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57 ポーションの効果

仕事が本格的に再開し始めたので、更新頻度が遅くなりそうです・・・。

人間、焦っていると時間経過の感覚がおかしくなるのは必然で。


ただひたすら瓦礫を取り除く作業を繰り返して、一体どれほどの時間が経ったのか全くわからない。

それでもやっと何とか、瓦礫の下敷きになっていた人達の体が少し見えてきた事で、私は少しずつ冷静になってくる。


「ここからなら引っ張り出せそうだ!おい、こっち手ぇ貸せ!」


「こっちも行けそうだ!ここの石だけどかしてくれ!」


「おい!誰か先に薬師か治癒師のギルド行って薬か治癒師連れてこい!」


「うぁ・・・血が・・・」


「大丈夫か!おい・・・返事しろよぉ!」



あらかた瓦礫の大きいのはどかし終えて、ここからは本格的に人命救助に入る。

それでも皆動揺は隠しきれていなくて、むしろ下敷きになった人達の姿が見えた事で、周りの人達は逆に冷静さがまた失われ始めて来た。


これじゃ単なる野次馬状態だ。

少しだけクリアになった頭で周りの状況と、私の役割を考えると・・・。



「薬師ギルドは私が行きます!とりあえず手持ちの初級体力回復薬(ローポーション)だけ置いておきますね!」


「おぉ、頼む!助かる!」


親方さんの指示に誰か反応するかと思ったけど、どうやら皆怪我人に意識を取られて聞こえていないみたい。

それなら私が動いた方が良いだろう。

幸い薬師ギルドなら通い慣れているし。怪我人達を引っ張り出すには私じゃ力不足だ。


少しでも時間稼ぎが出来るようにと、以前買っていたローポーションをいくつか置いていき、すぐさま移動。



走りながら少しだけ疑問。

現地の人達は瀕死状態だと、どれだけの回復薬があれば完全回復するんだ?

っていうか、ローポーションの回復量すら知らないぞ、私。


鑑定はこれでもかってくらいしたハズなのに、内容全く覚えていない私は一体・・・。

レベルを上げる事しか意識していなくて、全くスキルを使いこなせていない自分に一種の憤り。


何のためのスキルだよ。馬鹿か私は。




足を止めることなく走り続けて、薬師ギルドに到着。


「レアさん!いらっしゃいます!?」


「――カケル?どうしたの?そんなに大声出して」



勢いよくドアを開けてつい叫んでしまった。

きょとんとした表情で出迎えてくれたレアさんに、すぐさま詰め寄る私。


「建築現場で事故があって!大怪我していると思われる人が3人ほど!ポーションの在庫ありますか!?」


いざ説明しようとすると、焦って上手く出来ない現象がここで。

正直自分でも情報の取捨選択が出来ていない事はわかってるけど、これが精一杯。


せめて怪我人の状態をしっかり確認しておくべきだったかも。後悔してももう遅いのだけど。



「事故で怪我・・・。建築って事はウーリ爺んとこね・・・。どの程度の怪我かで使うべきポーションは変わってくるんだけど・・・、とりあえず中級5本と上級2本を持って行きなさい。身体欠損があれば上級を使った方が良いわ。無ければ中級で十分だと思う。意識があるようなら、出来るだけ飲ませる事。振りかけても効果はあるけど即効性が違うからね。ただ、上級のストックはその2本しか無いから・・・、足りなかったら中級で時間を稼いで、治癒師に依頼する事ね」


「欠損は上級・・・飲ませる・・・足りなかったら治癒師、ですね。わかりました!ポーションの代金は如何ほどですか?」


「対価は後でで良いわ。事態が収まったらまたここへ来て。その時に話しましょ、今は先にポーションを怪我人に届けて上げて?」


「・・・わかりました。ありがとうございます!また後程!」


「はいはい。・・・後で楽しみにしてるわ、ウーリ爺」




ここはレアさんのご厚意に甘えて、ポーションの代金は後払いにしてもらおう。あまり褒められたことでは無いんだろうけど、もしも手持ちの金額で足りないのであれば用意するまでに時間が掛かって、怪我人達の対応が手遅れになってしまうかもしれない。


