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44 面倒臭そうな商人

結局あの後は、レアさんがガスパーさんを引っ張って外へ連れ出していった。


ちょっと心配にはなったけど、外から怒鳴り声とかは聞こえてこないので、大丈夫・・・だと思う。

連れて行かれたガスパーさん・・・やっぱりレアさんの前だと態度が違うっぽい。

なんか、すごい従順だった・・・。




単純にイライラしていたから態度が悪かったのか、レアさんにだけ態度が違うのかは、まだわからない。

一応私に対しては、そこまで横柄な態度では無かったし。



情緒不安定なタイプなんだろうか・・・?


どちらにせよ、いい大人が取るべき態度では無いが。





ひと騒動あったおかげで、私とエイダン君はすっかり落ち着いた。手の震えもちゃっかり治ってたし。


逆にパナッシュさん達は未だにプリプリしてるけど。

エイダン君は全く引きずっていない様子。本当に大人だね、君は。




「そちらの作業は進みましたか?随分と集中されていたみたいですけど」


とりあえず話を振って、彼らには落ち着いてもらおう。




「ん?おう!だいぶ進んだぞ!なぁお前ら」


「あぁ、今までの最高記録じゃないか?これ」


「間違いなく新記録だな。驚異的なほど」



見てみると、確かに。

もう後ろに積んでいたストック分が、それぞれ最後の一箱になっている。

今までのペースがどのくらいだったのか、詳しくは知らないけれど少なくとも、私が一人で作業するよりかはずっと早いペースだろう。


作業済みの薬草ペーストがここまで溜まっている事も無かったから、本当にスピードが上がったんだと思う。



「ありがとな、カケル!まさか、ちょっと配置を変えただけで、ここまで作業効率が上がるとは思わなかったよ!」


「「うんうん」」


「お力になれたなら良かったです。正直私も、ここまで効果があるとは思いませんでしたけど」




集中の仕方は人それぞれだしね。

私のやり方が性に合っていて良かった。



「ちなみに俺、なんか新しいスキル手に入ったぞ」


「あ、俺も。えっと、【生産能率上昇】だって。これで捌ける仕事量増えたな!」


「「俺も一緒だ」」


「・・・僕は【流れ作業】というものでした。何が違ったんでしょうか・・・?」


「エイダン君は【流れ作業】を取得したんですか?私とお揃いですね?」


「カケルさんも持ってるんですか!?これって・・・どういうものなんでしょう?」


「あ~・・・。申し訳ない、私も詳しい事は解らなくて・・・。でも、かなり有用である事は間違いないですよ?それのおかげで相当作業スピード上がりましたから」



そういえば、【精密作業】は取得しなかったのかな?

確か私はポーションのビン詰めでどちらも取得した気が・・・。何が違ったんだろうか・・・?



行動の違いとかじゃなくて、異人との違いだったりするのかな。



違いと言えば、3人とエイダン君では取得スキルも違うみたいだし。

何故なんだろう?イマイチ取得条件が読み切れないなぁ。




「なんか・・・【流れ作業】のほうが良さそうだなぁ・・・」


「あぁ、カケルが持ってるなら間違いなさそうだよなぁ・・・」


「羨ましい・・・」



おや、なんだか恨めしい視線がビシビシと・・・。


「それを言うなら、私はあなた達のスキルが羨ましいですよ?私の持っていないスキルを取得したなんて」


『効率』じゃなくて『能率』っていうのが、またね。

単純にこなせる仕事量が増えるって事だもんなぁ。良いなぁ。



「そ、そうか・・・?」


「そう言われると・・・」


「なんか気恥ずかしいな・・・」



モジモジするんでない・・・。

かわいい男の子ならまだしも、君らは結構オジサンと呼ばれてもおかしくない年齢だろうに。

いや、実年齢は知らないけど。


これがエイダン君ならキュンとするところだったかもね。





そうこうしているうちにレアさんが戻ってきた。

ちょっと不機嫌そうな表情だけど、大丈夫だったのだろうか?



「お待たせ。休憩時間ありがとうね。エイダン、もうブラッドが迎えに来てるから帰る準備しときなさい。パナッシュ、ブラッドの弟子2人にも声掛けてきて。あの子達も今日は終わりよ」


「あ、はい!」


「姐さん・・・大丈夫だったんすか?」


「・・・別に。私は大丈夫よ、今不機嫌なのはブラッドのせいだし」


「ブランドンさん・・・ですか?」


「ええ、ったくアイツ、私はどこぞの姫様じゃないんだから。ガスパーを相手するくらい何の問題も無いのに!何が『お前は黙って守られてろ』よ!今までもちゃんと自分の身は自分で守ってきたわよ!今更なんだってのよ!」




えーと・・・。

外でガスパーさんの相手をしようとした所に、エイダン君達を迎えに来たブランドンさんが現れて、ブランドンさんはレアさんが心配故にガスパーさんから遠ざけようとして、先の言葉を放ったらしい。

そしてレアさん的には、今までもガスパーさんを相手に商談をまとめてきたし、そもそも全く脅威じゃないと思っている。

だからわざわざブランドンさんの力を借りずとも問題無いし、そんな急にかよわい女性扱いなんて求めていない。


という事らしい。



結局・・・ブランドンさんはレアさんにベタ惚れ。という話かな?

