50 オタク(仮)
オタク(仮)の彼女を友人関係であろう、もう一人の子に何とか宥めてもらって少し落ち着くのを待っている私です。
ちなみにノートは私がこの子達に話を聞こうとしているのを黙って見守っていてくれている。
意識されたり萎縮されたりしない為に、カウンターの奥で気付かないフリを通すつもりみたい。
さっき彼女が興奮して話に飛び込んで来た時、結構ボリューム大きかったからノートには聞こえているハズだんだけど。
たぶん彼女はそこに気付いてない。
っていうか、ノートの気付かないフリも凄かったけど。一切微動だにせずにスルーしてたもの。
そういう私も絶賛スルー中。
ポーカーフェイスは出来ないんだけど、微笑みの仮面は被れるタイプです。
表情筋トレーニングとかしてたら、逆に顔の力を抜くのが下手になりました。
一歩詰め寄られるとつい反応してしまうから、動揺しているのがバレる時はバレるけど。
そうこうしているうちにどうやら彼女達は落ち着いたっぽい。
勝手にオタク判定したものの、このゲームは成人しかプレイ出来ないだけあって、学生の頃に手を焼いたタイプの人達みたいに中々冷静になってくれない、なんて事にはならなかった。
さすがに社会人ともなれば、ある程度自分をコントロール出来るようになるのかな?
人によるかな?いつまでも学生気分の大人もいるもんな。
少なくとも彼女達が自分でコントロール出来るタイプで良かった。
最悪の場合【洗脳】さんの出番かと思った・・・。まだ使い方わかってないけど。
テンションが落ち着いた彼女達に改めて話を聞くと、どうやらノートのあだ名が定着したのは情報交換やコミュニケーション手段として、ゲームにログインしている時だけ使用と閲覧が出来る掲示板によってだという。
そこでNPCについて語り合うスレッドがあって、ノートの情報もそこで色々と語られていたらしい。
そのNPCスレは受付嬢が大人気ということもあって中々盛況で、閲覧している人数はかなり多いだろうから、自然とノートの事も広まって定着したっぽい。
ちなみにオタク彼女(仮)はノートの『氷帝』呼びを推奨したいんだとか。
冷たい眼差しとその君臨する姿がタマラナイとか何とか・・・。
少しだけまだギラつく目が怖いけど、意味合い的に悪感情は全く無いようなので少し安心。
「ふーん、じゃあやっぱり僕の行動から付けられているだけで、皇帝をなぞらえている訳じゃないんだね?」
「「っ!?」」
「・・・ノート。気配絶って近づくのはやめてください」
しかも何故私の後ろなのですか?思わず表情崩れるところだったよ。
そして私の【気配察知】はまだ役立たずです。だってレベル1だから!
「ゴメンね?代わりに話聞いてくれてありがと。これで誤解しなくて済むよ」
「いえ、話を聞いて私も気になりましたから。ついでに有用な情報も聞けたので」
掲示板とやらは一度覗いてみたいかな?
自分で書き込むのはまだ怖いから出来ないけど、見るくらいなら大丈夫だよね?
「氷帝・・・氷帝がこんな近くに・・・。あぁ・・・まつ毛長い・・・」
「並んでるトコ見れるなんて・・・目に焼き付けなきゃ・・・、出来れば触れ合ってるとこも・・・あぁ、スクショしたい・・・、敬語プレイもアリね・・・やっぱり受けかしら・・・?」
・・・なんか悪寒を感じるのは何でだろう?
何故かオタク彼女(仮)の子の視線は邪な感情が混じっている気がしちゃうんだよね・・・。
オタクの子に偏見なんて無いつもりだけど・・・?むしろ可愛がりたいタイプなんだけどなぁ?
