46 不可能をクリア
ステータス・スキル表示は変更部分だけの記載にしてみました。スキルレベルだけの変更は省いてます。
レアさんから『地獄マラソン』期間が10日間から7日間へと変更になりそうと言われたのは、翌日の朝一にログインした時だった。
つまり今回のログイン制限時間ギリギリで終わり、という事。
予定外に早く納品予定量を超えるだけでなく、念の為の予備分を含めても7日間で終わりそうというのだから、相当ハイペースなんだろう。
感心するリアクションの私を、呆れたように見るレアさんの視線からは、全力で逃避する私です。
冷静に考えれば、これは別に私のせいでは無いんじゃないかって気がしてきたのですよ。
だってあんな些細で拙い指導によって、スキルが発現するなんておかしいじゃない?
だからあれは元々用意されていた、スキルが発現するストーリーだったんじゃないのかな?って。
別に、自分が引き起こした状況から現実逃避している訳じゃ・・・ないよ・・・?
ストーリーといえば、あれからガスパーさんは一度もここへは訪れていない様子。
少し不気味なほど、何のアクションも無いんだとか。
レアさんへの執着はこの短期間でも察せる程だったのだから、何かしらあってもおかしくは無いんだけど・・・。
何も無い方が余計な心配をしてしまって、警戒心も強くなってくる。
・・・ハズ?
あ、あれ・・・?
もしかして、あそこのドアの前で土下座しているのは・・・ガスパーさん・・・?
少しお茶休憩でもしようかと、作業を中断して出てくると中々衝撃的な光景が。
いや、だって現実で本気で頭を床にこすり付けるような土下座なんて、お目にかかる事滅多にないでしょ。
思わず固まったわ。
一緒に休憩しようとエイダン君を連れて来ていたけど、一応とっさに目は塞いでおいた。
いや・・・なんか、子供には見せてはイケない光景なんじゃないかなって。
獣人の彼は、相手の匂いからある程度感情を推し量れるらしいから、あまり意味を成さないかもしれないけど。
「すまなかったっ!!」
「・・・それは一体何に対しての謝罪なのよ?」
「・・・個人的な私怨で、ここへ圧力を掛けようとした事。と、作業の邪魔をした事。・・・あと、そもそも私怨というのが、見当違いと勘違いから来ていた・・・こと」
「で?あんだけウザったい態度だったのに、何で改めることになったわけ?」
「・・・ウチのギルド長に、この間ここで取った態度について説教されて・・・。その後ギルド長を交えて、鍛冶屋の兄弟と話し合ったんだ。俺・・・しばらく他国に勉強しに行ってたろ?だから、その間のこっちの出来事を何も知らなくて。いや、ギルド長には『知ろうとしなかっただろうが!』って怒られたんだけど・・・。それで、あいつらと話して理解した。あの男はお前を幸せに出来る男だって。それと・・・そもそもレアは、俺に守られるような存在じゃないって事を思い知らされた・・・」
もしかして、そこで初めてレアさんとブランドンさんが結婚間近だという事を知らされたのかな?
「まさかレアが王都の薬学研究所の元エースで、副所長の座を蹴ってこっちに戻ってきていたなんて想像もしていなかったから・・・。それにあの男も、実は知る人ぞ知る鍛冶職人のアルミン・スミス氏の愛弟子だなんて聞いて驚いた。・・・腰を抜かす程」
・・・アルミン・スミス?それがブランドンさんのお師匠さん?
ってか、レアさんってエリートなん?
「・・・そう。私も理由があって隠していた訳じゃないんだけどね。自分から発言する様なことでもないし、特にこの街では経歴や功績、名声なんて意味を成さない事が多いから。アンタはその風習に慣れなかったって事?じゃなきゃ、こんな風に手のひら返しの態度にはならないわよね?」
レアさん結構苛烈ぅ・・・。
「っ!違う!!・・・いや、確かに俺はあいつや、レアの経歴を聞いて態度を改めようと思った。俺よりも上の人だと思ったから・・・。でもそれも最初だけだ。あいつらと話して解ったんだ、俺の価値観は浅ましくて卑しくて、薄っぺらだって。商人にはありがちな思考だけど、それも二流三流レベル。それに対してあいつらやギルド長は本物だった。懐の深さが段違いだ、俺が今まで見て来た人達の中でも」
人をランク付けするのって、人間の性だよねぇ。
「・・・アンタが見て来た人達って、他国の人達でしょうに。しかも多くは帝国の。何でそこと比べちゃうかな?あぁ、でも・・・それはアンタのせいって訳でも無いか・・・」
おっと、ここでも帝国が出てきた?
