0-55 襲われる馬車
町を出たテリオたちは早速森の中を進んでいた。
いつも通りの鉱石探しをしながらだ。
以前、鳥や動物等が鉱石を運んでいると推理して実績を出していたサークヤの方法を、引き続き採用していた。
「見つかりませんね」
「そうねぇ」
「何もありゃせんがや~」
「ふむ。この辺りは諦めて進むか」
こんな事はよくある事だ。
「そもそも町の近くは人も多いから、皆採られてるんじゃないですか?」
「「「……」」」
顔を見合わせた後、黙って街道に戻る一行だった。
「先ずは町から日帰り出来ない距離からか」
そんな基本的な事を話しながら街道を進む四人。
すると、前方に馬車が止まっているのが見えたと思った途端、脇にいたであろう人が此方へ、馬車が向こうへと走り出した。
また盗賊か? と思ったが、違った。
後ろから犬か狼っぽい獣が追い掛けていたのだ。
「僕が行きます!」
サークヤが荷物を置き走り出した。
「全く、何も考えずに動く癖は直して欲しいな」
そう言って同じく走り出すテリオ。
「全く、テリオも人の事は言えないじゃない」
言いながら弓と薙刀を手に走り出すシーナ。
「ええ~~~…… どうツッコみゃあええんかの?」
一人残されたタークだった。
「此方へ! 走って!」
そう言いながら剣を抜くサークヤ。
子供を抱えていたので直に追い付かれそうになるも走り続けたその人に、躊躇せず飛び出したサークヤが間に合う。
すれ違い様、勢いに任せて剣を振るうと、その親子に追い付きそうだった狼が一刀両断にされた。
続けて迫って来た狼もスピードを殺せずに中途半端な速度になり、サークヤの剣の餌食となった。
後を追って来た3頭の狼は何とかスピードを落としたが、先行した2頭が殺られた事で戸惑う素振りをした。
「ったく。あれほど一人で動くなと言ったのに」
そう言いながら横に並ぶテリオ。
「こんな所に狼とはな。見逃すなよ、サークヤ」
「はい、分かってます」
狼に襲い掛かる二人に、シーナが叫んだ。
「馬車に人がっ!」
「ええっ!」「なにっ!? サークヤ!!」
「はいっ!」
走るサークヤ。
馬車は先で狼に囲まれ錯乱している。
間に合え!
そこにサークヤを掠めて矢が飛ぶ。
シーナだ。
ギャイン!
一発目命中!
二発目は……外れたが、牽制になり馬車から少し離れた。
その間にサークヤが馬車に追い付いた。
馬車の中を覗くと親子らしい2人が見えた。
無事だ。
サークヤは残った狼を確認する。
シーナの矢によって残る狼は5頭、先程の牽制の矢によって少し離れていた。
さて、どうしようか。
誰か来てくれなければ、あまり馬車からは離れる事が出来ない。
そうサークヤが考えていると、3本目の矢が飛んできたが、既の所で躱された。
しかし、躱す動作を強いられた個体の隙をサークヤは見逃さない。
横に飛び着地した狼に斬り掛かる。
咄嗟の回避で次の動作へ移れなかった狼は、サークヤの剣の餌食になった。
そして、その一連の出来事を隣で見ていた個体にも詰め寄る。
しかし、少し距離が遠かった。
僅かばかり刃先が踏ん張った足に届いただけで、致命傷には至らない。
だが、それで充分だ。
前足を引き摺った狼に、以前のような機敏さは残ってないから。
動きの鈍くなった個体を難なく捌くサークヤ。
残り3頭。
「なかなかやるようになったわね」
声を掛けながら、後ろからシーナが追い付いてきた……が。
ウォーーーーン
何処かで遠吠えがしたと思ったら、残っていた狼たちが一斉に草むらの中へと消えていく。
「あっ! しまった!」
「くっ! 逃げられた!」
恨めしそうに草むらを見やる二人。
後ろを見ると、テリオやタークも草むらの方を見ていたので、同じく逃がしたのだろう。
「大丈夫ですか?」
そう声を掛けて馬車の中を確認するサークヤ。
シーナは怯えていた馬を宥めている。
「た、助けていただき、ありがとうございます」
「こ、怖かったよぅ。お父さぁん’’’」
エッグエッグと泣く子が何かに気付いて顔を上げた。
「そうだ! お母さんたちは!?」
ハッとした二人が後ろを見やる。
「それならたぶん大丈夫だと思いますよ。あちらも狼には逃げられたようですが」
そう声を掛けるサークヤの言葉にホッと胸を撫で下ろす二人。
「お姉ちゃんっ!!」「ケーちゃん!」
ヒシと抱き合う姉弟。
「良かったわ。こちらも怪我は無かったみたいね」
テリオたちの方へ馬車を移動して、無事を確認し合う。
「くそっ、取り逃がしちまった。どうも指揮する狼が別にいたようだな」
そう悪態をつくテリオに、助けられた母親が声を掛ける。
「どうもありがとうございました。この子の小用を足し終わった時に襲われまして。そちらの方も助けていただき、ありがとうございました」
「いえ、無事で何よりです」
「こっちは2頭に逃げられた。そっちは?」
「こちらは3頭です」
「という事は、指揮する狼を入れたら残り6頭か……」
渋い顔をするテリオ。
「お話し中の所すみません。私たちは一度ケラテシーに戻ろうと思います。途中でまた襲われたらと思うと……」
「ああ、それが良い。町に戻ったら保安隊に一報を入れてもらえるか? 俺たちの事は4人組と言えば伝わるだろう」
自分たちは狼を追う、と言付けてもらう。
ユリの居る町の近くに、あんな害獣がいては大問題だ。
早々に片付けなくては、と一行は草むらの中へと踏み入れるのだった。
鉱石拾いの話のつもりが、あれ? 町人の小遣い稼ぎに採られ尽くされて、もうないんじゃ? と気付き、あれよあれよとこんな話に...。
ノープランで起こったイベントでした。




