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近所に勇者が引っ越してきたようです(仮)  作者: 赤点 太朗
前日譚(第零章) 異界の冒険
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「随分と来るのが遅かったな」


 そう言うのは、事務所の奥で書類を書いていた保安隊の隊長ミヴァリィ。

「そっちで座って待ってて貰えるか。あと少しなんだ」

 五人が来客用の長椅子に座ると、女性がお茶を出してくれた。

「大活躍だったそうね。もう町で噂が流れ始めてるわ。大きくない町だから有名人になるのも時間の問題ね」

 噂は広がるのが早い。

 この規模の町なら尚更だ。


「ところでウチに入るか迷っている()って、あなた? 可愛い()ね。凄くモテそう。仕事はよく考えて選んでね」

「……は、はい」

 暗に、余所へ就職すれば大変な事になるぞ、と警告しているのだ。

 ある意味、"あなたが気に入ったから此処へ来なさい、守ってあげる"と言っているようなものだろうが……。

 目を瞬かせてコクコクと頷くユリと、身震いするサークヤ。


「待たせたな。……どうしたんだ?」

 席に着く隊長が皆の顔色を見て首を傾げた。

「いや、ちょっとな……」

 と、お茶を出した女性を皆がチラ見した。

「ん? ああ、彼女は総務で秘書も兼任しているミールシスだ、長く勤めてくれている信用できる人だ」

 そう言ってから、本題を切り出した。


「昨日の事だが、改めて礼を言う。保安隊だけで行っていたら数で負けていたかも知れない」

 確かに、牢付馬車の御者を合わせても18人程だった。

 20人前後との報告があったと言っていたにしては迂闊と言わざるを得ない。

「途中の村で人を集めながらの予定だったんだがな、その前に(こと)が起こってたんだ」

 肩を竦めて説明する隊長は仕方ないだろ? と言いたげだ。


「お前らの話は大筋で聞いたし、これ以上聞いても報告書に書く事は大して変わらないだろう。であれば、今度はこちらからの情報提供だ。まだ大して分かっちゃいないがな」

 確かに、まだ一晩しか経っていない。

 聞き出せたのはそれ程多くはないだろう。

「どうやら、流れながら大きくなっていったならず者たちのようだ。数日仕事をしたら全く別の場所に移動する。移動した先で、ならず者を集めて取り込む。そうして大きくなった集団のようだ。この町の人間も一人混じってた」

 捕まった際にユリを見て、もう少し辛抱していれば……と下劣な表情をしたらしい。


「捕まって良かったな。あんな奴に目を付けられては何をされていたか……」

 それを聞いたユリが、隣にいたサークヤの腕に掴まってブルブルと震えた。

「どうやら国中で狼藉を働いていたらしい。2~3日程で別の場所へ移るから、保安隊が戦力を整えて動く頃には既に姿はない、という寸法らしい」

 ここでも3日目でテリオたちを最後にトンズラするつもりだったそうだ。

 彼らでなければ、通行人だけでなく遭遇した保安隊も危なかっただろう。

 通行人の犠牲者も少なからずいたのだが、若い女子供が巻き込まれていなかったのは幸いだった。


「神出鬼没で各地の保安隊も手を焼いていたと思う。もしかしたら国でも動いているかも知れないな。本当に謝礼は受け取らないつもりか? 結構な額になるかも知れないのに」

「ああ、どうせ貰っても使いきれないんだ。貰うことで新たな災いが降りかかるなんて真っ平ゴメンだ」

 テリオがそう言うと、シーナ、ターク、サークヤが頷いた。

 本当に欲がないな、と感心する隊長と近くにいたミールシスや隊員たち。


「再三言うが、このユリがこの町で何事もなく暮らせればそれで良い」

 テリオがそう付け加えると……

「あなた、ユリと言うのね。やっぱりウチに働きに来なさい。良い職場よ、悪いようにはしないわ」

 話を遠巻きに聞いていたミールシスが一気に捲し立てる。

 気が付けば周りの隊員たちもそれに頷いていた。


 ユリの就職先が決まったと喜ぶ四人、そこにユリの意思はなかった。





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