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19 おせっかいの顛末

〈まんぷく亭〉を後にした私がやってきたのはウィリアムさんの工房。


あんな話聞いた後じゃ、ここに来るしかない。

本当はまずブランドンさんの所に寄ったんだけど、「親方は弟さんとこっす!」って言われたんだよね。


ちなみにゴミ拾いの時の事を改めてお礼言われて、軽くテンパった私。



だって!お弟子さん総出で頭下げられたんだもん!

そりゃビックリするよ・・・。

よく見たら、あの時怪我はしていないけど、挟まれていた子も居たし。

その子に限っては涙目だったし。






道中にも何となくゴミがあるかどうか確認しながら歩いてきてしまった。

さすがにこの短期間では増えていなかったけど。

そうなると、本当に長い間こちら側にはクエストで来る人物はいなかったんだろうな。

これも初回ボーナス的な扱いってことなのか。




「カケルさん!こんにちは!」


「こんにちは、エイダン君。ウィリアムさんとブランドンさんはこちらに?」


「はい!あ、どうぞ」


「ありがとう、お邪魔します」


相変わらずキラキラ笑顔で出迎えてくれるエイダン君。




「おぉ、カケルじゃねーか、どうしたんだ?」


「・・・いらっしゃい」


「こんにちは。先程〈まんぷく亭〉の女将さんに少し話を聞きまして、様子を見に来ました」



そう言うと、二人揃って頭を抱えながら肩を落とす。

なんだ?どうしたんだろうか。


「女将か・・・。あの人は本当に怒らせちゃいけねぇな・・・。今回で再確認したよ」


「・・・何かあったらちゃんと相談するようにする。これからは」



あぁ、思い出しちゃったのか。

ご愁傷様でした。

そしてウィリアムさん、トラウマになってません?大丈夫?


「あの・・・カケルさん、その、僕・・・この間、みっともないとこ見せちゃって・・・あの・・・」


モジモジしながら私に前回の事を謝罪しようとするエイダン君の頭を撫でて言葉を止める。


「君は何も恥ずかしい事も悪い事もしていません。むしろ今までよく我慢しました。大変でしたね。・・・でもこれからは少し、周りの人に相談してくれると助かります。もしもウィリアムさんに心配かけたくないと躊躇してしまうなら、その時はブランドンさんでも女将さんでもシスターでも、もちろん私でもいいです。思うことがあったなら、周りの大人に話してみて下さい。場合によってはその時の心配や不安がいとも簡単に解決してしまう事なんてよくある話ですから」


人に相談するというのは大人になる第一歩でもあるんですよ?と一言付け足して、頭を撫でていた手を離す。




「・・・はい。今度からはちゃんと相談します。女将さんも、何かあったら力になるって言ってくれました」



やっぱり女将さんはもう手を打ってきていたね。

仕事が早いんだから。



「カケル・・・その、俺も何かあったら相談していいか?・・・兄貴とばぁちゃんと、女将さん以外の相談できそうな人物に、心当たりが無いんだ・・・」


「ウィリアムさん・・・。えぇ、もちろん構いません。喜んで。いつでも連絡して下さい。話すだけでも頭の整理出来ることもありますから、些細な事でも何でも」


「・・・ありがとう、カケル」




ウィリアムさんが笑った!!!

ちゃんと笑った!

あなた眼尻下がると、途端にかわいい顔になるのね!?なにそれ!


唐突なギャップにキュンとする私。

ゴツイ男のカワイイ笑顔って、結構需要あるよね。私も嫌いじゃないよ!


ウィリアムさんの笑顔にエイダン君まで嬉しそうな顔で尻尾ブンブンさせてる。

私の太ももあたりにちょいちょい当たってて・・・触りたい。




「カケルは魔法使いなのか・・・?あ、いや、すまん何でもない。・・・弟がここまで感情出すのは珍しくてな・・・。出会って間もない人間に心許すなんて今まで無かったんだ」


だからって魔法使い・・・?なんてファンタジーな。あ、ここファンタジー世界か。



「ウィリアムさんは、驚くほど眼に感情が出ていますけどね。割とわかりやすかったですよ?それに表情に関しては私も昔はそうだったので・・・。なんか親近感といいますか・・・」


