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近所に勇者が引っ越してきたようです(仮)  作者: 赤点 太朗
前日譚(第零章) 異界の冒険
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0-57 貿易都市

本日2話目です。

ご注意ください。


「もうすぐ街が見える筈だが……」


 四人は地方都市ミルバエルを目指していた。

 暦は2の月の末、1か月半を費やして辿り着こうとしていた。

 ケラテシーを出てすぐの狼騒動は、四人にとってはただの苦労話でしかない。

 半日で巣を見つけたものの、もぬけの殻で、逆に深夜の襲撃を受けたもののタークの仕掛けに2頭が捕まり、残り4頭の内の3頭は難なく討ち取れた。

 残る1頭の指揮をしていた個体が賢かったため、翌日一日掛かりでタークが囮になり漸く討ち取れたのだった。


 もちろん保安隊は場所を特定する事すら叶わなく、テリオたちから申告を受けた隣町の保安隊からの連絡により、その結末を知る事になった。

 連絡を受け取ったケラテシーの保安隊の隊長ミヴァリィは、何もできなかったとただ悔しがるしかなかった。

 一方でユリはホッと胸を撫で下ろすのだった。


「ねぇ、本当にこっちで良いの? また国境越え騒動とか嫌だからね」

「ありゃどえれぇ苦労したでかんわぁ。たぁぎゃぁにしといてちょうよ」

「失礼な奴らだなぁ。同じ過ちはしてないだろ?」

「今回がそれを覆すって事にならなければ良いんだけどねぇ」

 今迄も何度も繰り返してきた会話を聞き、溜め息をついて話し掛けるサークヤ。

「まぁまぁ。でももう近いんでしょ? そのルバエルって街は」

 近いとは言っても国境も近い町なので、”国境を越えてしまうかもしれない”という不安は拭えないのであった。

「ああ。仕方ない、街道に出るか」


 これで普通の道に出られると安堵した一同だったが……

「いや、待ってください。あれって鉱石じゃないですか?」

 サークヤが指を指した所にコロリと転がる石。

「ほう、あの色合いは鉄の鉱石みたいだな」

 一同は直ぐには拾わず、周囲を観察する。

「この辺りは石が多いのは気が付いていたが……」

「ほうやな、ぎょうさん石ころがありゃあすが、なんぞエエもんでもありゃせんかや」

「風で転がって来てるのかしら。だとしたら……」

「期待出来そうですね」

 一同がそう言いながら、更に周囲に目を凝らす。

「皆、そっちの方に斜面があるわ」


 四人がその斜面に向かうと、そこには鉄の鉱石が数多く転がっていた。

「やったな、ここまで沢山あるとは思っても見なかったぞ」

「でも、ちょっとおかしくないですか? 何と言うか……」

 サークヤがその斜面を見やる。

「あら、なんだか掘ってあるように見えるわね」

「そうなんです。先客があると思った方が良いかと」

「そんなん関係あらせんがや。誰もおらせんで、ようけ取りゃあええじゃん」

「まあ、そうなんだが…… 取り敢えず鍛冶屋と交渉して質を見極めてからだな。少量だけ貰っていこう」

 こうして四人は無事に街道へと戻り、目的地へと進んだ。



「ほら、見えたぞ。あれがテインバークで貿易量一番の都市、ミルバエルだ」

 その都市はテインバーク国の南東の端に位置し、隣国二国との貿易が盛んな都市である。

「大きな都市ですね。ケラテシーとは比べ物にならないくらいに」

「比べるだけ無駄だろう。人数も広さも桁が違うからな」


 ミルバエルは、サークヤが日本で住んでいた田蔵市よりも大きく、活気があった。

 文明の進んだ日本の町よりも賑わっている事に、サークヤは感心していた。

「あっ! 道具屋がある。剣やブーツの良さそうな物はあるかな? そろそろブーツの替えが欲しいんですけど……って、あれ?」


「サークヤ、あまりキョロキョロして迷子にならないでね…… って、サークヤがいないわ!」

「早速かよ。サークヤらしいな」

「サークヤもたーぎゃーにしとかにゃあかんわ~」

「でも……不味いわよね。ここでだと何処に集まるのかが……」


 四人はこれまでも幾度か迷子を経験している、立ち寄った村や町で。

 都度探すのは面倒だ、と迷ったらその村や町の中央か目的地に集まる事にしていたのだが……

「なぁ、ここって中央広場とかはなかったよな?」

「ええ。それに中心部まで結構距離があるし、聞く人によって答えがバラバラだったわよね」

「あ~、思い出しとうないがや」

「確かあの時は……」

 二人がタークを一瞥する。


「此処で探す方がまんだマシだがや」

「此処で……か?」

「まだ離れていないだろうし、私たちの格好なら目立つから、って事ね」

 一応、冒険者風の装いであるが、その下には”閉ざされし里”独自の着物をアレンジした服を着ていた。

「そうだがや。この辺りの目立つ所で…… どわっ! 危ねぇがー!」

 タークの直ぐ脇を馬車や荷車がひっきりなしに行き交う。

「ふん、目立つ所に立っているのは無理だな…… ってシーナがいない!?」

「ええっ! ホンマかや!」


 どんどんバラバラになって行く四人であった。






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