正直言うと、あんまり頭が回っていなかったっていうのが事実だけど。

焦ったり、切羽詰まっている時って物事をちゃんと判断出来なくなるよね。


ましてや、私にとってレアさんはそれなりに信用している人だから、彼女の言葉を疑ったり、裏があるんじゃないかとか一切考えられなかったし。何か最後にボソっと行っていた気がするけど。



碌に頭が回っていないまま、薬師ギルドに来た時と同様にダッシュで現場に戻る。


近道の為に裏通りを駆使して少しでも時間短縮。

幸い私は方向音痴女子ではない。




「お待たせしました!ポーション貰ってきました!」


「おう!こっちだ!」



親方さんの声が事故の場所から外れた所から聞こえて来たので、そちらへ向かうと地面に寝かされている男性が3人。

1人は出血はしているものの、痛みに呻いていたり少し苦しそうに体を動かしたりで意識はある様子。

もう1人は、明らかに骨折かヒビが入っていると思われる両足が赤黒く腫れ上がっている。呼吸が荒々しくて意識があるかは分からない。

最後の1人は・・・かなり酷い。右腕の肘から下は血まみれで大きく裂傷があるのは分かる。ただおかしな方向に曲がっている事から折れているのは間違いない。もしかしたら汚れを取り除けば骨が見えるのかも・・・。左足はくるぶしから先が完全に潰れている。当然意識は無いだろう。もしあったらショック死してしまっているレベルじゃなかろうか?


あまり直視していると気分が悪くなりそうだ。



「中級ポーションはいくつある!?」


()()()5本です」


「5本か・・・。それなら時間は稼げそうだな。おい、アインとヴァイには直接ポーション飲ませてやれ!ライには振りかけろ!残りの3本全て使って構わん!」



一応上級も2本あるけど、欠損では無いから使用しないって事なのかな?

でも1人は足先が潰れちゃってるんだよね?ここは上級を使うべきだよな?


「親方さん、あの人には上きゅ―」



「親方!まだ1人いました!!フィーアが!う、腕が・・・」


「―っクソ!ポーション1本持ってくぞ!」


私の声を遮ったのは汗だく埃と砂まみれになった、最初に話しかけた大男の人。

最初の印象の時とは違いかなり切羽詰まった表情から、新たに救出された人がかなりの怪我を負っている事が分かる。

親方さんは先に渡したポーションを1本ひったくると、新しい怪我人の方へ走り出して行った。


親方さんと共に怪我人達を看ていた人が、指示通りにポーションを使おうとしていたので私も手伝う。

ついでに念の為に確認。


「こちらの人には上級ポーションが必要ですよね?」


「・・・えぇ、完全に潰れていますからね。でも、この街で上級は滅多に手には入らな――」


「じゃぁ上級を振りかけておきますね」


「ええ、とりあえず中級を・・・え?上級?」


上級ポーションを振りかけると、淡く光りながら徐々に塞がっていく傷口と綺麗に形成されていく足先。

経口摂取ではないからか、即完治では無いようでゆっくり治っていく様はちょっとグロい。


でも、これなら大丈夫そう。


「・・・え?な、なんで?あ、足が・・・。まさか・・・ほ、本当に上級を・・・?」


なんか困惑して固まっている人を放置して、残りの2人にも中級ポーションを使用する。

使用するって言っても、2人とも意識が何とかあったみたいで、体を支えて飲んでもらうだけなんだけど。


直接飲むと即効性が高いとは聞いていたけど、本当に即完治したのには少しビックリ。

両足が腫れ上がっていたのに、瞬時に戻ったし体も起き上がる事が出来ていた。


ただ、出血が酷かった人は少しふらついていたので、失った血液までは戻らないのかな?


