56 建築・・・解体?
PCが壊れたかと思ったら、壊れていたのはマウスとキーボードでした・・・。遅れてゴメンなさい。
桜子を見送って何となく喪失感みたいなものを覚えたので、ゲームで紛らわせようとしている私です。
普段そこまで他人に依存はしないタイプだと思っていたけど、案外そうでもないのかもしれない。
たまたまかもしれないし、桜子みたいな友人達だけかもしれないけど。
三十路も超えたっていうのに、未だ自分の事を理解しきれていない大人です。
それでもゲームでソロプレイ思考は揺るがないんだから、増々自分の感覚が謎。
何なんだろうね?これは。
そんな自己分析をしながら教会広場で焼き串齧りつつ、せっせと鑑定中。
あ、レベル上がった。
【道具鑑定】は既にレベル20に達して、後は【生物鑑定】が目標数値に届けばようやく【鑑定眼】が手に入る段階まで来た。
これでレベル14になったから、あともう少し。頑張らなきゃ。
広場はあらかた鑑定し終えたので移動。
さてさて今日は何しようかな?
クエストを見てみる?生産施設行ってみる?散歩する?
正当にクエスト確認しに冒険者ギルドに到着した私です。
生産施設も捨てがたかったけどね。それは合間でも良いかなって。
クエストボードを見ながらどれにしようかなぁと、ひとつひとつ確認。
討伐系は除外して・・・。
やっぱ街中クエストになるかな?採取系も結局フィールドに出ないとダメそうだし。
【鑑定眼】が無いうちはちょっと遠慮したい。
一回躊躇しちゃって無駄にビビってる気もするけど。
良いんだ。フィールドに出るのは【鑑定眼】手に入れたらって自分で決めたから。
うーん、今日はこれにしようかな?
どうせなら今まで関わった事のないものにしようと思って選んだのは、建築現場のお手伝いクエスト。
どうやら街の東側で大規模な工事が行われているらしい。
あんまり東側には行かなかったから知らなかったや。
フィールドに出る玄関口的な扱いだから、普通はしょっちゅう通るんだろうけど。
私が行くのはその手前の屋台街までだから・・・。
早速カウンターへ依頼受注を頼みに行く。
「こんにちは。この依頼を受けたいのですが」
「こんにちは!では、ギルドカードのご提示をお願いします」
今回対応してくれたのは、明るめの茶髪でショートカットが良く似合う元気系の美少女。
少し跳ねるような高めの声が特徴的で、こちらまで明るくしてくれそうな気持ちのよい子。
可愛らしくて、年下好きならつい構ってしまいたくなる感じ。
そもそもショートカットが似合う時点でかなりのレベルだよね。
私はものぐさだから面倒くさくてショートなんだけどさ。
「こちらが依頼書です!クエストが完了したら、サインを貰うのを忘れずにお願いしますね!」
「はい、承知しました」
「では、いってらっしゃいませ!お気を付けて!」
つい釣られて「行ってきます!」って返したくなるね。朝一に会えば元気に気持ちよく一日頑張れそうな子だ。
目的の東門近くまで来たところで、周辺の騒がしさと思っていた光景とはかけ離れている状態に、少し困惑する私。
あれー?
たしか建築現場のお手伝いだよね?
私の目の前には、次々に建物をハンマーで壊していく屈強な体つきの男性達が。
建築というより解体現場の間違いでは・・・?
っていうか、皆ゴツ過ぎてちょっと怖いよ。いや力仕事なんだから当然なんだろうけど。
現代ではあまり見かけないから、さすがに集団で見ると異様過ぎて・・・。
「ぅおらぁっ!っし!おらおらぁ、てめぇら急げぇ!納期に間に合わなくなんぞぉー!――こらぁ!そこ!順番間違えてんぞ!先に崩したら全体が潰れちまうだろが!!こっちが先だ、バカヤロー!!」
様々な怒号と言う名の指示出しがあちこちで行われているけれど、その中でも一際大きくて目立つ存在が。
あの人が監督さんかな?この場合は親方さん?
ちょっと恐る恐るその人物に近寄る。微笑みの仮面だけは張り付けて。
「ん?何だ?一般人は近寄ると危ないぞ?石の破片が飛び散る事もあるからな!ちゃんと離れておけ!」
「あ、いえ、私はクエストでお手伝いに来た冒険者ギルドの者です。責任者の方はアナタでっ―!?」
ちょっと!?何でいきなり腕掴まれて連れてかれるんですかね!?
