学ぶ姿勢《ジークside》
「どこまで話したか…あぁ、一番初めに学ぶべきは自分の力についてだ。魔力技術の授業が大半になる。魔力には自然属性、原始属性の大きく分けると二種類に分かれることは知っている奴は手を上げろ」
親父に聞かされたことがある内容だから大人しく手を挙げる。手を挙げただけだというのに何人かに睨まれることに呆れていると教卓で同じように呆れている存在に気付く。
「お前らがジーク・ルーテン・モナールに対してどう思っていようが暴力的行動にでなければ口を出すつもりはなかったが、その凝り固まった頭はどうにかしろ」
一瞬何を言われたのか理解出来ず硬直した俺の肩をリトが楽しげに叩く。
「忌み子だ、神話だを語るほどお前らの頭に知識はないし、それを語る事すら愚かと言える」
「っですがエルバル先生!教会では……!」
「教会の教えをとやかく言いたくないが、差別ほど無意味で悪影響なものは無い、教えられたもの全てを正しいと勘違いすること自体が愚かと言っているんだ」
顰めっ面で、“エルバル先生”が俺を見る。そして片眉を上げて口の端を持ち上げ笑う。
「知識は疑ってから始まる。魔力は何故ある? なぜ種類がある? 人はなぜ生まれた? 神はどこにいる? …疑わず、出された情報だけを全てにしては新しいものは増えてかない、雷の属性のことを聞いたことはないか? 元は無かったものだがとあるアホな研究者が人生をかけて見つけたんだよ、雷は空から“自然と落ちてくる”…ならなぜ魔力の種の中には存在しないのだと疑いをもってな」
エルバル先生の目が、口が、仕草が語る。リトがなぜこの人が担任で喜んでいたのか分かった。
「お前らの世界は狭すぎるんだよ、その狭い世界を広げる為に学園がある。貴族の矜恃だの、教会の教えだの言える餓鬼はこの部屋から出ていけ、授業の邪魔だ」
「こ、こんなことが許される筈がないっこの事は父上に報告させて頂く!」
「そうよ! ただの教師の癖に私たち貴族に対してそんな言い回し…」
数人の生徒がエルバル先生に噛み付いたその瞬間に、丁度教卓横の扉が開けられた。
「エルバル先生、忘れ物───あれ、どうしたんですか? 皆さんこんな殺気立って」
茶色い髪に、紺の瞳を持つ小等部生徒会長…ルライ・ガウェインが柔らかく微笑みながら入ってくる。手には大きな布の袋を持っていた。
「忘れていたか…ガウェイン助かった」
「いえ、気にしないでください…というか本当にどうしたんです?先生のクラスでは珍し…くは無いですね、また何か言ったんでしょうし」
良くも悪くも、素直ですもんねとにこやかに話す彼をエルバル先生は止める気もなくため息をこぼした。
「生徒会長!生徒会長からも言ってくださいよ!」
そんな柔らかな反応を味方にできると思ったのかさっきエルバル先生に食いついていた生徒が今度は生徒会長に声をかける。
「はい? なんでしょう?」
「そこの無礼な教師が教会の教えや貴族の矜恃を語るなら出てけと言うんです!こんな忌み子と同じ扱いも目にあまります!」
リトがそこで俺の肩を掴み片腕を抱き込むように顔を隠した。少し震えているようだった。
「どうした?」
「……感情にあてられただけだよ、うぅ」
「悪いな」
「ジークのせいじゃないよ」
周りにバレないように話していたが、急に視線を感じ、視線の方に目を向ける。
会話の中心となっていた生徒会長が俺を見ていた。
「何を期待して僕に話を振ったか分からないわけじゃないけど、僕もエルバル先生の意見に賛成かな」
「……え?」
「僕は確かに生徒会長をさせてもらっていて、生徒たちの力になろうと思っているよ」
「だったら!」
「だけど君らのそれは“学園の意味”を理解していない愚か者の行動だと気付かねば勉強にすら追いつけないんじゃないかな?」
笑みを絶やさずそう言い放ちエルバル先生に生徒会長は軽く礼をした。
「エルバル先生では貴族の反発が酷そうですし今回の件は学園長に僕から報告しておきます、問題ある生徒の名前を後で報告あげてくださいね」
「……大変だな生徒会長は」
「いえ、これも勉強のうちですから、あ…可愛い後輩に折角だから最後に一言言ってもいいですか?」
「あぁ」
唖然としている生徒達を見ないことにしたのか大人しかった生徒たちに…そして俺達に生徒会長は微笑む。
温かく、まるで敵ではないとなだめるような笑みだった。
「合わなかったら仕方ないですけど、この学園で学ぶのであれば是非楽しんでください」
では、と本当に最後に一言残して、生徒会長は教室から出ていった。
「……また話が逸れちまったな、まぁとりあえず、これから魔力測定を行う、自分の魔力について知ることが出来る貴重な機会だ、名前を呼ぶから順番に前に出るように」
そう、静かな教室にエルバル先生の声が響いた。




