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近所に勇者が引っ越してきたようです(仮)  作者: 赤点 太朗
第二章 勇者と呼ばれた異世界人
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2-8 意外な結末

 それ以降は順調な旅程だった。


 程よいガス抜き(ミカへのエサ)も効果を発揮しているのだろう。

 シンジやショーマに至っては、喜々として狩りに励んでいた。

 体を動かうす事で良いストレス解消になっているのだろう。


 隊員たちも目的地に近付くにつれ程よく緊張感を醸し出し始めている。

 良い傾向だ。

 新しい武器も手に馴染み、途中の狩りでも確かな手ごたえを感じている。

 武器のチェックでは一部の刃先に僅かな”欠け(・・)”が認められるものの、過去の武器と比べるまでもなく問題のない状態である。

 むしろ予備に持ってきている武器が、丸々使わずに済むかも知れない程である。

 流石だ。

 こんな事は今までなかった。

 狩りをしながらだったので、最悪”竜遭遇時”に無事な武器がどれほど残っているか、と危惧する程だったのにだ。

 これなら万全の状態で挑む事ができる。


 実はこの討伐隊メンバーも”問題児”の寄せ集めだったりする。

 軍上層部があまりにも少ない竜の情報を得る為の生贄(・・)として嗾けられたような気もする。

 それがどうだ、今ではおそらく軍でもトップ集団と言っていい程の実力が付いている。

 このメンバーで駄目なら、今の軍ではおそらく討伐は出来ないだろう。


 目的地はもうすぐそこ、半時くらいの所まで来た。

 遠くに村が見えてきているが、竜の姿は今はない。

 そろそろ武器の最終確認を指示する頃合いか。


「ん?」


 何だろう、何か様子がおかしいように思う。

「なぁ、確か村人は他の村や町に避難しているって話だったよな」

「あ、はい、そう報告はされています」

「村に人がいないか?」

 盗賊か?

 人がいない事を良い事に、火事場泥棒に精を出す不届きな輩が集まってきているのか。

 それなりの人数が動いているように見える。

 様子を見に行かせるか。

 いや、少人数で行って捕らえられたり襲われたりしても面倒か。

 ここは、全員で乗り込む方が得策か。

 いつでも戦闘になっても良いように、装備の確認をして進んでいく。

 しかし...。


 村の入り口に差し掛かる頃には張り詰めた戦意を解く事となった。

 村人と思わしき人々が、倒れた家のがれきを片付け、新しく家を建てる為であろう木材を並べ、中央では女衆が炊き出しをしていたのだ。


 なんだこれは。

 どうしたというのだ?


 近くにいた村人に声を掛け、村長に会わせてもらうように頼む。

 すると奥の大きな建物にいるとの事なので、隊を入口の脇に移動させたうえで念の為竜襲撃の警戒に当たらせ、小隊長2人を引き連れて行く事にする。

 村長は快く招き入れ、事の顛末を話し出した。


「私ども村人は近くの村や町に避難していて村は無人の状態でした。時々家屋が破壊される音が聞こえてきていたのですが、ある時、その音の質が変わったんです」



 竜の吠える声と、木々や建物が破壊される轟音、それがしばらくの間続いたかと思ったら、パタッとその音が止んだそうだ。

 違和感を感じた村人の数人が、意を決して様子を見に村へ帰ると、予想だもしない光景が広がっていたという。


 それは...








 村の中央で固まり、仲間であろう怪我人の手当てをしている5人の集団。








 そして








 倒れた竜








「なっ!!」

「竜が!! 討たれていたのか!?」


「はい、討たれておりました」


「一体誰が……」

「いや、どうやって……」


「旅人風ではなく、狩人風……とも違う…… 強いて言えば冒険者のような恰好をしていました。どうやってかはとても聞ける雰囲気では……」

 この国、いやこの大陸には冒険者という存在は非常に少ない。

 冒険できるところが非常に少ないのだ。

 害獣は多くはないし、迷宮なんてものも存在しない。

 未踏地(イコール)竜の縄張り(エリア)なのである。

 竜の縄張りは竜が人の立ち入りを許さなかった。

 害獣駆除に活躍する狩人の方が圧倒的に数が多いのだ。


「怪我人がいると言ったな、何人だ? 死者はいなかったのか?」


「大怪我をしたのは剣士風の一人だけだと思います。死者はいなかったと」


「その者たちはどうした」

「怪我の手当てを終え村に一泊した後、首都(ティナ)へと向かったはずです。私どもが、自ら政府に報告をした方が良いと勧めまして」


「俺たちはその首都(ティナ)から来たんだが……途中で出会ったか?」

「いや、気が付かなかった」

「待てよ、途中の宿に確か5人組が泊まっていなかったか?」

 そういえばとお互いに顔を見合す一行。


「で、竜はどこに?」


「それが……翌日、その一行が出て行った直後にもう一頭の大型竜が現れまして…… 亡骸を引き取っていきました」

 代わりに、狩ってきたと思わしき大型の獣を2頭置いて……と。



 一同、どうしてよい物かと顔を顰めて見合わす。



「政府への報告は早馬を村から出しております」

 それは助かったと言いつつ、今後の方針を考える。


 結局、一行は一部を調査と復興の手伝いとして残し、他の人員は首都(ティナ)へと帰る事とした。



 苦虫を噛み潰したような顔の一同は、竜の巣がある山を一瞥し、すごすごと帰路に就くのだった。





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『カースブレイカー』シリーズ
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