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近所に勇者が引っ越してきたようです(仮)  作者: 赤点 太朗
前日譚(第零章) 異界の冒険
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0-30 火の番

本日夜にもう一話投稿します。

「この色合いを覚えておいてくれ。黄色は弱すぎ、白は強すぎだ」

「分かりました。色合いで調節するんですね」


 今、サークヤは炭焼き窯にいた。

 今日は早朝から炭焼きの火の番だ。

 薪を一本入れながら薬家のサコウに質問する。

「この前の炭は確か白い炎で焼きましたよね。今度は違うんですね」

「ああ、今度の炭は用途が違うからな」

 含みを持たせてサコウが答える。

「用途? 暖を取ったり煮炊きに使うんじゃないんですか?」

 サークヤの質問に少し考えた後、問題ないだろうと答えるサコウ。


「そうだな。今回は刀鍛冶に使う炭だ。温度を変えて焼く。同じ炭だと巧く刀が出来ないんだ」

「へぇ……なるほど。刀鍛冶に使うんですか…… 刀鍛冶も見てみたいなぁ」

「そう言うだろうと思ったよ。でも、それは難しいかもしれない。そもそも、この炭焼きだってサークヤにやらせるのを躊躇ったくらいだからな」

 純粋に見てみたいと言ったサークヤに対し、厳しい答えが返ってきた。

「それはこの里を守るためですか?」

「それもあるが、此処で出来る刀は余所の剣の性能を上回っていて、それが世の中に出回れば世界の均整が崩れてしまうかもしれない。そんな事にしたくはないんだ」

「この世界に影響を与えてしまうんですね。そんな話を、紬家のタカエさんに聞きました」

「ふむ、聞いていたか。本当かどうか知らないが、それまで誰も殺す事の出来なかった竜を里の先祖たちが刀で討ったというしな。もし争いを好まない竜を掃討しようとする者が現れてこの刀を手に入れれば、今の争いのない世界は保てなくなるだろう」

 そうか、タカエさんはそこまで言わなかったが、害のない竜まで殺そうとする者が出てくるかもしれないのか。

 それを守る為に、里の人間が使う分だけを里の人間だけで作る。

 そうして500年という長い年月、この世界を守ってきたんだ。

 そう考えをめぐらすサークヤに。

「まぁ、サークヤはそんな事はしないだろうが、その技術が誰かに漏れれば何時か何処かで争いが起きるだろう。それが一番怖いからな」


 それにはサークヤも同意する。

「僕もそれは嫌です。平和が一番です」

 前の世界では、住んでいた日本は平和だったけど、世界を見ればどこかで争いが起こっていた。

 ニュースで見るたび、心が痛んだものだ。

 何故争うのだろう。

 何故仲良くできないのだろう。

 そんな事を考えたって自分には何も出来る事は無かった。


 でもこの里の人たちは、この世界が変わってしまうかもしれない力を持ちながら、それを良しとせず守り続けている。

 その考えを自分も賛同し里を守る手助けができれば、この世界の平和を保つ事ができる。

 自分にもできる事があるかも知れない。

 そう思ったサークヤは、この里を守っていきたいと強く思うのだった。


「そういえば、タークさんはどこかの方言で話しますけど、サコウさんは普通ですよね。何故なんです?」

「あ~、タークは爺さんに影響されてな、爺さんが酷い訛りなんだよ。真似てるうちに余所の方言まで拾っちまった。ありゃ俺でも分からん時があるからな、やめろと言ってもやめん。良いか、この里で平和に暮らしたいなら、ウチの爺さんとタークには話しかけるなよ」

 タークも作者泣かせの酷い方言なのに、爺さんはもっと酷いと来た。

 これは触らぬ神に祟りなしだな、と思うサークヤだった。


「じゃあ、後は任せて良いか?」

「はい、分かりました。お疲れ様でした」

 夜中の火の番を終わらせたサコウを見送る。

 これから午後まではサークヤ一人で火の番をする事になる。

 薪をくべたり空気穴を開けたりして火加減を見る。

 前にも炭焼きを手伝って、やり方は覚えた。

 外はしんしんと雪が降り積もるが、此処は火を焚いているので暑い位だ。


 暫くすると、外から声が聞こえてきた。

「あ~、外の人が火の番してる~!」

「あら、サークヤさんが火の番なのね」

 顔を覗かせたのは紬家の次女キヨと酪家の長女ユリだった。

「あ、おはよう。キヨちゃん、ユリさん」

「おはよー! 外の人さん!」

「キヨちゃん、サークヤさんよ…… サークヤさん、おはよう」

 ユリと共に苦笑するサークヤ。

 まあ5歳児だしね、と寛大な気持ちを保ち質問する。


「今からどちらへ?」

「ああ、家畜小屋へ餌をやりに、ね」

「ね~」

 二人で可愛らしく相槌を打つ。

 小屋まではすぐそこだ、といっても多少は距離がある。

 火の粉が飛んでも周りに影響のない場所に炭焼き小屋は建てられているからだ。

「そうなんだ、気を付けてね。雪で転ばないようにね」

「「は~い」」


 二人揃っての返事はとても楽しそう。

「そうだ、後で遊びに来ても良い?」

 小屋へ行く素振りをしたユリが戻ってきて、サークヤに声を掛ける。

「え? 良いけど、僕は火の番だから此処から動けないよ?」

「お話しするだけなら良いでしょ?」

「もちろん、良いよ」


 サークヤはユリに快く返事をし、ルンルン気分で仕事を再開するのであった。





実際の炭焼きは、素人が一人で火の番なんて出来ないとは思うんですが...物語上許して!!(汗

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『カースブレイカー』シリーズ
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