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43 誤解と謝罪

お待たせしました!(泣

洗脳とは・・・強制力を用いて、ある人の思想や主義を、根本的に変えさせること。byウィキ〇ディア




いや、絶対なんか間違ってる・・・。

称号【教育者】に【洗脳】のセットはダメ。

【説得】を持っていたから変化したっぽいけど、それでも【洗脳】はおかしいだろう。


一体どこの独裁者ばりの行動を期待されているんですか?私は。

【説得】に【洗脳】・・・あと【演説】とかきちゃった日には、もう・・・。


それこそ称号【独裁者】とか取れそうだな・・・。

絶対イヤだ!例え他人に見られなくともイヤだ!




っていうか、これパッシブ効果だったらどうしよう・・・?

もう人と会話するのも厳しくないか・・・?


意識しなければ大丈夫だと信じたい・・・。







とりあえず取得してしまったのは、もうどうしようもないので気を取り直して。



先程思いついた通り、エイダン君をこちらに呼ぶとしよう。




トントンと肩を叩くと、少し驚いた仕草を見せるエイダン君。

真面目に取り組んでいたんだろう。私が近づいても全然気づかなかった。


果たして集中する方法を教えたのは良かったのだろうか・・・?

今更だけど不安になってきた。


まさか彼も周りが見えなくなるタイプに変化してしまうとは・・・。




【教育者】の称号を得たそばから、教育の仕方を後悔する私です。

ここまでどっぷりハマるとは思わなかったので・・・。






ちなみに3人組もかなり集中しきっているみたいで、こちらには全く反応が無い。


一応彼らは責任者代理っていう扱いになっていると思うんだが・・・。

もしも問題が起きてしまったら全力でサポートしよう。そうしよう。


それで何とかチャラにしてくれないかな・・・?

私のせいで彼らの監督能力を失わせた、とか思われると申し訳なさすぎる。





奥の部屋にエイダン君を連れて来たものの、一応確認しておかないといけなかった事を思い出す。


「エイダン君は今日はいつ頃までここに?時間とかは決まっているんですか?」


「僕はブランドンさんが迎えに来てくれることになっています。時間はおそらく夕飯時くらいかと。外にいる孤児院の子達は別で、シスターが直接送り迎えをしてくれるって言ってました」


「そうですか。では、まだまだ時間もあるんですね?それならお願いしたい作業があるんですが、頼めます?もし、外の子達の監督があるとかなら全然構わないんですけど・・・」


「いえ、あの子達の面倒を見る子は他にいるので大丈夫です!カケルさんのお手伝いします!」


「それならお願いしましょうか。こちらでビン詰め作業が最後にあるんです。作業そのものはとても簡単なので軽く説明しますね」




実演を交えながら、取扱いや注意する事を説明していく私。

ガラスを割ってしまった際には私の態度には目を瞑って欲しいとも。


「・・・?どういうことですか?」


「うーん・・・。これを言うのは中々恥ずかしいんですけど、私はガラスが割れる音に極端に驚いてしまうんですよ・・・。他人が割ってしまった時はまだマシなんですけど、自分が扱っていて割ってしまうともう酷くて。手が震えてしまうくらいに。・・・まぁ、そんな醜態をこの間パナッシュさんには見られてしまったんですけどね」


ちなみにパナッシュさんは、そんな私の醜態を他の人には話していないっぽい。

ちょっと笑われるネタにされてもおかしくは無かったけど、彼はそうはしなかった。


もしかしたら、彼にとっては大した事じゃないと思っているのかもしれないが、私からすれば有難かった。

こればっかりは自分でコントロール出来ない癖だから。



実際、多少笑われるくらいは全然平気なんだけどさ。

パナッシュさんは人の失敗で笑うような人では無いってことだね。


たぶんケイガ―さんもイアンさんもそうなんだと思うけど。

彼らはノリの良い紳士です。個人的な印象では。




「・・・たぶん、僕も。ガラスが割れてしまったら、かなり動揺すると思います。普段から大きい音は苦手なんです。師匠が仕事している時の音だけは慣れたんですけど、それ以外だとビックリしちゃって・・・。あの、なので、きっと僕もかなりヒドイ態度になってしまうと思うんで、おあいこです!」


これは・・・気を遣われたかな?

