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近所に勇者が引っ越してきたようです(仮)  作者: 赤点 太朗
前日譚(第零章) 異界の冒険
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0-45 賊との戦い

「ぐはははははは。いい加減諦めれば良いものを。さて、そろそろ行くぞ?」


 そう言って再び襲い掛かる賊たち。

 4対18。

 状況は確実に悪い物となった。

 前方に一人、後方にも一人、そしてサークヤのいる山側に二人が加わった。

 これでテリオは親玉を含む6人、シーナは5人、サークヤも5人を相手しなくてはならない。

「ワシも嘗められたもんやわ!」

 と、二人の相手をしているタークが愚痴るが、その二人をさっさと始末してから愚痴って欲しいところだ。


 端から見れば、まるで時代劇の殺陣シーンなのだが、今回は真ん中に守る者(ユリ)がいるのであまり動き回る事が出来ず、防衛に徹する4人。

 サークヤもまた防戦一方となり、焦っていた。

 今までは3人を相手に往なして、どう無力化するかという事を考える余裕があっでが、一気に5人相手となった事で相手の攻撃の合間に考えを巡らす事が難しくなっていた。

 日本での剣道でスポーツとしての精神論を学んだサークヤにとって、人を傷つける事は悪として根深く残っていた。

 人を殺すという事に掛けては尚更だ、日本人として許される事ではない……と。

 剣道では怪我を避けるために防具があり、ルールがある。

 しかし、こいつ等にはそういった防具もルールもない。

 このままでは無傷での無力化は無理だ、どうしても相手を傷つけてしまう。

 最悪、人を殺してしまうかもしれない。


 そんな事を考えているサークヤに、辛うじて考える余裕を残していたタークが声を掛ける。

「サークヤ! 守るべき者を間違えんな! お前が倒れたらユリがどうなるか考えろ!」

 タークもまた方言を使う余裕はない。

 だがサークヤはその一言に、忘れかけていた大事な事を思い出した。

 そうだ、後ろには守るべき(ユリ)がいる。

 彼女に危険が及ぶなんて以ての外だ。

 そう思った刹那、サークヤの頭の中で何かがカチリと切り替わった。

「なっ! 何だコイツ! 急に剣が重……くっ!!」


 キンッ キキンッ キンキンッ キキンッ キンッ キキンッ 


 サークヤの相手をしていた5人の笑みが消え、発していた口が止まる。

 剣の重さだけでなく、スピードも増していた。


 キキンッ キキキンッ キキンッ キキキンッ キキキンッ 


「ぐわっ!」

 遂に均衡が崩れ、一人が悲鳴を上げる。

 剣を持っていた腕の腱が切られたからだ。

 利き手を切られた事でその場に蹲る男。

「くっくそ! やっちまえ!!」

 口ではそう言うが、1人減った戦力で今のサークヤを抑える事は出来ない。


 キキッキンッ キキンッ キキキンッ キッキキキンッ


「がああ!!」

 今度は足を切られた男が倒れる。


 キンキキンッ キキンッ キキッキキンッ


「ぐはっ!!」

 更に1人。

 今度は肩にかけて。


「くっくそっ!」

「あっ! しまっっっ!!」

 ここでテリオの相手をしていた一人が、テリオとサークヤの間を掻い潜って4人の中に入り込む。

 数を減らしてはいたが流石のテリオも一度に6人の相手は厳しいものがあったようで、親玉を相手にしていた僅かの隙を突かれた。


「と、止まれっ! コイツの命がどうなっても良いの……カハッ!」


 一瞬だった。

 ユリを人質に捕ろうとした男を振り向きざまに一閃。

「ぐふっ!」

 そして元の向きに戻る勢いのまま、もう一人を一閃。

 あっという間に残り一人にしたサークヤ。

「こ、このぉぉぉ!!」

 大振りしながらサークヤに襲い掛かる男をヒラリと躱しながら腕に一閃。


「サークヤさんっ!」

 ユリがサークヤの方に声を掛ける頃には、他の3人も相手をほぼ無力化していた。

 いの一番に相手を片付けたタークがシーナ側に加勢したようだ。

「悪い、サークヤ。1人侵入を許した」

「数が多いから手古摺ったわ。危ない所だったわね」

「皆、怪我はあらせんか?」

 戦闘を終えた面々が中央にいたユリの所へ集まるのだが……

「……大丈夫? サークヤ」

 サークヤだけが剣を構えたまま肩で息をしていた。

「サークヤ、もう終わったんだぞ」

 そう言ってテリオはサークヤの肩に手を掛た事で、漸くサークヤは構えを解く。

 手にしていた剣が酷く重く感じたサークヤは鞘に仕舞った後、手のひらを見やる。


 人を斬ってしまった。

 後ろを振り返ると、ユリを襲おうとした男が血まみれになっている。

 タークが診た所、命に別状は無いとの事だが、それでも重症だという事は一目瞭然だ。

 他の相手をしていた男達も傷は浅くはなく、動けない状態だ。

 死人は出てはいないが、させまいとしていた怪我を負わせてしまった。


「テリオさん…… 僕、人を斬ってしまった」

 開いて見ていた手のひらをグッと握り、テリオの方に顔を向けるサークヤ。

「……まあ、初めての事だから動揺しているんだろうが、上手くやった方だぞ? これだけの人数差で死人が出ていないからな」

 その会話を聞いていた親玉が足と腕を押さえたまま聞いてきた。

「その小僧、人を相手にするのが初めてなのか?」

 顔を顰めるテリオたち。

 もちろん答える義理なんてないのだが……

「ああ、そうだ。稽古でしか人を相手にしていない」

 テリオが答えると賊の親玉は、そんな奴に俺たちが負けたのか、と屈辱を感じたようだ。

 周囲を見ると、他の賊の男達も皆動けない程の怪我を負っていた。

 テリオたちも怪我をさせずの無力化は無理だと判断したようだった。


 そんな折、何か大きな影が上空を横切った。

 何だ? と皆が上を見上げると……

「竜だ! 騒ぎを嗅ぎつけたのか?」

 10メートルを超える翼をはためかせ上空を一周した後、西の方へと消えていった。

「命拾いしたな。竜は争い事を嫌う。長引いていたらどうなっていた事か……」

 そうこぼすテリオ。

「ほ、本当にいたんだ。それにしても……大きくて……なんて優雅なんだ……」

 サークヤは初めて見るその後姿に、いつまでも視線を外せずにいた。


 こうしてサークヤの初めての対人戦は幕を下ろした。





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