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03 冒険者ギルド

興味を持って頂き有難う御座います。

真っ白だった視界が色づいてくると、ざわざわと喧騒の中のような音も聞こえてくる。





ポンッと、目の前に透明度の高いモニターが私の前に表示されたけど視線はそちらへ向かない。


現実かと見間違うほどの光景に少しの間、私の思考はシャットダウンしていた。





視線の先には次々とプレイヤーと思われる人々が淡い光と共に現れ、その様子を少し驚いたように見ている人々。

広場と思われるこの場所にはそよそよと風が流れ、私の長髪を揺らしそのまま肌をなでる感触も感じられる。


後ろにはシンプルながら綺麗な石造りの噴水があり、特有の水の匂いと流れる流水音が私の耳を癒す。




あぁ、本当にすごい。


思考が死んでいる私は同じ言葉しか頭に浮かばない。





この地に降り立って数秒ほどで、こんなにもリアリティを感じられるなんて・・・。


視覚、聴覚、嗅覚、触覚、これが間違いなく感じられる。

この分だと味覚まで再現されているのだろうか?







ん、いい加減移動しないと邪魔になっちゃうかな。

ポーっとなっていた意識を取り戻し、少し端に寄って、相変わらず私の前に表示されっぱなしのモニターに目を向ける。




-チュートリアルを開始して下さい-


-チュートリアル中はイベントフィールドに移動します-




なるほど、確かに多くのプレイヤーが一か所に移動したら大変だよね。


プレイヤーっぽい人達が現れては消えていくのは、イベントフィールドに移って行っているんだろう。



そういうことなら私も早速。

ポチッと。





おわっ!


イベントフィールドに移動したからか、あれだけざわざわしていた町並みが一気にのどかな光景に変わった。


それと共に視界の端にはミニマップとステータスバーのようなものが表示されている。

モニターは相変わらず前に表示されたまま。


画面には チュートリアルクエストその1 とある。


その下には≪冒険者ギルドへ向かおう≫とあり、マップを見るとギルドへの道筋が表示されていた。



早速ギルドへの道を歩みながら、石とレンガ造りで統一されたいわゆる中世ファンタジーの町並みを眺めつつ進む。

大通りには石畳が敷かれていて所々、欠けているのも見て取れる。とてもリアルな造りだなぁと感心。



小道を覗くと石畳はなく、土がむき出しになっていて人が通ると時折土埃もたっている。




統一された街並みというのはそれだけで美しい。

この街をただ散歩するだけでもしばらく楽しめそうだ。


学生の頃、修学旅行の自由行動で古都をただ散歩したいと言って友人達に満場一致で大反対されたけれど、ここでは反対する人はいない。


欲求に逆らわず満足するまで散歩しようと、脳内でやりたい事リストに加える。





ゆっくりと景色を楽しみながら歩いていると、先ほどの広場ほどではないが少し広がった道沿いに、一際大きな建物が2軒向かい合わせに建っている場所に出てきた。


私から見て、右側には少し無骨な印象ながらも入り口のドアは大きく木で出来て、重く力強さを感じさせる石造りの建物。どうやらこれが冒険者ギルドのようだ。



逆に左側の建物は同じ石造りではあるものの、色付いた石を使用しており所々繊細な装飾と相まってとても綺麗できらびやかな印象を受ける。


おそらく商業ギルドか生産ギルドだろう。


お金かかっていそうだから商業っぽいけど。





冒険者ギルドの前に到着し、無骨な扉を開けるとモニターがまたポンと音を立て出てきた。


画面には チュートリアルクエストその2 とまた出てきている。


≪冒険者ギルドに登録しギルドカードを取得しよう≫




受付は正面にいる女性達の所かな?


キョロキョロと見回し、

いわゆるクエストボード的な沢山紙が張り付けてある掲示板や、

こじんまりとした酒場を兼ねてあるのか5つくらいの丸いテーブルにつまみのような食事とお酒が入っているであろう木のジョッキ片手に談笑している皮鎧や鉄鎧を身にまとった人々、

上の階へ続いている階段、

素材引き取りと道具販売とそれぞれカウンターの前に札が置かれている場所を確認しながら、正面に向かう。




受付は3口あり、いわゆる受付嬢と思われる女性がそれぞれ冒険者の対応をしている最中だ。

とりあえず空くのを待つため真ん中のカウンターの前で3歩ほど離れて待つ。


ここにいてもそれぞれのカウンターの会話がそれなりに聞こえてくるが、

違和感が無く普通の人間のように会話している。


NPCノンプレイヤーキャクターのはずだけれどとても自然だ。一体どれだけ高性能なAIを使用しているのか・・・。




AIロボットを相手に会話するというのは、さして珍しい事じゃない。

昨今のAI技術がとても有能なのは世間一般でも知られているし、医療的なリハビリの場面や娯楽のリラクゼーションだったり、生き物が飼えない人が動物型AIロボットを飼う事も多い。