嘘を言っている感じではないけど、私の負担というか負い目を感じさせないように、ってことだろうな。



優しい子です。


エイダン君の頭を撫でながらほっこり。


「ありがとうございます。でも、作業する上ではガラスを割ってしまうのはしょうがない事らしいので、あまり神経を張り過ぎないようにして下さいね?」


「はい、わかりました」


「はい。では、私は後ろで作業しているので、何かわからない事とか気になったら気軽に声掛けて下さい。・・・もし、私が反応しなかったら直接肩を叩いてもらって構わないですから」




集中し過ぎる未来しかないので・・・。





しばらく無言で鍋の中身をねりねり。

焦げ付かないようにするには、鍋の底をこするように混ぜ合わせていくと良いらしい。


薬草独特の匂いが無ければ、料理でもしているのかなって気分。

煮込み料理とかほとんど作った事無いけど。




エイダン君の方をチラリと確認すると、中々の作業スピードでどんどんビン詰めしていってる。

元々作業が正確なタイプだからだろうか?手つきが安定していて、危なっかしい所は皆無だ。


年齢に見合わないほど真摯に仕事に取り組む彼を見ていると、少し複雑な気分にもなる。


早熟な人は普通の人に比べて、抱える苦労や対面する苦悩が多そうで。


一応エイダン君には、エイダン君を甘やかせる大人が周りにいるから、そこまで余計な心配をする必要はないんだろうけどね。









そのまま時折エイダン君の様子を見つつも、私も作業を進める。


しばらくして私の集中が途切れたのは、扉の外がなんだか騒がしくなった時だった。


「――――!――――レア――だよ!」


「―――って。―――――不在――連絡―――!」


「――お前らには――いんだ!いいから――用がある―――レアを呼んで――!」


「だから!レアさんが――きたら連絡――!今は――取り下さい!後で――」


「どうせ――!仮眠なんて――時間無い――!奥の部屋――居る――!」




なんか、パナッシュさん達ともう一人が言い争っているような声が聞こえてきた。

扉越しにもかなり声を荒げている事が窺えるんだが・・・。いったい何が・・・?



だんだんと声が大きくなっていることから、おそらくこの部屋に向かってきているような?



私が出ていくべきか迷っていると、そばで思考をシャットダウンさせる大きな音が。




一瞬にして身体が固まってしまったけれど、なんとか首だけ動かして周りを確認すると、エイダン君が顔を真っ青にしていた。

ビンを落としてしまったらしい。



彼の顔を確認した瞬間、私の身体の拘束は解け、すぐさまエイダン君に駆け寄ることが出来た。

私のなんとも言い難い恐怖心よりも、エイダン君の切羽詰まった表情を見た途端、心配する感情のほうが勝ったみたいだ。




「エイダン君、大丈夫ですか?どこか切ったりしていませんか?」


「・・・あ、え、えっと・・・あの、ごめんなさい。う、あ、あの大丈夫・・・みたい・・・です?」



どうやら、私に負けず劣らずエイダン君もかなり動揺している様子。

大きい音が苦手というのは本当だったらしい。


自分よりも狼狽えている人がいると、不思議と自分の方は落ち着くもので。

エイダン君を一歩下がらせて、ガラスの破片はササッと片付ける。


彼の手足を確認してみても、どこも切ったりはしていないみたいで一安心。良かった。やっぱり子供に危ない事させちゃダメだな。罪悪感がハンパない。




エイダン君の手を取って、目を見ながら落ち着かせる。

手が震えていて耳も垂れ下がって、中々かわいそうな状態になってしまっているので。


そういう私の手も少し震えているけど。



「大丈夫。ビックリしてしまいましたね。私もです。落ち着くまで少し、このまま手を握っていましょう?」


こうしていればお互いがお互いに、動揺していることが手に取るようにわかる。

・・・実際に手を取り合っているんだけども。



ガチャ!


