0-24 阻まれる二人
「ちぃっ! 降って来やがった!」
苛立ちを露にしているのはテリオだ。
二人は今、仕留めた獲物を担いで森の中をさ迷っている。
本当は真っ直ぐ里に帰りたいのだが、そう出来ない理由があった。
「まだ付いてくるな……」
「困ったわね。この降り方だと、ますます里の方には向かえないわよ」
二人から少し離れた後ろに汚い格好の男達五人が付いて来ていたのだ。
ましてや、この雪の降り方では、たとえ振り切っても足跡で追跡されてしまう。
「どうしようか」
「二手に分かれる?」
「シーナ、この辺は分かるのか?」
「う~ん、ちょっと怪しいかも。雪が本格的になれば自信ないわ」
「じゃぁ、却下だな。撒こうにも獲物が重くて走れないし……さて」
後ろをチラッと見ると、隠れているつもりの5人が丸分かりだった。
「奴らともう一度話をするか」
「そうね。荒事は避けたいし」
ドスンと担いでいた獲物を下ろすと、テリオはシーナを置いて走り出した。
男達が、えっと混乱する。
横へと走って行くテリオに対して、シーナは薙刀をその場で振り回して男達の目を引く。
見ている分には見事な手捌きであるが、それが魅せるためのものである事に気付かない男達だった。
男達がそれに目を奪われている間に、テリオはぐるっと廻り込んで男達の後ろから躍り出た。
「「「「「なっ」」」」」
あっさりと捕捉される五人の男達だが、初めからバレバレである。
「さて、お前らは何故俺たちに付き纏う?」
刀をスラリと抜いて脅す。
「ま、待て。待ってくれ。話せばわかるっ!」
「いや、だから。それを聞いてるんだよ。どうして付いてくるんだ?」
「だまって付いてきたのは謝る。なぁ旦那ぁ、このまま付いて行っても良いだろ? 俺ら村を追い出されてよぉ」
リーダーであろう中年男が強請るように言う。
その汚い顔で強請られても気持ち悪いだけである。
「断る! 付いてくるな!」
「そんなぁ、固い事言わないでよぉ。連れてってくれよぉ」
「駄目なもんは駄目だ! 俺たちの塒までついて来てもらっては困る!」
「ぐぬぅぅぅ」
ぐうの音は出なかったが、ぐぬぅは出た。
「でもよ、困った事に俺達よ、方向を失ってどっち行って良いのか分かんなくなっちまったんよ。助けてくれよぉ」
テリオは近寄ってきたシーナと困った顔を合わし、溜息をついた。
「下の道までは連れてってやる。後は自分たちで何とかしろ」
人の通れる道まで少し距離がある。
それも里とは逆の方向だ。
ここで方向だけ教えたとして、この男達が辿り着けるとは思えない。
雪が降り、積もり出した今となっては尚更だ。
早く里に帰りたかった二人にとって、状況は悪くなるばかりだ。
二人は荷物を背負い、里とは逆の方向へと足を向ける。
「早く付いてこい。ここで遭難すれば死ぬぞ」
「お、おう。ありがてぇ」
慌てて付いてくる男達。
薄らと雪が積もり始めているので、なるべくなだらかな斜面を選んで進んでいく。
テリオ達二人だけであればこの位の雪であれば最短距離でも問題ないのだが、付いてくる男達の足取りを見てテリオはそれでは無理だと判断した。
途中で足を滑らせ怪我でもすれば余計に時間は掛かるし、置き去りにして死なせてしまえば寝覚めが悪い。
やっぱりお人好しである。
そうして人の通れる道に出た頃には陽も傾き降雪もあって薄暗くなりつつあった。
「向こうへ行けばフーク村、こっちはアーテ村だ。あとは勝手にしろ」
「ありがてぇ。恩に着る」
「そう思うんなら、今後はあんな馬鹿な事はすんなよ。次に会った時に同じ事をしてたら容赦しないからな」
「わ、分かった! もう悪い事はしねぇ」
脅しをかけたテリオに五人が頷く。
「一度村へ帰って、今までの事を償うよ。道案内、ありがとよ」
そう言って男達はフーク村の方向へと歩いて行った。
全く、村を追い出されるって一体何をしたのやら。
呆れ顔で男達を見送った後、テリオとシーナは普通の人では登れないであろう斜面を登って行くのであった。




