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願うのは笑顔  作者:
第2章 第1節【イージス学園小等部入学】
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初期装備


 

 「魔法陣はかけましたか?では次にその魔法陣を机に広げ、目を閉じて魔力をその線一つ一つに流すイメージで送ってください」

 

 すぅと目を閉じる。魔力で描いた魔法陣の線をなぞっていく。ジョブ選択後の姿がはっきりと瞼の裏にうかんでくる。

 

 全て見ることはせず、元から決めていたものを強くイメージする。

 

 イメージの中、選択後の私がゆっくりと微笑んでくれた気がした。

 

 「…………選べましたか?選べたのなら、目を開けてください」

 

 アリア先生の小さな声を聞きながらゆっくりと目を開ける。温かな物が手のひらに確かにあった。

 

 

 私が選んだものは、“剣士”だった。魔法剣士ではなく、剣士。隣で息を飲むのが聞こえ、レペテを見るとレペテも剣だった。私とは異なりその剣には細く魔力を通す線が引かれている。

 

 レペテは魔法剣士を選択したようだった。ゲームの中のレペテは恐らく魔法士から派生する黒魔法士だと思う。もしかしたらさらに派生した私の知らない職かもしれないが。

 

 私は剣士になり、レペテは魔法剣士になった。私は兎も角レペテの未来はさらに変わっていった。

 

 気付けば周りも私を見ていた。あぁ、私のことでいっぱいいっぱいだったからあまり印象に残ってなかったけど、レヴェルのハウロスの心臓の結果はどうだったんだろうか。

 

 彼の手に握られているのは剣だ。私と同じもの。しっかりと握られた様子からきっと彼も迷わなかったんだろう。

 

 「サーレさん…貴女剣を…」

 「ええ、アリア先生は先程望んだものをイメージしなさいと仰りましたでしょう? 確かに私のイメージした通りのものが召喚出来ました」

 

 にこりと微笑むのを意識する。剣だと何がいけない?好きなものを選択しろといったのは先生だ。たとえそれが授業の流れだったとしても。

 

 信徒として私に杖を選択して欲しかろうと、私の望みにそんなこと一切関係がない。

 

 また、後悔する可能性だってある。だけど、今私が考え、選択した一番だと思うものは“剣士(これ)”だった。

 

 

 魔力や魔力操作が勝手に上がっていくなら態々(わざわざ)魔法関係を選択する必要は無い。なら剣士を選択して身体能力の底上げの方がまだ役に立つ。

 

 それに、“いずれ私が一人になる可能性”だって出てきた。補うべきは弱点で、伸ばすべきは長所じゃない。

 

 「アリア先生、特に私は問題ありませんので、どうぞ授業を進めてください」

 「…そ、そうですね……えー、魔力媒体は選び終わったかと思います、それによって能力が変化致します、変化する方向性にはそれぞれジョブの名前が割り振られており、杖を選択した方は魔法士。剣を選択した場合は剣士か、魔法剣士。グローブなら拳闘士。斧なら重戦士となります。」

 

 んー、視線を感じる。まぁ、察するよね、さっきのアリア先生の反応からして。

 

 「いま計測、選択したジョブを学生証に記入し、配布致します。前から回しますので自分の物をとったら後ろの席の人に渡してください」

 

 回ってきた学生証はカード型で、今の能力値が表示されている。

 

 サーレ・ヴァド・マーシェル

 ジョブ:剣士

 魔力媒体:雪光華(セッコウカ)

 魔力操作:A

 魔力:A

 身体能力:B(C)

 剣術:B(C)

 体力:C(D)

 

 身体能力、剣術、体力は入学試験の時に一度計測していて、()内のものがジョブ補正前、ジョブ補正後をみると随分上がったと思う。私の召喚した剣の名前は雪光華(セッコウカ)というらしいけど、随分可愛い名前だ。

 

 学生証は首から下げる紐も付いていて、学生証の能力値は持ち主と学園の教職員しか見ることは出来ない。だから後ろに回す形で渡すことが出来る。

 

 「授業の内容はそれぞれ選択したジョブ科目と必須科目で執り行います、言語、数学、地理、歴史、魔法学、魔法実技、体育です」

 

 ゲームの中でイベントが起きやすかったのはジョブ科目と魔法学、魔法実技と体育だった。

 現実には無いものだとイベントが起きても特別感がするものなのかもしれない。

 

 アリア先生が授業内容を軽く説明して一区切りした所で丁度よく授業の一限目が終わるチャイムがなった。

 「続きはまた授業再開後に行います、またチャイムがなりましたら席に着いてください、二回目のチャイムから再開致します」

 にこやかな先生が立ち去るのを見送る。先生が出ていった途端にわっとクラスの中が騒がしくなるのは前世の教室と同じだった。

 

 

 「サーレ様、疲れましたね」

 「そうね、初日だから色々慣れないし…慣れてくればもう少し気が楽だと思うわよ」

 「“これ”に慣れる気がしません…」

 へなっと机に伸びるレペテに微笑んで宥めつつ、周りから浴びる視線に心の中でため息をこぼす。

 

 全属性の女神の目を持つ私と、闇属性に特化したレペテ。目を引くのは仕方ないとしてもいい加減に無粋(ぶすい)だと気付いて欲しいと考えた所で

 

 

 「おい、例の忌み子見たか?」

 

 私達に目を向けない者がとうとう口にした一言から私たちの話よりもジークの話に流れ始めてしまった。

 

 

 

 

 

 

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