3-5 店主の出張
「さて、と。んじゃ頼むわ。行ってくる」
「はい、気を付けてね、あなた。いってらっしゃい」
「いってらっしゃい!」「いてしゃりゃい!」
「気を付けてくださいね、ケーブさん」
家族と居候に見送られて旅立つ。
俺、ケーブ・サグリーは、年に一度か二度、少し離れた町へと出張する。
昔、本店で修業をし、今も交流のある道具屋に、注文された品を届けるついでに仕事を手伝うためだ。
いつも俺が行くのに合わせて、結構厄介な仕事を入れてやがる。
今回は1日間だけ手伝う予定なのだが、いつものパターンならおそらく3日は使われるだろう。
面倒な話だが、相手が兄弟子なので断り難い。
徒歩で2日半掛かるその町へは乗合馬車が隣町まで出ており、そこから徒歩でも一日で着く事が出来る。
また、その隣町からも他の町へと馬車が出ており、便利な中継点となっていた。
俺は、その乗合馬車の乗り場となる中流階級区の中央広場へと、荷物を背負い向かうのだが……。
しまった。
ユーキに荷物持ちをさせればよかった。
意外と重いわコレ。
予備の着替えはさほどではないが、頼まれた品が意外と重い。
中継点からの坂道を思うとウンザリだと思いながら、ちょうど出発前だった馬車に慌てて、行き先を告げ代金を払い、ホッとしながら乗り込むのだった。
……地味~に値上げしてやがった。
途中の昼休憩をはさみ、揺られること三時(=6時間程)、やっと中継点である隣町に着いた。
あ゛~、ケツが痛い。
腰も痛い。
さて、ここからは徒歩だ。
急がないと日が暮れてしまう。
俺は、う~~~~ん、と背を伸ばすと荷物に手を伸ばす。
その時、別の町から来た乗合馬車が着き、中から見覚えのある顔を見つけた。
あの特長ある服の集団は……テリオにシーナ、タークじゃないか。
しばらく見なかったが、どこか遠征に行っていたのか?
「おーーい、テリオ! シーナ! ターク!」
俺が声を張り上げて手を振ると、3人とも俺に気が付き、驚いた顔をした。
「皆、久し振りだな」
「誰かと思ったらケーブじゃないか。こんな所で会うとはな。店はどうしたんだ?」
「出張だよ、出張。年に一度か二度あるんだ。此処から歩いて一時程の所までな。お前らは首都まで?」
一応言葉を選びながら話してたのだが、自然とテリオの腕の包帯が目に入って顔をしかめた。
冒険者にとって怪我ほど怖い物はない、怪我の程度次第で冒険者生命を絶たれてしまいかねないからだ。
「……これか。ちょっとやられてな。しばらくの間、首都にとどまって治療を受けるつもりだ」
「そうか…… そうだ、首都にいるなら、落ち着いたらウチに遊びに来い。娘たちも大きくなったぞ?」
「おう、お前んとこの娘たちは可愛いからな。是非寄らせてもらうよ」
「……その後ろの奴らは?」
「ああ、二人とも新しい仲間だ。こっちがサークヤ、1年ちょっと前にここから少し入った所で保護してな。今では俺たちの大事な戦力だ。そしてこっちの若いのがテン、3ヶ月くらい前からくっついてきてしまった」
たはは、と苦笑いして頭を掻くテンは荷物持ちだろう、たくさんの荷物を背負っていた。
そして、真面目な顔で軽く会釈するサークヤは剣士風の格好をしており、なんと黒髪だった。
「1年ちょっと前にか……。俺もそのくらい前に、出張の帰りに一人拾ってな。今、ウチで働いてる」
「へぇ、偶然だな。今度、遊びに行った時に会わせろ。お前が雇うって事は腕は良いんだろ?」
「まあな。あ、本人には言うなよ? あの野郎、調子に乗ると何しでかすか分からん!」
それから俺は、4~5日は帰れないからそれ以降で遊びに来いと言って5人と別れた。
……1年ちょっと前に、似た場所で?
それも、二人とも珍しい黒髪。
偶然なのか?
俺はそんな事を考えながら、目的地の町までの坂道を急いで登って行った。
待ち構えていた兄弟子に3日間監禁され、予想通り首都を5日間空ける事となったのは言うまでもない。
そうだ、次回からはユーキを差し出そうそうしよう決定だ。




