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近所に勇者が引っ越してきたようです(仮)  作者: 赤点 太朗
前日譚(第零章) 異界の冒険
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0-26 大切に思われる事

本日夜にもう一話投稿します。

 テリオは再び嫁ぎ先を探しに里を出るシーナと、16歳を過ぎたタークを引き連れ出立する。


 タークの1周目、シーナの2周目の旅が始まって間もなく、冒険者稼業を楽しんでいるテリオに共感しタークがテリオと共に冒険者となる事を決意した。

 タークもまた、里の枠に収まるような性質ではなかった。

 好奇心旺盛で罠作りに長けていたし、よく無断で里から出て薬草探しをしていたのだ。

 旅の合間に鉱石探しをして喜ぶテリオはタークには魅力的に映った

 1人では難しいと思った遠征も、テリオと一緒なら可能な事だと瞬時に感じ取る事が出来たのだ。



 そんなタークの決意をきっかけに、シーナも同じ道を進むのも良いかと思うようになっていく。

 決定的だったのが、狐をシーナ一人で狩る機会があった事だ。

 先回武器を持たずに出たためテリオに負担が掛かっていた為、2度目の出立時に自分の弓と薙刀を持ち出していた。

 そんな武器(モノ)を持って嫁ぎ先を探しても見つかる筈はないと、一周目の時は持たせてもらえなかった。だが今回は、テリオに負担を掛けないという大義名分で持ち出しに成功していたのだ。


 弓で距離のあった狐を狙う。

 里でも小物を標的に何度か仕留める経験を積んでいたので、戸惑いはない。

 ヒュッと飛んだ矢は見事に狐を仕留める事が出来た。

 それを見たテリオとタークは、自分たちを遥かに凌ぐ攻撃範囲の広さとその腕前に感嘆の声を上げた。

 タークもまた、罠を仕掛ける事で離れた場所の獲物を捕らえる事は出来るが、罠を仕掛ける必要があるのでその場で見つけた獲物までは近距離でなければ仕留めるのは難しかった。


 そんな経験を積み重ねる事で、シーナは冒険者としてやっていく自信を掴み、決意するのであった。

 後日報告に訪れた2人に対し、里の者はたいそう残念がったが、あの2人なら納得かと諦めも早かったのだった。


 ― * ― * ― * ― * ― * ― * ―


「あ~、あれは酷かった」

「酷かったって何よっ!」

 良い思い出を引き出そうとしてたシーナに対して、テリオの反応は真逆だった。

「だってよ、嫁ぎ先を探しに国を一周した挙句、冒険者になるって……俺の苦労に苦労を重ねた2年間を返せってな」

「苦労って何よっ。そんなに迷惑な事した覚え無いんだけどっ!」

「何言ってやがる。お前に群がってくるひでぇ男共を排除するのにどれだけ奔走した事やら……」


 呆れ顔でやれやれとゼスチャーするテリオに、シーナは首を傾げる。

「どういう事? それほど酷い人には会わなかったような気がするんだけど?」

 いくら思い出しても普通に良い人っぽいのしか思い出せないシーナ。

「ああ、そりゃ余りに酷いのはお前に会わさないように動いてたからな。町や村の宿に入った後、買い物だと言って抜けてたろ。そん時に要注意人物を調べたりしてたな」

「はあああああ? そんな事聞いてないわよ?」

「そりゃ言わないさ。言ったらお前が更に酷い事にしかねない。そんな事してみろ、噂が広がって余計に嫁ぎ先が見つからなくなる」

「酷い事にって何よっ! 私がそんな事すると思う?」

 ムキになるシーナに向けるテリオの顔は、何言ってんだこいつって顔だ。


「あのな。里を出たばかりの年端もいかない世間知らずな若い女が、そこいらの男をちゃんと見極められたと思うか? 中には妾にとか、ヤル事だけやって捨てようと企む輩もウジャウジャといるんだ。実際いたしな」

「……ヤル……って……」

 言葉を失うシーナは、本当に大切にされていた事に今更気付いた。

「で、だ。そんな話をすれば当時のお前なら仕返しにって飛んで行ったろ。巧くいっても未遂犯への暴行でお前が犯罪者、悪ければそのまま返り討ちにあってお前がどうにかされてしまう。誰が教えるか、そんな事」

 シーナは一言も返せなかった。

「さあ、この話はこれくらいにして、食うもん食って寝よう。日が昇ったら里へ帰るぞ」

 シーナは、美味しい筈の猪肉の味を感じる事が出来なかった。


 その夜はいつもとは違い、寄り添って寝る二人の姿がそこにあった。





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『カースブレイカー』シリーズ
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