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18 獣人と鍛冶師と商人

称号【研鑚する者】の効果は、訓練場や個人スペース等で素振りや的当て等の練習行為によるスキル経験値獲得量が10%アップする、というものだった。

称号は鑑定スキルなくても詳細わかるんだ・・・。




取得条件は同じく訓練場や個人スペース等で練習行為を一日のうち合計8時間行った場合に取得するらしい。




私そんなにやってたんだ・・・。


ゲーム内時間の一日の三分の一を訓練に当てるとか・・・。


いや、私的には楽しんでやってたんだけどね。現実でやろうと思っても、もう体力続かないし。

久しぶりに運動したー!って感じでストレス解消にもなった。




軽くストレッチしながらメニューからログやらスキルやらを確認していく。

えーっと、なんか色々変わったのはわかった。


変わり過ぎて頭が追い付かん。




うーんと?

目的の【杖術】は手に入ったんだね、良かった。でも同じタイミングで【棒術】も取得しているのにレベルが違うのは何でだ?杖と棒では動きが違うところがあるからかな?


あとは【体さばき】【手さばき】【足さばき】が統合されて【体術】になったと。


【杖さばき】とかは特に統合されずに変化したけど?武器を使うものとは別って事か?

っていうかスキルって統合されていくのか・・・。


見やすくなったから良いけど。あのままだったら確実にスキル欄見るたびに『さばき』がゲシュタルト崩壊するところだったよ・・・。


ログを見ている今もしてるけど。



基本は『さばき』から変化して上位の『術』になるのは確定かな?

実際途中から明らかに体が動きやすくなったし、意識しているよりもキレがあった気がする。

・・・夢中になり過ぎててあんま自覚ないけど。


こういう時、客観的な視点がないと比較できないよねぇ。




あとは【鍛錬】か。どういう効果だろうか?

ログを見る限り【鍛錬】を取得してからスキル経験値が増えている感じかな?

レベルアップの効率が良すぎるもんな。

あと【集中】の効果もイマイチ謎。レベルアップしているから何かしら効果が出ていたと思うんだけど・・・?




うがぁーーー!!

ダメだ!全然頭が働かない!


もう、こういうの本当に苦手なんだよー。

もういいかぁ。諦めよう。やっぱ【スキル鑑定】取ってからにしよう。


悪いことして取得したスキルじゃないんだから効果も悪いものではない・・・よね?



思わず頭をブンブンと振って、ネガティブ思考を取っ払う。

大丈夫、大丈夫だから。


よし!一旦外に出よう。

そろそろ誰かが来てもおかしくない時間だ。空腹度もまずい事になってきているし、どこかで食事を取ろう。





ピンポーン


≪お知らせします。プレイヤー源三によって〈エーディル湖〉のレア魚『ホワイトレイクトラウト』が釣り上げられました≫







釣り。



釣りもあるのか、このゲーム。いや趣味としては一般的か。おかしくはないよね。うん。



違う。そこじゃない。

釣りあげてもワールドアナウンス流れるのか。そういうものだったんだ・・・。

いまだにわかっていなかったよ。っていうか今もわからないよ、基準何なの?



ギルドを出たところで流れたワールドアナウンスに気を取られつつ足を進める。




っていうか、このゲーム始まってまだ二日目だけど早速趣味に走って、尚且つレア魚釣り上げるって凄いな・・・。


リアルラックなのか持っている技術と知識が凄いのかはわからないが。


あと湖、行ってみたいぞ。




そんなどうでも良い事考えていたら〈まんぷく亭〉の前まで来てしまった。

あー、朝一だけど開いてるかな?

何にも考えずに来てしまったけど、営業時間とかあるよねきっと。



「おや?あぁ、アンタかい。そんなとこ突っ立ってないで、入ったらどうだい?ちょうど今開店するとこだからさ」


そう言って扉を開けてくれる女将さん。

タイミング良くて助かった。



「おはようございます。お邪魔します」


「はい、おはよう。いらっしゃい」




「朝はメニューが1つしかないんだ。選べるものは飲み物だけなんだけど、それでも良いかい?」


ほう?いわゆるモーニングってやつかな?


「ええ、構いませんよ。好き嫌いはありませんし」


「そうかい、そうかい。じゃあ、飲み物は何にする?水か、ワインか、ミルク、ベリージュースから選べるよ」


さすがに朝はビールは無いらしい。でもワインがあるのは何故?


「では、ミルクでお願いします」


「はいよ!」


頼んだ後で思ったけど、ミルクって牛乳じゃなくて山羊の乳だったりするのかな?

飲んだことないからちょっと不安。とちょっと興味。




出てきたモーニングは、トーストにハムとチーズが挟まっているものに目玉焼きが乗っている、シンプルながらもとても食欲を誘う香りを放つ一品だった。


こういうのって何て言うんだっけ?

クロックムッシュだっけ?目玉焼き乗ってると名前違うんだっけか?



ナイフとフォークで切り込みを入れるとチーズが良い感じにトロリと。

あぁ、これ絶対美味しいやつだ。




美味しい・・・。


想像していたよりもずっと美味しい。

運動した後のお腹ペコペコ状態だったからか、特に。

疲労感と空腹感を感じるってマイナス要素にならないんだね!