それでも、表情の機微だったり動作のほんの時差だったりが多少の違和感を感じさせるものだが・・・



受付嬢や、今対応されている冒険者、後ろの小さな酒場にいる人達、掲示板を吟味している少年少女達に、その違和感は全く無い。




本当にここで生活し、生きている人々のそれだ。







このゲームが特別良く出来ているのか、それとも前からVRゲームがこうだったのかは分からないけれど、少なくとも私はこのゲームを買って正解だったと確信する。


たとえゲームシステムが多少複雑だったり、慣れていなかったりで難しかったとしても、この世界観なら私は十分に楽しめるだろうと強く思う。





私が改めてこの世界観に感動していると、どうやら真ん中のカウンターが空いたようだ。


受付嬢と目が合い微笑まれたのでカウンターの前へ進む。





「こんにちは。冒険者ギルドへようこそ。本日はどうされました?」


柔らかいピンクブロンドの髪色に、緩く巻かれ軽めにハーフアップの流れる毛先まで艶のある髪。

ぱっちりとした二重に少したれ目気味な眼と、小ぶりながらもぽってり感のある唇。


その小ぶりな唇から発せられた声は落ち着いてゆったりとした、それでいてよく通る綺麗な声。







天使がいた。








思わずドキッとしてしまったけれどなんとか顔には出さず、どうにかほんの少しだけ口角を上げ微笑みと言えるか微妙なラインの仮面を顔に貼り付けた。



「こんにちは。冒険者登録をお願いしたいのですが」


私から発せられた声は元の私の声をある程度トーンを下げたもの。クリエイトの段階では色々遊んでみたものの、結局はシンプルな変え方にした。


トーンを下げただけなのに、やたらと甘い声になったのは予想外だったけど。






「かしこまりました。ではまずこちらにお名前とメインのご職業を記入して下さい」


差し出されたのは、タブレット端末のようなもので名前と職業の欄がある。

記入とは言っていたけれど実際は打ち込み式のようだ。


2つの項目に打ち込み受付嬢に返す。


「ありがとうございます。では、こちらにどちらかの手を乗せて下さい」


受付嬢がタブレット端末を少し操作すると、またこちらへ向けてくる。


画面には手のひらマークが出ていたので、言われた通りに手を乗せると手のひらをスキャンするように光が行ったり来たりしている。



数秒で読み取り終わったのか、ピィーと音を立て光が消えた。


「ありがとうございます。お預かりします」



また受付嬢にタブレットを返し、いくつか受付嬢が操作している所を見ているとタブレットの端から金属っぽい素材のカードが出てきた。



「こちらがカケル様のギルドカードになります。続けてギルドの説明をさせて頂いて宜しいですか?」

小首をかしげて受付嬢が聞いてくる。







可愛いっ




「お願いします」

んんっ、思わず声に出てしまいそうだったけれどなんとか押しこめ返事。



「はい。ではまず冒険者ギルドは犯罪歴の無い方でしたら、どなたでも登録は可能です。

今回発行したギルドカードは特殊な魔法と素材で作成されていますので、情報を偽ることが出来ないという特徴があります。

故に国を越えても身分証としての効力を持ちますので、今後ご活用下さい」



パスポートの役割もあるって事か。


「なるほど。便利で良いですね。ちなみにですが登録した後で犯罪を犯してしまったらどうなるのでしょう?」


ちょっと気になったので質問。



「はい。犯罪並びにギルド規約違反された方は、ギルドカードが赤くまたはオレンジ色に染まり上がります。犯罪であれば赤く、規約違反であればオレンジ色ですね」


「ギルド規約に関しまして詳しくは、こちらの冊子をお読みください。規約といっても然程難しいことはありません。要は一般の方々に迷惑を掛けないように、というだけです」



そういって渡された冊子はとても薄く数ページくらいしかないから受付嬢の言うとおり簡単な規約なんだろう。後で確認はするけども。



「また、犯罪を犯した方は身柄を国へ、規約違反の方はギルドで身柄を拘束されます。お気を付け下さい」



絶対しっかり確認しよう。






「では、次にギルドランクについてご説明致します。

ランクは下からG、F、E、D、C、B、A、Sの8段階となります。

クエストにもランクがあり基本的には同ランクのクエストしか受けられません。

ですが、3人以上のパーティを組んでいる場合は一番下のランクの方の一つ上までのクエストを受けられます。

ランクの高いクエストになればなるほどクエスト達成報酬が良いものだったり、高いものにはなりますがその分危険度も高くなります。」


「ランクを上げるにはクエストの回数をこなすことで上げられます。ですがランクアップするには、それぞれのランクで街中(まちなか)クエストを3回以上こなす必要があります」




「街中クエスト?ですか?」



「えぇ、クエストには種類があり、

討伐クエスト、採取クエスト、指名クエスト、街中クエストの4種類があります。

冒険者ギルドには、その街の皆さんがお困りな事だったり、お手伝いを求めている人にクエストとして依頼されたものがあり、それが街中クエストです。

危険なクエストではなく、単なる労働力の提供という事が多いので達成報酬は微々たるものですがランクアップするには必要なクエストになります」



人材派遣も担ってるって事か。




「以上で簡単なギルドの説明は終了となります。他にも気になることや詳しい情報などは、そちらの階段の上って頂いた先に資料室が御座いますので、是非ご活用下さい。利用する際は係員にギルドカードを提示してご利用下さい」


カウンターに置いてあったギルドカードをこちらに手渡してきて、受付嬢が言う。


「お時間を頂き、ありがとうございました。ご活躍期待しております」


受付嬢が私と眼を合わせながら、気持ち上目づかいで微笑む。




かっわいっ!




「ありがとうございます。こちらこそ宜しくお願いします」

こちらも内心動揺しながら微笑んで返す。




カードを受け取るとまたモニターが出てくる。


チュートリアルクエスト その3 ≪モンスターを倒してみよう≫




あっ・・・ちょっとは余韻に浸らせてよ。








お読み頂き有難う御座います。

誤字脱字報告受け付けております。是非ご指摘ください。

尚、感想レビューは甘めでお願い致します。筆者はメンタル弱めです。

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