表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/89

58 職人のタイプ

急いで書いたからちょっと短め・・・。

レアさんが何でもないように渡してきた上級ポーション。


実はかなり貴重なもので、作成出来る薬師はこの国では一握り。

故に、上級ポーションを作れるようになったら国から資格を与えられて、ほとんどの人が王国お抱えの研究所に勤める超エリートコースな人生が約束されるんだとか。



そもそも生産系のジョブには2通りのパターンがあって、大量生産が得意で生産スピードや生産量が多い代わりに質のランクがそこそこだったり、上級〇〇というものを作るのが苦手な『質より量』タイプ。


反対に、作るもののランクが高く上級〇〇と名のつくものの作成を得意とする代わりに、作成するのに時間がかかったり量が少なかったりする『量より質』タイプ。


大体の職人がこのどちらかに分かれていて、主に街中で店を構えていたり、商人ギルドと取引していたりするのは『質より量』タイプの人なんだとか。



もちろん中には大量生産を得意としているものの、質の高い物を生み出す職人もいる。

評判の良い職人というのは、大体が元々大量生産タイプで長年研鑚を積んで良い物を沢山作れるようになったハイブリット職人らしい。

そしてその逆のタイプはとても少ない。


質の良い物を作るのが得意とする人達は、基本的に国のお抱え施設や研究所に入る事が多く、求められるのはただひたすらに質の高い物であるから、生産量を増やす努力はほとんどしないらしい。




そう。

本来なら上級ポーションを作成出来る人物がこの街に居るはずもなく、増してやここは魔物が比較的弱く普段危険にさらされている冒険者でも大怪我を負う事は少ないので、上級の回復薬がストックで存在するとは誰も思っていなかったみたい。

もしあっても、高級品で数が少ない上級ポーション。

そう簡単に手に入れられる物ではない、という先入観からあれだけ皆が焦っていても上級ポーションを手に入れてこいなんて指示は出すはずもなく。




「大体、俺は上級ポーションを間近で見た事すら無いんだ。上級なんて言葉すら頭に思い浮かべる事無かったよ・・・」


「だから職人の会合には顔出してって散々言ってきたのに。ウーリ爺は横のつながりを軽視し過ぎよ。この街に今どんな職人が居て、何を生み出せるのかちゃんと新しい情報は常に入れていかないと。今回の事で身に染みたでしょ?って事で、今度の会合ちゃんと顔出してよね。ブラッドが職人の集まり悪いって言って困ってるのよ」


「お前・・・。んな簡単に流すなよ!?っていうか上級モン作れるの皆知ってたのか!?」


「・・・それとこれとは話は別よ」


「別じゃねぇよ!?」




あれから現場で怪我人が全員回復して、事故の混乱とは別にポーションによる混乱が発生しかけた。

親方さんを始め、職人さん達も私に詰め寄ってきてちょっと困惑した私は、全てをレアさんのせいにして薬師ギルドへ逃げ込む事を決めたわけで。


碌な説明もしないまま、「とりあえず事態が収まったら来いって言われてるんで!」と言って親方さんだけ引っ張ってきた現在。


レアさんはこうなる事を分かっていたのか、したり顔で私達を迎えてくれた。

「ウーリ爺はこれで私に借りひとつね!」と開口一番のセリフと共に。



親方さんが未だに冷静さを取り戻せないまま、どういう事なのかと聞けばあっけらかんと「私、上級ポーション作れるのよ?やっぱり知らなかったのね?」と言って、崩れ落ちた親方さん。

私も何となくそのリアクションから、あぁこれはレアさんが異常なんだと気付いた所存。



親方さんが崩れ落ち再起動に時間がかかりそうだったので、そもそもどれくらいの出来事だったのかを把握したくて色々と質問した結果わかったのが冒頭の『質か量か』の職人の住み分け。



そうなると、薬師ギルドの御三方(三馬鹿)は元々『質』タイプの人達なのか?でも自分で落ちこぼれ発言してたよな?『質』タイプはエリートコースだって言っていたから違うのかな?



