0-28 青年と少女
テリオさんとシーナさんが狩りに行くって言うから付いて行こうとしたんだけど、里で手伝いをしていてくれと言われた。
なんだか置いて行かれた気分だ。
はぁ~、連れてって欲しかったなぁ。
仕方がないから何か仕事がないか聞いて回るかな。
「サークヤさーん! ちょっと手伝って欲しいんですけどー」
あ、あれは絡家のユリさん、だっけ。
「家畜小屋への落ち葉敷きをもう少し増やしたいので手伝ってもらえませんか」
良かった。
仕事を探しに行かなくても良くなった。
「ああ、良いですよ。行きます」
さあ、仕事しよう。
……ユリさんは見た目通りのゆったりした人なんだなぁ。
歩くスピードもゆっくりだ。
たしか今度16歳になるんだっけ。
一緒に落ち葉をかき集める。
「ユリさんは春になったら町に行くんですよね」
何となく覚えていたので聞いてみた。
「そうですよ。て言うか、私の方がうんと年下なんで普通に話して下さい」
「いや、でも……じゃあ、ユリさんもいつも通りしゃべって下さい」
「う~ん……分かったわ。これで良いかしら」
「うん。じゃあ、僕もこれで」
僕は笑顔で答えた。
「この里は良い所だね」
「そう? 何も無いし、誰も来ないわよ?」
「そうだね。でも、僕の故郷に似てて落ち着くんだ」
この里のご先祖様が同郷なんだから当たり前なのかも知れないけど、なんだかホッとする場所なんだよね。
「ふうん、そうなの? 此処がそんなに良いの?」
「此処に来るまでも、いろんな町や村に寄ったけど小さな所の方が良い人が多かったよ」
「へぇ、大きな町は悪い人もいるの?」
「いるだろうね、町に行ったら気を付けなくちゃね」
この里しか知らないであろうから、用心しないとね。
けっこう落ち葉が集まったので、昼を挟んで小屋まで二人で運ぶ。
小屋には家畜の他に、番をしているものがいる。
「グルルルルル」
「こら、ぺス。こないだ、大丈夫な人だって教えたでしょ!」
「ウォン」
番犬を勤めているぺスさんだ。
初めて此処に来たときは凄かった。
初日の子供たち以上に泣かれた。
違う、哭かれた。
絡家のタツさんが間に入らなければ、お互い戦闘体勢に移らなければならなかった程だ。
今回はユリさんが一緒だったので、睨まれただけで済んだ。
「クゥン……」
ユリさんとは仲良しなんだね、うらやましいなぁ。
「こんなもんで良いのかな?」
他愛もない話をしながら何往復かして落ち葉を小屋に敷き詰めた僕は、ユリさんに尋ねた。
「あ、ええ。そうね、この位あれば後は自分たちで何とかすると思うわ」
ん? 何か考え事でもしてたのかな?
「ねえ、他所で働くのって難しいの?」
やっぱりユリさんは、里を出るのが不安なんだ。
「どんな仕事でも難しい事はあると思うよ。僕なんて仕事は半年しか出来なかったけど、ずっと難しくて失敗してばかりだった。でもね、周りの人の誰かは見ていてくれて、ちゃんと教えてくれると思うよ。分からなければ、見て、聞いて、やってみて……それを繰り返して覚えていけば良いんじゃないかな。もちろん自分で考える事も忘れちゃいけないけどね」
ユリさんはしばらく考えた後、私にも勤まるのかな? と呟いたのが聞こえた。
「大丈夫さ。きっとね」
僕は笑顔で答えると、ユリさんは少しスッキリした顔になった。
「ありがとう、サークヤさん。少し楽になったわ。どんな仕事をしていたのか気になるけど、聞いても分からなさそうだから聞かない事にするわ」
そう答えたユリさんは少し眩しく感じた。
「あら? いつの間にか雪が降ってたみたいね。この子たちが寒がる訳だわ。積もらない内に帰りましょ。ペス、後はお願いね」
「ワン!」
そう言って小屋を出るユリさんに続いて外へ出ると、いつの間にか里がうっすらと雪化粧していた。
上を見上げると、まだまだこれから降りますよとばかりに、鉛色の雲から真綿のような白い銀花がこんこんと落ちてきていた。
そういえば、テリオさんとシーナさんは帰って来たのかな? とすっかり頭から離れていた二人の事を思い出すサークヤだった。




