09 鍛冶屋の親方(弟)
FF7に夢中になって、更新が滞る予感・・・。
兄貴の男???
兄貴は男ってこと?いや当たり前だ、兄は男性だろうに。女性なら姉だ。
いや待て、私。冷静になろう。
絶対そんなことを聞いているんじゃないだろ、この人は。
これは・・・もしかして私がブランドンさんの恋人か?ってことを聞きたいのか?
いやいやいや。
今日会ったばかりですし。
そんな軽い女じゃないですし。
・・・っていうか私、今男性の姿だよね!?
違うの!?もしかしてバグとかでそのままの姿になってるとか?
いや、でも男って聞いてきたもんな。間違いなく設定したアバターの姿のはずだ。
ということは何?ブランドンさんて男性が好きなの?
衝撃の事実なんですけど。
いや昨今同性愛者は珍しくはないとはいえ、少数派ではあるよ?
それを今日知り合ったばかりの私が知ってしまって良いのだろうか?
一応現在の日本ではカミングアウトしていない人の性癖を勝手にバラすのをアウティングと言いましてね?
名誉棄損にあたり訴えられるものなんですけども・・・。
ここが中世をモデルにしているからそういことも気にされないのだろうか?
過去の日本も特に罰せられることではなかったし、差別対象にあったという話だしな・・・。
いや、だとしても実の兄だろう?
何でそんなことをするんだ?どんな性癖であっても他人に勝手に話すなんておかしいだろう。
ふつふつと怒りが湧いてきた私。
それが顔や雰囲気に出ていたのだろう、段々と弟さんの顔色が悪くなってきた。
いまさら後悔してももう遅い。過去を変えることなんて出来やしない。
「あなた・・・」「違うのか?・・・ばぁちゃんが言ってた人じゃないのか・・・?」
え?ばあちゃん?
・・・話を聞けばどうやら発端は兄弟がお世話になっているお婆さんが原因のようで。
ブランドンさんからお婆さんに結婚を視野に入れたお付き合いをしている人がいる、と宣言があったそうで。
そのお相手とお婆さんは顔合わせが済んでいて、次は弟に挨拶を、という事でお婆さんから『そろそろアンタんとこにも結婚相手が挨拶に来ると思うよ』と言われたんだそうな。
そうしてやってきたのがこの私。
だから私がブランドンさんのお相手だと勘違いしたと。
いや、早とちりすぎません!?
私ちゃんと『ゴミ引き取りに来ました』って言ったよね!?
聞けば、どうやら私以外にもここへ訪れた人全員に「兄貴の恋人か?」と聞いていたんだそう。
もう!おバカ!
おバカでかわいいなぁ!この人も!
それっていつ紹介されるのかってドキドキワクワクハラハラしてたってことでしょう?
どんだけお兄さんが好きなのさ。
「今までで一番整った顔の人が来たから・・・今度は絶対そうだと思ったんだ・・・」
無表情の割に、感情ががっつり眼に出ている弟さん。
今は叱られた犬のようなシュンと落ち込んでいる眼だ。器用なのか不器用なのか。
見た目的に二十代半ばといったところだろうか。おそらく年下であろう。
思わず実家の犬を思い出し、わしゃわしゃと頭をなでたくなるがここは我慢。
流石に大人相手だからね。うん、子供なら良いって訳じゃないかもしれないけれど。
「ブランドンさん直接聞いてみては?このまま、あらぬ疑いをかけ続けるよりも、お互いに予定と場所を決めて会う方が良いと思いますよ?」
「・・・ん。そうする。・・・そういえば、ばあちゃんにも言われてた」
こら。
忘れてんじゃないよ。
「おそらくブランドンさんも気恥ずかしかったりするでしょうから。出来ればあなたの方から聞いてあげた方がスムーズに行くと思いますよ。お婆さんもそう言いたかったんではないでしょうか?」
家族に恋人紹介するって結構一大イベントだもんね。
「・・・そっか。・・・なかなか来ないから、紹介する気は無いのかなって思い始めてた」
「それは・・・無いと思いますよ?今日会ったばかりですが、弟さん思いでお弟子さん思いの方だなとすぐ分かりましたし。そういった方が家族をないがしろにするとは思えません」
「・・・うん。兄貴は家族思いだし、優しい。・・・結婚したら良い旦那になる」
「では、それを是非お相手の方にも伝えて上げてください」
胸をはって宣言しているけれど、私に言うセリフでは無いぞ。
「・・・ん。わかった。・・・ありがとう」
「いえ。どういたしまして。・・・それで改めてここへ来た目的なんですが、ゴミはありますか?私今ゴミ拾いクエスト受けているんですよ」
忘れちゃいけない、お仕事ですから。
「・・・ゴミ?・・・いっぱいある。外に出してると怒られるから・・・、室内で山になってる」
お前もか!!!
まぁ、うん。ちょっとそんな気はしてた。ブランドンさんは弟もズボラだって言ってたし。
工房の前にゴミが無くて意外だと思ったんだ。
でもこちらも山になるほどだったんですね・・・。室内で生き埋めにならなくて良かったですね。
工房の中に案内されて入っていくと、物は溢れているものの割と静かだ。
ブランドンさんの所は人が多いのもあって外まで騒がしかったけれど。
弟さんはお弟子さんを取っていないのかな?