「この国で価値観や眼を養う前に、あっちに行くことにしたからな・・・。今は後悔してる。まぁ、拒否は出来なかったけどな。それでも見ようと思えば見えたハズなんだ、あっちに居る時もこっちに帰って来た時も。でも俺は見ようとしなかった、自分の事もレアの事も、アイツの事も、他国の事もこの国の事も。なーんにも。ただ『自分が教えられた事』だけに執着して、それに当てはまらない奴は無知で可哀想な奴なんだって思い込んでたんだ」
そうでもしないと自分を守れなかったから・・・?
自分よりも下がいるから、自分はまだマシだって考えるのは、自己防衛でもあるよね。
「・・・アンタも結構可哀想な奴だったのね」
「はっ、ギルド長に絞られなきゃ、今でもその可哀想な奴だったよ」
「アンタんとこのギルド長、結構苛烈だもんね・・・。ちょっと同情するわ、そりゃ価値観を矯正されるわ」
「・・・怖かった」
ちょいちょい心の中でツッコミ(?)ながら、会話を聞いている私。
ストーリームービーを見ている感覚で、ついボーっとしていたらどうやら懺悔イベント(?)が終了しそう。
流石に口を挟む気にはなれなかったので・・・。
その間もエイダン君やパナッシュさん達は、細かくリアクションしていたけど。
何かしら、こちらからアクションしないと進まないストーリーって訳でも無かったんだなぁ。
っていうか、実際クエストに絡んだストーリーだったのかどうかも判断出来ない。
RPGとかによくある、ちょっとした小話的なものなのか、今後に何か絡んでくるのか・・・。
いまいちオンラインものの常識がわからなくて、ちょっと困惑。
特定の会話を聞いていないと発生しないクエストとか、あったりするんだろうか・・・?
そういえば、シークレットクエストとかはその類になるのか。
そうなると、会話内容もちゃんと聞いておかないと、ついていけなくなったりしちゃうかも?
レトロゲームなら選択肢を選べば良いけど、受け答えがリアルに行われるこのゲームでは、きっと選択肢なんて出てこないだろうし・・・。
ヤバイ・・・。
既にさっきの会話がうろ覚えかも・・・。
今後気を付けよう!
そうしよう。
決意も新たに、相変わらずの作業を再開させる私。
ガスパーさん?
もう帰りましたよ?皆に頭を下げていった後、レアさんに「いい加減、作業の邪魔!」って言われて。
一応、目途がついたとはいえ、まだノルマ達成したわけじゃないからね。
ダメ押しの「ギルド長に言いつける」の一言で、顔を真っ青にして慌てて帰っていった。
・・・ちょっとだけ可哀想だったかな。
そんなこんなで皆して作業再開。
今日の私はラストスパートという事で、レアさんと同じ調合(煮出し)作業。
隣りで見てると、さすがエリート。
レアさんめっちゃ仕事はっやい。
何かしらのスキルが作用しているんだろう。
スピードも一度に処理する量も段違い。
・・・本当に私は力になれていたんだろうか?ちょっと疑問だ。
レアさん一人で相当な量を捌いていたと思われる。
上には上がいる、という事をしっかり確認した私です。
いや、知ってはいたけどね。そもそも、私が薬草の切り取りをして、パナッシュさん達が三人がかりですり潰したものを、レアさんは一人で調合してビン詰めしていたんだから。
割合が最初からおかしかったんだもの。
パリーン!
それでも今はレアさんは調合にだけ集中出来ているし、私も多少は手伝っているので、ちょっとは貢献出来ていると信じてる。
ただ、レアさんは何だかんだと、結構人を褒めるのが上手な人なので、鵜呑みにして調子に乗らないように少し気を引き締めよう。
―スキル【集中】がレベルアップしました―
―スキル【集中】が熟練度MAXになりました―
―スキル【集中】が【思考加速】に変化しました―
パリーン!