せめて何か言おうよ!?
「親方!やっとギルドのヤツが来ましたよ!」
「あん?ギルドぉ?冒険者の方か?・・・あぁ、そういや依頼したっけか。おう、んじゃこっち来い。お前は持ち場に戻ってろ」
「うす!」
状況がイマイチ把握しきれないけど、どうやらこちらの男性が親方さん?
表情に刻まれた皺から判断するに、結構お年を召されているんだろうけど・・・。
背は低くしっかり日焼けして、筋肉がガッツリタイプのずんぐりむっくりとした印象で、長すぎるヒゲが特徴的。
あれです。完全にドワーフです。
プレイヤーでもたまにいるけど、現地の方では初めて見る。
それにしてもなんで所々ヒゲを三つ編みにしているのか。種族的なオシャレなんだろうか。
「おう、俺はここを取り仕切ってるウーリってんだ。確認すっけど、お前さんは冒険者ギルドから依頼受けて来たんだよな?」
「はい、そうです。カケルと申します。宜しくお願いします」
「あぁ、そんな畏まんなよ。お互い持ちつ持たれつの関係だからよ。んじゃ早速だけど、仕事して貰おうか。こっち付いてきてくれ」
ウーリさんに付いていくと、既に解体作業を終えたであろう現場。
石と砂と泥と木材がごちゃ混ぜになって、何というか少し汚らしい。
「ここはこの間、解体を終えた現場だ。俺の部下たちは解体は得意だが片付けが苦手でなぁ・・・。いつも処理には手間取ってんだ。今回は範囲が広い事もあって、中々作業が行き詰ってっから人材をギルドに依頼したんだけどよ・・・」
「・・・何か問題が?」
「うーん、何ていうか・・・揃いも揃って依頼を受けて来た奴ら、みーんな片付け下手ばっかり来てよ・・・。お前はソコんとこどうだ?」
あぁ、クエスト内容が建築現場のお手伝いなら、力自慢とかが受けて来た可能性が高いか?
ただでさえ周りは筋肉鎧がスゴイから、仕事内容も力仕事系だと思ってもおかしくないし。
私もそれなりに筋肉質にはしてあるけど、骨格は華奢にしてるし場違い感がさっきからヒシヒシと・・・。
「私は片付けは割と得意ですよ。最初に受けたクエストもゴミ拾いでしたし」
「そうか!そりゃ助かる!良かった良かった!」
その筋肉で背中バシバシはやめて下さい・・・。脳が揺れる・・・。
「そんじゃ、軽く説明すっか。ゴミ拾いやったんなら魔法袋は使ったことあるよな?デカイ石の塊は魔法袋に入れてくれ。そんで、こんくらいの大きさのはあっちに溜めておいてくるか。後で石工職人達が引き取りに来るからよ。あと細かいのはこっちの袋を二重にしてから入れといてくれるか?二重じゃないとすぐ破けちまうからな」
石も積もればかなりの重さになるもんね。
途中で破けたら結構悲惨・・・。袋そのものはいわゆる麻袋的な?現物を見た事無いから確証ないけど。たしか昔はこれに土とか入れて土嚢にしてたんだよね?いや、今でもあるんだろうけど。
ホームセンターとかじゃ『土嚢袋』って売られているから、素材まで気にした事無いし。
興味なければ実物も中々目に入らないもの。
「そんで、泥とか砂はまとめて袋に入れちゃってくれ。むしろ一緒に入れねぇと泥が染み出してくるかんな。詰め終わったのはあっちにまとめておいてくれ。あとは・・・木材か。木材は細かい破片とかだったらそれも袋に入れて、デケェのはここら辺に頼むわ。転がったりしないように積んでくれれば良いからよ」
「分かりました。ちなみに使用して良い道具とかあったりします?」
「おう!道具関係はここにあるの好きに使ってくれ。休憩すんならこっちの日陰を使うといい。何かあったら俺に声かけろ、大体さっきの場所に居るからよ」
「分かりました。では宜しくお願いします」
「おう、よろしく頼む」
道具置き場にあった革製の手袋をはめて早速作業開始。
まずはデカイ資材から片付けていこうか。魔法袋を持って歩き回る、いつかのお仕事を思い出させる行為。
今までのクエストとは違って、あちこちで怒号が飛び交ってかなり騒がしい中でのお仕事。
これはこれで中々に面白い。
掛け声とともに皆で一丸となって作業しているのを見ているのも新鮮。
ちょっとしたお祭り感。
現在は彼らが大通り付近を作業していて、私は少し奥まった所なので東門から出ていこうとするプレイヤー達の視線はそんなにこちらまで届かない。
ただ瓦礫が片付けば更地になるだろうから、いずれ私も丸見えになる。
そこまで心配する必要はないだろうけど。明らかに注目を集めるのは私ではなく、大声を出している彼等だろうから。
ただ、たまーに私の方を見て物珍しげに見ている人が居るのがちょっと気になる。
目が合うと『うわぁ・・・』みたいな目で見られて、さっと視線を反らされるんだよね。
絡んでこないから良いんだけど・・・、なんでそんな同情めいた視線を寄越されたのかが疑問。
何かあったのかな・・・?