「でも、正直な話、今すぐには上級ポーションはまだ作れないのよ。私がギルド支部(ここ)を任されるようになって、一番に始めたのは設備投資だったんだけどまだ足りなくて。王都に出張した時に作ってストックしてたんだけど、ここ最近は忙しくてこの街から出れていなかったから・・・。だから上級はさっきのが正真正銘最後なの。一応、冒険者ギルドと商人ギルド、領主様に多少は卸してあるけど手に入れるには色々手続きが必要になってくるだろうから、今後は気を付けてね?」


「・・・わかった。設備を増やす時には俺に声掛けろ。タダで施工してやる。今回の礼だ。・・・んで?ポーションの代金はいくらくらいだ?場合によっては分割でお願いしたいんだが・・・」


「それなんだけど、今回ギルドから渡したのは中級ポーション7本だったって事にして欲しいのよね。代わりに代金もそれに合わせてもらって良いから。あんまり易々と上級ポーションを卸せるって思われると面倒くさい事になるし。実際に今は手持ちが無いから販売出来ないしね。あと、ウーリ爺が職人の会合に出席するのが条件って事で」


「いや、さすがにそれは・・・」


「ウーリ爺が出席してくれれば他の職人達も出てくるから。お願いよ。結構ブラッドが参っちゃってるから。ね?」


「いや、会合くらい出るのは良いけどよ・・・。金額はちゃんと払うべきだろ・・・」


「でも、かなり高いのよ?上級ポーションって。あんまり大きな金額が動いた事がバレると、今回の事で上級を使ったって言っているようなもんじゃない?それじゃ意味ないし。心苦しいと思うなら今後ブラッドに協力してあげてよ、ブラッドが楽出来れば巡り巡って私に帰って来るし」


「・・・わかった、わかったよ。お言葉に甘えさせてもらうよ。ったく、夫婦の仲が良くて良いこった」


「まだ夫婦じゃないわよ・・・」


「はん、そういうトコはまだ初心(うぶ)なのか。ブランドンが首ったけな訳だ」




顔がほんのり赤く染まるレアさんがかわいくて、ちょっと悶える私。

最初に出会った時に比べて少し肌ツヤも良くなったし、表情も明るくなったから余計に。


地獄マラソン前の方が調子悪そうで、マラソン中と後の方が元気そうなのがちょっと不思議な感じだけど。少しは負担を減らすことが出来たって事で多少は胸を張っても良いのかな。



それにしても、普段の様子からは割とハキハキ喋るし、上司としてガンガン指示も飛ばす面倒見の良い姉御肌なレアさんだけど、婚約者のブランドンさんに対しては陰ながら支えて今回みたいに裏で根回しする献身的な姿勢を見ていると中々キュンキュンしちゃうね。


頭が良くて、実力もあって人を使うのが上手くて、それでいて出しゃばる事無くそっと支えてくれる女性か・・・。

中々いないよね、そんなギャップがかわいい人。



・・・あ、桜子が居たわ。

いや、でも桜子はちょっと存在がチートだからな・・・。もちろん彼女は努力している上でだけど。




そんなこんなで、レアさんと親方のウーリさんとの取引が終了した後。

今日はもう作業を終わらせてまた後日再開するという流れになった。もう怪我人は回復したとはいえ、事故があったし従業員の皆さんのメンタルケアの時間も必要だろうという事で。


親方さんからは、最初のローポーションの代金も含めて少し色を付けた金額を約束してくれた。

片付け作業員は必要だから、再開したらまた依頼を受けてくれとも言われたので二つ返事で了承。




さてさて、思わぬ形で時間が出来た。

次は何をしようかな?




とりあえず、腹ごしらえに〈まんぷく亭〉でも行こうか。

あと資料室でポーションの効能についても調べなくちゃ。レアさんに聞くの忘れたのですよ・・・。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