14 友人はかわいい
「あ、そういえば冷蔵庫の中、食材適当に足しといたわよ。ほとんど調味料しか残ってなかったから」
「ほんと?ありがと。金額は?いくら掛かった?」
桜子はたまに来た時に、こうやって面倒を見てくれる。
私が忘れがちなところを正確に把握出来ている、どこかエスパー的な私の生命線な人物。
「お金はいいわ、ただ今日泊めてくれる?明日早いの。良い?」
「もちろん。いつでも歓迎」
「ふふ、ありがと」
そう言って私の肩にもたれかかってくる。
こういう動作が彼女はとても可愛い。気を許している相手にはとことん距離が近くなるので、こちらもどこまでも甘やかしたくなる。
普段がスーパーウーマンだから余計に。
そのままテレビを見続けたり、お互いの近況報告したり、お疲れの様子の彼女のフットマッサージしたりしていると、桜子の眼がだんだんトロンとしてきたのでお風呂に入るように促す。
「桜、頭洗おうか?」
「ん、・・・おねがい」
桜子の髪はとても長いので洗うのも乾かすのも一苦労だ。
それでも彼女は長い状態を維持し続ける。その根性にあっぱれ。
私は手間の掛からないショートだからね!
桜子をお風呂場に向かわせて、私は着替えの用意。
彼女は私よりも胸が大きいので少しゆったりめのTシャツじゃないとダメだ。前に失敗して、かなりエロティックな恰好にさせてしまった。
あれは反省。
「入るよー?」
慣れたもので返事も聞かずに浴室に入ると、もう彼女は浴槽で首がコックンコックンしていた。
浴槽に浸かったまま眠ったら危ないぞ。
そのままいつも通り桜子の髪をほどいて、浴槽のフチに優しく頭を乗せる。
相変わらず手触りの良い髪だこと。
頭を触られて少しだけ眠気が飛んだのか、意識がはっきりしてきたので、今のうちにと思って手早くトリートメントまで終わらせる。
桜子は良くこうやって私に頭を洗わせてくれるので、専用のトリートメントを買った。
ちなみにこの行為はお互い喜んでやっている事。
桜子は面倒な行為は省けるし、私は桜子を甘やかせるし。あと単純に触っていると気持ち良いし。
なんとか意識があるうちに終わったので、浴槽から出て体を拭いて着替えるように促す。
私はその間にドライヤーの準備と洗い流さないタイプのヘアパックを用意。
少しふらつきながら、リビングまで出てきた桜子を鏡面の前に座らせてドライヤーで髪を乾かす。
なんか、こう、桜子のメイドになった気分。
見た目的には執事の方が似合いそうな容姿ですけどね!私は!
少し時間を掛けて髪を整え終えたので、桜子に声を掛けるが返事が無い。
もう完全に私に寄りかかっているし、寝たな。これは。
化粧水と保湿液をたっぷりときめ細かい肌に馴染ませていく。
私たちも、もうアラサーですからね。スキンケアせずには寝られませんよ。
最低限の処理を施して、桜子の肩と膝裏に腕を回していわゆるお姫様だっこ。
こういう時、古武術の応用が効くのがありがたい。
女の私が簡単に人ひとり持ち上げることが可能だ。介護士さんとかも習っている人は多いと聞いたことがある。とっても有用な技術だと思います。
難なく彼女を寝室まで運び、ベッドに寝かせる。
無事に一仕事を終えたので、私もお風呂入ってもう寝よう。
あ、その前に桜子の通信端末充電しとかなきゃ。
手早くお風呂を済ませて本格的なストレッチ。
出来るだけ体の歪みを正すような気持ちで。・・・あぁ、近いうちに整体に行こう。結構歪んでいる感じがする。
最低限のスキンケアと歯磨きをして寝室へ。
既に熟睡している桜子の横に私も入る。セミダブルだから余裕なのです。
よく泊りに来るから枕も二個ありますとも。
それでは、おやすみなさい。
・・・隣でもぞもぞと気配がする?
