3-7 訪問者
翌日、ケーブが無事に帰り、道具屋に日常が戻った。
が、男どもの顔は半分死んでいた。
どちらも仕事で疲れ果てていたのだ。
その分、多少ペースを落としても問題ないレベルにまでは仕事が進んでいたのが、せめてもの救いだった。
ビタミン摂れ、ビタミン。
充分な睡眠を取る事が出来た二人は、翌朝には爽快な顔をしていた。
これでようやく幼子の機嫌も戻るかと安堵するサリもまた、苦労人だと思う。
いつもの日常が戻って安堵したのは、見守ってきたオバサン連合も同じである。
人付合いの上手いサリは、旦那の持ち帰ったお土産を振る舞い、お礼を言うのだった。
もちろん、お互い様よと言い合い、噂話に今日も励む。
「そうそう、昨日役所に行った時に、例の竜殺しらしい一団を見たわ。なんでも、怪我が酷くて引退も考えなくてはいけないって。気の毒に。で、療養のために、この辺りで住まいを探しているそうよ」
まあ! それはお気の毒に、と言ってはいるが、相手は竜殺しであろう一団。
オバチャンズの格好の話題としては、今世紀最大級の話題だろう。
しかし、その話を手放しで聞けないサリであった。
未だ情報の入らない竜殺しの一団が、もしかしたら知り合いである可能性があるからだ。
その知り合いが、仕事を失うほどの怪我をしているかもしれない。
その可能性が拭えない今、例え噂話としても参加する気にはなれないのであった。
そして、その不安は現実になるのである。
その日の夕方、先日話していた通り仕事帰りと思われるアイーナとラーナが、ピンの相談に店を訪れた。
術館で検討した結果、今までの物と先を丸めた物の2種類を試す事になったとの事。
今までのピンでも再利用が出来るようになっていたので、若干ながら予算に余裕があったからこそ、そういう話になったのもあるのだが。
他にも、竜討伐が軍以外の者たちで行われた事、その被害が予想より少なかった事が、予算が下りやすい理由だったりする。
それに、今まで被害額の補償をしていた政府としては、今後、それを払い続ける必要がなくなったのも大きいだろう。
政府の財布の紐が緩い今がチャンスだ。
そんな事を思いもしない面々は、ピンの製作依頼の内容確認をしていた。
そんなやり取りをしていた時だった。
サリに声を掛ける一団が入ってきた。
「おう、サリ、久し振り! ケーブはいるか?」
「えっ! テリオさん? それにシーナやタークもいるじゃない! お久し振り!」
「おっ! テリオ達か。早速来てくれたんだな」
「えっ? えっ? どういう事?」
「いやな、出張の道中で出会ったんだよ。首都にしばらくいるって言うから誘ったんだ」
「久し振りだよな、1年半振りってところか。おチビちゃんたちも大きくなったんだろ?」
「そうね、もうそんなに経つのね。今までどうしてたの?」
「ああ、国中を巡っていてな。高く売れそうな鉱石を探し回ってたんだ」
「へぇ……で、成果はあったんか?」
ケーブが問うと、後ろからポーターのテンが小袋を取り出してカウンターに乗せて、中身を見せてくれた。
大小、色々な鉱石があるが、小さめの物が多い。
成果としては良くもなく悪くもなく、という所だろうか。
「実はこれはダミーだ。テン、あれを出してくれ」
別の袋を出して中身を広げた。
そこには大きな鉱石がいくつも混ざっている。
結構な金額になるだろう。
だが、そこにいた一同は、ある鉱石に目を奪われていた。
「……これって」
「もしかして……」
「たぶん……いえ、間違いなく」
そう、ユーキやアイーナ、ラーナがその鉱石に目を奪われていたのだ。
最近、それも今現在も作業場で預かって加工している物の一部として、術館テイオーテからの依頼品である杖の一部として、見慣れた物だった。
一同、ソレから目を離し、目を見合わせる。
「アイーナさん、ラーナさん。この後は何か予定ある? 良ければ上がって行って。テリオさん達も上がっていくつもりでしょ? 店ももう閉める時間だし。良いわよね?」
話が長くなりそうだと察したサリが、皆を家に上げる事にしたのだった。