・・・やっぱり【集中】ってそういう感じのスキルだったのか。
時間経過の感覚がなんかおかしいなぁ、って思ったんだよね。
普通は集中していたら、時間が過ぎるのって速く感じるハズなのに。
そりゃ感覚もズレるわけだ。
ひとつ謎が解けてちょっとスッキリ。
地味に気になってたんだよね。
パリーン!
―スキル【抵抗:恐怖】を取得しました―
うん、ちょっとビン割り過ぎじゃない?
「ケイガ―、ちょっと調子悪いなら休憩入れなさい。あんまり長時間続けられる作業でもないわよ、それ」
「うぅ、すんません姐さん。さすがに疲れが出て来たみたいっす・・・。イアンと代わってもらいます」
地味にエイダン君も午前中にビンを割ってしまっっていたから、気分転換にと午後はケイガ―さんが代わってくれていたんだけど・・・、どうやら彼も集中力が切れてきたっぽい。
結構、神経使うからね、あれ。
でも、そのおかげで?そのせいで?予想外にスキルゲット。
ただあの言いようのない、何となく感じていた不安感は恐怖と捉えられていたのか、とちょっと驚き。
言われてみれば、そうかもしれない。
他から指摘されて自覚するとは思わなかったけど。
基本的に耐性系のスキルは、何度か経験すれば獲得出来そうな雰囲気。
このクエストが終わって余裕が出来たら、毒草とか試して毒の抵抗をゲットしたいかも。
・・・一応、軽めのやつ探そう。
その後、【精密作業】がレベルアップしてだいぶスピードが上がってきた。
かき混ぜる時間?回数?が減ったことで自然と。
エイダン君達やブランドンさんのお弟子さん、孤児院の子達が帰って私達4人で深夜に黙々と作業をしていた時に、待ち望んでいた時間が訪れた。
「しゅ~りょ~~!!!ノルマたっせーい!!!」
「お、おわった~・・・」
「もうムリー、もう立ってられない~」
「・・・さすがに疲れた」
「お疲れ様でした」
何とかノルマを達成して、皆で床にへたり込む。
一応私はピンピンしているけど、周りの空気に合わせるチャレンジ。
この体、肉体的な疲労はあまり感じないのよな。精神的な疲労は普通に感じるけど。
「皆、お疲れ!良くやりきったねぇ、皆偉いぞー」
「「「・・・うっす」」」
あれ、もう3人が眠ってしまう寸前・・・?
ケイガ―さんに至っては完全に目が閉じちゃってる。
残りの2人も、もうまぶたに力が入らないっぽい。
「・・・ちょっと~、アンタたち~、ここで・・・眠ったら、ダメよー」
そういうレアさんも結構危うげ。
流石に目を閉じたりしていないけど、立ち上がるのは無理そう。
・・・ブランドンさんに連絡しとくか。
―シークレットクエスト≪薬師ギルドの不可能ミッション≫をクリアしました―
―称号【生産者の鑑】を取得しました―
―スキル【高速生産】を取得しました―
―スキル【流れ作業】は上位スキル【高速生産】に統合されました―
―該当称号初取得ボーナスにより『中級調合セット』が与えられます―
―クエスト報酬により150000Gが与えられます―
あぁ、これシークレットクエスト扱いだったのか・・・。
しかし、不可能ミッションをクリアってなんか変な感じだな。
男性3人組を担いで、それぞれソファに寝かせながらアナウンスを聞く私。
さすがにレアさんに触れるのは憚られたので、クッションやらを集めてそっとしておいた。
一応今の私は男性なので・・・。うっかり気軽に触れそうになったのは内緒。
レアさんの目が閉じる前に、ブランドンさんが慌てて入ってきたのにはさすがに驚いたけど。
「おう、連絡ありがとうな。こいつは俺が連れて帰るよ。そいつらは、そのままここで寝かしといてやってくれ。あと、お前はどうする?ここで一緒に休んでいくか?」
「いえ、それなら一度宿屋へ行きます」
「そっか。んじゃ一緒に出ようか。鍵は俺が持ってるから」
気持ち的に彼らと一つ屋根の下で休むのはちょっと・・・。
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増:称号
【生産者の鑑】
変:スキル
【集中 LvMAX】→【思考加速 Lv1】
【流れ作業 Lv17】→【高速生産 Lv2】
増:スキル
【抵抗:恐怖】
増:アイテム
『中級調合セット』
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