ】を習得した後じゃないとかな。



そしてさっきはイマイチだった短剣でも同様に、回避しつつ最小限の力で逸らすような動作を再チャレンジ。

・・・多少は見れる感じになったかな?

やっぱりこういう時はTPS視点が欲しいな。あと録画機能。

五感がリアル過ぎて全然客観的に見る事が出来ぬ。それも楽しみのひとつだけどさ。



一通り試したところで一旦休憩を取ろうかと思って、その場を離れた所で気付く。


【ブレイク】をMP分こなすの忘れてた。



危ない危ない。

ただでさえMP少ないのだから、ちゃんと毎回ノルマ達成しないとね。

コツコツ溜めるのは好き。チマチマは嫌い。そしてノルマはコツコツに分類されるのです。これが私の価値観。



きっちりノルマをこなして、訓練場の入り口付近でアイスアポルミルクティーを飲んでひと息。

ついでに焼き串。


ええ、そうです。また匂いの誘惑に負けました・・・。

なんなんだろ、やっぱ炭火で焼くと違うっていうやつなのかな?

あと単純に屋台のおじさんの戦略勝ちってやつか。パタパタうちわで煽いで匂いが広がるようにしているもん。つい釣られちゃう。釣られ過ぎておじさんに顔を覚えられたのはご愛嬌。




さて、腹ごしらえも済んだところでもう一度チャレンジだ。

つい楽しくなって小太刀や短剣ばっかり使ってたけど、本来の目的はノーランさんの攻撃を耐える為の防御特訓なんだから長剣を使わないと。




今までのはあくまで準備運動だよ。


決して遊んでいたなんて事実は無いんだから。





無いったら無いよ!







お読み頂き有難うございます。

誤字脱字報告受け付けております。是非ご指摘ください。


感想、評価、レビューお待ちしております。


ご協力お願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