ボソボソと呟くように独り言を言う仕草って、なんか庇護欲かきたてられるのよな。
思わず頭をなでたくなっちゃう。
実際に撫でたら顔を真っ赤にしてモジモジするところまでがセットで。
それをすると友人達に冷たい眼で見られるからやめたけど。
人をペット扱いしちゃダメってことなんだろうね。一応自重してますよ。
つい撫でようと手がピクピク動いているのは気のせいです。
未だに自分の世界から戻ってこないオタク彼女(仮)。
隣りの友人さんはいち早くこちらへ戻って来たみたいで、ノートをチラチラ見つつも肩を叩いて正気を取り戻させようとしている。
幸いすぐに意識を取り戻した彼女だが、急ぎログアウトしなければならないと言って勢いよく頭を下げて挨拶しながら資料室から去ってしまった。
「極上の資料を得たからには描かなきゃ!」と言って出ていったけど・・・。
どういう意味なのか聞く前に速やかに出ていかれたので聞けなかった。
掲示板とかの説明も聞きたかったんだけどな・・・。
プレイヤーとお話するのはまだ私にはハードル高かったのかな。
でもノートのファンならいずれまた資料室で出会えそうだし、まぁいっか。
「なんか騒がしいのか大人しいのかよく分からない人達だったね」
「・・・確かに。でも、良かったですね。ノートのあだ名は悪い意味は無さそうでしたね」
「それでも人を断罪とか君臨とかはあんまり良い感情を持てないけど・・・。まぁしょうがないかな、受け入れるよ」
「それだけ皆ノートの事をよく見ているって事ですね。人気者じゃないですか、喜ばしいのか分かりませんけど」
「わかってて言ってるでしょ?全然喜ばしくないよ」
「でも逆に知れ渡れば、ここで騒がしくする輩やマナー違反者とか減るんじゃないですか?きっと噂が勝手に仕事してくれますよ」
「・・・確かにそうかもね。そう考えれば得にもなるか。僕の読書時間も確保出来そうだ」
元から読書時間は確保していたでしょうに・・・。
まぁノートのスルー能力があれば、噂を聞いてやってきたプレイヤーの視線なんかも綺麗にスルーしていくだろうから、特に問題にはならないだろう。
元より私が心配するような事ではないしね。
いざって時は前の様に周りを凍らせるんだろうから。
問題(?)も解決した事だし、私はそのまま資料室から退出。
ギルドの1階まで下りて、別のクエストを探そうかとも思ったけど先に訓練場へ。
【長剣術】がレベル5になったから、ノーランさんに指導してもらおう。
そういえば昼間に来るのは初めてだったか。
同じ場所でも時間帯が変われば表情も変わるもので。
訓練場に人がいる。
受付周辺に比べればかなり少ないけどね。
でも今まで私が見た事あるのは、ほぼほぼ貸切状態の訓練場だけなのでちょっと違和感。
それなりに少ない人数とはいえ、打ち込みやら素振りやらの音で中々に騒がしい。
魔法のエフェクトは特に視覚への刺激が強い。
私がつい凝視してしまっているからだけど。
ド派手とまではいかないものの、『ザ・魔法』のエフェクトはやっぱちょっと興奮してしまうよね。
非現実感が満載でもし自分であれを扱っていたのなら、きっと病みつきになっていた事間違いなし。
こうやって実際に見ちゃうと憧れちゃうなぁ。
いつかは扱ってみたい。いつかね。
がっつり魔法に魅了されながらも私の足はノーランさんの元へ。
と、思ったがどうやらにノーランさんは別の人を指導中っぽい。
この場合は待ってたら良いのかな?日を改めた方が良い?
混雑している時は予約制とかだったらどうしましょうか・・・?
「ノーランならあと1時間くらいはかかると思うわよ」
「ヘレナさん、お久しぶりです」
「ん、【短剣術】は?取得まだなの?」
「残念ながら・・・。しばらく薬師ギルドでお手伝いしていたので、戦闘技術はほとんど上がっていないんです」
ノーランさんの手が空いていないので、どうしようかと思っていた所に声を掛けてくれたのは、エルフ女性の指導員ヘレナさん。
今日もしっかり女王様の雰囲気を纏っている。
そして【短剣術】を取っていない事にご立腹のご様子。
明らかに眉間に皺がよりましたね・・・。
こちらとしては心中複雑。
指導するのを楽しみにしてくれているのか、段取り悪く愚図だと思われているのか、どっちでしょうか・・・?
「それなら文句言えないじゃない・・・。早く取得しなさいよ、私の指導を受ける気概があるやつ少なくて暇なのよ。さすがにエルフの私でもこうも退屈だとやってらんないわ」
ちょっ・・・、暇つぶし?暇つぶしの為に言ってたの?
そしてヘレナさんは指導も女王様なんですか?厳しいから皆受けないの?
それとも美しすぎて近寄れないの・・・?どっち?
一応周りには何人かプレイヤー居るけど、近寄ってこないから不思議なのですよ。
チラチラ見ては・・・ちょっとこう、何か・・・危ない表情してて・・・。
恍惚としてるのよな・・・。
「ヘレナさんのご指導って結構苛烈なんです・・・?そう言われると思わず身構えてしまうんですが・・・」
「一応は指導の範囲内には収めてるわよ?ただねぇ・・・大した覚悟も無く下心満載で『指導して下さい!』って来られれば、そりゃそれなりの対応にはなるわよね?」
おう・・・。自業自得とも言えるかな、それは。
・・・もしかして今周りで恍惚とした表情の皆さんはその被害者かな?
苛烈な指導で心を折って、さらには通り過ぎてちゃっかり魅了した疑惑。
女王様は女王様でもそっち系か・・・。
実は【鞭術】とか持ってたりしませんよね・・・?
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