0-56 聖騎士!?
本日夜にもう一話投稿します。
「ええっ! 街道に狼が!?」
保安隊の詰所に声が響く。
その声に隊長のミヴァリィが立ち上がり、受付の方へと近寄った。
「あ、声を荒げてごめんなさい。詳しいお話は……中の方が良いですよね? ミヴァリィさん」
そう言って、馬車を横付けして駆け込んできた一家を、長椅子へと招き入れるユリの判断は正しいと言えるだろう。
それ程、一家の顔色は青ざめていた。
「お昼は食べられましたか?」
そう伺い、軽食と飲み物を用意しに席を外すユリ。
「それで、場所と頭数を教えていただけますか」
長椅子に座り、少しばかり落ち着いてきた男にミヴァリィが聞いてみる。
「はい、街道を南へ馬車で半時から一時ほどの所です。チブル村に行く小道の手前あたりでしょうか。頭数は……ええと、こっちは6頭だったかな? ケラシィの方は?」
男性が女性に問う。
「確か……5頭だったと思います。それと、指揮している狼が別にいるのではと言ってました」
「全部で12頭か…… ん? 言っていた? 誰が?」
「助けてくれた通り掛かりの人たちです。四人組だと言えば分かるだろうと」
「四人組……」
ちょうど軽食を持ってきたユリの方を見やるミヴァリィ。
「えっ? なんですか? ミヴァリィさん」
「ええっと? あなた方の被害は?」
「あ、ありません」
「という事は、その四人組が狼を追い払ってくれたと」
四人組と聞いて、軽食を配っていたユリの肩がビクッと揺れる。
「いいえ、何頭か殺してます。俺の方は3頭を倒してたかな」
「私の方も3頭よ」
言葉を失って顔を見合わせるミヴァリィとユリ。
「そ、それで……その人たちはどうしてますか?」
堪らず聞くユリ。
「狼を追うと言って茂みの中へ入って行きました」
「「ええっ!」」
声を揃えて驚く二人に、近くで話を聞いていたミールシスがため息をついた。
「まったく。あなたの聖騎士たちはどれだけ強いのよ」
「ええっ! 聖騎士って何ですか!?」
「あら、姫様を守る聖騎士って噂まで流れているわよ? 知らなかった?」
ユリが白目を剥いた。
「えっ! 姫様って……もしかしてあなたが噂の?」
女の子が目を輝かせて聞いてきた。
さっきまでの青い顔はどこへやらだ。
「ちょっ! 姫様とかじゃないから! 私、そんなんじゃないからっ!! 噂なんてみんな出鱈目だからっ!!」
強く否定するが、既に手遅れだ。
「でも盗賊を粗方捕らえたのは事実でしょ?」
ミールシスがまさかの裏切り行為。
「しかも今度は狼の群れだし……」
トドメを刺すミールシスに、ユリは再び白目を剥いた。
「って事は、私たち聖騎士様たちに助けられたのよ! すごいわ! ねぇケサロ!」
歳の離れた弟と喜び合う女の子。
「ちょっとミケリナ! 落ち着きなさい。保安隊の方が困ってるでしょ!」
母親に怒られて漸く落ち着くミケリナと呼ばれた女の子は、それでもキラキラした目でユリを見つめる。
「ねぇ、ミケリナちゃんって言ったわね。あなた今何歳?」
唐突にミールシスが質問を投げ掛けるが、何を考えているのかとミヴァリィとユリが眉を顰める。
「え? 私ですか? 私は今15歳で、もうすぐ16になりますけど……」
素直に答えるミケリナ、少しは警戒しろ。
「あなた、この子と友達になって貰えない?」
そう言ってユリの肩を掴むミールシス。
「「「「「ええっ!!」」」」」
まだ5歳になったばかりというケサロを除いて、そこにいた皆が驚きの声を上げた。
「ちょっ! 何を考えているんですかっ!」
「え? だってユリってこの町に来て日が浅いから友達いないでしょ? 歳の近い友達は良いわよ?」
「いや、だって、今会ったばかりなんですよ? いきなりそんな事っ!!」
「あ、私は良いですよ。というか、姫様とお友達ってすごいです! 是非なって下さい!」
こうしてケラテシーに姫様と同年代の友達が出来たのだった。
「だからっ! 姫様じゃないっ!!!」
「え、え~っと…… ミヴァリィさん、応援に人を向かわせてほしいんですが……」
悠長に談笑している場合でないと疲れ果てた顔で訴えるユリ。
「お?おお、そうだな。とりあえず街道の警護は必要だな。そちら方面の町への応援要請もした方が良いかな? ミールシス、どう思う?」
「そうね、あの四人が追ったのなら任せた方が解決が早いんじゃなくて? それまでの街道の巡回だけでも良さそうな気がするけど…… ユリはどう思う?」
「えっ! 私ですか?」
話を振られて、まだ勤務二日目なのに……と小声で愚痴るユリ。
「そうですね…… この一ヶ月半を共にして見てたんですが、よっぽど素早い相手や利口な相手でなければあの人たちに任せても大丈夫だとは思いますが……」
絶対ではないからと四人を心配するユリ。
「確かにあの四人に頼りっぱなしじゃ保安隊の面目にも良くないな。よし、狼に対応できる者で小隊を編成してこちらでも追うか。おい、聞いてたな。準備に掛かれ!」
この話でミヴァリィは悔やんでいた。
確かに保安隊へ南に向かう街道でも少数の被害が報告されていたが、例の盗賊の仕業だったのだろうと警戒を解いていたのだ。
そうした事で住民を危険に晒してしまった。
しかも、今回もあの四人に借りを作ってしまう。
これで何が何でもユリを危険に晒せなくなったな、と高くつく事になってしまったテリオからの注文に、一人愚痴る事になるのだった。
まさかこんなに早くユリの話を書けるとは(笑)
ずっと後にしか出ない予定だったのでビックリです。