今の所私には何も問題は無いのだけれど・・・。
もしかして力仕事向いてないのに無理してるよ・・・とか思われてんのかな?
体格的にゴリゴリマッチョしかあっちに混ざれないとか・・・?
貧弱なヤツだから雑用押し付けられてると思われている疑惑が浮上。
服着てると結構華奢に見えるからなぁ・・・。勘違いされても仕方ないっちゃ仕方ない。
でもゲームならステータスは外見と関係ないハズだけど。
まぁあんまり気にしてもしょうがない。
私も鑑定の為に色々観察してたりするし。
割といかつい見た目の[テイマー]の人が、連れている魔物が可愛らしい見た目ばかりでちょっと驚いた事あるし。
ずーっとモフモフワシャワシャしてて、見た目と中身の印象違い過ぎるだろう!?って内心ツッコミ入れたもの。
そんなこんなで周りの様子を確認しつつ、魔法袋に石を詰め込んでいると容量的に入らなくなってしまった。
ちょうど区画的にキリも良いし、瓦礫による大通りからのバリケードも少し残しておきたいから、取りあえずここまでを綺麗にしようか。
一旦魔法袋を戻して、ギリギリ持ち抱えられる大きさの石材をせっせと運び出す。
ちなみに魔法袋は在庫が1つしかないらしい。なので今後は全てが手作業。
魔法袋は貴重だって女将さんも言ってたもんね。
汗はかかないものの、重いものを運んでいく作業は中々精神的に疲れる。
スタスタ歩ければ問題ないんだろうけど、石を持つと走ったり出来なくてゆっくりとした移動になってしまう。
それを繰り返していると、思考的に疲れる印象。
脳の勘違いを利用されている感じ。ほんとよく出来てるわ。このゲーム。
「バカヤロォ!!そこはまだ手ぇ出すんじゃねぇ!!!」
ドゴォーン!!!
ガラガラガラ!
「うわぁ!」「うぐぁ!」「がぁっ!」
「っクソ!崩れやがった!!全員手ぇ止めて救出作業だ!早く!!」
「お前ら大丈夫か!返事しろぉ!」
「急げ、急げ!」
飛び切り切羽詰まったような声が聞こえたと思ったら、大きめの建物が勢いよく崩れて嫌な音が。
解体中に何か手順を間違ったが故の事故っぽい。
いつかのブランドンさんと出会った時の事を思い出して、咄嗟に魔法袋の中を辺りに撒き散らして空っぽにし、急いで現場に向かう。
土埃が酷くてちょっと視界が見えづらい。
「どいて下さい!」
ガタイの良い男性を押しのけて崩れた瓦礫に魔法袋を当て、次々に仕舞い込んでいく。
容量が少ないせいですぐ満タンになってしまうので、少し離れた所にまた巻き散らかしての一人バケツリレー的な行動の繰り返し。
私の行動に最初驚いていた周りの人達も、少し冷静になったようで「こっちから頼む!」「そっち側を崩れないように支えとけ!」とかって指示が飛ぶようになってきた。
ブランドンさんの時と違って規模が大きい分、緊張感が桁違いだ。
お願いだから無事でいてくれ!
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