「大丈夫ですか?」


「あぁ、何とか。少しクラクラしてるけど、痛みはもう全く無いよ。ありがとう」


「俺も。足も動くし問題無いみたいだ。ありがとな」


「いえ、治って良かった。でも一応無理せずにそのまま休んでいた方が良いと思いますよ?」



いくらもう治ったと言っても、ついさっきまで大怪我していたんだから。

ここは休んでいてもらった方が私の心情的にありがたいし。


看病していた人が未だに固まっているので、軽く声をかけて親方さんが向かった怪我人の方へと向かう。

あの大男さんの焦りようじゃ、恐らく酷い状態だろうから上級ポーションが必要だろう。



「・・・上級?本当に上級?なんで?王都でも中々手に入らんのに・・・?なんで上級?」


あの人大丈夫かな?固まったままずっとぶつぶつと呟いているけど・・・。

ひどい怪我の仲間の姿にショックを受けちゃったのかな?血がダメな人もいるからなぁ。頑張れ。




親方さんを追いかけて辿り着いたのは、事故現場近くの少し瓦礫類がどかされた場所。

最初の時とは違って少し砂埃も落ち着いて周辺状況がクリアになってきている。

屈強な男達による人垣が出来ているので、声をかけつつ割入っていく。


皆中心にいる怪我人が気になって私に気付かず、中々どいてくれないからちょっと時間が掛かった。

少しイラついて無理矢理押しのけようとしてゴメン。でも、上級ポーションを親方さんに渡さないと。



「これで時間稼ぎが出来りゃ良いが・・・。おい!治癒師はまだか!?」


「誰か様子見に行って来い!あっちが渋るようなら無理矢理担いででも連れてこい!」


「お、おれ行ってきます!」


「「俺も!」」


「バカヤロウ!大勢で行ったって意味ねぇだろが!それより冒険者ギルドと商人ギルドに行って少しでもポーションかき集めてこい!」



やっとの思いで中心地に辿り着けば、やはり酷い状態の怪我人と苦々しい表情でその人を囲む親方さん達。

中級ポーションは既に使用した後みたいで、それでもまだ両足が潰れたまま。

両足以外の怪我は治っているみたいで、それがより今の状態を異質に感じさせる。


上半身は綺麗にかすり傷も無いのに、両足の膝から下が潰れているんだから中々グロテスクだ。

変に強調されている感じで、ちょっと精神的にこっちがダメージ受けそう・・・。


多少ぼやけているのはゲーム仕様なんだろうけど。

それでも成人仕様だからか、結構演出がエグイ事もあるのね。



「親方さん。こちらを使ってください」


慌ただしく親方さんの指示に動こうとして、周りの人達が移動した隙にポーションを持って近寄る私。


「―ん?おぉ、アンタか。お、ポーション余ったのか、助かる!」


私が手渡したポーションをすぐさま振りかけた親方さん。


そしてまたしても徐々に足が形成されていく所をついガン見した私はそっと視線をそらす。

やっぱ直視すんのは厳しいものがあるな・・・。



「・・・は?」


「・・・足、()えてる・・・?」


「「「・・・え?」」」


あぁ、うん。生えてるね、足。中々グロイよね。気持ちわかるよ。でもそれをガン見している皆の胆力にも驚いてるよ、私は。


「・・・なんで、治ってるんだ?」


「上級ポーションだからでしょう?欠損があれば上級を使用するべきだと言われましたよ?」


ちゃんとレアさんに言われた事覚えてますもの。



「上級!?上級だったのか!?今の!?」


「っええ、薬師ギルドで中級と上級を貰ってきましたよ?」


「・・・何てことだ。まさか、上級ポーションだなんて・・・」



・・・もしかして、上級ポーションってものすごく貴重だったりする?

親方さんの動揺の仕方から見て察する私。


さっきの看病していた人が固まっていたのも、そういう事か・・・。

やば、何かやらかした感がスゴイ。




先に言い訳させて。





何でもないかの様に渡してきたのはレアさんだから!


私は悪くないよ!!




レアさんがいけないんだよ!!!!







そういえば、レアさん帰り際の笑顔が黒かった気がしてきた・・・。





お読み頂き有難うございます。

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