当人は愚痴っているつもりでも、周りから見れば(聞けば)ただの惚気だぞ、それ。ってやつ?



その証拠に、私以外の3人は何だか生暖かい目をしていますよ。レアさん。

エイダン君はまだイマイチ理解していないようで、レアさんが単純に怒っていると思っているみたい。


お弟子さん達を呼びに行くために動いたパナッシュさんに限っては、レアさんに見えない位置からニヤニヤしちゃってるもの。



後で気付いて、ちょっと恥ずかしい思いをしてしまうんではないだろうか・・・?頑張れ、レアさん。





「おうレア、今度からアイツに何かいちゃもん付けられたら言えよ?」


そうこうしているとブランドンさんが中へ入ってきた。




あれ?結構険しい表情・・・?

レアさんが言っていたよりも実は緊迫感ある感じなの?



「だから、ガスパーとは古い付き合いだし、心配するような事なんて無いってば。多少の無理仕事は振ってくるけど、危害を加えるような奴じゃないわ。そんな度胸ある奴じゃないもの」


「・・・お前、気付いてなかったのか・・・?」


「は?」


「アイツ・・・お前に惚れてんだろ?もしかして、今までずっと気付いてなかったのか・・・?」


「・・・はぁ!?何それ!?そんな事あるわけ――」




「あぁ、そういえばなんか、牽制するような視線を送られてきたことありましたねぇ」


初対面の時にあからさまに睨んできたもんなぁ。思い出した、思い出した。




「なっ!?え・・・本当に?アイツとカケルは一度くらいしか会ってなくない?」


「ええ、その初対面の時に。割と感情むき出しで睨んできたので覚えてますよ」


「ほぉら。カケルにもそんな態度取ってる奴だぞ。ああいうタイプは、だいぶこじらせてっから何されっかわかんねぇんだぞ?大体、この間ウィリアムとの関係を和解させる為に、ギルドに行って話合って分かったけど、色んな有りもしねぇ噂を流してたのアイツだったからな。今だって『自分が用意した人材を派遣するから貴方は手出ししないで下さい。レアの周りにうろつかれると彼女に迷惑なので』って言ってきたぞ」



なんだそれ。

一体何がしたいんだ・・・?


レアさんの部下には横柄な態度。ウィリアムさんの悪評判を流して。婚約者のブランドンさんを遠ざけて。


目的は・・・?




「ちなみにですが、ガスパーさんはブランドンさんとレアさんの関係性はご存知なんでしょうか?」


「・・・知ってるハズ・・・?いや・・・知らねぇかもな、あの態度。レアはアイツに説明した事あったか?」


「えぇ?・・・無いかも。自分から報告したのは、お師匠様と3馬鹿と・・・女将さんくらいかな?」


「そうなのか?もっと色んな人に報告してるもんだと思ってたぞ?」


「だって、一緒にお師匠様に報告行った後すぐに異人到来のお告げが来て、それどころじゃなくなったんだもの。商人ギルドのギルド長からもローポーション増産依頼がすぐに来たし」



そうなると、ガスパーさんはこの2人の関係を知らない可能性が高いか?




あぁ、なんか面倒くさい事になりそうな予感がビンビンと。

プライドが高くて、思い込みが激しいタイプの人間は思考回路がぶっ飛んでるからなぁ・・・。



ガスパーさんがそういう性格かどうかは確定していないけど、たぶん当たってるんじゃないかな?





とりあえずその後、ブランドンさんとレアさんと少し話して、助っ人関係はガスパーさんに頼らず、このままブランドンさんが手配した人材を頼る事に。

レアさんも一人行動は極力避けてもらって、外出する用事があればパナッシュさん達かブランドンさんが付き合う事になった。



他にも色々と聞きたい事はあったけど、エイダン君の腹の虫が鳴いたので今日は解散という事に。

もう夕飯時だったのでね。


長い話に付き合わせてごめんよ。




ブランドンさんとエイダン君、お弟子さん2人が帰った事でここは中々静かになった。

ちなみに、外にいた孤児院の子達はもうとっくに帰っていたらしい。



「とりあえず進捗確認から始めましょ?完成品から確認しよっか」


「はい、ビン詰めはエイダン君にお願いしていたので、既にマジックバッグに入っていますよ」


「あら、そうなの?だから部屋がスッキリしてるのね」



私が作ったものはまだ全部残っているけどね。

エイダン君はレアさんがストックしていった分は、全てビン詰めを終えていた。

そう考えるとかなりのスピードだったな。





「ねぇちょっと・・・量がおかしいんだけど・・・?」


「??少なかったですか?」


「いや、逆でしょ。どう考えても。なんで半日で一日分のノルマ終わらせてんのよ・・・?」



あら?そうだったの?



「そう言われても・・・?御三方も作業が早くなりましたし、エイダン君も波に乗っていましたし、私も初作業だったので張り切りましたし?あれですね・・・()()()()()()




「頑張り過ぎよ!?」




だって楽しかったんだもん。途中から『魔女の秘薬』作ってる気分でした。







お読み頂き有難うございます。

誤字脱字報告受け付けております。是非ご指摘ください。


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