ゆっくりと眼を開けるとカーテンの隙間から差し込む陽の光がやたらと眩しい。
もう朝かぁ。
「おはよう?」
「ん~?おはよう、桜?」
声に反応して横を見ると、すっぴんの桜子がいた。
かわいい。
「もう起きる?朝ごはん出来たら呼ぶから、もう少し寝てても良いわよ?」
「ん~、おきる~」
そうだ、昨日は桜子が泊まってったんだっけ。
寝起きの体を伸ばすようにして返事する私。相変わらず、桜子は寝起きが良いなぁ、羨ましい。
ただいつも桜子と寝ると私の右腕がやたらと痺れるのは何でだろ?
気ぃ遣って変な体勢になっちゃうのかなぁ?
私の意識がしっかり覚醒したのは朝食が出来上がった頃。
いつも寝起きに変な行動はしないけど、しばらくの間かなりぼーっとしているらしい、桜子情報。
朝食の匂いに釣られてか、胃のあたりが動き始めているのがわかる。
昨日から引き続きしっかり食欲はあるようだ。
いただきますをして一緒に食べ始める。
朝から温かい食事を取るのは久しぶりだ。基本、桜子が泊まっていった日しか有り得ない。
あぁ、美味しい。
そして、どこからともなくやってくる幸福感。
「なんか、昨日からやたら嬉しそうに食べるわね?味付けは変えていないはずなんだけど・・・?」
私の様子がいつもと違うので、桜子的には不思議だったようだ。
そりゃそうか。
「昨日やってたゲームでさ、食事を取る必要があったんだけど、なんかそれからやたらとご飯が美味しく感じるんだよね。今までは桜の料理くらいしか、まともに感じなかったのに。たぶん一種の精神障害的なのだったのかもしれない。でも、それが正常・・・か、もしくは正常に近くなったのかな?まぁそのおかげでいつもよりさらに、桜のご飯が美味しい」
私の中ではこれが正解だと思っている。
今まではやっぱり多少異常があったんだろう。全然違うもの。
「・・・ちょっと。初耳なんだけど!なんでもっと早く言わなかったのよ!十分生活に支障出てるじゃない!」
私の告白に怒り気味に詰めてくる桜子。
「いや、気付いて無かったんだもん。味覚障害っていうほど味が分からない訳でもなかったし?ただ食に興味が無いだけだって自分でも思ってたから」
「・・・もう。ほんとにアンタってば・・・。でも、そうね、味付け変えた時は気付いていたものね、そうヒドイ状態じゃなかったってことかしら?今もしっかり味わってたものね?」
「うん、昨日も言ったけど、桜の料理は美味しいよ」
「・・・ばか」
はっはっは!美女からの「ばか」はご褒美ですよ。
いや私はMでは無いけどね?
「いつも本音で言っているのに」
「もう!いいから食べちゃいなさい。私そろそろ出なきゃだから」
「はーい」
照れる桜子はかわいい。
いつもかわいいけど、もっとかわいい。
いや、Sって訳でも無いんだけどね?
ごちそう様をして、食器を片づけて、仕事に行く桜子を見送る。
「じゃあね、また来週来るつもりだけど予定は大丈夫そう?」
「うん、しばらくお休みだからいつでも」
「そう、わかった。じゃあね」
「はい、いってらっしゃい。頑張ってね」
見送った後は洗濯と掃除。
掃除はまだ良いんだけど、洗濯はちょっと苦手。
人前に出ることも少ないから、重視するのは着心地が一番で皺とかあんまり気にしないし。
あと単純に面倒。
それでもたまに外にでると『シャツの皺がー』って口出ししてくる人がいたりするから、それなりに気を使わなきゃならんのが面倒。
まぁ、嫌なことはとっとと終わらせるに限る。
なんとか終えて掃除もちゃちゃっと。
食器も片付けて、メールチェック。
桜子から、『他にも気になることあったら早めに病院行くように』って。
優しい子だ。
さて、メールも問題ないし急な依頼も無い。そろそろゲーム始めようかな。
まだ朝だけど、時間が許されているんだし問題は無い。
っていうか、もうウズウズしてしまって他が手につかないんだよね、これが。
さっきまで横になっていたベッドに戻りヘッドギア装着。
では、ゲームにログイン。
あ、整体予約入れるの忘れてた。
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