「眼・・・。ってカケルがか?信じられんな・・・。そんな穏やかそうな、人を安心させるような顔しといて・・・」



それ褒めてます?ブランドンさん。

一応褒められてるよね?でも『しといて』って何だ。


「表情筋トレーニング頑張りましたから。なかなか時間は掛かりましたけどね」


たぶん時間にしたら3年か4年くらいか?おかげで中学時代はフイにしてしまったが。もうちょっと早く始めればよかったんだけどねぇ。まぁ、後悔したってもう遅いんだからしょうがない。



「・・・表情筋。・・・トレーニングってどうやったら良いんだ?」


ウィリアムさんが私の言葉に小さくボソっと。

一応直したかったのか。まぁ、今後の為にも努力出来るならしたほうが得にはなるよね。結構表情って大事だもの。



「ウィリアムさん、トレーニング方法は後で教えますよ。・・・でもそれより貴方が努力すべきは、おそらく会話を諦めない事だと思いますよ?」


「・・・会話を、諦める?」


「えぇ、これは昔の私にも当てはまりますが『どうせ私の意見は上手く伝わらないから』とか『誤解されるの慣れてるし』と思って、言葉で相手に説明するのを諦める傾向が垣間見えるんです。自分の感情を上手く言葉に出来ないからと言って、それを自分から諦めてしまうのはもったいないです。少なくとも相手に伝えようとしている事だけでも伝われば、相手は意外と待っていてくれるものです」


貴方は、話せば性根が優しい事くらいすぐわかりますから。と説教くさい言葉を打ち切る。


思っていたより口うるさい感じになってしまった・・・。

失敗したかな。私もまだまだだな。上手く言葉をまとめられない。



「・・・そうだな。そうかもしれん、俺も協力する。頑張ってみようウィリアム。どちらにせよ商人連中とは一度話しなきゃならんしな」


「・・・俺は、諦めていたのか。・・・自分でも、気づいてなかった。ありがとう、カケル。・・・少し頑張ってみる」



良かった、好意的に受け止められて。

親切とおせっかいは紙一重だよね。気を付けないと。



「偉そうなことを言いました。すみません。それに、あまり気張り過ぎないで下さいね。どうしても気が合わない人物というのも全然いますし、誰にでも好かれなければいけない、なんてことも無いんですから」


「・・・あぁ、わかった。そうだな」





おせっかいオバサンの出番はここまでかな?

全く、自分だって人付き合い上手いわけじゃないのに他人に意見するとか・・・。

私は意外におせっかいなタイプだったのか。反省だ。



くいくい。


ん?エイダン君?

私の服の裾を控えめに引っ張ってくるエイダン君。どうした?



「ぼ、僕はカケルさん好きですよ?優しいし、師匠の事わかってくれるし、僕の事だって・・・。それにカッコイイし!・・・あの、だから、そんなに落ち込まないで下さい。僕は出会えて良かったって思います」



告白?




いや、ちがうか。

何考えてんだ私。


っていうか、顔に出ていたのかな?参った。

余計な気を使わせちゃったかな。


「ありがとうございます。顔に出ていましたかね?すみません。・・・私も君達に出会えて良かったと思います。これからもよろしくお願いしますね」


「・・・あの、僕、獣人だから。・・・その、匂いでなんとなく感情とかがわかるんです。だから、その・・・カケルさんが少し落ち込んだような気がして・・・」



あぁ、なるほど。

そういえば女将さんが獣人の特性が強い子だって言ってたな。




「なるほど。だから声掛けてくれたんですか。ありがとう、優しい子ですね」


驚いたように眼を見開いた後、頬を真っ赤に染めてモジモジするエイダン君。



ほんっとうに君は!!!

かわいい!!





