0-47 保安隊
本日夜にもう一話投稿します。
「ほっほっほっほっほっ」
町に向けて走るシーナ。
少ないながらも荷物を背負っているとは思えないペースだ。
だが、じきにその足は止まる事になる。
「……いるわね」
背負っていた荷物を下ろし、薙刀を手に持つ。
「へぇ。勘が良いなぁ」
そう言いつつ茂みの中から男が出てきた。
1、2、3、4……5人。
「ここに来るまでに誰かに会わなかったのか?それとも……」
目を細めるリーダーらしき男。
先ほどの親玉よりは格が落ちるようにも思うが、シーナは油断しない。
「んん?答えてくれないのか?姉ちゃんよぉ」
ぐへへへと笑うのは、こういう奴らの十八番だなぁと溜息をつく。
周囲を見渡すが、加勢はなさそうだ。
「ちょっと退いてくれないかしら。急いでるんだけど」
「そういう訳にはいかんのよ」
もうこれは定型文ね、と心の中で愚痴るシーナ。
「久し振りの女だぁ。ちょいと良い事しようやぁ」
「うわぁ……走り抜けた方が良かったわね」
愚痴りながら薙刀を構えるシーナは、男たちの動向を伺う。
隙あらば走り抜けようと考えていた。
下ろした食料はこの際どうでも良い。
後ろを取られるのは芳しくないが、目的は町に行くこと。
万一テリオたちの方に向かったとしても、この人数なら問題ないだろうとの判断だ。
剣を手にジリジリと近寄る男たちは、徐々に横に広がっていく。
囲もうという算段だろうが、今のシーナには悪手だった。
「あっ!」
そのまま道を塞げば良かったのに、囲もうとした事で隙を突かれ、シーナを通してしまった男たち。
だが、男たちは慌てはしなかった。
無理に追って来ない男たちを不審に思っていると、ピィ~と口笛が聞こえた。
不味い! と思ったが後の祭りだった。
茂みから更に6人の男たちがニヤニヤしながら行く手を阻む。
今度は囲もうとせずに道を塞いだまま、シーナの方に近寄ってくる。
これはいよいよ不味いわ、と薙刀を構えるシーナ。
後ろを見ると、ゆっくり近寄ってくる先の男たち。
完全に囲まれた。
後は横に逃げる道なのだが、右は崖。
左は運の悪い事に大きな岩が鎮座していた。
状況は確実に悪い。
岩を登るという手もあるが、足を掴まれればジエンドだ。
前方の男たちの隙を突いて突破する事も考えたが、人数が増えたのでかなり分が悪い賭けとなるだろう。
幸いにも思考は冷静に出来ているが、どう考えても絶体絶命を覆す妙案が思い浮かばない。
背中に嫌な汗が流れるのが分かるが、もう逃げ場は無さそうだ。
さて、そろそろ終わりかもと腹を括ったシーナだったが……その時異変が起こる。
ドドドドドドドドドド
突如、前方から人が乗った馬が何頭も走って来るのが見えた。
更に加勢なの! と思ったが、どうも様子がおかしい。
前方の男たちが馬が来る方を見て動揺していたのだ。
敵の……敵?
少し様子を見るしかないと判断し、どさくさに紛れて襲われないように警戒を密にするシーナ。
だが、後ろの男一人が動き、シーナに襲い掛かった。
薙刀で応戦するシーナ。
幸い一人で掛かって来たので、ふた薙ぎで腕と足に深手を負わせ無力化した。
「おい! そこの! 大丈夫か!」
残りの後方の賊たちの動きに注意しながら、前方の様子を伺うと、馬を降りた男たちが盗賊たちと戦闘を始めていた。
「大丈夫だと思うけど、もう一人いると楽だわ!」
「分かった!」
そう声を掛けてきた男が、シーナの方に近付いてきた。
「色々と話をしたいところだが、まずはこいつらを片付けよう」
そう言い切るが早いか、賊の一人が動き出したのを見逃さずにシーナが斬りかかる。
剣を払い、露になった腕に刃を落とすとついでとばかりに足にも深手を負わせる。
横から助太刀しようと別の賊の一人がシーナに剣を向けるが、降り下ろしていた刃先を斜め上に一閃。
右足から左腕までの深手となった。
「おいおい、こりゃ凄いなぁ……」
流れるようなシーナの攻撃は、テリオ程のスピードもパワーも無いが、利にかなった動きで見た者を魅了する。
後方にいた盗賊は今や5人から2人になっていた。
対するはシーナと馬から降りて助っ人にきた男。
盗賊は考える、どちらが強いのか……見た目は男の方だろうが、女であるシーナも今の動きで侮る事は出来ない。
であれば、2人でシーナを倒す事を選ぶ方が懸命だろう……それだけの腕があればだが。
「クソッ! 行くぞ! うおりゃー!」「でりゃー!」
キンッ キンッ「ぐわっ」
キンッ バキッ「なっ! ……降参だ」
1人は肩を斬られ、もう1人は剣を折られ戦意喪失。
シーナの完全圧勝だった。
「俺が来た意味無かったじゃないか」
「……そうね、1人づつ相手に出来たから楽だったわ」
「5人を相手に楽……ねぇ」
そう言いながら他の盗賊の6人がどうなったかを確認すると、10人掛かりで押さえつけた所だった。
「俺達はこの先の町、ケラテシーの保安隊で、俺は隊長のミヴァリィだ。よろしくな」
「私はシーナよ」
「シーナ、か。俺達はこの先に出たと言う他の盗賊を捕らえに行く所だから、ゆっくりはしておれん。ケラテシーに行くなら後日に話を聞かせてくれ」
そう隊長が言うので、丁度良かったとシーナが答える。
「あら、それならこの先で18人を仲間と捕らえたわ。それで保安隊を呼びに向かう所だったの」
「な、何?18人だって? 盗賊は20人前後だって報告だったぞ? ここには既に11人いるのに?」
取り乱す隊長に、シーナは呆れ返る。
「知らないわよ、そんな事。それより早く向かって欲しいの。近くの村に応援を頼んでいるけど、今はウチの3人しかいないから、いつまで持つか……」
「ちょっと待て! 今3人って…… 4人で18人を相手にしたって言うのか?」
「まあ、そういう事になるのね。大変だったのよ、終わった後に竜まで姿を現すし」
あら、固まっちゃったわ。と困り果てるシーナだった。




