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近所に勇者が引っ越してきたようです(仮)  作者: 赤点 太朗
前日譚(第零章) 異界の冒険
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0-42 星の降る夜

「よし、今夜はここにするか」

 テリオたち五人は川の近くに野営の場所を確保した。

 やはり、水場がある事は大きい。

「よし、サークヤはユリと魚を釣って来てくれ」

「はい。分かりました」

「えっ! 私、魚釣りはやった事ありませんよ?」

「なに、そんな難しい事ではない。サークヤに教えて貰えば良い」

 サークヤは元の世界で何度か釣りの経験はあるが、こちらの世界では道具が違い初めの頃は苦労した。


「ん~この位ので良いかな」

 竿になる細竹を選んで、持っていた針の付いた糸を括り付ける。

 釣竿は持ち歩かずに現地調達をしていた。

 荷物が増えるのと、折れないように気を使う必要があるため、専用の物を持ち歩く事はしなかった。

 川原の石をめくってよく分からない虫を見つけ、針に付けてユリに手渡した。

「この虫の付いた針をあの流れの緩い岩の近くにそっと入れてみて」

 そう言ってユリの後ろから竿を補助する。


「そうそう、そんな感じでこの位でじっとしてて」

 そう言って竿の先を見る。

 チョコンチョコンと竿の先が揺れた後、クイッと竿の先が曲がった。

「よし、竿の先を持ち上げて。そうそう、糸をこっちの方へ引き寄せるんだ」


 バシャバシャッ


「つ、釣れたわっ!」

 初めての釣果に大喜びのユリ、あんまり騒ぐと魚が逃げるぞ?

「良かったね。さあ、どんどん釣ろう。食べきれなくても燻製にすれば良いし」

 サークヤも適度な竹を見つけて仕掛けを括り付け、釣りを始める。


「おっ! よく釣れたようだな」

 サークヤが担いで来た魚を見てテリオが声を掛けるが、どうもサークヤの表情は冴えない。

「あら、どうしたの? サークヤ」

「……サークヤさん、あまり釣れなかったんです」

 サークヤに代わってユリが申し訳なさそうに答えた。

「で? ユリはなんぼ釣ったん?」

「ええっと……10匹程かしら」

 サークヤをチラッと見てから小声で答えるユリ。

「って事は……」

 持ち帰った魚を数えたテリオがサークヤを横目で見た。

「4匹……か」

「……いいえ。3匹です」

 サークヤは正直に答えた。


 肉に飽きた五人は一人1匹の焼き魚が分けられ、他にも周囲で採れた山菜や木の実の料理が振るまわれた。

 調味料は里で作られた醤油や味噌、里の近くで採れる岩塩に、タークが調合した薬味等なので、味も格別だ。

 旅の間、料理はシーナがメインで行うが、今回はユリも手伝っている。

 料理が出来るユリは黙って見ていられなかったからだ。


「ずっと鹿の肉ばかりだったから、ありがてぇ」

「たまには魚も良いわね。さっぱりしていて」

「醤油が妙に合っていてうみゃあて」

 ベテラン冒険者組に大絶賛を受けるが、あとの二者の反応は異なる。

「ホント、美味しいですね」

 幸せそうに食べるユリに……

「何を辛気臭い面で食ってるんだ?」

「……ヤマメってあんなに簡単に釣れるんですね」

 テリオに呆れた声で指摘されるサークヤであった。


 冒険者の夜は早い。

 日が暮れたら寝て、夜が明けたら行動を開始する。

 寝る時間が長い気もするが、そうでもない。

 夜間の見張りを交代で行うからだ。

 特に夜中の番の者は睡眠時間を少し多めに取っている。

 睡眠時間が分割されて同じ時間では誰も納得しないだろう。


「サークヤ、起きろ。見張りの番だ」

「う゛う゛~、分゛かりました」


 パチッ パチッパチパチッ


 焚き火が音を鳴らして火の粉を散らす。

 周囲に異常はない。

 サークヤは薪をくべて空を見上げる。

「星がよく見えるなぁ」

 そこには知らない星座が瞬いていた。


「……そうね」

 ふと、横から声が掛かる。

「ホント、よく見えるわ」

「ユリさん。起きてたの?」

「何となく目が覚めちゃった。私は見張りの必要がないから、寝過ぎなのよね」

「じゃあ、暫くここにいる?」

 相槌をうって隣に座るユリ。


 二人して夜空を見上げる。

「すごい数の星ね」

「そうだね。里では星座とかはあったの?」

「せいざ? ああ、星の形の事? あったわよ。ええっとね、あの大きな三角形に見えるのが弓で、その先の3つ並んでるのが矢ね。あとは……」

 次々とサークヤの知らない星座が夜空に浮かんでいく。

 時々周囲の警戒を怠らないサークヤは、随分とこの冒険者という生活が板についていた。

 そうやって夜空を見上げていると……


「あっ! 星が流れた!」

「ホントだ。僕も見えたよ」

「あっ! また!」

「こ、これは……流星群だ」

「何かあったのか!?」

 別の声がしたのでサークヤが振り向くと、テリオが刀を手にこちらへ来ようとしているところだった。

 よく見ればシーナもタークも何事かと起きてしまったようだ。

「あ、ごめんなさい。起こしちゃいましたね」

「星がたくさん落ちてくるんで、思わず声を上げちゃいました」

「星が?」


 皆が見上げるとそこにはひっきりなしに流れ星が降り注いでいた。

「わあ、これはすごいわ」

「ふむ、ここまで星が流れるのは初めてだな」

「壮観やのぉ」


 何かの流星群の当たり年なんだろうと思いながら、そんな野暮な事は口に出さず、その光景を静かに見上げるサークヤであった。






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