「よし!じゃあそろそろ商業ギルド行くか!いつまでも先延ばしには出来ねぇし、考えすぎても上手くいかんだろ。俺らみたいのは特に。・・・カケル、ありがとな」


「いえ、どういたしまして。では、途中まで一緒に行きましょうか。私も冒険者ギルドへ行くので」


「おう!お前らももう準備はいいか?」


「ああ。大丈夫だ」「はい、僕も」




4人で並んでギルドへ向かう道中、ブランドンさんとも連絡先を交換した。

小声で「アイツらが何か悩んでたら力になってやってくれ、もちろん俺も協力する」と改めて言われた。


ブランドンさんは本当にお兄さんだなぁ、とほっこり。




そのままギルド前まで一緒に行き、彼らは商業ギルドへ、私は冒険者ギルドへと別れた。





ギルドに入って資料室への階段を上っていく。




―シークレットクエスト≪職人と商人の邂逅のきっかけ≫をクリアしました―


―称号【異変に気付く者】を取得しました―

―スキル【観察】を取得しました―

―該当称号初取得ボーナスにより100000Gが与えられます―


―クエスト報酬としてスキル【説得】を取得しました―





≪お知らせします。初めてシークレットクエストをクリアしたプレイヤーが現れました≫


≪シークレットクエストは一回きりのものから繰り返し挑戦出来るものまで様々です≫


≪シークレットクエストに繋がる異変は現地の住人等からヒントを得られることがあります≫


≪積極的に住人と会話や観察をしてみましょう≫


≪詳しくはお知らせからご覧下さい≫





・・・。


嘘やん。



階段の途中で固まる私。


一体どこからがクエストだった!?訳わからん。

とりあえず、資料室行こう。




「やあ、こんにちは。また来たんだね」


「えぇ、こんにちは。まだまだ知らない事が多いですからね」


「ふふ、勉強熱心なのは好ましいね。今日は?どういうのを探しているの?」



うーん、何から調べようか。いっそ最近疑問に思ったことを全部話した方が手っ取り早いか。

という事でノートに称号やスキルの事、魔法袋の作り方や錬金術師についてだとか、あと教会の成り立ちなどを知りたいと伝える。



ノートは手早く資料を用意してくれる。もしかしてここにあるの全部把握してる?凄いね。



「たしかカケルは世界の成り立ちを描いた絵本を読んだんだっけ?だったらこれもかな?ごめんね、これらも最初に渡すべきだったかも」


うん?どういうこと?


聞けば最初に読んだあの絵本はあくまで童話であって、史実に基づいたものとかではないんだそうだ。

ただ登場してきた精霊や聖獣などの存在を把握するためには有用だったからおすすめしたとか。

それでも言い伝えとかにはよくある話だから全てが嘘ではないらしい。



なるほどね。

でも信仰とかの視点で見ればよくある事よな。そういうの。日本なら古事記とか、キリスト教なら聖書とか。ああいうのってストーリーそのものは童話みたいなものじゃない?史実とかぶったぎってる事もよくある。そのくせその時使われた聖遺物がこれです、とかって展示されていたりするし。結構あれって謎だよね。



「気にしなくて大丈夫ですよ。ノートの思惑通りだったと思いますよ?最初にこの世界へ来て小難しい歴史書とか読んでも頭に入ってこなかったでしょうから。ふんわりとここの世界観が知りたいと思っていたのは私のほうですからね」



「そういってくれると助かる。あの時はまだ異人さんがどういう人達なのかよくわかっていなかったからね、ちょっと不安でもあったんだ」



そうは見えなかったけど・・・。



個室がまた空いているという事なので、個室をチョイス。

今回は長く籠るかも、とノートに伝えて部屋に入る。




さて、資料よりもまずはお知らせ見なくちゃ。



――――――――――――――――


名前:カケル

種族:人族

レベル:1

メイン職業:剣士

サブ職業:薬士


HP:100

MP:35


STR(腕力):12

VIT(体力):11

INT(知力):6

MID(精神):10

DEX(器用):10

AGI(敏捷):10

LUK(運) :10


LP:0P

SP:0P


≪称号≫

【人との縁を結ぶ者】【研鑚する者】【異変に気付く者】


≪スキル≫


戦闘:(技術・さばき)

【長剣術 Lv3】【杖術 Lv2】

【棒術 Lv1】【体術 Lv1】


戦闘:(技・強化)

【回避 Lv3】【器用強化 Lv1】

【ブレイク】【剣速 Lv1】


技能:(鑑定・隠蔽)

【植物鑑定 Lv1】【生物鑑定 Lv1】

【道具鑑定 Lv2】【気配察知 Lv1】

【観察 Lv1】


技能:(生産・収集)

【調合 Lv1】【採取 Lv1】

【解体 Lv1】


技能:(思考・感覚)

【集中 Lv4】【鍛錬 Lv3】

【リズム感 Lv2】


その他

【生活魔法】【愛嬌】【習得率上昇(小)】

【説得】

お読み頂き有難うございます。

誤字脱字報告受け付けております。是非ご指摘ください。


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