0-46 気質
「じゃあ、シーナは町へ、タークはそっちの村へ行ってくれ」
戦いの終わった一同は、賊の武器を一所に集めて使えない様に縛りつけ、賊たちも崖側に集めた。
どうせ皆、深手を負っているから縛りつけなくても逃げないだろう。
逃げた所で後ろから斬りつけられるのが落ちだし、躊躇なくそうすると言い含めてある。
捕らえた賊たちをこのままにもしておけないので、町への知らせは足の速いシーナに、近くの村への応援要請はタークに行ってもらう事になった。
近くなったとはいえ町まで全力で走っても半日以上、念の為に薙刀を含め水や食料を背負っているシーナのペースでは片道1日で着けるかどうかだろう。
往復で2日間…… それまでの間、近くの村のハンター等に護衛を頼む事にする。
近くの村ならタークの足でも半日も掛からずに連れて戻れるだろう。
それまではテリオとサークヤの二人で賊たちを監視する事になる。
ユリは荷物と一緒に、少し離れた崖側にいた。
万一賊の仲間が残っていても、直ぐに対応できる距離だ。
「それにしても、派手にやってたんだな」
テリオが崖の下を覗くと、少なくない馬車が落とされていた。
どうやらこの賊たちの仕業のようだ。
「あれはお前らがやったのか?」
そっぽを向いて答えない賊たち。
「まあいい。町の保安隊に引き渡せば全て明るみにされるだろうしな」
そもそも、これだけの犠牲が出ているのだから、遅からず保安隊が動いていたであろう。
「で? お前らはこれで全部なのか? まだいるんじゃないだろうな」
「……」
親玉は答えなかったが、後ろにいた二人が僅かにニヤついた。
「おい、まさか…… どこにいるんだ?」
「今頃、あの姉ちゃんがどうなっているか楽しみだなぁ」
げへへ、と後ろで笑い合う男たち。
「てめえら! 余計な事は言わんで良い!!」
一喝する親玉だが、顔は締まりが無い。
「一体何人いるんだ?」
「くっくっ、さあて何人だろうなぁ」
クソッと悪態をついたテリオはシーナの向かった町の方を見やる。
「……シーナ。無事でいろよ」
そう一人呟いた頃、ユリが昼食を作って持ってくる。
「ああ、ありがとう。ユリ、サークヤにも持ってってくれ。こいつ等にはやらんでも良いからな。近付くなよ」
「はい。……サークヤさん、大丈夫かしら?」
「ん~。まあ、こればかりはどうしようもない。時間が解決するのを待つしかないな」
そう、サークヤはまだ引き摺っていた。
相手は盗賊なのだからと頭では分かっているが、日本人としての本質がどうしても顔を覗かせる。
いくら自分に言い聞かせても、既にそういう気質になってしまっているのだ。
獣狩りは云わば食料確保であり、身を守るためでもある。
であれば賊と対峙するのも身を守るためだと言えばそうなのだが、相手は人間だ。
そんな事を考えるサークヤは、根っからの真面目人間なのだと言えよう。
「サークヤさん、お昼です」
「あ、ああ。ありがとう」
「……その、ええっと……ありがとうございました、守ってくれて」
「え?」
「私が危なかった時に守ってくれたの、サークヤさんですよ?」
「あ、ああ。そうだね。……うん、そうだった」
ユリのその一言に胸の中のモヤモヤした物がスッと晴れたように感じ、俯き気味だった顔を上げるとそこには笑顔のユリの顔があった。
そうだ、自分は仲間を……ユリを守るために戦ったのだ、何も悩む事は無いんだ。
そう思う事でサークヤは前を向く事が出来た。
「僕の方こそありがとう。なんだかスッキリしたよ」
そう言いながら、ユリから昼飯を受け取るサークヤ。
昼食を取って暫くするとタークが人を連れて戻ってきた。
かなり早い戻りだ。
「いや~、あんな走ったん久し振りだぎゃ~。えらかったで~」
「ターク、ちょっと拙い事になりそうだ。まだ残党が残っている。どうやらシーナの行った町の方らしい」
「ええっ! ほんまか? えらいこっちゃ」
「で、誰が後を追うかだが……」
「難しいがや。これ以上サークヤを対人戦の可能性がある所に行かせられんし、ワシじゃ役不足な気もするがや。テリオが行きゃあその親玉を押さえれんかもしれせんし……」
「じゃあ、僕が行きます!」
名乗りを上げたのはサークヤだった。
「もう平気です。行かせてください」
テリオが、力強く言ったサークヤの目を見る。
「……うん、もう迷ってなさそうだな。よし、サークヤ。頼めるか」
「はい!」
そうして皆に見送られ、シーナの後を追うサークヤだったのだが……