ゴミ山を片付けつつ話を聞くと、お弟子さんは一人だけだそう。
お弟子さんと言っても孤児院にいる少年に見習いとして職業体験を、とシスターに紹介されて来た子だとか。しばらく面倒を見ていたらその子に懐かれて、正式に弟子にしてくれと懇願されたらしい。
ちなみに今は商品の納品をしに、商業ギルドと冒険者ギルドへおつかいに出ているとのこと。
「・・・エイダンは賢くて気が利く。いつも必要なものを用意してくれている。・・・ご飯も作ってくれるし、掃除もしてくれる。・・・これも、崩れないように置きなおしてくれた」
エイダンというのが少年の名前だ、ちなみに弟さんはウィリアムさん。
ゴミ山を見る限り、エイダン君が賢い事は分かる。ちゃんとサイズ別に分けられていて、崩れないように計画して積み上げられているのが見て取れる。
聞けば、エイダン君は掃除、炊飯、納品、さらには材料の仕入れやギルドから依頼受領までしてくれているそう。
働き者過ぎません!?もう弟子っていうよりも秘書だよ。いや秘書よりすごいよ?掃除やご飯まで作っているんでしょ?
子供にやらせる量では無いんじゃないか?もしかしてもう子供じゃないのかな、少年って言ってたから10代前半くらいだと思っていたけれど・・・。
「ただいま戻りましたー!っ!?」
工房の扉が開き明るいソプラノボイスを放って入ってきたのは身長130㎝くらいの少年。
赤みがかった茶髪でくりくりっとした眼と口角の上がり具合で人懐っこそうな印象を与える。
おそらく知らない人間がいてびっくりしたのだろう、頭の上の耳とおしりから出ている尻尾がぶわっと広がっている。
どうやらエイダン君は獣人の様だ。見る限りは、犬の獣人だろうか?毛がふさふさしていてかわいい。
「・・・どちらさまですか?師匠のお客さん?」
動揺を隠しきれていないまま、師匠であるウィリアムさんに確認を取る少年。
目線はウィリアムさんに向いているけれど、耳がピコピコこちらへ向く。
うん、やっぱりかわいい。
「はじめまして、私はカケルと言います。今日この街へ来た異人で、こちらにはゴミ拾いクエストを受けて来たんです。宜しくお願いしますね」
「あ、はじめまして!エイダンです!ウィリアム師匠の一番弟子です!」
話しかけるために少しかがんでいたら、エイダン君のキラキラ笑顔を真正面で受けてしまった。
あー!もう、かわいいー!
思わず頭を撫でたくなるがここも我慢。もう、この世界かわいい人多すぎ!
「あ、あの!もしかして、あのゴミ山片付けてくれたんですか?」
「はい、片付けました。サイズ別で分けて下さってたので、とても片付けやすかったですよ」
素直に述べれば照れた様子で服の裾も持ってモジモジとしているエイダン君。
キミ、ちょっと可愛すぎませんかね?お姉さんは心配になってきたよ・・・。
プレイヤーの人に絡まれないようにね!?
「・・・エイダン、いつもありがとうな。・・・納品は無事出来たか?」
「師匠・・・。ありがとうございます!納品は問題なくできました!あ、それとこれ依頼書です。今回は冒険者ギルドからですね」
「・・・そうか。わかった、疲れたろ?少し休んできな」
「はい!じゃあカケルさん、ゴミ山ありがとうございました!失礼します!」
「ええ、お疲れ様です」
ウィリアムさんと共にエイダン君を見送って私もそろそろお暇しようかなと思ったところで声を掛けられた。
「カケルは異人だったんだな・・・。他にも来ているのか?」
気付いていなかったのか・・・。女将さんいわく服装で分かるって言ってたけど。
「ええ、今日ここへ来ました。他にも沢山来ていますよ。冒険者ギルドなんかは溢れかえっていましたね。・・・あぁ、そうだ。なのでエイダン君を冒険者ギルドに向かわせるのは控えた方が良いかもしれませんね。余計なお世話かもしれませんが」
かわいい獣人少年ともなれば、やっぱりプレイヤーに絡まれる可能性が無いとは言えない気がする。わからないけど。
「・・・そうか。そうだな、そうする。・・・たぶんあいつは困ったことがあっても我慢してしまうだろうから。ここらへんの奴らは皆エイダンの事知ってるけど・・・。異人がらみじゃどう対応していいかわからない」
まぁ、そうだろうな。異人は一時的にこちらへ来ている旅人のようなものだ。行動原理も分からないだろうし。プレイヤーにそんな危うい思考を持っているかどうか私だって分からない。
「まぁ、エイダン君は賢いですし、私と同じ異人がそんなに危ない事をするとは思えませんが一応気を付けた方が良いかもしれません。皆こちらへ来て少し浮かれているかもしれませんから。・・・もしも異人関係で何か困ったことがあったら私に相談してみて下さい。助けになるかどうかは分かりませんが・・・」
「・・・ああ。ありがとう、そういってくれると助かる。・・・連絡先、交換してくれるか?」
連絡先・・・?
「すみません、連絡先ってどう交換すれば良いのか分からなくて・・・。何か方法があるんですか?」
「・・・あぁ。今日来たばっかりって言ってたな。・・・そしたら教会へ行くといい。そこで連絡先を交換出来るカードが手に入る。金はかからない、カードに登録するだけだ」
ほほう。それならクエスト終わったら最優先で行こうかな。
「分かりました。有難う御座います。お仕事終わったら行ってきます。また後で伺いますね」
「・・・ん。待ってる」
ウィリアムさんの工房を後にして、その後もクエストを続ける私。
そろそろ街の西側はマップも埋まってきた。私のコンプリート魂的にはしっかり街全部を埋めていきたい所。ええ、時間がかかろうともやりますよ。
頃合いも良いのでそろそろ女将さんの所へ戻ろうかな。思っていたより時間はかかっていないけれど、気を付けないと性格的にキリが無い。また今度やろう。
そうして女将さんのお店〈まんぷく亭〉を目指す。
あ、ここにもゴミ。
もちろん逃しませんよ?
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