「レア!やっぱりここに居たのか!?」


「おい!勝手に入らないでくれ!――っ!?カケル!エイダン!大丈夫か!?」




騒がしいまま部屋に入り込んできたのは、どこか見覚えのある男性とパナッシュさん。

パナッシュさんは私達の姿を確認するなり、すぐさま声を掛けて来てくれた。


対してもう一人の男性は私達には目もくれず、部屋を見回している。何だかあんまり態度がよろしくない印象を受ける。


「おい、レアはどこだ?ここに居るんだろう?」


「―っ!だから!今はいないってさっきから言ってんでしょうが!?いい加減人の話聞けよ!?」


「レアはここの責任者だろう?何故今のこの時期に不在なんだ?そんな余裕は無いはずだ。それとも商人ギルドの依頼を達成させる気は無いってことなのか?・・・どちらにせよ、お前らじゃ話にならん。早くレアをここに連れてこい」


報連相も出来ない使えない部下のくせに。と呟いたのを私は聞こえたぞ。



あぁ、思い出した。

この人、前にレアさんと言い争っていた商人ギルドの・・・ガス・・・ガスパー?だったかな?


初対面の時は、あまりレアさんに強い態度なんて取っていなかった人だったと思うんだが・・・。

無理な仕事の依頼を押し付けてはいたけど。



不躾な視線を送っていたつもりは無いけれど、どうやら私とエイダン君の視線にやっと気づいた様子。



「うん?貴方は・・・?もしかして、前にここで会った事あるか・・・?それにそっちの子は・・・防具屋の・・・」


エイダン君とは面識があるんだね。

そういえば、納品とか依頼受理とかをウィリアムさんの代わりに請け負っていたんだっけ、この子。



「何故君がここに・・・?もしかして、ようやくアイツから解放されたのか?良かったな?」


「っ!?」



解放・・・?エイダン君が?

何の話だ?誰かから何か命令されていたとかなの・・・?




・・・その割にエイダン君の表情が不自然だな。

どこか・・・怒っているような、悲しんでいるような、悔しそうな・・・。そんな表情。





「・・・もしかして、アイツって・・・ウィリアムさんの事ですか?」


「ん?なんだ、貴方も知っていたのか。この子はあの防具屋に色々とこき使われていた子だよ。全く、アイツは子供に仕事を任せっきりで、自分は工房から全然出てこないような奴だ。きっと工房内では、もっとヒドイ扱いを受けているんじゃないかって言われていたんだよ」



・・・この人、商人なんだよな・・・?

ギルドにはブランドンさんとエイダン君も連れて、ウィリアムさんは商人達と和解していってるって話じゃなかったか?


実は全く進展していなかったオチ・・・?



「・・・違う。師匠はそんな人じゃない!この間、ギルドに行って偏見と誤解だったって・・・ちゃんと仲直りしたんです!あなたはあの時居なかったから、知らないかもしれないけど!」



あぁ、単純にこの人の情報が古かったのか。

それでよく商人とかやってられるな・・・。商人って情報戦のイメージなんだけど。



「なっ!?そ、そんな話は聞いて・・・。いや、だがそもそも、そんな誤解されるような態度を取っていたのはあの男のほうだ。現にギルド内では有名な話だったくらいなのだから」



だから自分は悪くないってか?アホか。




「失礼ながら、貴方が今すべきはエイダン君に対して謝罪する事では?貴方も商人なら彼が今どんな感情かは見て取れるでしょう?子供に対して、間違ったことをした大人が謝罪もせずに言い訳をするというのは・・・あまり見せたくない事ですし」


本当は今すぐ「アホかてめぇは!?」って言ってやりたい所だが、一応自重。

あんまり私が感情的になるのもね・・・。




「っ!?・・・そう、だな。・・・すまなかった。よく知りもせずに、君の師匠の人柄を非難した事を謝罪する・・・」


「・・・はい、謝罪を受け取ります」




意外と言っては失礼になるが・・・本当に素直に謝るとは正直思ってなかった。

いや、うん、本当にごめんなさい。

てっきり、なんやかんや言い逃れして立ち去るタイプの人かと・・・。



そして今以上に感情を爆発させずに、謝罪を受け取ったエイダン君にも感心する私です。

いや、こっちも本当にゴメン。


子供ならそこでわめき散らしてもおかしくなかったのに。

彼は私が思っていた以上に大人でした・・・。



しばらく全員が無言で気まずい状態に・・・。








「・・・ねぇ、これは一体どういう状態なの?」







あ・・・。


この雰囲気どうにかして下さい!!(切実












お読み頂き有難うございます。

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