今度、現実でも作ってみようかな、これ。

そんなに難しそうではないし?困ったら桜子に聞いてみよう、あの子なら大概解決出来る。



いや?むしろ一人で練習して、今度泊りに来た時に朝食で振舞おうか?いつもの感謝の印として。

桜子よりも早く起きなければならないというミッションも発生するけど・・・。


うん、そうしよう。

今回は微妙に心配もかけたしね。




「スープのおかわりは要るかい?」

決意したところで、女将さんからの問い。


「是非お願いします」


男性型のアバターなせいか、現実よりも胃袋大きい気がする私です。まだまだ入る。


「はいよ、おまたせ。そうそう、スミス兄弟だけどね、アンタの言った通り次の日に謝りに来たよ」


あぁ、そういえばそうだった。

お二人はゴミを溜めすぎた事を謝罪しに来たと思うんだけど・・・。


「それで・・・エイダン君のことはどうなりました?」


私から見ればゴミ云々は割とどうでも良い事。いや、実際怪我人が出てるから問題は問題なんだけど。


それよりも、あの時思わず泣き出したエイダン君が言っていた事の方が気になっている。

おそらく女将さんは、そこらへんにも思うところがあったと思うんだよね。



「はぁ・・・そのことなんだけどね。あの二人何にも気付いてなくてさ。全く男ってのは本当に鈍感でしょうがないね。エイダンも中々我慢しちゃう子だからねぇ。・・・聞いたよ、アンタの前であの子泣いたんだって?」


「・・・えぇ。正直驚きましたけれど。いきなりの事だったので」


ただ違和感はあったけどね、漠然と。

初めて会った大人に懐くのが早すぎたりとか。おそらくは、ウィリアムさんが私を受け入れてくれていたからなんだろうけど。

孤児だからなのか、獣人だからなのか、子供だからなのか、もしくはその全ての作用のせいか。

エイダン君はウィリアムさんの世話をしているようで、依存しているようにも見える。


それが悪いとは思わない。

子供が親に依存するのは当たり前だ。なんら不思議な事でもない。


「あの子は犬の獣人の特性が強く出ているみたいでさ、普通犬の獣人は子供の年頃だと親以外に大人には懐かないんだけどね、あの子は孤児だろう?絶対的に信頼できる大人がいない状態が続いててさ。孤児院に来たのは、親を亡くしてからある程度時間が経っちまった後みたいで、シスターにも警戒心むき出しだったんだよ」


今のエイダン君からは想像できないが・・・。



あの時は本当に参っちゃったねぇ・・・と哀愁漂わせる女将さん。

そんなだったんですか・・・。


聞けば、エイダン君はその後、多少は心を開いているシスターに連れられ、職業見学と称して街の色々な場所を案内されている時にウィリアムさんの工房近くで迷子になったんだとか。


本来であれば、匂いをたどってシスターの元に帰る能力があるにも関わらず、見知らぬ土地と心細さから軽いパニックになってしばらくうずくまっていたんだそう。


そこへ現れたのが買い出しを終えて帰ってきたウィリアムさん。



詳しい事はわからないけれど、その時にエイダン君はウィリアムさんに懐いたんだそう。

それからのエイダン君は態度も気持ちも落ち着いたらしく、今の気の利く良い子になっていったらしいんだが・・・。


問題はウィリアムさんが商人の人達に、割と誤解されて嫌悪されつつあったという事。


あくまで女将さんから見て、という事だが関係性は良好には見えなかったという。


あの子も関わりが薄いと人に誤解を与えやすいタイプだろう?と女将さん。



まぁ、確かにね。そういうとこ本当に先生そっくり。私も先生みたいな人と出会って理解出来ていなかったら、彼の人柄を理解するのはもっと時間が掛かったと思う。


私でも理解出来たくらいだから、彼を理解する人もいるにはいる。

が、しかし、一般的に商人と職人は水面下ではお互い舌を出し合うような関係性が大多数だという。


それに拍車をかけてウィリアムさんのあの誤解を与える人柄なもんだから軋轢も増えて・・・。


「そんな時にエイダンが代わりに商業ギルドへ取引するようになってきて、商人連中には『お前たちとまともに付き合っていく気はもう無い』っていう風に取られたみたいなんだよねぇ・・・」



うわぉ。

何て言うか・・・。色々かみ合っていない集大成って感じですか?



「幸い、商人連中はエイダンを蔑ろにするような下衆はいないからね。そこは心配していなかったんだけど・・・。ほら、あの子獣人だろう?しかも犬の。自分の親代わりが悪く言われる状況ってのは、かなりのストレスになるらしいんだよ、習性でさ」


それでアンタと話している時に爆発しちゃったんだろうねぇ。って女将さんに言われたけど、そういう事だったのかエイダン君。



なんか、もう泣きそうになっちゃうよオバサン。




「まぁ、今回の事がキッカケでね、アタシも口出ししたからさ、商人連中と橋渡しするつもりさ。今まで見て見ぬフリになってしまった贖罪のつもりでね、キッチリ最後まで面倒見るよ」



女将さんの事だから今までも、さりげなくフォローしてそうだけどね。

これからはがっつりフォローしていくという事かな。



ちなみに、実はブランドンさんがこの街の職人達のまとめ役的な人だったんだそうで、これからは商人ともちゃんと腹割って話して、健全な関係性を作っていくようにとも説教したんだそう。






もはや女将さんが全部まとめちゃえば?って思ったのは内緒。










お読み頂き有難うございます。

誤字脱字報告受け付けております。是非ご指摘ください。


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